真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢透明人間 PARTⅣ 奥の奥まで」(昭和56/製作:新東宝興業株式会社/配給:新東宝映画/監督:関孝二/企画・脚本:大門登/製作補:北村淳/撮影:塩田敦也/照明:石部肇/編集:酒井正次/助監督:都次郎/録音:東音スタジオ/効果:東芸音響/現像:東映化工/出演:堺勝朗・浦野あすか・栄雅美・長谷圭子・霧川マリ・中川夕子・青木三枝子・竹村祐佳・久須美弦・吉岡一郎・北村淳)。出演者中、北村淳(=新田栄)は本篇クレジットのみ。
 「それでは皆さん」、僅かにここでは紳士然とした堺勝朗が容器も同じマル秘透明薬を服用すると、少なくとも前作は踏襲する素頓狂なSEと痙攣とともに着た服ごと透明に。「全てが透明に」、透けた自らに堺勝朗は御満悦。長谷圭子と青木三枝子がキャッキャ入る女湯に、透明の堺勝朗も浸かる画にタイトル・イン。スタッフのクレジットに並走して、堺勝朗が出したちよつかいに、長谷圭子と青木三枝子は触るな触らないで一悶着、前作とネタが全く変らない。恐らく、第一作から変らないやうな気も、何となくする。クレジットがキャストに差しかゝつたところで、シスター服の中川夕子が用を足す女子トイレに移行。以降は竹村祐佳V.S.吉岡一郎戦の傍らで煙草を吸ひながらマス、久須美弦(護同様久須美欽一の旧名義)と横臥位の栄雅美に、横から菊穴に捻じ込む二穴責めを敢行する大技のハイライトを、ある意味惜しげもなく見せる。ここで明らかとなる驚愕の事実は、再度少なくとも第三作と四作に関しては、重複する俳優部も別々の配役で登場する、パラレルなシリーズ構成。フリーダムなほどの無頓着さが、実に量産型娯楽映画的ではある。
 さて本篇、走行する電車からグーッとパンした先は公園。痩せ薬セールスマンの堺勝朗が、ダイエット器具の登場に愚痴をこぼす。こぼしてゐたかと思ふと、偶々見初めた婦警・ヨシコ(竹村)に、立小便を装ひ一物―に模した張形―を誇示、出鱈目なブレイブが清々しい。一発ヤリてえとポップにヨシコに欲情した堺勝朗は、勤務を終へたヨシコが制服のまゝ帰宅する家まで尾行。透明化したのち忍び込んでみると、恋人の吉岡一郎が先に訪ねて来てゐた。二人が営む真横でマスをかく堺勝朗の、顔射を吉岡一郎が被弾するといふのがまたしても無体なここでのオチ。ポスターに名前が見当たるPART2に於いても、相変らず吉岡一郎は酷い目に遭つてゐたのであらうか。
 配役残り浦野あすかと中川夕子は、堺勝朗がレストランにて隣り合はせる修道女・マリアとサアネ。二人が百合の花を咲かせる間柄にあるらしき風情を感知した堺勝朗は、手洗ひ挿んで二人が掃除機プレイを仕出かすサアネのアパートに突入、当然どさくさする中堺勝朗のカツローも吸はれる。地方回りのセールスに飛ばされた堺勝朗は、何処ぞの山間の観光地に。長谷圭子と青木三枝子は、何故かジョギング中の堺勝朗が、吊り橋の上から発見する矢張り百合を咲かせる女学生・ポッポとトマト、青木三枝子が画期的に女子高生に見えない点に関しては通り過ぎるべきだ。栄雅美がトマトの叔母で旅館の未亡人女将・好代で、久須美弦がその情夫・槍岡、町会議員。マル秘透明薬の存在も知らず、恐らくも何も、前作とは完全に別人である。大女の霧川マリは同じ町の三段締めの名器持ちホステス・スミコ、そして遂に登場!翌年八木沢修名義で監督デビューする、我等が無冠か無言の帝王・新田栄俳優部時代の北村淳が、スミコのヒモ・カリオ。上背はないながら骨の太さを感じさせる戦闘力の高さうなガタイで、ワイルドな美人局を好演する。
 改めて、無印「痴漢透明人間」(昭和52)、「痴漢透明人間 女・女・女 PART2」(同)、「痴漢透明人間 PART3 わいせつ?」(昭和54)と続いた人気シリーズの最終作。因みにjmdbを遡つてみたところ、関孝二には昭和43年に「透明人間エロ博士」なる一作があるらしい。意外と完璧な光学合成を駆使する痴漢透明人間に対し、果たしてこの時は如何なるインビジブル描写を用ゐたものなのか。
 物語の中身的には終始女の裸の傍らで堺勝朗がああだかうだボヤき続ける、一種の実況芸が形になつてゐなくもないとはいへ、展開は一貫して場当たり的で、中身も何も物語らしい物語は矢張り存在しない。寧ろ如何にも後に繋がりさうな一幕の切り方をしておいて、カット跨ぐと一切掠りもしないズタズタぶりが際立ちもする。ともいへ、蜂の巣を突いた力技で無理から一篇を締め括る、案外十全なクライマックスはPART3に引き続き健在。堺勝朗が姿を消す秘密に興味を抱いた好代は、呵責の素振りも見せずに客の荷物の中からマル秘透明薬を拝借。最終的には順に勝朗・カリオ・スミコ・槍岡・好代に、トマトまでもが透明に。互ひに相手が見えない上で六人の男女が入り乱れる乱交は、さう来たかと唸らされる豪快な名シークエンス。勝朗がスミコにチンコを噛まれたタイミングで、ジャーンとポップなファンファーレが鳴るや投げ込まれる“終”が、これで終るといつたら終るのだといはんばかりの、有無をいはせぬ正体不明の突破力を振り抜く。

 付記< 案の定今作もビデオ安売王のVHSジャケがへべれけで、脚本も関孝二になつてゐる。必ず何かひとつ間違へないと気が済まないのか、それとも間違へないと死ぬ魔法でもかけられてゐるのか


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