電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
◉「ナンデスカ」
2019年5月16日(木)
◉「ナンデスカ」
腰痛からようやく復帰しかけた妻が今朝は肩が痛いという。何年か前に肩が激痛に襲われ、痛みをこらえて近所の整形外科に行ったら典型的な五十肩だと言われた。帰宅して「五十肩だって言われた」と言ったら「あら五十だなんてサバ読んじゃって」と妻が笑う。そういう問題じゃないだろうと腹を立てたら激痛が走った。
痛そうに首の付け根を抑えた妻が「わたしも五十肩じゃないかしら」と言う。「あら五十だなんてサバ読んじゃって」と同じことを言うのも芸がないので、「五十肩はそんな生易しい痛みじゃないよ」と言ってみた。これはまずい。他人の痛みの度合いはわからない。比べられないものを比べてはいけない。そう言われてなおさら増す痛みもあるだろう。
幼い頃ヘルニアの手術を受けたことがある。手術室で先生が「手術は痛いと思うか」と聞くので「思う」と答えたら、赤チンでお腹に「いたくない」と書かれてしまい、看護婦がそれを見て笑っていた。恥ずかしいやら馬鹿馬鹿しいやらで痛みの記憶はない。ああいうのを名医と言うのだろう。「腰が痛まない姿勢を探して寝ていたから、首や肩に負担がかかったのかもしれないよ」と言ってみた。赤チンで肩に「いたくない」と書いてやるわけにもいかないので、痛み止めを飲みスミルスチックを塗ってなるべく動かすよう言っておいた。
小さな出版社の社長が倒れてリハビリ入院中になっている。その間も雑誌2冊発行と単行本の制作は続いているので、友人たちらしき人々がやってきて手伝っている。70 歳すぎて現役を退いた人たちだけれど、皆編集者として人生を勤め上げた人たちなので手際がよい。「ぜんぜんわからん」「まいった」と言いながら、困惑しつつ活性化しており、昭和の時代は当たり前だった地域総出の葬祭を思い出した。引越しといえば業者に頼まず友人総出で鉢巻しめて手伝っていた時代である。入院中の社長から SOS 電話があったので出かけて行き、初めて会う人たちと打ち合わせをしてきた。
打ち合わせ帰り 1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm
帰りは坂を上って本郷通りまで歩き、大好きな堀江米店のぼた餅を買った。仕事場に戻ったら児童書出版社の女性編集者が来て妻と打ち合わせ中だったのでお茶菓子に提供した。
打ち合わせ帰りの日本聖公会東京聖テモテ教会 1 Nikor 1:3.8-5.6 f=35-110 mm
連休後に鳥取で一人暮らししているお母さんのもとに帰省していた女性編集者からクール宅急便が届いていた。開けてみたら海老も貝も生きて動いており、動くたびに妻が「ギャッ」と悲鳴をあげている。こういう状態で山陰の海産物が届く時代になった。早く成仏させないと可哀想なので、仕事を早仕舞いして相撲中継を見ながら家庭内海鮮居酒屋を開店した。
台所に立つ妻に声をかけると、「ナンデスカ」と腰と首が痛いので全身が回転して振り向き、また別の種類のロボットになっている。
(2019/05/16 記)
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