年賀状準備の季節になると心待ちしない薄墨で書かれたはがきが届く。今年もこれまでに昨年より多い枚数が届いた。年末までの日かずを考えると少し気が重い。今年もはがきを受け取ってそのことを知り、驚いた何枚かがあった。そんな中に普通のはがきで届いた次のような1枚が気に止まる。
「さて、ちょうど年賀状準備の時期を迎えておりますが小生思うところあって このたびから幣方からの年賀状出状を遠慮させていただくとともに貴方からの年賀状についても失礼ながらご辞退させていただくことといたしました 突然に勝手な申し出で恐縮ですが何とぞご了解下さいますようお願い申しあげます」
これは関東にお住まいの元上司から。現役のころはラガーマンとして鍛え抜かれた身体剛健、度量は広く大きく、酒量はこの方の右に出る人を知らぬまま過ぎた。仕事は「いい事は部下、悪ければ責任は上司」という姿勢だった。上司に恥を欠かせない、部下はいつしか自分の責任を自覚し職務に取り組んだ。
そんな上司だった人の体調不良知ったのはこの夏だった。「思うこところあって」はその延長線にあるのではと思う。それほど進行しているということだろうか。退職前の菜園つくりは出張のおり何度か伺っていた。退職後は一反ほどの農園を楽しんでいる、そんな便りも届いていた。
年に1度だけの音沙汰の人が多くなった。元気なころの印象だけが残っており、その変化を知ったときの驚きは大きい。いつかわが身だろうが、そこまでは健やかでいこう。