真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



一般映画の感想のインデックスです。
当該タイトルを踏んで頂ければ、別ウインドウで表示されます。

タイトルの五十音順に整理。必ずしも映画でないものは、その旨別途表記。

アサルト13 要塞警察」(2005)
ウルトラヴァイオレット」(2006)
家族ゲーム」(昭和58)
奇談」(2006)
キャプテントキオ」(2007)
グエムル 漢江の怪物」(2006)
孤独な殺し屋」(昭和50年/『俺たちの勲章』第十五話)
魁 !! 男塾」(2007)
THE MYTH 神話」(2005)
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2007)
17歳の風景 少年は何を見たのか」(2005)
ゾンビーノ」(2006)
大統領のカウント・ダウン」(2004)
大日本人」(2007)
弾突 DANTOTSU」(2007)
沈黙の激突」(2005)
沈黙のステルス」(2005)
沈黙の脱獄」(2005)
沈黙の標的」(2003)
沈黙の報復」(2005)
デス・トランス」(2005)
デュエリスト」(2005)
翔んだアイドル」(1995/『重甲ビーファイター』第十五話)
20世紀少年」(2008)
ニュー・ワールド」(2005)
ハサミ男」(2004)
バタフライ・エフェクト」(2003)
初恋」(2006)
ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005)
ブラック・ブック」(2006)
ブラックレイン」(1989)
プロジェクトBB」(2006)
マイアミ・バイス」(2006)
マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝」(2006)
幻の湖」(昭和57)
ミッドナイトムービー」(2005)
ユニバーサル・ソルジャー リジェネレーション」(2009)
ヨコハマメリー」(2005)
雷神  RAIJIN」(2008)
リンダ リンダ リンダ」(2005)
ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT」(2006)


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 「純愛夫婦 したたる愛液」(2003/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:森山茂雄/脚本:五代暁子/原作:森山茂雄/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:小山田勝治/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中沢匡樹/監督助手:松丸善三/撮影助手:藤田朋生、他一名/照明助手:及川厚/出演:まいまちこ・高根綾・美奈・牧村耕次・竹本泰志・神戸顕一・JUDO中沢・北千住ひろし・松丸善三/特別出演:城春樹・野上正義)。出演者中、松丸善三は本篇クレジットのみ。
 ヤリ手営業マンの高瀬常夫(牧村)は、度を過ぎた辣腕が祟り敵を増やし、リストラされてしまふ。私物を整理し階段を不貞腐れながら下り際、かつての部下・森(竹本)からはこれ見よがしに邪険にされる。後姿の高瀬が、新橋駅へとトボトボ消えて行く画からタイトル・イン。明けて最初の濡れ場、ラブホテル(HOTEL アルパⅡ)で高瀬はホテトル嬢・風子(美奈)を抱く。経験豊富な風子に、高瀬はリストラされたことを見抜かれる。聞いた風な口を利く風子に対し高瀬は荒れる。ここで鼻につくのは、美奈の嬌声は少々わざとらし過ぎる。一ヶ月後、高瀬の再就職は難航してゐた。酔ひ潰れチンピラ(北千住)とぶつかりながらも帰宅、高瀬は鬱屈を妻・のり子(高根)にもぶつけると、半ば犯すやうに暴力的に抱く。次の朝高瀬が目覚めると、のり子は置手紙を残し家を出てゐた。とはいへ職探しに向かつた高瀬は、横断歩道を渡る最中、猛烈な事故音に身を硬くする。が、事故は高瀬の周囲の何処にも起こつてなどゐなかつた。カット跨いで更に翌日、高瀬が家を出ようとすると玄関先で、白いワンピースを着た正直アレな雰囲気の謎の女(まい)が、スヤスヤと眠つてゐた。目を覚ますといきなり「高瀬常夫さんですよね?」と切り出す女に対し、「何で知つてるの?」と高瀬が訝しむと、女は満面の笑みで「仕事ですから」と人を喰つたかのやうな答へを返す。ひとつここでツッコミを入れると、場所が玄関先であることを考へれば、表札を見れば高瀬の下の名前まで判る場合もあらう。
 人生の壁の前でもがく男の前に不意に舞ひ降りた、白尽くめの謎の女。男からすれば付き纏はれつつ、女は苦しむ男に寄り添ひ温かく激励する。終盤まで引張らずに結構中盤で完全にネタを割つてしまふことに関しては疑問が残るが、時折挿み込まれる何処か遠くを見やるやうなまいまちこのショットや劇伴の選択に、大人の御伽噺を志向した演出意図は明確に窺へる。デビュー作で瞬間的に感じさせた突破力は感じられないものの、四作目にして最も、といふか初めてお話はキチンと纏まつてもゐよう。公開当時m@stervision大哥が提出された、謎の女の適役は林由美香ではないのか?といふ指摘は確かに今作に対するクリティカル・ヒットであらうが、良きにつけ悪しきにつけ、抜け切らない硬さといふのが少なくともここまでの森山茂雄の持ち味ともいへる。当時仮に林由美香を連れて来たところで、例へばファンタジーの名手あるいは迷手渡邊元嗣や、艶笑譚に長けた深町章のやうに柔軟に、豊かに羽ばたくままに“天国に還る前の天使”林由美香を羽ばたかせることが果たして出来たのかといふと、些かならず疑問が残るところでもある。尤ももしもこの時点で森山茂雄が、林由美香が謎の女役で完全な輝きを放つ決定的な傑作をモノにしてゐたならば、現在のピンク映画少なくともオーピー映画の地図は、今とはまるで異なるものになつてゐたのかも知れない。
 
 分厚い出演陣が、地に足の着き過ぎたファンタジーを支へる。神戸顕一とJUDO中沢(中沢匡樹のことか)は、居酒屋で高瀬の悪口を叩く森の、向かひに座る同僚。松丸善三は、独りヤケ酒をあふる高瀬の背後で、偶々居合はせた風子にキレられる風子のヒモ。特別出演の城春樹は、謎の女の助言を活かし漸く再就職にこぎつけた高瀬の、再就職先の社長・坂田。野上正義は、のり子の父親。出演者クレジットは無いものの、高瀬とのり子との馴れ初めの回想シーンの背後に、女連れで飲む池島ゆたかも見切れてゐる。とりあへずこの映画、主役が新橋のサラリーマンだから仕方がない、などといつてしまへば元も子も無いのかも知れないが、何かといふと居酒屋が登場する。

 更にふたつツッコムと。のり子は謎の女に、「誰かが居ないと駄目な人なの」と夫を託す。そもそもなら家を出るな。謎の女は高瀬の再就職探しに、「プライドを捨てれば、絶対道は開かれるわ」と応援する。“開かれる”でも間違ひといふ訳ではないが、普通そこは“道は開ける”の方が自然ではなからうか。


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 「女子寮の好色親爺 屋根裏の覗き穴」(2005/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:山内大輔/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:小川満/制作協力:フィルムハウス/助監督:竹洞哲也/監督助手:安達守・伊藤祐太・ポポ/撮影助手:織田猛/照明助手:八木徹/出演:美咲ゆりあ・瀬戸恵子・華沢レモン・坂入正三・サーモン鮭山・柳之内たくま)。
 在りし日の今井家、幸子(美咲)が夕食にハート型のハンバーグを焼く。焼き上がらぬ内に、夫の武(サーモン)帰宅。武は無言のまま、手篭めにでもするかのやうに有無もいはせず幸子を抱く。妻からのキスの求めにも応じない武の姿に、控へ目ながら意図を明確に感じさせる演出が見受けられる。翌日、逃げるやうに家を出る武に被さる幸子のモノローグ「それが夫との、最後の夜でした」。武は部下のOLと駆け落ちし、幸子を捨てたのだ。
 現在、幸子は小金井製菓の製菓工場に勤め、女子寮に住んでゐた。他に寮生は性質の悪い彼氏・良樹(柳之内)に貢いでゐるリカ(華沢)と、まるで周囲を憚らぬ大声を上げてのオナニー三昧に狂ふルミ子(瀬戸)。管理人はエロ本とアダルトビデオに散らかり倒した部屋に住む、満足に日常会話もままならず何でこんな男が女子寮管理人の座に納まれたのだか、てんで判らない破廉恥漢・郷田五郎(坂入)。郷田は日々天井裏に忍び込むと、寮生達の艶姿に劣情を滾らせてゐた。幸子は、何時も誰かに見られてゐるかのやうな、得体の知れぬ不安感に苛まれる、現に見られてゐる訳だが。
 窺視行為がメインのモチーフとはいへ、淫獣が天井裏を散歩する類の猟奇風味は欠片も無い。リカが小遣ひ銭と引き換へに裸体を郷田に見せつけたり、デストロイヤー風のポップな目出し帽を被つた郷田がルミ子を襲ふも、返り討ちに遭ひ逆に搾り取られたり。幸子の入浴中、郷田が脱衣所に脱がれたパンティをベトベトに唾液で汚してしまつたりなんかする日常が、ジャンルに特化した判り易さで描かれた後のある夜。幸子の部屋に、姿を消した筈の武が侵入する。駆け落ちした女とは別れたといふので、やり直さうといふのである。幾ら何でも都合がいいにも程がある元夫を当然幸子は拒むも、男の力に負け再び幸子は手篭めにされかかる。そこに、例によつてその様子を天井裏から覗いてゐた郷田が、出刃と矢張り目出し帽とで武装した上で登場。郷田を強盗と勘違ひした武は、卑劣にも幸子を郷田に差し出すとそのまま逃走する。ひとまづ武撃退後、幸子は二人目の侵入者が実は管理人であつたことを看て取ると、感謝の意を込めて郷田に体を任せる。とかいふ次第で、「何時も誰かが見守つて呉れてゐる」、「さう思ふと、安心出来るんです」といふ幸子のモノローグに乗せて、三人の女達が納得詰めで自らの痴態を郷田に覗かせる日々が幕を開ける。などといふ麗しき桃色展開には、最早諸手を挙げる他はない。ルーチンなプロットと大胆不敵を斜め上に通り越した豪気な結末とを、丹念に形成(かたちな)しめた娯楽ピンクのさりげない逸品である。一点リカが良樹に喰ひ物にされてゐる、といふ関係性の扱ひに関しては詰めの甘さを見せつつ、忽せにしない細部を積み重ねることにより、無茶とすら思へる展開を綺麗に成就させる諦めを知らない頑丈な論理性には、山内大輔の職業監督としての資質が光る。
 変に印象的な、買ひ物帰りの幸子と擦れ違ふ「ブーン☆」と飛行機のオモチャで遊びながら駆け抜けて行く大きなお友達が、何者なのか不明、特には不要な意匠にしか見えなかつたが。

 今作もう一つ特筆すべきは、感情豊かに各シーンをスーパー・ポップに彩る劇伴の数々。因みに音楽、乃至は選曲のクレジットは無く、録音は何時ものシネキャビン。とりわけ轟くのが、郷田登場と同時にビヨーンボイーンと鳴り始めるジューズ・ハープ(口琴)。郷田の偏執性を、殆ど言葉を話さぬ設定につきより饒舌に表現すべく掻き鳴らされるジューズ・ハープが、やがてその昂りと同調して激弾きされると、あたかも一昔前の火曜深夜、一世、の片隅を風靡したロッテルダム・テクノを髣髴とさせる凄まじいサウンドが爆裂する。ここは見所ならぬ大いに聴き所、全く予期せぬ方向から飛んで来た剛球には震へさせられた。


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ピンク映画の感想のインデックスです。
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監督別五十音順に整理、同一監督内は製作順。
(製作年/V)は、正確にはピンクではなくVシネ。

城定秀夫
味見したい人妻たち」(2003)
新任バスガイド あいのり欲望ツアー」(2004/V)
19 NINETEEN 女子大生 殺人レポート」(2005/V)
新任女教師 二人だけの教育実習」(2006/V)
妖女伝説セイレーンX 魔性の誘惑」(2008/厳密にはピンクではない)
デコトラ☆ギャル奈美」(2008/V)
淫乱看護師」(2008/城定夫名義/V)
18倫 アイドルを探せ!」(2009/V)
デコトラ☆ギャル奈美 爆走!夜露死苦編」(2010/V)
懺悔-松岡真知子の秘密-」(2010/V)
人妻セカンドバージン 私を襲つて下さい」(2013)
桃木屋旅館騒動記」(2014/城定夫名義)
わるいをんな」(2015/城定夫名義)
悦楽交差点 オンナの裏に出会ふとき」(2015)
汗ばむ美乳妻 夫に背いた昼下がり」(2016)
痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016)
世界で一番美しいメス豚ちやん」(2018)
キモハラ課長 ムラムラおつぴろげ」(2021)

白井伸明
女高生“スケバン” SEX暴力」(昭和48/ロマンポルノ)
外人妻」(昭和48/ロマンポルノ)
信州シコシコ節 ♨芸者VSお座敷ストリッパー」(昭和50/ロマンポルノ)
発禁 肉蒲団」(昭和50/ロマンポルノ)
《秘》肉体調教師」(昭和53/ロマンポルノ)

白鳥信一
トルコ風呂《秘》外伝 尼僧極楽」(昭和50/ロマンポルノ)
幼な妻 絶叫!!」(昭和51/ロマンポルノ)
女教師 秘密」(昭和53/ロマンポルノ)
をさな妻」(昭和55/ロマンポルノ)

菅沼隆
雨音を聴く魚“をんな”たち」(2000/元題:『見られた情事 ズブ濡れの恥態』)

杉浦昭嘉
淫気妻 つまみ喰ひ」(1998)
女子大生 朝まで抱いて」(1999)
人妻淫らな情欲」(2000)
愛人・人妻 ふしだらな性癖」(2000)
人妻催眠 濡れつぼみ」(2001)
不倫妻たちの週末」(2002)
独身OL 欲しくて、濡れて」(2002)
欲情教師 狂ひ抜き」(2003/旧題:『教へ子と教師 いたづら秘め恥ぢめ』)
奴隷性愛 私のおもちや」(2003)
出会ひ系不倫 堕ちた人妻たち」(2004)
こつてり奥さん 夫の弟もくはへて」(2004)
ラブホテル 朝まで生だし」(2005)

すずきじゅんいち
女教師狩り」(昭和57/鈴木潤一名義/ロマンポルノ)
令嬢肉奴隷」(昭和60/ロマンポルノ)
偏差値 H倶楽部」(昭和62/買取系ロマンポルノ)
昇天旅館 ねだる若女将」(1994/旧題:『連れ込み旅館の若女将』)

鈴木敬晴(=鈴木ハル)
昼濡らす人妻」(1989/鈴木ハル名義)
発情妻 口いつぱいの欲情」(1989/鈴木ハル名義/旧題:『人妻 口いつぱいの欲情』)
欲望といふ名の痴漢電車」(1990/鈴木ハル名義)
痴漢電車 柔らかい肌」(1990)
熟女 濃密な前戯」(1990)
悶絶!快感ONANIE」(1991)
痴漢電車OL篇 愛と性欲の日々」(1991)
実写本番ONANIE」(1991)
官能団地妻」(1992/旧題:『官能団地 悶絶異常妻』)
現代猟奇事件 痴情」(1992)
本番裏快楽」(1993)
高級ソープテクニック3 快感天国」(1993)
実録・夫婦の下半身」(1993/旧題:『本番夫婦 新婚VS熟年』)

瀬川昌治
トルコ行進曲 夢の城」(昭和59/ロマンポルノ)

瀬川正仁
団鬼六 美教師地獄責め」(昭和60/ロマンポルノ)

関孝二
痴漢透明人間 PART3 わいせつ?」(昭和54)
痴漢透明人間 PARTⅣ 奥の奥まで」(昭和56)

関良平
人妻弁護士 真つ赤なざくろ」(1998/旧題:『女弁護士 強制愛撫』)
兄嫁の夜這ひ すすり泣く三十七歳」(2000/旧題:『三十路兄嫁 夜這ひ狂ひ』)
わいせつ女獣」(2002)

関本郁夫
団鬼六 縄責め」(昭和59/ロマンポルノ)
徳川の女帝 大奥」(昭和63/ロッポニカ)

世志男
四畳半革命 白夜に死す」(2008/ほぼ一般映画)

瀬々敬久
課外授業 暴行」(1989)
痴漢電車 いけない妻たち」(1992)
好色エロ坊主 未亡人 初七日の悶え」(1993)
終はらないセックス」(1995)
赫い情事」(1996)
黒い下着の女 雷魚」(1997)
汚れた女“マリア”」(1998)
アナーキー・インじやぱんすけ」(1999)
Tokyo×Erotica」(2001/『トーキョー×エロティカ 痺れる快楽』の一般映画版?)
肌の隙間」(2004)と、2.0版
サンクチュアリ」(2005/ほぼ一般映画)
刺青~堕ちた女郎蜘蛛~」(2006/ほぼ一般映画)

曽根中生
昭和をんなみち 裸性門」(昭和48/ロマンポルノ)
ためいき」(昭和48/ロマンポルノ)
女高生100人 《秘》モーテル白書」(昭和50/ロマンポルノ)
わたしのSEX白書 絶頂度」(昭和51/ロマンポルノ)
白昼の女狩り」(昭和59/ロマンポルノ)

園子温
性戯の達人 女体壺さぐり」(1999~2000)


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 「獣になつた人妻」(2008/製作・配給:新東宝映画/監督:佐藤吏/脚本:小川隆史・佐藤吏/企画:福俵満/プロデューサー:深町章/撮影:飯岡聖英/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:金沢勇大/監督助手:桑島岳大/撮影助手:海津真也・河戸浩一郎/編集助手:鷹野朋子/応援:田中康文/スチール:津田一郎/タイミング:安斉公一/現像:東映ラボ・テック/協力:佐藤選人・清水正二・佐々木基子・吉行由実・川瀬陽太・CLUB リッチ/出演:友田真希、結城リナ、夏井亜美、那波隆史、神崎純一、マイケル・アーノルド、岡田智宏、ほたる、千葉尚之)。出演者中、岡田智宏とほたる(=葉月螢)は本篇クレジットのみ。
 目覚めたチンピラの英夫(千葉)は、傍らに眠るミホ(夏井)の姿に頭を抱へる。前夜、急に出張る破目になつた兄貴分・順(神崎純一?>後述する)の情婦・ミホを、英夫は一晩預かることに。順からは当然の如く固く釘を刺されてゐたにも関らず、股の緩いミホの誘惑にホイホイ応じ、英夫は兄貴分の女に手をつけてしまつたのだ。そこに順登場、一悶着あつた後(のち)、落し前として英夫は翌日までに十万円持つて来るやう厳命される。十万ぽつちかとミホは臍を曲げる端金ではあれ、オケラの英夫には、用意出来るか出来ないかギリギリの金額であつた。早速金策に飛び出さうとした英夫を、「待て」と順が呼び止めたところでタイトル・イン。
 順にミホとのセックスを見せつけられつつ、英夫は街に出る。金貸し(佐藤選人)からはこれ以上借りられず、なけなしの持ち金で飛び込んだパチンコには矢張り負ける。仕方なく入つた日曜のみ天丼を出す食堂で、英夫が料理に髪の毛が入つてゐたと因縁をつけようとすると、スキンヘッドの大将(田中康文)が出て来る始末。とその時、英夫のほかに一人客のさういふ店には不釣合ひな令夫人が、ドサクサに紛れ食ひ逃げする。後を追つた英夫が訳アリ風の人妻・たかこ(友田)と合流すると、たかこは英夫に、自分の要求を聞いて呉れたら百万円あげると持ちかける。そのまゝ英夫は別荘に招かれ、たかこ自身の女体も御馳走になる。本格的な主演作を観るのは初めての友田真希は、濡れ場には確かに艶があるが、素面の芝居には少々貧相さも感じた。ポスターに載る名前に動員力があるといふならば、それも又よし。棚から落ちて来た牡丹餅に、英夫は俄かに驚喜する。社長令嬢のたかこは婿養子・近藤(那波)と結婚するも、父親の死去後、近藤は秘書のまさみ(結城)との浮気も大つぴらに、会社の経営も遣りたい放題。たかこはそんな夫に匙を投げ、家出して来たものだつた。英夫にそんな身の上を話してゐる内に、たかこは変に勢ひづく。近藤に自ら電話をかけると、英夫を犯人役に身代金一千万の偽装誘拐を仕組む。急に大きくなつた話に動揺しながらも、英夫は更に増した、順に十万渡した残りの自らの取り分の皮算用に胸躍らせる。ところがそんな英夫に、近藤はたかこを殺して呉れたら死体と引き換へに一億出すと妻の殺害を依頼する。オフ・ビートの冷血漢といふ近藤の役柄には、痛痒を感じさせず、といふかより直截には演技力の不足に頭を抱へさせられるでなく、与へられた役にフィットする那波隆史を初めて見たやうな気がする。
 明日までに工面しなくてはならない金は十万。そんな英夫に転がり込んで来る金は、百万から一千万、一千万から一億へととんとん拍子にグレード・アップ。偽装誘拐や殺人が絡んで来るとはいへ、犯罪映画といつた硬質な部類の代物ではなく、間抜けなチンピラが勝手に転がる状況に翻弄される、ブラックな風味もあるものの気の利いたコメディ基調の佳品である。
 近藤が一億でたかこ殺害を英夫に依頼するところまでは、抜群によく出来てゐた。松浦祐也が自閉的な悪ふざけに終始する中、硬軟自在の活躍でピンク若手男優部トップの座に躍り出た感も強い千葉尚之は、小気味良い展開を上滑らない軽やかさで更に加速する。誰の手による仕事なのかクレジットからは拾ひ切れなかつた、英夫の皮算用をコミカルにそれぞれ一枚絵で表現する今時ポップなイラストも、クオリティとしては十分で効果的に機能してゐる。とはいへここからが、残念ながら些か以上に弱い。所詮は六十分(前後)といふピンク映画として初期設定の尺の限界に阻まれたか、以降の展開が少々薄い。元々少ない残り尺が更に挿み込まれる濡れ場に削られ、折角魅力的に完成した物語を、更に膨らませる一手二手に欠いてゐる。加へてその残り尺を削る濡れ場に関しても、二段階といふ構へは買へるがたかこの心変りにより、友田真希の裸を見せられなかつたといふのは明白な映画の設計ミスではないか。その分クール・ビューティーの王道を驀進する、結城リナはお腹一杯に満喫出来るといへばさうもいへるのだが。起承転結でいふと転部までは娯楽ピンクとして屈指の完成度ともいへ、最終的な仕上げには成功を果たしてゐるとは必ずしもいひかねる、恐らくは2008年最も惜しい一作。たかこの別荘を追ひ出された英夫が、ションボリと自販機のチャリ銭を漁つたり賽銭箱を突いてみたりなんかするシケたシークエンスは、いつそ丸々要らないともいへるのではないか。別荘を放り出されてからの英夫は、主人公の筈ながら本筋の流れからはまるで蚊帳の外で、なほかつ何も出来てゐない。
 とりあへずデカい白人ではあるマイケル・アーノルドは、近藤子飼ひの運転手、兼始末屋のスティーブ。流暢な日本語が、本人のものか日本人の別人によるアテレコなのかは不明。国沢実を全体的に一回り小柄にしたやうな感じの、最終的に物語の鍵を、握らされるホームレス役も誰なのか不明。岡田智宏とほたるは、シティ・ホテルに寝起きの近藤―とまさみ―を急襲する捜査官。ほたるが手にした令状は、出先に捜索令状といふのでなければ、いきなり逮捕令状なのか?

 何故かポスター、本篇クレジットとも神崎純一とある英夫の兄貴分・順役は、(多分)直近のピンク出演作としては「紅姉妹」(2002/監督:団鬼六/PINK‐Xプロジェクト第四弾)が挙げられるであらう、漫才コンビせーじ・けーすけのけーすけである。


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