真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性戯の達人 女体壺さぐり」(1999~2000/製作:BAD FILM コネクション/配給:大蔵映画/監督・脚本:園子温/撮影:鈴木一博/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/スチール:木下とくひろ/現像:東映化工/助監:西川裕・小原康宏/車両部:大久保ひろし/撮影助手:山本宙/衣装協力:山本凡子・チョコレートチワワたまき/出演:夢乃・鈴木敦子・桐生アゲハ・石川雄也・サンダー杉山・澤田由紀子・ささだるみ・谷内ひでき・松本健太郎・津留謙太郎・小林力・北村真吾・神崎優)。“車両部 大久保ひろし”の上にポカーンと載る及川信一は、音楽担当か?
 タイトル開巻、後ろでライト―あるんだ―が点灯すると、馬鹿デカいメガネを外した鈴木敦子のモノローグ「私が、ナミエ師匠のお世話になりだしてから一年が、経ちました」。何時も活気づく女流陶芸家・ナミエ(夢乃/a.k.a.桜居加奈)の工房では、ナミエが恍惚と轆轤(ろくろ)を回す傍ら、弟子の鈴木敦子(役名不肖)・ユウヤ(石川)・トモミ(桐生)が修行に励む。ナミエが十七歳の時に弟子入りし、現在は夫で病床に伏せるテツヤ(園)の訓へといふのが、「昼間は壺を、夜は肉を愛せ」。要は昼夜を問はず、肉壺を愛せば事済むのでは?といふ方向には話は膨らまない。テツヤが不能ゆゑ、「抱いて、そして心を鎮めて」。ストレート過ぎるモーションでオッ始まるナミエV.S.ユウヤ戦にアテられた鈴木敦子とトモミが、トッ捕まへたどう転んでも農夫には見えない二人連れ(演出部動員?)を相手にガンガン騎乗する序盤のエクストリームを経て、尺が中盤戦に差しかゝるや、「女流陶芸家フェスティバル」開催。グダグダの始終に忘れかねないものの、一時間を綺麗に三等分した序・中・終盤の三部構成は意外と手堅い。一旦はナミエの壺が集めた注目は、忽ち別の壺に移る。そこにシースルーを通り越した破廉恥衣装で飛び込んでは、最終的にはトップレスで踊り狂ふ神崎優が、その壺の作り主・ヒカル。ヒカルの殆ど白痴のやうな造形は、グルッと一周して清々しい。テツヤは病躯を押し、創作の秘密を探るべくヒカルの工房に潜入、今風にいふとスネークを敢行する。
 配役残り、澤田由紀子は、マイク片手に陶芸フェスをリポートする立ち位置のよく判らない人。谷内ひできから北村真吾までは、多分フェス審査員要員、女が一人含まれるのは衣装部?サンダー杉山はフェス審査員兼、ナミエを狙ふテツヤのお師匠。笹田留美の平仮名名義であるささだるみが、ナミエに弟子入りを志願しておいて、直ぐにヒカルに乗り換へる新人陶芸家のアミ。声がどうしても、相沢知美のアテレコに聞こえる。
 二年前に薔薇族「男痕 -THE MAN-」を一本置いて、今をときめく園子温ピンク唯一作。個人的には、園子温は確か「自殺サークル」(2002)しか観てゐない。目下一般映画とは殆ど完全に関係のない生活を送るにつき、今後とも観ることはまあなからう。JCVDやセガであるならば、本国ではDVDストレートの物件であつても自動的に出撃するが。そんなこんなで今作、園子温の名前に眼鏡に着色されることもなければ、その手法など知つたことではない節穴にとつては、殊更に何事か仕出かすでもなく、粒の小さなシンプルに至らない低予算裸映画に過ぎない。実は今作は一度故福岡オークラで観てゐるのだが、その際に唯一残つた印象が矢張り最大の大穴で、兎にも角にも屋内の画が絶望的に暗い。フェス会場の照明の欠如は暗いを通り越した最早闇で、恐らく物件的には同一の両工房に於いては、ヒカルの裸と、ナミエの表情が矢張り影に沈む。鈴木敦子以降、夢乃と石川雄也の後方でも随時点火するライトはどうした、壊れたのか?下手糞な芝居で無闇に前に出ては、濡れ場の恩恵にもチャッカリ与る園子温の我の強さは、かういふのが浮世で成功する人間の条件なのかと勘繰るに、微笑ましくなくもない。有象無象感が迸る自主映画臭が甚だしい、その他勢の貧しさも地味に響く。尤も、ヒカルのパイズリ壺にナミエはフェラ壺で対抗、ところが最終的にはアミがカッ浚つて行く馬鹿馬鹿しい流れ自体は、案外悪くない。いつそ脚本だけ関根和美にでも渡してゐれば、不必要な臭味の抜けた普通に温目のコメディとして、緩やかに成立し得たのではないかとも思へる。


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