樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

アカシア

2016年06月16日 | 木と歌
5月末に訪れた栃の森では、入り口までの林道でハリエンジュが白い花を咲かせていました。この樹は環境省が「要注意外来種」に、日本生態学界が「侵略的外来種ワースト100」にリストアップしています。繁殖力が強く、在来の生態系を撹乱する恐れがあるからです。栃の森は原生林ですが、すでにその付近にまで分布域を広げているわけです。



正式和名は「ハリエンジュ」ですが、一般的には「アカシア」と呼ばれています。札幌などの都市で街路樹に使われていることから、歌にもよく登場します。私より上の世代が思い出すのは、西田佐知子の『アカシアの雨がやむとき』でしょう。
「♪~アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい 夜が明ける日が昇る 朝の光のその中で 冷たくなった私を見つけて あの人は涙を流してくれるでしょうか…」という歌は、60年安保闘争とセットでよく語られます。
ただ、作詞した水木かおるは日本の街路樹のシーンを描いたのではなく、芹沢光治良の小説『巴里に死す』を読んでそのイメージを表現したそうです。パリには樹齢400年以上のアカシアがあり、最も古い街路樹として保護されています。結ばれない男女のストーリーを、そのアカシアの巨木にからめて作詞したわけです。
調べてみると、この作詞家は『エリカの花散るとき』(西田佐知子)『くちなしの花』(渡哲也)のほか『あじさいの雨』『銀木犀』『夾竹桃』など樹木の作品を多く書いています。すでに亡くなっていますが、同好の士だったのかもしれません。そもそもペンネームが「水木かおる」ですから、間違いないですね。
コメント (6)
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