【お好みとウクレレと梅の家】

【お好みとウクレレと梅の家】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2008 年 7 月 31 日の日記再掲

病気になった母親に
「あんたは食べることばっかり考えてる」
と苦笑いで言われたけれど、両親というふたりの病人を抱えた妻もまた四六時中食べることばかり考えており、それは病人や年寄りがあまり食べることを考えなくなるからだ。

病人や老人が食べることを考えなくなり、食が細ってきて、食べたくないと言い出すと、みるみる体力が落ちて弱ってくるのがわかり、それは緩慢な自殺に等しいのだけれど、本人にその意志がない以上、自殺を幇助するわけにはいかないので何とか食べる気になりそうなものを考え
「さぁ、頑張って食べよう」
と励まさざるを得ないわけで、その孝行の結果として
「あんたは食べることばっかり考えてる」
と苦々しげに言われたりするわけだから子どもは悲しい。

静岡県静岡市葵区安東 1 丁目。母親に付き添って新静岡センター脇からバスに乗り、県立総合病院へ向かう際に何度も前を通り、一度入ってみようかと言ったら
「また、あんたは食べることばっかり考えてる」
と笑われた『お好みの石田』。

ちょっと時間があるから入ってみようかと思ったのだけれど、ついさっき静岡県静岡市清水区港町2丁目の『サンライス』で男友達と仲良くカレーとハヤシを分けあって食べたばかりなので、「(ここでさらにお好み焼きなんか食べたら豚だなぁ)」と思ってこらえる。ネットで検索したらやはり良さそうな店なのでいつか行ってみたい。

食べることばかり考えているせいか、気づかなかったのだけれど『お好みの石田』の並びに『 UKULELE-MART 』というウクレレ専門店があった。新しそうな店なので、バスに乗って病院がよいをした頃はまだなかったのかもしれない。

『 UKULELE-MART 』や『お好みの石田』の並びに何と次郎長通りや清水一中そばでお馴染みの『梅の家』があって、こちらはずいぶん昔からご商売されているようなのに初めて気づいたのでびっくりした。
 
清水で見慣れた『梅の家』が静岡でも同じ顔をしているのがとても嬉しく「(みつ団子くらいならいいかな)」などと、また食べることばかり考えている自分に気づく。

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【大観覧車と大やきいも】

【大観覧車と大やきいも】

静岡県静岡市清水区入船町。
エスパルスドリームプラザにできた大観覧車を見てきたと雑誌の編集会議で言ったら乗ってみたかと聞くので、ひとりでは恥ずかしくて乗れないと言ったら女性編集者たちに笑われた。



静岡県静岡市葵区東草深町。
焼きいも、静岡おでん、かき氷などで名高い『大やきいも』。


編集会議が行われる静岡市女性会館の近くなので、前を通りかかるたびに入ってみたいけれど、やはりひとりでは恥ずかしくて入れない。

女性はひとりで大観覧車に乗ったり、ひとりで『大やきいも』に入ったりできるのだろうか。

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【虫づくし】

【虫づくし】

静岡県静岡市葵区安東。
熊野神社門前にある前橋釣エサ店。
大人になってからは釣りに縁がないので釣りエサの看板が物珍しい。


ベトナム虫、ストロー虫、岩虫、虻虫(?)、チロリ虫、ゆ虫(?)。
判読が怪しいものも含めて怪しい虫の名ばかりで、ひとつとして知っている虫の名がないことに釣りエサの奥深さを知る。

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【安東の熊野神社】

【安東の熊野神社】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2008 年 7 月 30 日の日記再掲

静岡県静岡市葵区安東。
 
東西に走る長谷通りと垂直に交わる小路の奥に、南の海の方を向いて建つ社があり、寄り道して鳥居の前まで行ってみたら熊野神社だった。

 創建の年月は不詳であるが、和銅四年(西暦七一一年)の棟札が現存しているので今から一千二百・三百年以前には既にこの地に奉齋されていたことがわかる。
 紀州の熊野那智大社に永正三年(一五〇六年)駿河国安東庄熊野宮造営木材取料散用状 永正九年安東熊野宮棟上料足散用状等の古文書が所蔵されているのをみると古来熊野三山との関わりが深かったことが推測される。
 当神社は昔は相当大社であったという。駿河国新風土記には「この社古くは大社にして社人・社僧もあまたありしといふ」と記載されている。(熊野神社石碑の由緒書きより)

旧清水市にはには中之郷と村松と柏尾に、静岡市ではここ安東以外に音羽町、谷田、小坂、用宗城山町、安倍口新田にも熊野神社がある。

あとで調べたら、静岡で暮らしていた徳川慶喜が寄進したという木製の鳥居がかつて存在し、その廃材が境内に保管されているらしいが見損ねた。

そのかわり境内に御神木かどうかは知らないけれど根もとに巨大なうろのある大木があるのを見つけた。大人でも入り込んで胎内回帰が体験できそうな大穴であり、誰もがそういうありがたい穴のように思うのか古くから信仰の対象となっていたようで奉納物もあり、いかにも熊野らしい有り難みをあたりに発散していた。

 

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【水落町の理髪店】

【水落町の理髪店】

静岡県静岡市葵区水落町の素敵な顔をした理髪店。

ちょっと前まではこうして懐かしい記憶の手がかりを見つけると、どこでこういう景色を見たのだろうと、場所の記憶を手探りすることが多かった。


最近は場所などどうでも良くて、かつては日本中どこにもこんな穏やかな佇まいの理髪店があった、時代の記憶を引き寄せて抱きしめようとしている。

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【来て幸】

【来て幸】

静岡県静岡市葵区水落町。

『来て幸』と書いて「きてこう」もしくは女っぽく「きてこ」と読むのだろうか。
この店の看板を見た途端のけぞったのだけれど、最近はのけぞらない清水っ子も多いのだろうか。
旧静岡市にあるお店なので静岡っ子にも、のけぞる人がいるんだろうなと思うと嬉しい。


清水では「やってこ」(やってごらん)とか、「たべてこ」(食べてごらん)とか、「見てこ」(見てごらん)とか、「貸してこ」(貸してごらん)という方言があり、「きてこ」は「来てごらん」という意味なのだ。

たぶんそういうことなんだろうと思うけれど確かめたわけではない。
でも懐かしい言葉なのでそう思いたい。

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▼堀を渡る風

静岡市葵区駿府町。
駿府城お堀端にある水位伝送器。
こういう機械でお堀の水位を管理しているのかと
立ち止まって眺めていたら水面を渡る風がかなりドブ臭い。



下流の清水区にはこれほど小綺麗な水辺は少ないけれど
こんな懐かしいドブ臭さを嗅ぐことも少ない気がする。
それでなくとも流れの少ない堀なのに
堀に流れ込む下水設備と管理に
見た目の体裁以前の根本的な問題があるのではないかと思う。

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【葬式饅頭】

【葬式饅頭】

静岡市葵区鷹匠。
この場所を通るとついつい創業慶応3年和菓子の『松柏堂本店』が気になってしまい、ということは和菓子屋として商売するのに良い場所なのだろう。

東京で過ごした子ども時代の言葉遊びに、
「そーだー村の村長さんがそーだー飲んで死んだーそうだー」
とそーだーづくしの言い立てがあり、続けて
「葬式饅頭でっかいそーだー中のアンコは少ないそーだー」
と言って大笑いするのだけれど、急いで作るため重炭酸曹達で膨らませたパサパサで皮ばかり厚く、アンコがちょびっとに見える葬式饅頭を笑いのめしたものだと思う。


東京では葬式があるたびに親が貰って帰る、でっかくて皮がパサパサの葬式饅頭を食べるのが楽しみだったのだけれど、郷里静岡県清水では葬式饅頭を食べた記憶がないので、葬式饅頭を会葬者にもたせる風習は関東地方で盛んなだけかと思っていた。

『松柏堂本店』店頭に書かれた仏事用饅頭の文字を見てそんなことを思い出した。
関東地方でよく食べた丸くて白くてでっかい葬式饅頭なのかどうかが気になるけど
「あのー、葬式饅頭をひとつください」
と言うわけにも行かないので謎のままになっている。

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【北街道の極真カラテ】

【北街道の極真カラテ】

新静岡センター前から水落町方面へ続く北街道沿いの商店街が好きだ。
降りたままになっているらしいシャッターに小さなポスターが貼られており、友人の息子が通う極真会館大石道場のものなので、ついつい気になって立ち止まる。


同じポスターを二枚並べて貼ると一枚単独とは違った効果があるように見え、その理由を上手に言葉にすることはできないけれど、さらに一枚足して三枚並べるとその効果が減じてしまうような確信があるから不思議だ。

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【不思議の交差点】

【不思議の交差点】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2008 年 7 月 29 日の日記再掲

何度か通りかかって眼にするうちに、忘れられなくなってしまう風景というものがある。

旧清水市と旧静岡市を結ぶ北街道という古い幹線道路がある。その北街道を駿府城外堀水落交差点から 250 メートルほど清水方向に進んだ場所にも交差点があり、何の変哲もない四差路に思えるが左手を見ると小太刀を胸元に構えたように「清酒世界長」の看板がある町の切っ先がのぞいており、この地域が道路によってバイアス状に裁断されていることがわかる。

静岡市女性会館アイセル 21 で夕方から編集会議があるので向かう途中、おそらくその交差点を左折したら目的地へ行けそうな気がしたので構えられた小太刀の脇にするりと入り込んでみた。

アイセル 21 近くの長谷通りに向かうなら小太刀の右脇を進むのが良い方角であるような気がしてそちらへ進む。静岡市健康文化交流館「来・て・こ」という静岡弁からとった施設名と似た発想の「来て幸」という居酒屋があり、その先にある最初の四差路で左手を見たら正面に一本の木が静かに不思議を発散しているのが見えた。道の角度や進入禁止の標識や地面の矢印からして不思議が交叉する場所であるような気がしたのでそちらに折れてみたが、結果として小太刀の左をすり抜けていればその場所に出たことになる。

変則四差路かと思って右折しようとしたらちょっとしたロータリーになっており、ここもまたバイアス裁断による町の切っ先が 5 本集中した場所であり、切っ先がとがったままだと車両通行に支障があるので丸めた結果、ロータリー状の空間ができているのだった。

日当たりの良さそうな場所にのんびりと床屋のトリコロール看板がまわり、ベンチが置かれ、何とこの場所はしずてつジャストライン「城東町」バス停になっていた。

それで「(ああそうか)」と思い出したのだけれど、かつてネット上のブログで旧静岡市に生まれ育った友人と話した際に、駿府城のお堀に面した水落町の区画割りがお堀に沿っているのに対し、城東町の区画割りマス目が斜めに接することでまちの方向感覚に不思議を添加していることを知り、そのマス目の左下角が衝突している不思議発生地点がこの五差路なのだった。旧静岡市にはそういう区画割りが不思議を発生させている場所がいくつもあるらしい。

道幅が狭く一方通行の多いこの場所にいったいどんな経路で路線バスが入ってくるのだろう、長谷通りとはどんな関係になっているのだろうと地図を見たら、このあたりは結果として一見非合理的な都市空間になっているのがわかる。だが、その下町的不思議空間こそが町を活性化させている面もあるようで余所者としては歩いていてとても楽しい。

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【丸のある風景】

【丸のある風景】

旧東海道江尻宿のお茶屋店頭にかけられた、筆書きの丸が染め抜かれた暖簾。
筆書きの丸のモチーフはよく見かけるので、それを見てことさら心が和むということはない。


ところが正方形に写るデジタルカメラの正方形の画面の中で見ると、見慣れた筆書きの丸が妙に気持ちよいのが不思議。
丸と正方形は相性がいい。

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【まちの肖像】

【まちの肖像】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2008 年 7 月 28 日の日記再掲

合衆国第 16 代大統領だったリンカーンは、
「人間四十を過ぎると、その人間の経験、思想、品様のすべてが第二の顔を作りはじめる」(司馬遼太郎「顔の話」より)
と言って顔の善し悪しで組閣の人選をしたという。店というのも開店して何十年も経つとそういう第二の顔が店頭に現れているような気がする。
 
清水区巴町。生まれて初めてジーンズを買ってもらった軍物の店『AMERICAYA』。少なくとも 36 年前にはすでにこの場所にあったので第二の顔が見えてきたようにも思う。

わが母の世代は「 G パン」といえば不良が着る米軍放出品か古着と思っていた世代であり、
「もっと綺麗なのはないの?」
などと店主に言って国産の新品をとりだして貰い
「こういう生地は縮むからゆったりしたのがいい」
とびっくりするような母親の指示でゆるゆるのジーンズ姿になってしまった想い出の店。
生まれて初めてのジーンズは BIGSTONE というブランドで大石貿易なのでビッグストーンであり、生地はリーバイスと同じメーカーのものだったらしい。
「上着もないとおかしいよ」
などと言ってやはりゆったりした「Gジャン」とセットで買ってもらい、ちょっぴり背伸びして不良を気取るつもりだったのに作務衣姿のように清く正しいジーンズライフが始まってしまった場所である。

清水みなと祭りと八雲神社祭典と少年柔道メンバー募集のポスターがある『樋口米店』。
タスポカード用の写真を無料で撮りますという立て看板があり、ガラス戸に貼られた手書きポスターにも共通した、味わいのある文字を書く店主がいるんだなぁとしばし見入ってしまう。

「 WE BELIEVE 」清水エスパルスのポスターがある『堀折箱店』。
やはり 36 年ほど前、母親が営んでいた飲み屋のお使いで経木や割り箸などを買いに通った懐かしい店。驚くくらいに何も変わっていなくて、まわりの世界が勝手に変わってしまうことによって良い顔になっているように見える。
 
第二の顔が並びはじめた巴町商店街の肖像を眺めながら新清水駅に向かう。

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【ご覧の通り】

【ご覧の通り】

郷里静岡県清水万世町。
南高梅を使い、紫蘇による天然色で、ちゃんと天日干しした、ご覧の通りの本物だというのだけれど、その本物が見あたらない。
手前の札を見るとさっきまでここにあって売れてしまったのかも知れない。


大・中・小どれでもよりどり500グラムで、1パック1,500円プラス消費税だという。
ネットでこういう仕様の梅干しを買うと確かに1,500円くらいするので本物を見て買えるなら、リーズナブルな値段と言えなくもないけれど、ご覧の通り本物がないと「えっ?」と思うほど高く感じるのが不思議。

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【駐車場】

【駐車場】

郷里静岡県清水。
生家を取り壊した後は駐車場にでもしようかと思うと友人に話したら、もったいないからその時は舗装などするなと言う。
駐車場を舗装することによって周囲の気温もずいぶん上がるそうで、近所のご迷惑にならなければ未舗装でもいいかなと思う。


そんな話を友人たちとしていたら清水の未舗装駐車スペースがとても気になる。
クロネコの顔と全身像の人形はネコのトイレ化を防ぐ工夫だろうか。
それとも眼が光るので夜間の誘導灯がわりだろうか。
そしていつもこうして夏みかんを置いているのだけれど、夏みかんにも未舗装駐車スペース維持のためのノウハウがあるのだろうか。
そちらはちょっと想像がつかない。
落ちた夏みかんを嫌う動物でもいるんだろうか。

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【辻一里塚発掘現場】

【辻一里塚発掘現場】

郷里静岡県清水、旧東海道辻の一里塚があったあたりで地面が掘り返されていたので「おっ!」と思う。
東京だとこれくらい掘れば必ず江戸時代の住居跡などが出てしまうので必ず発掘調査が始まる。


旧東海道の一里塚脇なので何か出てきても良さそうなものだけれど、これは江戸時代のものじゃないよなぁと思いつつ、念のために写真を撮っておいた。

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