電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
マサレカツオ
2016年11月30日
僕の寄り道――マサレカツオ
老人ホーム三階にある義母の居室のベランダに出て中庭を見下ろしたら、地上に落ちたカリンの実を拾い集めて並べ、「マサレカツオ」という文字が書かれていた、と妻からのメールにあった。「マサレ」と「カツオ」の間に石のようなものがあったので、若いケアワーカーの愛称を並べた、相合傘の落書きかと思ったとも言う。
落ち着いてよく見たら右から左へと「オツカレサマ」と書かれており、勤務を終えたケアワーカーたちが右手から左手へ、中庭の敷石を伝って帰途に着くのだという。帰り際にに足元を見ると「オツカレサマ」と読めるわけだ。施設内設備の点検整備をしているおじさんが、気の利いたいたずらで若者をねぎらったものらしい。
いい話だ。
老人ホーム中庭にはカリンとブドウとユズとヒメリンゴが植えられており、今年はカリンとユズがおもての生り年にあたるらしい。ユズは施設のユズ湯に使われたあと、のこりは樹上で腐れて小鳥たちの冬越し支援になる。カリンの方はどんどん実を落としているようで、こちらもちゃんと生かされて介護従事者たちへのエールになっている。
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八咫烏(やたがらす)
2016年11月29日
僕の寄り道――八咫烏(やたがらす)
小鳥の寿命は短いけれどカラスの寿命は意外に長く、都会で栄養豊富なゴミを漁っている個体など五、六十年生きることもあるらしい。どうりで特徴ある面白い鳴き声をするカラスの声は何年も前から聞き覚えがあって親しみがわくわけだ。
数年前から近所に変わった鳴き声を出すカラスがおり、高らかに
「やった〜」
と鳴き、ときどき
「やった〜、たぁ〜〜」
とこだまのような尾ひれがつく。個人的に「やった〜がらす」と名前をつけ、ああ、またやった〜がらすが元気に鳴いているなと気にかけていた。
朝食どき、妻がその声にようやく気づいたらしく
「あのカラス、やった〜って鳴いてる!」
と嬉しそうに笑うので、もう何年も前から六義園をねぐらにしていて、日本サッカー協会のシンボルマークにもなった由緒あるカラスだと言っておいた。
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富士山の見えた校庭
2016年11月28日
僕の寄り道――富士山の見えた校庭
郷里静岡県清水の友人が書いているブログを見ていたら、母校の校庭の写真が掲載されていた。
この市立中学(二中)はとなりの市立小学校(岡小)と校庭がつながっており、あいだにフェンスなどがないので校庭が広大に見える。この校庭で初めてサッカーをおぼえた。写真に写った校庭がだだっぴろいところは昔から今まで変わらないけれど。東北の方角に富士山が見えるのでびっくりした。
(写真は無断転載)
栃木で生まれ育った友人は
「校庭から富士山が見えるなんていいですね!」
と通りすがりのおじさんに声をかけたらしいが、自分の記憶の中にある校庭からの眺めは南西方向に日本平がある風景ばかりなのが不思議だ。
小学校卒業まで過ごした東京から、いつか住んでみたいと思っていた母親の故郷へ、夢が叶って引っ越してきたので、東北の方角を背にし、南東ばかり向いて中学生時代を過ごしていたのだろう。
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朝刊
2016年11月28日
僕の寄り道――朝刊
紙の新聞をとっているけれど電子版も有料購読している。併読だと割り引きになるので購読を始めたら、電子版も改良が進み、紙の新聞はもういらないような気もしている。
山ほど挟まれてくる折り込み広告の始末が煩わしいし、だいいち資源の無駄遣いが後ろめたいのだけれど、女性の友人に言わせると新聞本体より折り込み広告のほうが大切なのだそうだ。スーパーのチラシを見くらべて 1 円でも安い買い物をすることで、亭主に読ませる月々の新聞代が捻出できているのだという。山内一豊の妻である。オトコは新聞をありがたく読まなくてはいけない。
近所の新聞販売店が閉店していた。おおぜいの店員が忙しく立ち働き、主婦の絶大なる支持を受けている広告折り込み作業をする様子を見ていたら、「わが新聞は永遠に不滅です!」という長嶋茂雄の溌剌とした声が聞こえるようだったが、購読者が次第に減って経営が厳しいのかもしれない。義父母がいなくなって、義父が好きだった巨人の新聞を解約したらちょっと胸が痛んだ。配達員の姿を思い出したからで、新聞をとり続けることで維持される雇用がある。
そんなわけで 、紙の新聞をとっているけれど電子版も有料購読している。両方とっていて紙の新聞がやめられない曖昧な理由は上述のとおり。
今朝もずいぶん冷え込んでいる。目がさめたので朝刊に目を通そうと思ったけれど、寒くて布団から出て取りに行く気がせず、スマホに電子版が届いているのでそちらを読んだ。そんなわけでやはり電子版のほうもやめられない。
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銀世界と金世界
2016年11月25日
僕の寄り道――銀世界と金世界
54年ぶりの11月の初雪。クリスマス会を兼ねた住民交流会のポスターに使う写真が撮りたくて、朝一番で六義園へ入園したら、芝生の上にだけまだ銀世界が残っていた。
仕事帰りに上野の山へとのぼり、国立西洋美術館のミュージアムショップでクリスマスプレゼント交換会用の小物を買った。ボールベンの頭に「考える人」がついているやつで、胸ポケットにさしておくといかにも考えている風に見える。
国立科学博物館前を通って東京芸大方向に歩いたら、イチョウが見事に色づいていて黄金世界という言葉が思い浮かんだ。考えてみたらほぼ半世紀ぶりの早い初雪ということで、銀世界と金世界が同時に見られる数少ない機会だったのかもしれない。
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雪の朝
2016年11月23日
僕の寄り道――雪の朝
東京は明け方から冷たい雨が雪に変わり、11 月の初雪は 54 年ぶりだという。朝食の準備をしながらカーテンを開けたら六義園を背景にして雪がしんしんと降りしきっている。
雪が落下する速度に合わせて視線を移動すると、白い羽が宙に浮かんで揺れているようで面白いが、スマホで撮影するとシャッター速度分の軌跡になってしまって面白くない。
仕事場に来てカーテンを開けると六義園は開門しており、傘をさした若い女性が入園していく。若い人は元気だ。自分も20年くらい前は雪の朝が嬉しく、六義園に一番乗りして写真を撮ったものだった。一番乗りしたつもりの雪の上に猫の足跡があって笑ったのが懐かしい。最近は園内で猫を見かけない。
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降雪予報
2016年11月23日
僕の寄り道――降雪予報
今夜は冷え込むのでうどんすきにするという。野菜の買い出しを引き受けたので近所の八百屋に行ったら、新聞折込チラシが店頭に置かれていた。
「青果で元気に働こう!」とあるのでアルバイト募集かと思ったら今日は勤労感謝の日だった。パート募集の欄は右に別にある。
チラシが飛ばされないよう置かれた文鎮が面白い。どうしてこんなものが北区のここにあるのだろう。わが家の向かいにある文京区立昭和小学校は春風亭小朝の母校で、彼はたしか隣接する神明町に住んでいたと聞いた。本当に明日は雪景色の朝になるのだろうか。
落ちのない噺のような冬日記
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静岡の早生温州
2016年11月23日
僕の寄り道――静岡の早生温州
郷里静岡から早生温州が届いたので少しだけれど近所の友人におすそ分けした。東京ではかなり早くから店頭に出回ったので決して珍しくもないのだけれど、買ったものより貰ったものの価値が上回ることもある。
二軒分を用意し、それぞれ箱の奥にあるのは用宗の前田農園産。清水の友人から若い生産者が丹精したものを貰い物した縁で、ここ数年、秋になると贈答用で注文している。どんなものが送られているか、その年の出来栄えが気になるので自宅にも「4.5kg こつぶ贈答用みかん」を送っている。今朝届いた。
手前に紙で仕切りをして三個だけあるのは由比産なのだけれど、今年は猿が出てきて食べられてしまう被害に遭い、御歳暮用の注文も受けられない状態だという。昔から清水の年寄りは海辺まで山が迫った由比産を
「由比のみかんは塩をかぶってるからうまい」
と言って珍重していた。猿も美味しくいただいたことだろう。気の毒な農業被害を思うとひときわ味わい深い。
そんな話が添えられているから、珍しくないものでも貰い物は嬉しいのだろう。
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ユニバーサルデザインと絵文字
2016年11月23日
僕の寄り道――ユニバーサルデザインと絵文字
毎日老人ホーム訪問に出掛けていく妻が、往復のバスや電車内から送ってくる絵文字満載のメールに、こちらも負けずに絵文字入りで応戦している。絵文字のデザインは使っているフォントごとに異なるので、それぞれのスマホ画面の表示を見せ合うと、伝え合たつもりのイメージが相手側でちょっと違っていて驚く。
愛用の古い Android では絵文字が白黒のシンプルなもので表示され、カラフルな絵文字に慣れすぎたせいか、見るたびに「いいなあ」と思う。機種が古いせいではなく、システムフォントに「UD丸ゴシック」を指定しているからで、これはイワタ書体が提供したものかもしれない。ユニパーサルデザインということで、色の見えが違う人を考慮してか黒一色で、とてもやさしい表情でわかりやすくできている。
このシステムフォントにはどんなグリフがどんなデザインで登録されているのだろうと気になり、Android で Unicode を一覧できるアプリがないかと検索したらちゃんとあった。その名もずばり「Unicode」という。
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「Unicode」で検索したグリフをコピーし、同じく Android のベクトルドローアプリ「PaperSimple」にペーストしてデザインの細部を見ると、ていねいに仕事をされたのだなあと感心する。絵文字が伝える情報に細やかなニュアンスがある。
……と書いたのは docomo の GALAXY Note II での検証なのだけれど、同じ docomo の GALAXY Note edge もシステムフォントをUD丸ゴシックに変更したらありきたりなカラー絵文字になっており、「Unicode」でグリフを表示するとこんな具合になっている。
白黒の分かりやすい絵文字だから「ユニバーサルデザイン」の面目躍如と思ったのだけれど、どうもそういうわけではないらしい。同名のフォントのバージョンが違うとしか思えない。たしかユニコードはあるバージョンからカラー絵文字に対応したのだったと記憶している。どうも絵文字についてはよくわからない。(追記)
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北風とシューベルト
2016年11月22日
僕の寄り道――北風とシューベルト
このところ仕事をしながらシューベルト「3つのピアノ曲(即興曲)」ドイッチュ番号 946 ばかりを聴いている。繰り返し聴いていたら、ある同じ箇所の旋律が頭の中で繰り返されて終わりがない。
本当に終わりがなかったら精神に異常をきたしてしまうところだけれど、こういうリフレインにはいつかパタッと終わりが来る。異なる刺激に気をとられたり、別の曲を聴いたりをきっかけにして不意に鳴り止んでしまい、終わりが来たとたん、あれほど耳についていたはずのフレーズが、まったく思い出せないこともあるのが不思議だ。
心地よい音の組み合わせとリズムはまるで反射運動のようだ。人が反射運動的に生み出してしまう心地良さはステレオタイプ的なのかもしれなくて、この曲の二番を弾く西洋人も東洋人も、同じように感極まった顔をして、同じ心地良さに陶酔している。
反射運動としての旋律が人の思考運動に働きかけることで痙攣(けいれん)が止まらなくなった状態が、耳について鳴りやまないフレーズの繰り返しなのかもしれない。それは自律神経が引き起こす痙攣なので、パタッと止まってしばらく経つと意図的に再開するのが難しい。
冬の北風が強く吹く季節になった。上越国境を越えて吹き下ろす乾いた風が、武蔵野原を駆け抜けて来て、北西向きの窓に突き当たってドンと音を立てる。その音もまた旋律とリズムを持っていて、季節風の周期には自律神経的な「地球の息」がある。
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東海道静岡は朝倉名産粉山椒
2016年11月21日
僕の寄り道――東海道静岡は朝倉名産粉山椒
今朝は NHK ニュースが開園前の六義園内から中継をしていたが、昼は新宿御苑内からの生放送で、江戸時代、この辺は一面の唐辛子畑で秋になると真っ赤だったと見てきたようなことを言う。
どうしてこんなところで大量に唐辛子など作っていたのだろうと一瞬思ったが、巨大都市江戸ではかけ蕎麦などにふる七味唐辛子にかなりの需要があったらしい。ああそうかと思う。
七味唐辛子を売る口上上手なおじさんが登場し、黒胡麻、陳皮、内藤新宿八つ房の焼き唐辛子に続いて「…東海道静岡は朝倉名産粉山椒…」と言う。静岡県出身だが朝倉の地名も名物の山椒も聞いたことがないので「おや?」と思う。
大竹道茂氏によると兵庫県養父市八鹿町朝倉地区が発祥である朝倉山椒の間違いではないかと言う。なるほど。
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鍋精神
2016年11月21日
僕の寄り道――鍋精神
「清水エスバルスがとうとう J2 に降格してしまいました」
と言ったら
「もう上がれないでしょう」
とサッカー好きの友人が言う。自分でもそういう悲観的なことを考えなくもないけれど、他地域の人にあっさり言われると内心穏やかではない。
ましてや郷里清水でたいしてサッカー好きでもなさそうな人が
「ほらね、もう清水はだめだよ」
などと言うのを聞くと、抑えようもない郷土愛がぐつぐつと音立てて沸き立つ。韓国の一気に煮えたぎる「鍋精神」みたいなものである。郷土愛を高めると日本人と韓国人の似たところが露わになる。そういう「鍋精神」を朝鮮語で何と言うか昨日 NHK の番組で聞いたけれどもう忘れた。
そんなエスバルスも 1 年でめでたく J2 から J1 への昇格を果たした。ざまあみろである。最後は松本山雅と激しく競り合ったわけで、
「もう上がれないでしょう」
と言った信州出身の友人もさぞがっかりしたかなと思いきや、彼はどうも浦和レッズのファンらしい。郷土の枠組みを超えて真っ赤な「鍋精神」が埼玉で煮えたぎるさまを想像した。
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『モルゲンローテ』
2016年11月20日
僕の寄り道――『モルゲンローテ』
子どもの頃『モルゲンローテ』という歌が好きでよく唱った。学校で習った記憶はなく、遠く離れた富山育ちの家内もよく唱ったというので、NHK『みんなのうた』で覚えたのかもしれない。
朝のNHKテレビを見ていたら朝日に染まった山々を「モルゲンロート」と言っており、正しくはモルゲンローテでもモルゲンレーテでもなく「モルゲンロート」と発音するらしい。
六義園正門前、今朝の赤
英語で言えばモーニングレッド、朝の赤い日のことで、唱歌『モルゲンローテ』の歌詞では「…雷鳥の胸に モルゲンローテ」というところがとても好きだった。
制作年がよくわからないが、この歌は井田誠一作詞による。井田誠一は八王子っ子で高尾山薬王院の境内に碑があるというが、残念ながら刻まれているのは『モルゲンローテ』の歌詞ではない。
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クレパスと印刷
2016年11月18日
僕の寄り道――クレパスと印刷
どんなものにでも印刷できます、そういう印刷会社の広告をむかし見た気がする。食品はもちろん水面にだって印刷できるというわけだ。ペンを使ってお絵描きができるスマホ(GALAXY Note Edge SC-01G)のケースに、サクラクレパスのバッケージデザインを移植したものがあり、ちょっとかわいいので注文してみた。
2,980円のこのケース、「受注後の製作商品となります」「8152-B. デザインB を印刷してお届けになります」とあるので、おそらく白いケースが用意してあり、それに購入者が選んだデザインを印刷して売っているのだろう。縫製した立体物にどの程度の精度で印刷できるのだろうという仕事柄の興味もあった。
11/13 日に Amazon から注文し、18 日に丁寧な梱包でポスト投函されていた。縫製した白い糸にもインクがのっているので製造方法は予測どおりだけれど、非常に綺麗な印刷でびっくりした。やはり縫製後の立体物に印刷というのは無理がある、などと思わせるような破綻は全く見当たらない。ちょっと感心した。
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あたり
2016年11月17日
僕の寄り道――あたり
近所のスーパーで買い物をしたら、レジスターからレシートと一緒にペロンと紙が出てきて、女性店員が「あたりました」と言う。何があたったのかと見たら牛丼の吉野家で使える 50 円引きクーポンだった。
食べ物で「あたりました」というのも奇妙な感じで、縁起をかついでスルメをアタリメと言い換えるのに「あたる」はいいのだろうかと思ったが、食中毒の「中」は「中る」の「あたる」なので「当たる」はかまわないとも言えるのだろう。
JR 駒込駅前から吉野家がなくなって久しく牛丼を食べたことがない。そういえば、あたったはいいけれど近所に吉野家があっただろうかと検索したら、大塚店、王子店、西日暮里店、根津店といった具合に遠くにしかなく、わざわざ歩いて食べに行く気にならない。あるだろうと思った隣りの巣鴨駅界隈にないことも意外だった。街の高齢化率が高いからだろうか。
吉野家秋葉原中央通り店
昼休みに SD カードを買いに秋葉原に出たら交差点脇に吉野家があり、ああこんな場所にあったのかとあらためて思う。牛丼の大盛りが 550 円だった。U-MAX 製 SD カードの 16GB が牛丼大盛り一杯分の値段になっていてびっくりした。
こちらの SanDisk 製は 1 枚 723 円だった
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