真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「外人妻」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:白井伸明/脚本:豊島耕次/プロデューサー:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:長橋正直/照明:高島利隆/編集:辻井正則/音楽:世田ノボル/助監督:上垣保朗/色彩計測:仁村秀信/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:サラ・バーネット、丘奈保美、吉田潔、木夏衛、薊千露、堀弘一、堺美紀子、島村謙次、橘田良江、北上忠行、トニー・F・スコード)。出演者中、橘田良江とトニー・F・スコードは本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 ジャンボ機の着陸ショットから、空港内をゆつくりとカメラを回す。足元と胸の谷間を抜いて、よく見ると五角形のグラサンをかけたアメリカ産の主演女優。ポーターにチップも寄こさずタクシーに乗り込んだマーサ・ジーン(サラ)が、セタガヤーと行き先を告げタイトル・イン。クレジット明けは、「茶道教授 家元 三村玄斉」の表札が掲げられた結構なお屋敷。とはいへ、劇中欠片も出て来ない点から窺ふに、どうやら玄斉先生は泉下の御様子。呼鈴の音に、玄斉の多分未亡人・しげ(堺)に促された女中のサユリ(薊)が応対すると、現れたのは警察官(北上)。三村邸を訪ねたいやうだが、殆ど日本語が話せないマーサを苦労して連れて来たのだといふ。“若先生”ことしげの息子・久男が留学中にとつた弟子だらうとしげとサユリが適当に納得する一方、当の久男(吉田)はといふと、ノンアポのマーサ来日を当然知らず、弟子に手をつけた細川あけみ(丘)と裏口からこつそり忍び込まうとしてゐた。ところで若先生の気配を―無意識裏に―察知するや、サユリが脊髄で折り返して臭い屁を放(ひ)る正しくクソみたいな小ネタは、序盤執拗も通り越した勢ひで乱打される割に、中盤以降はスカッと等閑視される。正直なところ、サユリが屁を放り倒す時点で臍は曲がつた、あるいは匙を投げた。
 配役残り、庄司三郎の型式を仮にMS-06とすると、私見では06Rに相当する木夏衛は、久男があけみを連れよく行つてゐた、レタリングに凝り過ぎて看板の店名が読めないバーのマスター・花田二郎、堀弘一がボーイの川本。今回見切つた木夏衛最大の弱点が、この人に介錯させると絡みがエロくならない。島村謙次はバーの常連客・黒木で、橘田良江は黒木が同伴する偽外人・エリザベス、何処からどう見ても単なるヅカメイクの日本人。ところで木夏衛と島村謙次の組み合はせとなると、今作の三週間後に封切られた「必殺色仕掛け」(監督:藤井克彦/脚本:高田純/主演:二條朱実)に登場する、棹で渡世を送る奥野三兄弟の次兄・慶次郎と長兄・沢太郎。更に薊千露は奥野三兄弟と激突する名器三人娘の一角・数の子天井のおぬきに、堺美紀子が女親分・血桜のお満。馴染の面子で大山を積もらせる、量産型娯楽映画らしさが清々しい。コミタマが出て来ないと画竜点睛を欠いた気がするのは、多分当サイトがどうかしてる。トニー・F・スコードは、マーサを追ひ来日した、アメリカに置いて来た元カレのヘンリー・スミス。ヘンリーに抱かれたマーサは一旦三村邸を放逐、ある意味問題なのが、公園で消沈するマーサを慰めるピエロ?役で、ノンクレジットで飛び込んで来る高山千草。メソッドは辛うじてピエロぽいものの、化粧も所作もあまりにも奇怪に不安定で、道化師といふよりは、直截に気違ひにでもしか見えない。
 映画界を退いたのちは―講師業もしてゐたやうだが―和光市議会副議長にまで上り詰めた白井伸明(2014年没)の、昭和48年第二作。しかも家人が普段から和装の一家に、アメリカ娘が逆トラトラトラを仕掛けて来る。コッテコテのホームドラマを、実はビリング頭二人しか脱がない布陣による劇伴からベタな濡れ場で繋いだ上で、戯画的な悪役投入、後半は雑な悶着が巻き起こる。ロマポに触れてしばしば思ふのが、画面―だけ―は下手に分厚い分、物語なり展開が他愛ないと、端的にその他愛なさが露呈するやうな気がする。この期に及んで、白人女の裸一点突破で腰から下に張られた琴線をウッハウハ激弾きされる訳でも別になく、それもそれでロマポなりの味なのであらうが、元来ロマポ如きシネフィルに喰はせてしまへといふ嘗めた態度の与太者につき、未だそれを嗜好するには至らず。尤も、コミタマに飛び込まれると途端に掌返すんだけどね。


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