リニア中央新幹線の工事差し止めをめぐり、沿線住民らが工事を認めた国を訴えている「ストップ・リニア!訴訟」。訴訟を担当している東京地裁の裁判官3人が、すでにリニアが走っている山梨実験線の沿線住民から騒音や低周波、日照などの被害を聞き取る現地進行協議に、9月12日に同行した。実際には裁判所の書記官から牽制されて、少し離れて後ろからついて回った。
ご紹介した記事の始まりです。以下は引用者の一存で長文記事を読み易く分割しました。
4カ所の現場を回ったが、特に「むちゃくちゃやん!」と口を突いて出たのは都留市川茂地区平松。集落から200㍍弱のところに、リニア実験線の高架が通っている。
ここは沿線2㌔に防音フードがない「明かり区間」。
山のトンネル出口付近には防音フードがかかり、リニアが通るたびにゴオッという音が反響する。
その後、車両が高架を通る間は10秒ほど、ゴーーーーーとかジャーーーーとかいう音が続く。
雨が入ると、キーーーーという金属音が混じる。騒音計で測ると77~100デシベル。
住民は「二重サッシを閉めても室内でテレビの音が聞こえない」。これが午前9時から午後6時まで10~15分置きに続く。橋脚から振動が伝わり、フローリングの床に寝ていると跳び起きてしまうという。
子どもがいる方は、「子どもたちが試験勉強ができないので、土日は身内の家に行っている」という。リニアのせいで、一家がばらばらに暮らすような事態が起きている。
実験線は5両編成。営業線になれば17両。午前9時から午後11時まで120往復走る想定だ。「そうなったら、とても暮らせないですよ」
住民らは昨年(2021年)10月、JR東海にトンネル開口部と同様に、防音フードを付けてほしい、と要望した。
ほぼ1年にわたる検討の結果、JRが9月4日に示した結論は「高架線の橋脚の強度が足りない」「大規模な補強は周辺の環境評価、工期、経済性を総合的に検討した結果、実施できない」とのゼロ回答。
さらに、同じ説明書で追い打ちをかけるように「フードを設置しない区間においては降雪対策として、(雪を溶かす)散水消雪設備が必要」と提案した。
「散布した温水を自然勾配により集めるために線路高が一番低いところ」「できるだけ本線に近く平らでまとまった土地」「市からは一種農地を避けるように言われている」とし、3条件にあうところとして、川茂・平松地区の民家が建っている土地を赤線で囲み「土地をお譲りいただきたい」とした。
騒音には対策を取らない上、雪を溶かす水を貯める場所が必要だから、立ち退いてほしいというのだ。
9月4日の説明会後、実際にJR東海から委託を受けた人たちが集落を回り始めているという。 でも、橋脚の下には水田も畑もあり、集落の人たちの暮らしは土地とは不可分だ。
70代の女性は「市内で一番品質のいい米が取れるといわれたんよ。(騒音が)このままではここにいられない。でもここを出てどこにいけというの?考えりゃ考えるほど眠れないよ。JRはこっちが音を上げるのを待ってるとしか思えない」
実験線の沿線で、これほどの被害が生じていること。JR東海の計画が想像以上に行き当たりばったりであること。これはもっとたくさんの人に知って欲しい。
リニアでは最近、静岡の川勝知事のパフォーマンスや舌禍にばかり批判が集まっているようだが、JR東海の計画のずさんさ、それによって現に苦しんでいる実験線沿線の人の声をこそ、社会に届けなければいけないと思う。
今回の東京地裁の現地進行協議について、フリーランスでリニア問題を追う樫田秀樹さんからお誘いいただいて、有給を取って参加した。
NHKと山梨日日、地元テレビ局YBCのほかは、フリーランスの記者ばかり。後半、読売新聞甲府支局の記者が一人加わったが、全国紙の記者の姿はほかになかった。新聞社が地方取材網を削った弊害がクリアに見えた取材だった。
東京地裁担当も、提訴でも判決でもないタイミングで、裁判官が地方で何を見聞きするのかには、関心がないようだ。
こうしてメディアが退潮し、地方の切実な声が大企業の論理の前にかきけされてしまうことが本当に怖い。何かの形で、朝日新聞に書くことができないか、静岡や甲府に働きかけたいんだけど、さて理解があって、縦割りの壁を越えてくれるデスクが見つかるかどうか……。
都留市 川茂(カワモ) 大原(オオハラ) 地区と書かれていても国道しか通らないのでピンと来ません。地図で見るとリニア実験線の北側かと思います。
業者が「このような大規模な補強は・・・実施できない」と結論されている件を、都留市庁では(山梨県庁と共に)市民の方々の苦労をどの様に理解し対応なさっていかれるのか、ネットなどで今後の地域状況も確認しておきたいと思います。