ある古い雑誌の別冊を読んでいたら次のような文章が目についた。「町中で『鈑金塗装』の看板を見かけると、何となく職人さんの誇りを感じて嬉しい気持ちになる。金属を板のようにやわらかく打ち延ばすからこそ、『金偏』が必要なのです」とある。数年前に読んだときには気づかなかった。うっかりしていたのだろう。
車の修理でお世話になるその工場には「板金」とあり「鈑金」とはなっていない。おそらく後の方を看板に掲げる工場や店舗は見かけない。辞書を引くと「板金・鈑金」と並んでいる。その意味は1:切金(きりきん)を板のように薄く打ち延ばしたもの、2:金属を常温で塑性加工すること、とある。1は金その物、2は金属を常温加工することで、本来の違いが分かる。
先の人はこうも書いている。現在は「鉄が溶ける」と書くが、本来は「鉄が熔ける」が正しい。鉄は火がとかすのだから「さんずい」でなく「火編」だという。確かに鉄は水ではとけない、「熔」は金属の場合に使うとある。敗戦時の当用漢字制定がこうした原因という。
そんなことで思い出した。今年、5月21日の金環食、メモに金環「蝕」としていたら報道は全て金環「食」となっている。あっ、間違っているのだ、としぶしぶ訂正した。板につられ探すと「食」の意味で、蝕の通用字で「ある天体が背後にある他の天体を隠す現象」とある。蝕の字の天体についての説明はなく食の字を参考にとある。少しずつ欠けていくのは蝕が似合うと思うのだが。
TV番組で整形外科の先生が「骨格」と書かずに「骨骼」と書かれたのを見て「変わった医者だ」と思った。よく考えてみると「骼」が正解だと気づく。漢字は面白い。