【お金は笑う 】

【お金は笑う 】

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2001 年 1 月 18 日の日記再掲)

金が金を生んで笑いが止まらないなどという浮かれた時代が終わり、町角にはお金にまつわる素朴な笑いが風に吹かれている。

地下鉄の券売機、その先頭で紙幣挿入口に千円札を押し込もうとしている中年の紳士がいるのだけれど、何度やっても紙幣が吐き出されてしまう。

「おかしいなぁ」

などと一人ごちながらトライしているのだけれど同じことの繰り返し。列のうしろの人びともいらいらして前の人の肩越に眉をひそめて覗き込んでいる。

どうやらあきらめて列を離れ両替にでも行こうとしたのかもしれない。周囲の冷たい視線に気づいたとみえて洒落たセリフをつぶやいた。

「やっぱり偽札はだめだなぁ」

くすくす笑いがもれた。

(写真は 2001 年 1 月 27 日、雪の朝の六義園)

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