◉「ナンデスカ」

2019年5月16日(木)
◉「ナンデスカ」

腰痛からようやく復帰しかけた妻が今朝は肩が痛いという。何年か前に肩が激痛に襲われ、痛みをこらえて近所の整形外科に行ったら典型的な五十肩だと言われた。帰宅して「五十肩だって言われた」と言ったら「あら五十だなんてサバ読んじゃって」と妻が笑う。そういう問題じゃないだろうと腹を立てたら激痛が走った。

痛そうに首の付け根を抑えた妻が「わたしも五十肩じゃないかしら」と言う。「あら五十だなんてサバ読んじゃって」と同じことを言うのも芸がないので、「五十肩はそんな生易しい痛みじゃないよ」と言ってみた。これはまずい。他人の痛みの度合いはわからない。比べられないものを比べてはいけない。そう言われてなおさら増す痛みもあるだろう。

幼い頃ヘルニアの手術を受けたことがある。手術室で先生が「手術は痛いと思うか」と聞くので「思う」と答えたら、赤チンでお腹に「いたくない」と書かれてしまい、看護婦がそれを見て笑っていた。恥ずかしいやら馬鹿馬鹿しいやらで痛みの記憶はない。ああいうのを名医と言うのだろう。「腰が痛まない姿勢を探して寝ていたから、首や肩に負担がかかったのかもしれないよ」と言ってみた。赤チンで肩に「いたくない」と書いてやるわけにもいかないので、痛み止めを飲みスミルスチックを塗ってなるべく動かすよう言っておいた。

小さな出版社の社長が倒れてリハビリ入院中になっている。その間も雑誌2冊発行と単行本の制作は続いているので、友人たちらしき人々がやってきて手伝っている。70 歳すぎて現役を退いた人たちだけれど、皆編集者として人生を勤め上げた人たちなので手際がよい。「ぜんぜんわからん」「まいった」と言いながら、困惑しつつ活性化しており、昭和の時代は当たり前だった地域総出の葬祭を思い出した。引越しといえば業者に頼まず友人総出で鉢巻しめて手伝っていた時代である。入院中の社長から SOS 電話があったので出かけて行き、初めて会う人たちと打ち合わせをしてきた。

打ち合わせ帰り 1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm

帰りは坂を上って本郷通りまで歩き、大好きな堀江米店のぼた餅を買った。仕事場に戻ったら児童書出版社の女性編集者が来て妻と打ち合わせ中だったのでお茶菓子に提供した。

打ち合わせ帰りの日本聖公会東京聖テモテ教会 1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm

連休後に鳥取で一人暮らししているお母さんのもとに帰省していた女性編集者からクール宅急便が届いていた。開けてみたら海老も貝も生きて動いており、動くたびに妻が「ギャッ」と悲鳴をあげている。こういう状態で山陰の海産物が届く時代になった。早く成仏させないと可哀想なので、仕事を早仕舞いして相撲中継を見ながら家庭内海鮮居酒屋を開店した。

台所に立つ妻に声をかけると、「ナンデスカ」と腰と首が痛いので全身が回転して振り向き、また別の種類のロボットになっている。

(2019/05/16 記)

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◉そして老人になる 2

2019年5月15日(水)
◉そして老人になる 2

五月になり新しいコンピュータで仕事を始めたら、仕事ごとに細かな不都合が出て、見つかるたびに足りないソフトや欧文フォントの再インストールをしている。

仕事ではないけれど、妻が趣味で手作りしている 20 弁オルガニートの 2019 年夏版の音楽 CD を焼き始める。新しいコンピュータにしていろいろ管理していた音楽データの不都合が見つかったので、午後はその復旧作業で潰れてしまった。環境の変化で発生したように思えるけれど、もともとあった不具合が露見しただけかもしれない。いずれにせよあれこれ忙しい。

雑誌 Bricolage(ブリコラージュ)の最新号が発売になって読者に届いたらしい。関係者への献本は遅れるのでまだ手元にないけれど、読者からの感想は届き始めた。親たちの看取りが終わり老人ホーム訪問がなくなったので前号から連載を新シリーズにした。初回原稿は講談社の編集者に褒められてちょっと嬉しい。

「そして老人になる」と題した連載2本目には、お世話になった出版社社長の思い出話を書いた。掲載号が発売になったので転載しておく。雑誌 Bricolage は定期購読主体なので書店売りされていないけれど、池袋ジュンク堂では二つのフロアで棚おき販売されている。ありがたいことである。

   ***

Bricolage 260 号 表紙写真撮影:川上哲也

装丁者のひとりごと
そして老人になる 2
「死をポケットに入れて」

 半還暦30歳のとき息苦しい会社勤めを辞めて自由業になった。そうなるのを待ちかねたように近づいてきた人がいる。「ねぇ、北海道社協へ講演に行くんだって? だったらNさんとTさんという人をを訪ねてごらん。面白いから」と、不思議な笑みを浮かべて近づいてきたのが福祉系出版社社長のTさんだった。
 「会った、面白かった、良くしてくれた」と言ったら「ねぇ、こんど三好っていう面白い理学療法士がいるから会ってみない?」と言われ、「ねぇ、これからはコンピュータで仕事をする時代になるから、みんなでマックを買わない?」と誘われ、「ねぇ、芸をもってる人間が集まるとどれだけ凄いか見せられたら人生勝ちいくさだぜ!」と煽てられ、たくさん仕事をし、たくさん遊び、たくさん飲み、たくさん笑っているうちに、結局還暦過ぎるまで楽しく仕事しながら食えてしまった。
 Tさんといえば作家で詩人だったヘンリー・チャールズ・ブコウスキーを思い出す。70歳にして愛用のタイプライターからマックに乗り替え、老いと死について書きまくり、嬉々としてキーボードを叩きながら1994年に死んだ。最後の三年間の日記は『死をポケットに入れて』と題して河出書房から文庫本化されている。
 大宮駅の宇都宮線ホームから出る八王子行きの電車に乗ったら高架を走るので秩父山地の山並みが見えて美しい。その電車に乗り、武蔵野原にポツンとある小さな病院に入院したTさんを見舞ったのは2012年12月8日だった。三階の入院病棟に行ったら、ベッドの上にちょこんと座って本を読んでいる姿が、病院にサイズを合わせたように小さく見えた。
 病気のせいでかなり朦朧としていると聞いていたので心配したが、本から目を上げて嬉しそうに笑い、ベッドを降りて廊下に置かれた面会テーブルにいざなう。よろよろと足もとがおぼつかないので手を差し出したら「大丈夫」と言う。
 親たちに付き添ってみたら、病院は老人にとって、選ぶのではなく流れ着く場所だと思うことが多かった。母も義父母も漂流の果てに思いがけない病院へ流れ着いた。Tさんに、どうしてこの病院に来たのか、選んで来たのかと聞いたら、やはり思いがけずここに流れ着いたと言う。
 「この病院、おっもしれぇんだ」と唾を飛ばしながら楽しそうに笑うので「病院は島のようなもので、面白がれれば面白いよね」と、われながら意味不明のことを言ったら「そうそう」と嬉しそうに笑う。人は病気になったら椰子の実のように名も知れぬ遠き島に流れ着くけれど、流れ着いたら島の大きさに合わせた暮らしがあるんだよね、という小さな愉しみ方のことを話したかったのだけれど、ただ愉快そうに笑うので通じたかどうかはわからない。

 むさしのは月の入るべき山もなし
 草より出でて草にこそ入れ

と歌われたように、武蔵野原の夕暮れは寂しい。窓の外を見たら急速に夕暮れが近づいてきたので、「また来るね」と言ったら「おれ死んじゃうのかなぁ」とポツリと言う。
 不意をつかれたのでなんと答えたか記憶にない。Tさんとは本の貸し借りをして感想を述べ会うのが楽しかった。「Tさん、気にいると思うから読んでみて」と言ってブコウスキーも貸してあったのだけれど、感想を聞く前にポケットに入れたまま他界されてしまった。(Bricolage 260 号より)

   ***

夜は一杯やりながら録画しておいた NHK クラシック倶楽部でロナルド・ブラウティハム フォルテピアノ・リサイタルを観た。来年ベートーベンはめでたく 250 歳になり、56 歳で他界したのちも音楽の中で長生きしている。フォルテピアノで聴く「悲愴」は素晴らしい。

(2019/05/15 記)

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◉塩鰹(正月魚=しょうがつよ)

2019年5月14日(火)
◉塩鰹(正月魚=しょうがつよ)

今朝は朝食に、何年振りかも思い出せないくらい久しぶりに握り飯を作った。ギックリ腰のロボット歩き人間が片手でも食べられるようにという希望を込めた。

塩鰹茶漬けパッケージと栞。

郷里清水で一昨年他界した友人礒谷氏が西伊豆田子にルーツのある人だったので、暮れになると塩鰹(正月魚=しょうがつよ)をくれた。それを食べやすいふりかけ状にしたものが静岡駅で売られていたのを買ってきたので、ご飯に混ぜて握ってみた。

『聞き書 静岡の食事 (日本の食生活全集) 』農文協刊。正月魚は静岡県民必携のこの本で知った。
2004 年暮れの清水で思いがけず、実物の塩鰹をいただいた時は感動した。

腰痛治療のアドバイスをくれた友人から追伸があり「知り合いの治療家曰く、痛いからと言って患部を動かさないことのほうが患部のみならずほかのところの不具合にもつながるのでさっさと痛み止めを飲んで、なるべくいつも通りに過ごすようにとのことでした」と書かれていた。いつも通りであることが平常を作っている。人も機械も平常が阻害されることで壊れる。平常の持続で騙しだまし動いているからだ。故障から学ぶことは多い。

連休中に故障して買い替えた新しいコンピュータの使い勝手を、仕事をしながら少しずつ改善している。なるべく余計なアプリを入れないようにしたい。ファインダーのサイドバーに「よく使う項目」があるけれど、ファイルではなく「よく使うフォルダ」(最近使ったフォルダ)を表示させられないものだろうかと思う。ネット検索したらアップルのディスカッションパネル上で同じ質問をしている人がいた。答えは「スマートフォルダの機能を使えばできる」というもので、「なるほど!」と目からウロコが落ちた。じっと目をつぶっていたらゴミは入らないがウロコも落ちない。スマートフォルダは検索機能つきフォルダで、検索条件を工夫すれば色々な工夫ができる。メールアプリでは昔から活用しているけれど、ファインダーでの活用も覚えておこう。

夕暮れにメールで届くニュースを読んでいたら斎田点定が「さいたともさだ」という人の名に読めた。大嘗祭に用いるコメを育てる田んぼが決まったそうで「さいでんてんてい」と読むらしい。関東地方のニュースを見ていたら那須烏山の田んぼとお百姓が映って「光栄です」と言っていたので、清水の珈琲焙煎店主の生まれ故郷であることを思い出した。早速祝賀メールを書いたら、まだ栃木県内のどこかは決まっていないという。ぜひ那須烏山に決まって欲しい。

ロボット歩きの妻が平常通り夕食作りに復帰したが、ときどき「イタタタタタ」と言ってフリーズしている。なんとか夕食のテーブルに着席できたので、気を紛らせ平常心を取り戻せるよう、録画しておいた NHK BS1「ヨウジ ヤマモト~時空を超える黒~」を見せたら痛みを忘れたように夢中になっていた。ひとりの異才がたくさんの人を食わせている。面白かった。

(2019/05/14 記)

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◉「タッタ」

2019年5月13日(月)
◉「タッタ」

午前中に新しいコンピュータが届いたので終日セッティングをした。

昼近くなって仕事場にロボット歩きの妻が現れ
「タッタ」
とひとこと言う。長野オリンピックで原田雅彦 2 本目のジャンプに送られた声援のように「立て、立て、立て、立ってくれ」という思いはあったけれど突然立ったので驚いた。寝ていた家族が起き上がるのは嬉しいもので、アテネオリンピック体操男子団体決勝、冨田洋之の着地でいえば「起き上がった家族が描く放物線は栄光への懸け橋」である。まだ本調子ではないけれど、ともかく立ってよかった。

コンピュータの方も年間契約のフォント環境移行手続きに手間どって冷や汗が出た。機種変更懸け橋の放物線は忘れないようメモした。機種変更に伴い macOS が最新の Mojave (モハベ)になったので、愛用のバックアップソフト Carbon Copy Cloner を最新版に有料バージョンアップした。

240 GB の SSD が三つあるので USB-C の外付け用透明ケースを注文した。USB-C が Thunderbolt 3 互換であることは知らなかった。Mac mini には USB-C が 4ポート、USB 3 が 2 ポートある。モニターはカテゴリー 2 の HDMI ポートがあったのでそちらに接続した。外付けハードディスク 6 台は USB-C に数珠つなぎにしたのでポートが三つ空いている。そのうち一つに SSD をつないで毎日自動でシステムのクローン・バックアップを取る。空いている USB 3 の 2TB ハードディスクがあるので繋いで Time Machine に設定する予定。

都営バス車内の停車ボタン発行箇所

清水エスパルスの試合結果を恐るおそる見たら川崎フロンターレに大敗して 17 位降格圏に後退し、ヤン・ヨンソン監督が退任発表をしていた。J1 では今季三人目になる。

大相撲五月場所が始まりマインドフルネス相撲の琴奨菊が白星発進した。十両の安美錦も令和初日が白星でめでたい。トランプ大統領が千秋楽を観戦して土俵に上がる計画があるというが本気だろうか。

夜は母校の先輩金栗四三の大河ドラマを見た。これで第 1 回東京箱根間往復大学駅伝競走の総合優勝校が東京高等師範学校であったことも少しは知られることだろう。出場はわずか四校だったけれど。

(2019/05/13 記)

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◉妙療法「さらしで固定」

2019年5月12日(日)
◉妙療法「さらしで固定」

子どものころ放って置かれたせいか一人で痛みに耐えることは得意なつもりでいた。助けを求めたいほどの激しい痛みを知らなかっただけで、三十代で体験したギックリ腰、五十代で体験した五十肩は、大のおとなでも声を上げて泣きたいほどの痛みであることを思い知った。横綱初場所の日馬富士戦で左肩付近を怪我した稀勢の里の痛みがよくわかるし、ああこれで横綱になってしまった彼の力士生命は終わったなと思った。肩付近の痛みは腰のそれをはるかにしのぐ。完治まで相当の歳月がかかった。あれは辛かった。

赤坂の出版社の女性からこの日誌を読んでメールをいただき、「さらし」を用いた、臍下(せいか)および太腿付け根あたりを固める妙療法「さらしで固定」を教えていただいた。ロボット歩きで用意してあった腰痛コルセットを試していた妻も、「イタタタ…」と呻きながら「ナルホド、ヤッパリサラシカ!」と感心していた。しっかり腰を固めるとずいぶん楽になるらしい。動画でみたら意外に簡単に巻ける。買ってこよう。近場で買うならどこだろうと検索したらヨドバシアキバでも買えるのでびっくりした。

泣きたいほどの腰痛や肩痛でも薬を飲んだ記憶がないので思いつかなかったが、それほど痛がるなら、慢性疼痛になると厄介なので痛み止めを飲ませた方が良いという助言も書き添えられていた。なるほどと納得したので夕方の外出帰りにイブプロフェン配合で早く効くと勧められた鎮痛剤を買って帰った。

また何も食べたがらないと厄介なので、コンビニで明太子のおにぎりとヨーグルトドリンクを買い、痛み止めと一緒にテーブルに置いたら「コウイウノヲカッテキテホシイト、イオウトオモッテイタノデス」と言うので「アア、ソウデスカ」と答えた。

   ***

妻の腰もさることながら、ここしばらく騙しだまし使ってきたパソコンの具合も悪い。巨大連休を利用して不調の原因を探って行ったら、もう切り分けようのない本体自身に原因を追い詰めた。ソフト的な要因の可能性を除くため、command+R を押しながら起動して macOS のクリーンインストールを試したら、インストール中に電源断と再起動がかかって「インストールニシッパイシマシタ」と、よたよた再起動したコンピュータがいう。手詰まりとなった。

わが家の大蔵大臣はただいま腰痛ロボット化しているので、新しい Mac mini をカードの使える amazon で注文した。翌日の日曜日に届くという。それなら週明けの仕事に間に合う。事後報告したら「ワカリマシタ、マタオカネガカカルトイウコトデスネ」と言っていた。

夕暮れの神田万世橋あたり SONY Cyber-shot DSC-WX300

長いこと使ってきた機種を置き換えるので、配線のインターフェイスも驚くほど変わっている。FW400 が FW800 になり Thunderbolt 2 になったあたりまでは知っていたけれど、なんともう Thunderbolt 3(USB-C)になっていて、古い機器を引き継ぐにはあれこれアダプターがいる。逆にシンプルになっているのがモニターの接続で HDMI ケーブルのカテゴリー2 が一本あれば事足りてしまう。

神田佐久間町 SONY Cyber-shot DSC-WX300

あれこれ検索して選び、店頭受け取りのネット注文をして、ヨドバシアキバまで都バスで二往復した。土曜日とはいえ異様に人出が多いので、なんだろうと車窓から見たら神田明神の祭礼であり、新天皇即位の奉祝で一段と力が入っている。

(2019/05/12 記)

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◉ロボット歩き

2019年5月11日(土)
◉ロボット歩き

妻がギックリ腰で二足歩行ロボット歩きをしている。起きるだけで辛い、病院には行きたくない、買い物にも行けない、料理ができない、食材がないし食欲もない…そういうことになっている。手詰まりである。仕方がないので午後からひとりで買い物に出た。

12時51分、赤羽中央街 SONY Cyber-shot DSC-WX300

ついでにホームセンターに寄り、切り戻し剪定をやめた桜と南天の鉢植えにやる肥料を買った。

犬や猫は歩けるし意思を表す鳴き声や仕草を持っている。それでもペットフードのパッケージを見せただけで「どれが食べたい?」と犬猫自身に選ばせるのは難しい。パッケージのイメージはペットではなく、まず飼い主の食欲を刺激するようにできている。会計待ちするスーパーのレジそばで、美味しそうな酒のつまみを見つけて買おうと手に取るとペットフードだったりする。パッケージは人の食欲を誘っている。

植木の肥料もいろいろある。わが家の桜と南天はどんな肥料を喜ぶだろうと想像してみる。肥料のパッケージも人の食欲に訴えるようにできている。やはり青緑色などではなく茶系で有機的な色合いのものが人の食欲を刺激し、可愛い松の盆栽写真も入っているのでそれに決めた。

屋外で犬猫に餌をやるのに地べたへ直置(じかおき)はしない。犬猫用の皿がなければ、ひしゃげた鍋や欠けた茶碗に入れてやる。植木の肥料を土の上に置くための容器を探したら、ちゃんとミニチュアのプラスチック笊(ざる)がある。そうかこれに入れて鉢の上に置くのだな、と思って使い方を読んだら、エサ…じゃなかった、肥料は直に置き、その上にこれをかぶせるのだという。なんと可愛い植木の肥料に憎らしいハエがたかるのを防ぐためのものだった。なるほど。愛憎が交錯している。

帰宅したらロボット歩きの妻が「オイシソウナモノハアリマシタカ」と聞くので「ナイデス」と答えた。

(2019/05/11 記)

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◉家じまい、人生じまい

2019年5月10日(金)
◉家じまい、人生じまい

親たちがいなくなったので、親たちの荷物あと片付けイコール自分たちの人生片付けになっている。親子とはそういうものだけれど、あと片づけを任せる子どもがいないので尚更だ。連休後も粛々と片づけ作業をしている。家じまい、人生じまいも兼ねている。

妻は今朝ギックリ腰をやって唸っている。もともと膝を折ってかがむことをしない人なので、腰を不用意に曲げやすい。退位された両殿下のお姿を思い出すべきである。なんど言っても性格と姿勢は直らない。

大量に粗大ゴミを捨て続けている。区の粗大ゴミ処理券を買いに行くたびに販売店のおばちゃんに「まだ足りませんか」と笑われている。笑われる回数を減らすため「親の荷物の片付けです」と言い訳し、少し多めに買ってストックした。

親の荷物片付けに便乗し、調子の悪かった仕事場のモジュール式オフィス家具のひとつを捨てることにして粗大ゴミ置き場に運んだ。壊れているのでガムテープでとめた引き出しが飛び出して難渋した。

このスチール製三段引き出しは 2011 年の大震災で破損した。激しい揺れにも耐え本棚から落下するものすらなかったのに、この引き出しだけが転倒した。重いものが取り出しやすいよう最上段に集中し、下に行くほど軽くなっていた。しかも地震発生時に最上段が引き出されてロックがかからなかった。揺れがおさまったあと妻と二人でよく引き起こせたと思う。

転倒でロック機構が壊れ、閉めても三段の引き出しツラ位置が揃わず開閉もギクシャクするようになった。運悪く上に置いてあった気に入りの写真レンズも押しつぶされて壊れた。良い機会なので処分することにし、粗大ゴミ処理 B 券 4 枚を貼った。

火災保険契約更新時に営業マンの説明を聞いていたら、どうやら引き出しも写真レンズも保険適用対象だったらしい。だが震災後も長いこと死者行方不明者の数が増え続け、終わりの見えない原発報道が続くなか、引き出しとレンズの補償申請など思い出せてもやる気がしなかったと思う。また同じことが起きてもそうだろう。だが保険はかけ続けている。

そんなことを思い出しつつ終日片づけながら仕事をした。仕事をしているパソコンの不調は、原因を切り分けて行ったら、接続ケーブルの劣化でもなく、システム起動に使っている SSD の寿命らしい。多分間違いないので新しいのを注文した。同容量のものがもう半値以下になっている。

1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm

鉢植えの小さな桜も若葉の季節を迎えた。梅雨前に枝の切り戻しをしろと言われたのだけれど、植物とはいえ生き物にハサミを入れるのは度胸がいる。ネットで調べると剪定はしないほうが良いという記事もあり、今年はこのまま肥料やりだけにする。

(2019/05/10 記)

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◉わけいかづちじんじゃ

2019年5月9日(木)
◉わけいかづちじんじゃ

清水区桜橋町の櫻珈琲が静岡県庁一階で出張販売をしているので、午後 3 時の閉店前に到着するよう調整し、編集会議前に寄ってみた。静岡県庁は久しぶりだ。珈琲をご馳走になり、編集委員への手土産を買ったり貰ったりし、南口みずの森ビルまで歩いてみた。

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翌 5 月 9 日に『あっ!朝市』を開くという青葉公園を抜けていくと青葉おでん街がある。いつも夜に客として立ち寄るので、昼間の生活風景を見ると新鮮に思う。おばちゃんが電気工事職人と談笑していた。

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青葉通りを挟んだおでん街の反対側に別雷神社という立派な社があり、なんと読むのだろうかと解説板を探したが見当たらない。神社わきにあった葵まつりのポスターに「いかづち神社」とあるので、なんだそう読むのかと思う。ともかく静岡市は歴史遺産についての掲示板が少ない。東京だとどんなしょぼい神社にも教育委員会や区が設置した解説があり、いまは寂れていても地域にはこんな歴史があったのかと学べるようになっている。

この規模の神社なら相当な歴史を経ているに違いないと思い、帰郷後調べたらやはり古い神社で、読みも「わけいかづちじんじゃ」と書いてある。地元在住者にそんな文化インフラの話をすると、きまって金に関するぼやきと、地元政治家の悪口になる。そもそも中世の資料を見ても駿河の地は争いが絶えなくて政治的に治めにくかったという。今も県知事と市長から庶民同士に至るまで悪口といさかいごとが多い。それが沈滞の根源のように見える。

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風土病なら仕方ないのでともかくとして、別雷神社脇の飲屋街はちょっと良さそうだなと思う。行政があてにならないゆえの諦観か、静岡の若者の脱力的なセンスはなかなかいい。他人事として眺めるぶんには悪くない。小商いから始めるようなことは得意だ。この土地の気候風土は人に優しい。

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静岡県男女共同参画センターあざれあ横を通ったので 1 階にある作業所の製品直売コーナーに行ったら無くなっていた。以前ここで買って大切に使った布製キーホルダーが壊れたので、同じものを買いたかったのでがっかりした。継続の一貫性がない。静岡駅南口のクリタパンでドーナツなどを買って会議室に行ったらもう編集長が来ていた。

(2019/05/09 記)

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◉蒲原へ

2019年4月9日(木)
◉蒲原へ


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戸田書店発行『季刊清水』の特集が蒲原に決まった。いまは市町村合併で静岡市清水区ということになっているけれど、蒲原、由比、興津、江尻と続く古い東海道の宿場町である。かつてこの蒲原から江尻までの海辺を田子の浦といった。亡き母は「蒲原は町並みもいいけど人柄もいい。一度歩いてごらん」と言っていたが実現できていない。50 号の由比特集では、編集会議に向かう途中、蒲原駅で降りて由比駅まで歩いてみた。期待して降り立った蒲原駅前が旧東海道の宿場町っぽくないので意外に思った記憶がある。

「素朴な質問ですけど、由比取材のときはじめて蒲原駅に降りたらちっとも宿場町らしくないのでびっくりしました。ひょっとして新駅の新蒲原こそ蒲原宿の最寄駅じゃないですか?」と編集会議で聞いてみた。

地元在住の編集委員はモータリゼーションの女性たちなので、鉄道駅を起点とした地理に明るくない。明快な答えがないので新蒲原はもちろんだけれど、富士川駅も新駅ですよねと言ったら、富士川駅はもとの岩淵駅だったと言う。ああそうだった!岩渕駅がいつの間にか消えていたと思い出した。気になったので調べたら答えがあった。

現在の東海道本線にあたる官設鉄道線の建設が決定した際、駅に関しては当初宿場町単位でおく予定であったため、吉原宿の隣は蒲原宿のあったところに置く事になっていた。その間にある岩淵村(現富士市)は身延山久遠寺への身延道が東海道から分岐する間の宿であり、正式な宿場ではなかったために駅設置の予定されていなかった。しかし岩淵村では地元の有力者が発起し、隣村であり官設鉄道線が通っていた中之郷村へ「岩淵駅」を設置するよう直接陳情を行い、最終的に土地提供を行うことを条件にして、蒲原宿に代わってこの地に駅が設けられることになったのである。これには村内でも賛否両論があり、駅設置賛成派の暗殺も企てられたといわれる。結果として蒲原宿のあった場所には駅が設けられず、蒲原町ではその後に駅設置の請願を行って1890年5月16日に蒲原駅が設けられたが、由比宿と蒲原宿の双方の利便を図ってその間である堰沢村に設けられたため、宿場町からは離れていた。かつて蒲原宿のあったところの近くに駅が設けられたのは、1968年10月1日に新蒲原駅が置かれた時であった。(ウィキペディア 2019/05/08 現在の引用)

なるほどなぁと最初の素朴な疑問の謎が解けた。特集が決まったので、買っておいた『蒲原町史』を読み始める。発行が昭和43(1968)年なので念願の新蒲原駅開業年である。町史はこの年の発行を目指したのかもしれない。

(2019/05/08の日誌より)

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◉大きなカメラ小さなカメラ

2019年5月8日(水)
◉大きなカメラ小さなカメラ

義父母が暮らしていた住まいの片付けを手伝っていたら、むかし義母に買ってやったカメラが出てきた。ピッタリサイズの小袋に入れて引き出しの奥に仕舞われていた。

オリンパスが XA で先鞭をつけたケースレスのカプセルカメラ発展型だが、このペンタックスはオートフォーカスで優秀な単焦点レンズが付いていた。小柄な義母でも気軽に持ち歩けるよう、操作が簡単な小さいカメラを選んだ記憶があったが、数十年を経て手にとってみると驚くほど大きく感じられる。

 

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今日は第一回目の雑誌『季刊清水』編集会議が静岡である。特集テーマがまだ決まっていないので取材もなく、ポケットに小さなデジタルカメラを突っ込んで出かける。並べてみると驚くほど小さい。

(2019/05/08)

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◉継続と中断と再生

2019年5月7日(火)
◉継続と中断と再生

盆休み、正月休み、大型連休の直後になにかが壊れるということを何度も経験した。継続しているから壊れそうで壊れず、綱渡り的な均衡状態で堪えていたものが、中断という変化で突然の破局に至るのだろう。中断は予想を上回る衝撃力をもつ。

突然の中断で、連休入り早々に仕事場の通信環境が壊れ、連休後の再開目前にパソコン環境が壊れた。

前者は、休みのはずの妻が連休中も仕事をすると言い出し、休みで業者も呼べないので青ざめたが、窮鼠猫を噛む的な本気を出して自力復旧した。十連休もあると、連休初日は遠い日の出来事のようだ。後者は冷静に問題を切り分け、劣化した配線ケーブルを特定し交換して復旧した。

継続状態が中断されたことによる不調の発生は、人の心に起こりうる病気によく似ている。改元後の日常再開にあたり
「超大型連休明けに壊れる国民の少なからんことを深く希望します」
と国民の象徴的に言ってみる。

   ***

大量の廃棄を伴う片付けでは思いがけない拾いものもある。仕事場で蓋を失って準廃棄物になっていたガラス製の急須が、自宅で妻が捨てようとしていた磁器製急須の蓋で見事に蘇った。

1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm

ガラスと磁器のハイブリッドというのもなかなか良いものだと思う。改元休みをきっかけにした新カップル誕生という令和最初の明るい話題である。

(2019/05/07)

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◉思い過ごしも恋のうち

2019年5月6日(月)
◉思い過ごしも恋のうち

5 月 3 日のタケノコ掘りで、テレビでおなじみの某大学教授 A に会ったので、たしか親しいはずの某大学教授 B の近況について聞いてみた。あれだけ SNS でしゃべりまくって名を馳せた人がぷっつり表舞台から消えてしまったけれど、あの先生は元気にしているのだろうかと探りをいれてみた。

Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm

「元気ですよ。僕の想像だけど、事情があって名前を変えて同じことをやってると思いますよ」
とのことだった。社会心理学の教授がそう言うのだから、ズバリ言えない真相は本当にそういうことなのだろう。家族やご自身の体調が悪いのではないかと心配したが思い過ごしだったらしい。某大学教授 B は SNS で発言するとえらく冴えていて面白いのに、著書を読むと別人のようにつまらないので時々恋しくなる。

(2019/05/06)

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◉十連休最終日

2019年5月6日(月)
◉十連休最終日

日記もどきをネット上に書き始めたのが 1999 年なので今年から足掛け 21 年目に入った。

日記の面白さは、書いたことだけではなく、書かなかったことを思い出す手掛かりになっていることだ。日記には書かれなかったことも書かれている。自分を飾って書けばちゃんと自分の劣等感という透かしが入っている。井伏鱒二もこんなことを書いていた。

…このときのことを私は「女中さん」という題の雑文に書いたので今でも覚えている。もし書かなかったら忘れているかもしれないが、書いたから覚えているだけでなく、書きそびれたことも覚えている。(井伏鱒二)

引用したこの随筆も「女中さん」も、ともに山梨県での思い出を書いたもので、井伏鱒二は山梨に縁が深い。

この奥の峠を越えれば山梨県
(2019年5月3日) 
Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm 

山梨でなぜか思い出したが俳人飯田蛇笏(だこつ)も山梨の人だ。飯田蛇笏は子どもにも意外に馴染み深かったようで、同級生に飯田君がいて彼のあだ名がダコツだったことでもわかる。

蛇笏と縁の深い俳人石原舟月(しゅうげつ)や石原八束(やつか)は太宰治の妻となった石原美智子と同じく山梨県人ではないかと調べたらやはりそうだった。

それでは蛇笏がらみで荻原井泉水(せいせんすい)は長野県人ではないかと調べたら、生まれは東京だが、親は上越高田から出た人だった。惜しい。

(2019/05/06)

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◉こどもの日と赤羽

2019年5月5日(日)
◉こどもの日と赤羽

10 連休中は 5 月 3 日に日帰りで清水にタケノコ掘り帰省した以外、ずっと在京で住まいの大掃除をしている。山仕事と、汽車旅と、大掃除のトリプルパンチで身体の節々が痛い。
 
 
両河内で掘ってきたたけのことひき肉を炒め、朝食に担々麺をつくってみた
 
拭き掃除に効果絶大なセスキ炭酸ソーダがなくなりそうなので、ネット通販で取り寄せようと思ったら、時間がかかるし送料が高くて馬鹿らしい。東京メトロ南北線で赤羽のホームセンターまで買いに行ってきた。
 
 
赤羽にて Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm
 
交通費分の元を取るため高架下の角上魚類に寄って買い物をした。魚屋は
「こどもの日は家庭でお寿司!もちろん大人が食べたっていいんだよ!」
などと声を張り上げ、一番街の和菓子屋は柏餅を求める人で混雑し、人気居酒屋は明るいうちから安く飲みたい若いカップルが行列を作っていた。
 
 
 
赤羽にて Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm
 
昼飲みが生きがいの爺さんたちは行き場を奪われて気の毒だ。赤羽で生まれ育った友人に、最近の赤羽人気をどう思うかと聞いたら、
「してやられた!って感じ」
と言っていた。人気店がある一角以外は、日本全国どこでもそうであるように寂れている。
 
(2019/05/05)
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【令和第一回目の両河内たけのこ掘り】

【令和第一回目の両河内たけのこ掘り】

郷里清水の農家の山にたけのこ掘りに出かけた。午前 5 時起きし、7:03 発ひかり 461 号の切符をとって友人夫婦と東京駅で待ち合わせたら、打ち合わせ不徹底で乗り遅れた。四人で階段を駆け上ったら発車サイン音が鳴って扉が閉まる所だった。ロートル俳優たちが演じる青春ドラマのようで、息を弾ませ、意気消沈しながら大笑いした。良い思い出がまたひとつできた。
 

Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm 

時刻表を見たら 7:26 発のこだま号があるので、清水の友人に電話し、それに乗るから遅れると伝えたら興津駅前で待っているという。乗り換えアプリを見たら静岡駅まで行かずに三島駅で在来線に乗り換えろという。8 時 27 分発豊橋行きに乗って 9 時 22 分、興津駅着。駅前に出たら清水の友人 5人が、よくたどり着いたと万歳三唱で迎えてくれた。
 

Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm

3 台の車に乗り、興津川にそって両河内へ。遅れて大学教授一家も到着し、総勢 13 人が山の竹林に登ってたけのこ掘りをした。山のように掘り出してその場で皮むきし、背負子で背負って下山した。農家の前庭に湧き水を引いて水洗いし、薪をくべて釜に湯を沸かし、次々に茹でながら、女性たちが用意する山の恵みをつまみに酒盛りをした。
 

Jupiter-12 1:2.8 f=35 mm

前回参加したときまだ子どもだった大学教授の息子が、もう成人して勤め人になり、酒を飲みながら立派な話し相手になるので感心した。たけのこと他人の子は成長が早い。山ほどのたけのこをもらって下山し、桜橋町の珈琲焙煎店で遅くまで飲んで帰京した。
 
(2019/05/03)
 
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