陰陽師(2001年 映画)

2017-01-03 00:00:45 | 市民A
陰陽師とは、安倍晴明のことといってもいいほど、晴明は頭脳明晰かつ人間とは思えないほどの妖術をあやつることができた。

時は、平安時代のちょうど中央。桓武天皇の平安京遷都から150年が経っていた。この桓武天皇による奈良→長岡京→京都という慌ただしい遷都の背景が平安時代を通しての怨霊跋扈の伏線になっている。天皇家の権力を奪おうとしていたのが仏教関係者、特に東大寺ということで、なんとしても奈良からの脱出を急いだのだが、反対勢力が燃え上がってしまった。ちょうど築地から豊洲に市場が移動する話と似ている。

その混乱の中で、桓武天皇の弟の早良親王に謀反ありとして、調べもしないで殺してしまったわけだ。その結果、京都は遷都した時から怨霊が飛び回ることになる。最近、観光地化した将軍塚は、早良親王の怨霊から都を護るために作られたわけだ。

さらに菅原道真が左遷されたり、あちこちに怨霊にとって出番の多い町になっていた。

ということで、陰陽道を極めることは極めて重要な仕事だった。たとえば方角の吉凶占いとか、身代わりの藁人形とか、魂の浮遊、未来予測や月の満ち欠け。

onmyoji


映画では、スーパーマン安倍晴明を演じるのが野村萬斎で、パートナーの密虫役を演じるのは昨年大活躍の今井絵理子議員。38度線を超えたとか超えないとか緊張が高まっている世界情勢にもかかわらず、一線を超えていないというセリフをひねり出した。本映画では、議員のセリフは非常に少ない。言葉に詰まると蝶に変身して飛んで行ってしまう。

映画は夢枕獏の原作と実際の安倍晴明の活躍のため、演技力にかかわらず楽しい物になっているが、そもそも晴明が死ぬわけはないのだから安心して見ていられる。

ところで、実際の安倍晴明の末裔だが、本家は陰陽師一筋で土御門家と改姓し、明治時代まで政権に仕えていた。特に幕末には、江戸幕府天文方の仕事を土御門家が引き受けることになったのだが、残念ながら、直後の明治3年に陰陽師制度は廃止になる。土御門家はその後も続き、貴族院議員を歴任し、平成6年まで男子当主がいたのだが、その後、当主の娘が家を守っていると言われる。一方で梅林寺にある代々の墓は管理されていない状況に追い込まれているそうだ。個人的には安部晴明神社が、晴明利用で儲けるだけではなく、墓地の管理費も払えばいいのではないかと思う。

なお、晴明の子孫の一派に東北地方で一暴れした安倍貞任がいる。このずっとずっと子孫が安倍晋三という人だそうだ(本人談)。

昨年、京都の晴明神社を訪れた時には晴明神社のあと、一条戻り橋に向かったのだが、順番が逆だったようだ。

全然、映画の話になっていないなあ・・

天皇家はなぜ続いたのか(梅沢恵美子著)

2017-01-03 00:00:30 | 書評
怪書なのか快書なのか私には見分けはつかない。題名の「天皇家はなぜ続いたのか」は少し本書の内容とずれている。本書に書かれている大部分は、謎だらけの日本の古代史をきれいさっぱり解明しようという試みである。

tennnouke


謎だらけというのは、正史とされる日本書紀の記載事実があきらかに荒唐無稽で、もしも実在していたとしたら百歳以上の寿命の天皇ばかりであるということや、古事記や各地の神社に言伝えに伝わる伝承や、祭事などと日本書紀のなんとなく似ている点、また大和朝廷と邪馬台国の時代的ずれ、素性のはっきりしない蘇我氏のこと、それらについてつじつまが合うように合理的に考えたということだ。

結論的には、日本書紀の成立した背景には藤原不比等という大政治家がいて、藤原氏の正当性、つまり蘇我氏の不当性を表現したかったということにあり、本来の歴史から蘇我氏に関する記載を削除し、辻褄があうように苦心したものの民間神話として日本建国時の事情がわかってしまうのことを恐れ、事実を神話に格上げしてしまったということだ。

そして、邪馬台国の位置についても痛快に解明している。ヤマト朝廷は畿内にあったものの九州北部にあった政治勢力は、中国に対して、邪馬台国こそ日本の大和朝廷であると説明をして印鑑をいただいて、偽ヤマト朝廷として大和朝廷と戦ったのではないだろうか。また卑弥呼の没後、内部分裂で国が乱れ、「とよ」さんが後を継いでやっと国が収まったといわれる点について、「とよ」こそが統一国家の初代首領であるべきと書いている。