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村上龍『空港にて』

2018年08月01日 23時46分07秒 | 文学
とあるブログ(「ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記」)で紹介されてあるのを読んで興味を持ち、村上龍『空港にて』(文春文庫)を読む。

「コンビニにて」
誰が語っているかによって、どのように描写されるかが変わるということを、たぶん村上龍は主張したいのだろうと思った。
語り手は音響の仕事をしていた青年で、周囲の音や、そこから理解される周りの人間の行動に敏感である。
何がすごいと言って、何も起きないのに、何か感じるものがあるのがすごい。

「居酒屋にて」
居酒屋で男女六人が食事をしていて、そこでテレビではプロ野球中継が放送されていて巨人の桑田が投げて、横浜の鈴木がバッター。その短い時間に、語り手の祐子が語る。
最初の短編ではアメリカに映画を学びにいく青年の話で、この短編ではフランスに絵の勉強をしにいこうとする女性の話だった。
この本はまだたくさんの短編が入っているが、すべて別の国、別の芸術、の話をするのだろうか。

「公園にて」
和歌山カレー事件が取り上げられる。その当時に書かれたのだろうか。少しあとのようだが。
「公園デビュー」とか、幼い子どもを公園に連れて行くのにも母親同士の礼儀があるというようなことがよく言われた時期があった。
フウタ君のおかあさんが生物学の研究のためにアメリカに留学するという話が出てくる。
今回は語り手ではなく、その知り合いの留学。
村上龍はいまでも(といって十五年ほど前か)SMとか言っているのだなと思った。
村上龍を僕が好きになったのは『トパーズ』を読んだころだ。

「カラオケルームにて」
いままでもっとも切ない。もうやめてぇ、という感じ。
村上龍はマッチョな作家のようでいて、切なさをとても巧みに描く。
語り手がおじさんだからかもしれない。おじさんの話に共感なんかしないだろうと若いころは思っていたはずだが、すっかり共感できる。
吉永小百合とマヒナスターズの歌「寒い朝」のイントロと第一小節あたりを歌うまでの間の短い時間の間に過去を振り返る。
この歌を聞いたことがなかったので探して聴いてみたが、イントロは非常に短い。この間にあんなにいろいろと考えたの、と思う。
懐かしい歌といえば、最近DA PUMPが再度売れて、昔の歌も歌うのでテレビで見ることがあるのだが、非常に懐かしい。ISSAは変わらず歌が上手い。
「仲間の中古のオープンカー」と歌うのを聞くと「オープンのツーシーター」を思い出す。
僕がもしも十五歳から二十五歳くらいの金色の髪と赤い髪の二人の女の子とカラオケに行くようなことがあれば、DA PUMPを歌おうと思う。
そういえば、誰か留学したっけ?

「披露宴会場にて」
映画のシナリオを書いている男が最後に謎解きをして終わる。
この謎解きが正解なのかどうかはわからないが、小説として上手く纏まっていると思う。上手。
ここでも誰も留学しない。この短編集の「留学しばり」はなくなったのだろう。

「クリスマス」
これだけタイトルに「にて」が付かない。
クリスマスの夜にパーティのチラシを見てそこに行く話。
モロッコに行くというような話があるので、これを留学と呼べるのかもしれない。
なにかパーティに参加するみたいな話が、昔読んだ『55歳からのハローライフ』にもあったような気がする。

「駅前にて」
不幸なおじさんを見ると自分を見ているような気分になり、今回も語り手の夫の、家から出られなくなってしまった男をひどく切なく思った。
私は家から出られるが、いつかそういうことになるのではないかと思うこともある。
今回はキューバに行くことになるかもしれない、というところで終わる。だんだんと「留学しばり」が戻ってきた。

「空港にて」
義肢を作る勉強をするために熊本へ行こうとする女性が語り手。そしてまた不幸な夫(元夫)が登場する。
この短編集は、ある特定の場所で、現在の状況と過去の状況が行ったり来たりするというのが共通している。

英語を勉強するために、ビジネス書のような、自分を奮い立たせてくれるような(留学したくなるような)ものを少しだけ期待したのだが、そのような単純なものを村上龍が書くわけが無い。
とてもおもしろい短編集だった。
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西真理子『「英語を話せる人」と「挫折する人」の習慣』

2018年08月01日 14時12分41秒 | 英語
西真理子『「英語を話せる人」と「挫折する人」の習慣』(明日香出版社)を図書館で借りて読む。
この本には役に立つことがほとんど書かれていなかった。
ただひとつ、『バンクーバー発音の鬼が日本人のためにまとめた ネイティブ発音のコツ33』(リチャード川口著)という本について知れたのだけが良かった。
一つもないよりも、一つだけでもあったので良かった。
「英語」というテーマであるだけで、ほとんど内容のない本がたくさん出版されているのだろうなと思った。
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