「家計の値上げ許容度」より問題がある認識

2022-06-08 00:00:20 | 市民A
「日本の家計の値上げの許容度も高まってきている」という発言で顰蹙を買い謝罪した黒田日銀総裁だが、「許容度も高まり」という根拠がよくわからない。一説では東京大学の研究で「10%価格が上がった時に購買店を変えるか」というアンケートで欧米並みの40%台に下がってきたからというのがあるが、どの店も値上げになったら店を変える意味がないし、そもそも過疎地では選べる店がないし住宅密集地では過当競争で店間の格差がない。

数値で見るならば、物品ごとに値上げと売上数量減の比率(価格弾力性)の変化率で見た方がいい。

日銀総裁は、値上げが浸透した後は、マクロ的に給料が上がれば好循環になっていい、という発言に続けたのだが、大きな疑問だ。

今回の値上げは、輸入品の価格が上がっていることに起因していて、企業は儲かっていない。むしろ利益が減っている。そもそも会社の経営者は賃金が安い方がいいと考えているのだから、さらに賃金は上がらない。したがって、好循環は構造的に望めない。

会社で給料が上げることになる最大の理由は、「初任給」なのだ。日本のように4月採用で終身雇用となると、労働市場がタイトな時期は、給料を上げないと人は集まらない。そうすると前年の初任給を少し上回らないといけない。そうなると初任給のアップ率以上を1年目と2年目の給与の増加率にしないと2年目の社員より1年目の社員の方が給与が高くなる。そのためベースアップが必要になる。物価上昇率とは何の関係もないわけだ。