小川が2本流れていた。どこの家の田んぼもその小川のどちらかに接していた。2本は本流へ合流する手前で1本となって水量を増した。小川にはフナやメダカ、時にはナマズも姿を見せる遊び場のひとつだった。増水すると辺りは冠水、小川も道も分からなくなる。水が引くのう待ってフナなどを追った。
そんな小川に田植えの時期に登場するのが足踏み水車。小川の流れを遮るように田んぼごとに取り付けられる。農家の人はその水車の羽根を1枚ずつ素足で踏みしめながら回転させる。すると水は羽根に乗せられたて田に注がれる。水をおろした羽根は踏まれてまた水の中へ。際限なく続く。
ゆっくりと力を入れながら踏みしめる足に応えるように羽根はしっかりと水をくみ上げる。田に注がれた水は小川から離れた方へ流れて行く。広い田を満たすのは大変な労働だったと思う。水が満たされるとツバメが水面すれすれに飛び、急上昇するようになる。そんな小さな小川でも水が枯れたという記憶はない。
いつの間にか小川も田も埋め立てられ大きな道路が作られ、商業施設や宅地に変わった。そのころの景色が残っているのはローカル線だけ。そこも蒸気機関車からジーゼル車に変わった。思いだす頭はその頃のまま進んでいないようだ。子どものころ見て遊んだ田んぼと小川が懐かしい。
(写真:増水で靄にかすむ錦帯橋)