2024/05/26 記
----------------
ハッカーさん、昼夜の気温差が大きい一日でした。映画「関心領域」を観た帰り、小田原駅ホームに吹く風は冷たく、長袖正解でした。
-----------
母に趣味仲間の訪問予定があり、母の見守りを任せられるので、気になっていた映画を観にいくことにした。近くでは平塚に上映館があったが、設備や従業員の質ともに、視覚障害者には危険だった。しかし、茅ヶ崎から繋がりのいい他館は川崎・海老名しかなく、川崎館は駅から離れており、両館とも上映開始時刻が、合わなかった。こうして行き先を決めかねていると、初めての小田原市内館が目についた。地図とガイドに寄ると、国府津と鴨宮の間にあり、いずれも徒歩20数分。路線バスが指示されていた。小田原コロナシネワールドである。だが開始時刻は、探す余裕が取れた。国府津より館が近く小さな駅だから鴨宮の方が路線バスが探しやすいだろうと、誤った判断をした。
駅前に人通りが全くなく、交番はしまっており、なんと鍵がかかっていた。日曜日が祟った。バス停がわかりにくく、時刻表は痛み字が小さく読み取れなかった。すくなくとも、すぐにバスが来る気配なし。偶然客待ちしていたタクシーが有ったので、いくらぐらいかきいてみた。ずっと渋滞するところなので、1500円位かかるという。土地勘のない悲しさ。田舎のタクシー値段と不満を飲み込んで、鴨宮で私は鴨になった。確かに大渋滞。ひどく時間がかかり、1600円取られた。しかしこれは、情報不足による悲劇だった。帰りに館のガイドさんの誘導があり知ったのだが、利用領収書があれば、乗車券引換で、小田原駅新幹線側ロータリーまでの無料送迎バスが1時間に1本有ったのだ。帰り、ここの時刻表を取得し忘れたが、タクシーの罠がわかった。
-----------
映画「関心領域」の内容ガイドは、25日のブログにリンクを貼っておいたので利用して欲しい。
ナチスのユダヤ人120万人が虐殺されたというアウシュビッツ強制収容所の隣接地に広大な庭園に居をかまえたナチス軍人や収容所管理者家族の平和で幸せそうな日常が延々と描かれている。壁の向こうの地獄に全く関心を示さない無関心の怖さ、残酷さ。
私が辻堂駅構内で路上生活者@@さんを失った悶死の彼を避けて通った5時間の善良で忙しい無関心な罪なき人々の回避につながる、恐ろしい談笑とたわいのない会話。川遊びの最中に金歯をみつけるが意味がわからない子どもと、昇進転勤命令をめぐって夫婦が口論になるが、妻は「こんなに素晴らしい」地に私宅を持ったのに捨てるのかと夫にせまる。素晴らしいという強烈な無関心の怖さ。
15時台の上映観客は4人。そのうちのふたり、若夫婦は、明らかに、内容を知らず、ふたりだけになりたかった風。終了時に、筋が全くわからなかったと不満を口にしていた。日曜日に4人である。
-----------
作品のカットには「ヘス」という人名が入った台詞が何回か出てくる。予備知識がなかったら、たとえそれが欧米の常識だとしても、日本人にはわからないだろう。そういうもどかしさ、最後のアウシュビッツ博物館ロケなど、暗喩多用の作品だけに、皆に観て欲しいとはいいきれない。繰り返すが、もどかしい。
-----------
視覚障害の身からすれば、すべてのカットがバックライトの影絵の輪郭だらけであったり、脇の傍観者の視角であったりして、観客の感情移入をはじいてしまう。見えない影のハーフトーンコントラストの表情は見えない。補完の状況予測、文脈の手がかりのたどりにくさ、それゆえ、しがみつく和訳台詞が、太ゴチで字はよみやすいのだが、画面下枠ぎりぎりに押し下げ、文字の大きさを確保していて、観客席の陰になって文字切れを起こしてしまい、前方の席ではそれが問題になる。視覚障害者にとって字幕の比重が大きいので、なおさらに厄介に感じてしまう。筋が追えないのだ。
-----------
しかし、憂鬱な話ばかりではない。視覚障害の申し入れ後、チケット購入、通路誘導、着席、終了時の迎え誘導、送迎バス停までの誘導、乗車券申請代行まで、完璧なサポートだった。慣れた歩速や、他の従業員の配慮も的確であり、社員研修を感じさせた。鴨宮の鴨としては、新しい映画館の選択肢をふやしたのだった。
-----------
帰宅時、母はひとり風呂に入ろうとしていた。危ないところだったが、これが始まる時は、体調良好のときなのだが、油断禁物なのだ。
(校正1回目済み)