騎士団長殺し(村上春樹著)

2023-09-13 00:00:56 | 書評
2017年に発刊された『騎士団長殺し』。村上春樹の小説は、ほとんど読んでいて、「ねじまき鳥クロニクル」以降は、書店に並ぶとすぐによんでいたが、「1Q84」の頃から、うっすら感じていたのは、「いつも通り」という感と、「少しパワーが不足してきたのかもしれない」という感じで、「騎士団長殺し」は読んでいなかった。といっても新刊「街とその不確かな壁」が発売になると、連載物ではないが、前刊を読もうかという気分になった、

読後感だが、やはり「いつも通り」という感があり、その意味では安定感がある。妖怪のように出現する「騎士団長」とか心霊スポットの「地下の祠」が出てきても、驚かない。

いつものように実世界とその裏側にある別の世界が交錯し、裏側の世界は100年ほど前の歴史的事実と関係していて、主人公他何名はそちらとこちらを行き来する。(何か非現実的だが、浦島太郎でもこういう構造だ)

鍵があったり、試練があったり・・

これもいつもの定番コースだが、結末の部分で、すべてが丸く収まるようになっている。

推理小説ではないので、前半部でまき散らした「なぞ」とか「きっかけ」についてすべてを明らかにする義務はないが、準主役群の中の一人である秋川笙子が読みふけっていた本の題名が不明のままのような気がするが、自分なりに推理すると『騎士団長殺し』ではないかと思う。