三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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白南基(ペク ナムギ)さんと‟육철낫”

2016年10月26日 | 韓国で
■白南基(ペク ナムギ)さんと‟육철낫”
                               金 靜美

 ことし9月25日、白南基さんが亡くなった。1947年生まれ、69歳だった。
 白南基さんは、朴正煕政権下の学生時代、1969年の大統領3選改憲反対や1972年10月からの維新体制反対など、民主化運動を闘い、大学からの除籍処分や復学を経たあと1980年5月17日、全斗煥政権の非常戒厳令違反で逮捕され、懲役3 年の刑を宣告された。
 その後、故郷の全羅南道宝城郡熊峙面にもどり農業に従事した。韓国麦興し運動光州・全羅南道本部をなかまとともに作り、共同議長になった。
 白南基さんは、昨年11月14日、自宅から農民120人余りとともにソウルに行き、民衆総蹶起集会に参加した。
 集会後のデモのとき、白南基さんは警察の直射放水銃に撃たれて倒れた。ソウル大学病院で脳内出血の手術を受けたが、意識を回復することなく、10か月10日後に亡くなった。
 昨年11月14日の民衆総蹶起は、朴槿恵政権退陣、労働問題、農業問題、歴史教科書国定化反対、セウオル号の真相糾明などを目的とし、民主労総、全国農民会総連盟、全国貧民連帯など53の団体が共同主催した集会であった。民衆総蹶起闘争本部は、主食用米輸入阻止、TPP反対、米および農産物の適正価格保証、露店摘発中断、歴史歪曲中断、歴史教科書国定化計画廃棄など、11領域22項目の要求を掲げていた。

 白南基さんが亡くなった9月25日、わたしは、韓国にいた。白南基さんと同じ農民として、長く運動を共にしてきた韓道淑(ハンドスク)さんら、白南基さんの死を悼み憤る人たちといっしょだった。
 韓道淑さんは、以前、全国農民會総連盟議長だった人である。いまは同連盟の顧問をし、おもに果樹(梨、りんご、栗など)を栽培している農民であり、詩人である。最近、評論集『さつまいもの花が咲きました(고구마꽃이 피었습니다)』(2015年、民衆の声社、ソウル)、詩集『踏みしめる大地(딛고선땅)』(2016年、民衆の声社)をだした。

 以下は、韓道淑さんが、韓九淵(ハングヨン)という筆名で発表した、白南基農民の死にさいして作った詩、 ‟육철낫”の原文と日本語訳である。
 ‟육철낫”の日本語訳はむずかしい。翻訳の過程で、韓道淑さんに尋ねた。
 韓道淑さんによれば、韓国で一般的に使われている鎌は、‟왜낫(倭鎌)”といわれ、植民地期に朝鮮にもたらされ、おもに稲などを刈るときに使われるそうだ。軽くてよいが、硬いトウモロコシや豆の茎を切るときには、よく刃がかけ、使えないという。
 ‟육철낫”は、大量生産品ではなく、鍛冶屋でひとつづつ手作りで鍛造された、強靭で頑丈な鎌のことだという。漢字にすると、‟肉鉄낫”と書く。職人が時間をかけ心を籠めた鎌という意味で、‟肉鉄낫”というのだという。韓九淵さんは、白南基農民を、‟육철낫”になぞらえた。
 ‟육철낫”を、‟手打ち鎌”とするか? ‟手撃ち鎌”とするか? 闘いの途上で斃れた白南基農民には、‟手撃ち鎌”が合うように思った。


육철낫

섶 따위만 치진 않았오
뒤란 대숲 참대 내리쳐 죽창을 만들었오
더러는 탐학의 목을 치고
더러는 침략자의 피를 벼린 날에 묻히기도 했오
그러다가
헛간 부스러진 흙담에 걸리어
녹슨 몸을 어루며
억센 손아귀 맛을 본지 어언 일 년이오
풀무간에서
쇳덩이가 신열을 하며 달아오를 때
큰망치로 두두리고
작은망치로 때려
찬물에 몸을 담그면
온몸에 우주가 담기는
섬뜩함으로 단련되어
또 한 번 거친 세상을 향해 포효 하고 말 것이오
저만의 무게 만으로도
멈추기 어려우니 조심하시오
한 번 허공을 헤침이
우지끈 세상을 날리는 회오리로 불어 닥치니
순박한 농부의 손아귀에
“퉤” 침방울로 욺켜지고
우직하게 휘두르면
육철낫은 냉철하게 예리하다오
나무에 꽃이 피지 못하는
생명이 잉태되지 못하는 죽음의 시절
다시
백남기의 육철낫이 살아오오
몸뚱이 붉게 달아오른 냉철한 육철낫


手撃ち鎌

木々を切り払うだけではなかった
裏山の竹林の真竹を切り落とし 竹やりを作った
ときに 暴虐を打ち倒し
ときに 侵略者の血を 鍛えた刃になすりつけることもあった
それから
納屋の崩れた土塀にもたれかかり
錆びついたからだをなだめ
ごつごつした手のひらの汗を吸って いつのまに1年が過ぎた
ふいごで
鉄の塊が真っ赤に焼きあがり
大づちでたたかれ
小づちで打たれ
冷たい水にからだがひたされると
全身に宇宙がみなぎるごとく
ひゅうっと 鍛えられ
いま一度 荒々しい世に向かって 咆哮するのだ
みずからの重さだけでも
立ち止まるのがむずかしい 注意せよ
ひとたび 空を切れば
めりめりと 世を吹き飛ばすたつまきが 吹き荒れるから
純朴な農夫が手のひらに
ぺえっと つばをなすりつけ
愚直に振り回すなら
手撃ちの鎌は 冷徹で鋭い
木に花が咲かず
命が宿らない 死の季節
ふたたび
白南基が手撃ち鎌となって 生きるのだ
からだが真っ赤に燃えたぎる 冷徹な 手撃ち鎌
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