真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母狂ひ 夫、義父、息子・・・」(2001『義母の秘密 息子の匂ひ』の2008年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/音楽:レインボーサウンド/監督助手:片山昌志/撮影助手:池宮直弘/照明助手:高橋理之/効果:梅沢身知子/出演:遠藤陽子・河村栞・林由美香・浅井康博・城春樹・なかみつせいじ)。
 一人の寝室、九州に滞在する夫・鍋島義弘(なかみつ)と、愛子(遠藤)が電話で話す。愛子は後妻として義弘と結婚したものの、その途端に、義弘は単身赴任になつてしまふ。今は東京の鍋島家は愛子と、妻には先立たれた義理の父・忠夫(城)、同じく義理の息子で高三の信彦(浅井)の三人暮らし。義弘の提案でテレフォン・セックスがオッ始まり置き土産のバイブで悶える義母の姿に、信彦は秘かに熱い視線を注いでゐた。翌日、昨夜の愛子の痴態が頭から離れぬ信彦は、初めから学校はサボッてゐた彼女・芹沢沙織(河村)の部屋に忍び込む。草加煎餅のやうなオバサン顔―どんな顔だか全然伝はんねえよ―の愛子を念頭に置きつつ、信彦は沙織を抱く。かういふ御題のエクセス映画に立ち止まるのはツッコんだら負けだと頭では判つてゐるにしても、どれだけ特殊な性癖の持ち主なのかと苦笑させられずにはをれない。信彦が帰宅したところ、慌てて愛子が飛び出して来た。忠夫が、御上の厄介になつたといふのだ。忠夫は、魔が差した電車痴漢を仕出かしてゐた。愛子に問ひ質された忠夫はションボリと退職後の空白感と、こんな自分はもう女に相手にされることもないだらう、とかいふ絶望的な寂寞とを吐露する。そんな義父にコロッと情に絆(ほだ)された愛子は、観音様を見せるだけならと忠夫に体を開く約束をする。その夜、勿論何だかんだと最終的には一通り一戦交へてのける義母と祖父の姿を相変らず覗く信彦は、更なる愛子に対しての邪な恋情を募らせる。
 忠夫に続き今度は信彦が、校内での喫煙が見付かり停学処分になる。愛子に問ひ質された信彦は・・・・・ええと、

 以下略でいいかしら?

 馬鹿馬鹿し過ぎる展開が、紙一重を突破していつそ眩くすら見える一作。別の映画で簡単に譬へると、御大仕事よりはマシな程度、少しだけ。しかもこの二作、同年の映画かよ、挙句に二十一世紀の。かつて夢見られた筈の未来は、果たして何処に消えたのか。同窓会に家を空けた愛子の、失踪勘違ひ騒動なんぞこの際蛇足だ。締めの濡れ場は、再び義弘とのテレフォン・セックス。実は傍らに不倫相手の部下・工藤夏海(林)を侍らせ、愛人との実地セックスを楽しみながら大胆にも妻との電話を取る義弘に対し、愛子は愛子で、信彦との擬似近親相姦を想起しバイブに狂ふ。互ひに果てたのち、夫から何を想ひ致してゐたのか問はれた愛子が、「ヒ・ミ・ツ☆」と凶暴に愛らしくはない愛嬌を振り撒いて呉れやがるオーラスには、最早完敗を認める以外に何が許されようか。今作に対して唯一残された積極的なアプローチの途としては、史上最強のピンク五番打者・林由美香が画面上に姿を見せるや否や、そこだけは映画が締まる幾つかの登場場面を、懐かしく堪能するほかあるまい。


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