真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「トルコ風呂《秘》外伝 尼僧極楽」(昭和50/製作:日活株式会社/監督:白鳥信一/脚本:松岡清治・山崎忠昭/プロデューサー:樋口弘美/撮影:畠中照夫/照明:高島正博/録音:秋野能伸/美術:菊川芳江/編集:井上親弥/音楽:奥沢散策/助監督:桑山朝夫/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作担当者:高橋信宏/出演:丘奈保美・二條朱美・田中筆子・粟津號・南ユキ・信太且久・浜口竜哉・島村謙次・谷文太・谷口えり子・森みどり・神章子・言問季里子・北上忠行・桂小かん・有田高志・岡部節雄・萩原実次郎・加納千嘉・菊田香/民謡指導:紀原幽山/機織指導:奥沢慶子)。出演者中、谷口えり子がポスターには谷口エリ子、北上忠行以降は本篇クレジットのみ。各種資料に見られる企画の栗林茂を、例によつて本クレは素通りする。最後にクレジットがスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 警邏する巡査(桂)の背中越しに繁華街、日本で三十指ぐらゐには入る和服デザイナー・酒井新一(浜口)と、その日二十五年ぶりの再会を果たした新潟の農協役員・唐沢九郎(粟津)が、尼寺トルコへの道を巡査に尋ねる。普通に答へかけて「バカタレ、儂やポン引きぢやねえぞ」、桂小かんの鮮やかなノリツッコミが笑かせる。兎も角、“不許葷酒入山門”の“不”の字がペケで消してある、尼寺トルコの表にタイトル・イン。アバンで目を引くのが小ネタが効いてゐるのと、時代の活気を映したギラびやかなネオンが麗しい。
 多分加納千嘉のフロントを経て、唐沢は秋海尼(言問)を指名、お任せにした酒井は白蓮尼(南)と対する。ところが、あるいは当然。尼寺トルコといつて、嬢はヅラを被つた今でいふコスプレ。ヅラを取り楽になつた白蓮尼の、捌けたか職業倫理を欠いたフランクぶりに酒井が拗ね始め、実に小一時間、要は尺の大半を占める長い長い長い回想に突入する。
 配役残り信太且久が、酒井の高校生ver.。北上忠行は、三人で新一の筆卸に女郎屋「御宿だるまや」の敷居を跨ぐ、唐沢の兄貴分・谷安吉、カッチョいいリーゼントがトレードマーク。消去法で菊田香が、だるまやの遣手婆。森みどり(a.k.a.小森道子)は尼の分際で、だるまやで客(不明)を取る紅梅尼。有田高志・岡部節雄・萩原実次郎の三人を特定出来ず、加へて見切れる頭数からすると、最低でも六人分名前が足らない。田中筆子は、新一の祖母・タネ。神章子は、新一に想ひを寄せる高田ミサ子、後々酒井。谷口えり子は越後松崎駅の表で何時でも誰かを待つてゐる、白痴の紀子。唐沢が新一に曰く、「この村で紀子とヤッてねえのはおめえだけ」。谷文太は人間ピラミッド式に、新一が紀子相手に筆卸させられさうになる場に割つて入る海老沼三次、手刀で石を割る凄腕。そして丘奈保美が、放逐された紅梅尼の代りに寂揮院の庵主となる春雪尼。二條朱美は春雪尼のム所仲間・村田洋子、百合の花を咲かせる。島村謙次はミサ子の父で、村長の用作。洋子が外堀を埋め、用作が手配した新庵主の履歴調査で本丸を落とす、春雪の過去。雪丸の名で芸者であつた春雪は、海老沼と不義を働く。そのことに激怒、春雪の眼前海老沼の棹と舌をバーナーで焼く壮絶なリンチを命じた亭主兼、海老沼目線では親分の香具師(も不明)を、春雪は殺害したものだつた。その件、海老沼の上半身を押さへてゐる乾分が恐らく、ノンクレジットの小見山玉樹。前田有楽の消滅もあり、コミタマるのも何気にほぼ半年空いた
 看板を半分豪ッ快に偽る、白鳥信一昭和50年第二作。本筋は尼寺トルコの不誠実に臍を曲げた酒井が振り返る、少年時代の尼僧との甘美と苦さの同居した思ひ出。即ち、外伝もへつたくれもあつたものではない、トルコ風呂殆ど関係ない。そもそも、トルコと尼の二題噺に途方もない無理があるといつてしまへばそれまでで、となるとここは寧ろ、そのアクロバットに果敢に挑戦したブレイブなり苦心の策をこそ、讃へるべきであるのやも知れないが。漠然と過ごしてゐた思春期から、かんだ何だの末新一が一皮剝けるに至る物語は綺麗な展開ながら、いい大人が観る娯楽映画にしては如何せん非力さは否み難く、いはゆるゴムマリのやうな弾力を感じさせる、丘奈保美のダイナマイトなオッパイにギッンギンに攻め込む覇気も、特にも何も窺へない。正味な話アバンが一番猥雑に弾けてゐた気がしなくもない、よくいへばお上品な一作。漫然としたロングを劇伴の力で無理から締め括る、ラストがある意味象徴的。


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