2010年07月21日 中国新聞「広場」掲載
棚田の大敵は「モグラ」と聞いていた。モグラは地中にトンネルを掘り、ミミズや昆虫の幼虫などを食べる。このトンネルは、棚田の水抜けの原因となり、被害は稲作の命取りという。
訪ねた農家で棚田を見下ろしながら、モグラのことを聞いた。「これがモグラ捕獲機」と納屋からブリキで作った円すい状の2本の筒を持ち出された。
使い方は、細い方を向かい合わせモグラの通り道に埋める。この人工トンネルに入ったモグラは先細りで進めなくなる。入る側には逆支弁があり、1度入ったら絶対に後ろへはさがれない作りにしてある。
毎日欠かせない田の水の見回り時に、モグラトンネルで隆起した場所を見つけ、そこへ仕掛ける。「仕掛ける向きと深さは経験」と見えないモグラとの攻防を教わった。
狭い棚田でする作業のいろいろを聞きながら、伝来の棚田を守るには、ひとときの油断も許されないことを実感した。
これまで棚田の美しさをただ称賛していたが、その裏にある労苦を少し知り、目の前の苗の緑が濃く見え始めた。
(写真:訪れた棚田、捕獲機は7月1日掲載)