長すぎた入学式英語スピーチ

2016-04-07 00:00:42 | 市民A
東工大の入学式で学長のスピーチが英語だったことがニュースになっている。これから入学式を行う全国の大学で、大急ぎで準備が始まるのだろうか。

問題は、スピーチの内容で、会場で同時に配られた和訳をみると、入学に関する部分には、感動的なことばは見当たらない。「みなさん入学おめでとう。これから勉学に勤めてください。以上。」というに過ぎないような気がする。さらに、これからは海外との交流が重要で、色々なプランがあるので期待してください。というようなことを回りくどく長々と述べていて、そんな連絡事項みたいなことを話さなくてもいいのではないかと思ってしまう。

一方、ヒアリング能力がイマイチの学生に合わせて英語のスピーチの内容を低レベルに下げると、それこそ入園式になるのだろう。

いずれにしても、スピーチは「短く、感動的に」という原則を守れば英語でもいいと思うのだが、そうなると難しい。なにしろ、「長々と詰まらない」話をどこの国のコトバに翻訳したってしょうがないじゃないだろうか。

また、東工大という微妙な存在の大学だけど、理学科学系の巨人である。世界で自分の国のコトバで学問を高度化した国は数カ国しかないのだから、やはり日本語でしゃべってほしかったような気もする。

ところで、短く、感動的で、英語というと有名なのが、クラーク博士の「Boys、be ambitious」。

一般には、「少年よ、大志を抱け」となっている。

現代なら性差別となるので、「Girls and Boys」で始めなければいけないだろうが、これは札幌農学校を離れる時に彼が卒業生に対して語ったコトバである。

しかし、この短く、感動的な英語だが、ちょっと調べると、美しいコトバの裏側も見えてくるわけだ。

まず、クラーク博士は、マサチューセッツ農業大学の学長だったのだが、1年間の長期休暇制度を利用して、日本のお雇い外国人となっている。永年勤続表彰で得た長期休暇を利用してコンビニのアルバイトをしているようにも見える。

移動期間も必要なのだから、結局日本にいたのは10か月。1876年の7月から1877年の5月まで。北海道は冬の時期だ。もちろん講義は全部英語で通訳なし。地面は凍てついていただろうから農業実習は困難だったのではないだろうか。

そして、実際には、この名言は、短歌であれば、五七五の部分で、その後ろに七七の部分がある。

Boys, be ambitious like this old man.

少年よ大志を抱け、この老人のように。となる。old man と言っても、博士は50歳だ。Boys の方は20歳代だろうから年の差30弱。青年よ大志を抱け、このおじさんのように。といったところだろうか。

さらにambitious というのは、大志というか「野心的であれ」というべきで、アメリカ人だからそれでいいのだろうが、日本的な大志とは異なっているような気がする。

クラーク博士も米国に戻ったあと、元の大学に戻らず、洋上大学を起こして大失敗。さらに鉱山開発にも失敗し、巨額借金に追われながら59歳で失意の中、亡くなった。