夏目漱石の「虞美人草」を読んだ。
NHKの番組のおかげであらすじがしっかり頭に入っていたので、内容はよくわかった。
はじめ、流れの急な川を途中にある石をぴょんぴょんと跳びながら渡るように、会話文がくるとほっと一息つき、地の文章はなんて読みにくいんだと思いつつ読んでいたが、半分くらいを過ぎたあたりでそういう印象もなくなった。
文章の読みにくさを別にすれば、物語自体はたいへんにわかりやすい。
井上孤堂先生が小野さんの代理としてやってきた浅井君を責めるあたりはとても好きな場面だ。
浅井君というチョイ役の、金の問題さえ片が付けば、なんにも問題は残らないと思っている人間が登場して、結婚問題も結局は契約の問題だけだと考えていてそのように問題解決しようとし、孤堂先生に責められる。
吉本隆明の「転向論」は、インテリたちが理論だけですべてわかったような気になっていても、結局は家族や情の問題に足をすくわれる。そういう情の問題についてまるっきり何にも解決できていない、といったような話だったと思うが、そのようなことを考えた。
小野さんは藤尾のほうに行こうとしていたのに、過去からやってきた女、小夜子に追いつかれてしまう。みんなに総出でねじ伏せられ、過去と結婚させられた形だ。
藤尾はなぜか突然死んでしまう。
藤尾の母は娘が死んだというのにみんなに反省を促され、結局反省せざるを得ない。
あんまりやりすぎでちょっとかわいそうにもなる。
解説に、正宗白鳥の「勧善懲悪だ」という批判が載っていたがそう言いたい気持ちもわかる。
しかしそういう部分もあるが、なかなかおもしろい小説だったと思う。
だらしのないところを立派な人に責められる場面がわりと出てくるので、夏目漱石の小説は好きだ。
最後の、
「此所(ここ)では喜劇ばかり流行る」
はいい言葉だと思う。
小夜子の泣く場面は「明暗」を思い出した。
朝日新聞で連載されていた小説なのだが、物語中に朝日新聞が登場した。
憮然(ブゼン)が正しく使用されていた。憮然とは「失望・落胆してどうすることもできないでいるさま」だ。決して、帰ってきた朝青龍の顔ではない。あれは仏頂面だ。
憮然はブーってした顔ではない。
しかし明らかにかなりたくさんの人が間違っているようなので、ブー顔のほうが一般的になりつつあるようにあると思う。まあそれならそれでいいんだけど。私は広辞苑に従います。しかし意味が変更されてしまうと漱石が読めなくなるな。
なんだかいろいろ言いたい小説だ。たぶん名作なんだと思う。
NHKの番組のおかげであらすじがしっかり頭に入っていたので、内容はよくわかった。
はじめ、流れの急な川を途中にある石をぴょんぴょんと跳びながら渡るように、会話文がくるとほっと一息つき、地の文章はなんて読みにくいんだと思いつつ読んでいたが、半分くらいを過ぎたあたりでそういう印象もなくなった。
文章の読みにくさを別にすれば、物語自体はたいへんにわかりやすい。
井上孤堂先生が小野さんの代理としてやってきた浅井君を責めるあたりはとても好きな場面だ。
浅井君というチョイ役の、金の問題さえ片が付けば、なんにも問題は残らないと思っている人間が登場して、結婚問題も結局は契約の問題だけだと考えていてそのように問題解決しようとし、孤堂先生に責められる。
吉本隆明の「転向論」は、インテリたちが理論だけですべてわかったような気になっていても、結局は家族や情の問題に足をすくわれる。そういう情の問題についてまるっきり何にも解決できていない、といったような話だったと思うが、そのようなことを考えた。
小野さんは藤尾のほうに行こうとしていたのに、過去からやってきた女、小夜子に追いつかれてしまう。みんなに総出でねじ伏せられ、過去と結婚させられた形だ。
藤尾はなぜか突然死んでしまう。
藤尾の母は娘が死んだというのにみんなに反省を促され、結局反省せざるを得ない。
あんまりやりすぎでちょっとかわいそうにもなる。
解説に、正宗白鳥の「勧善懲悪だ」という批判が載っていたがそう言いたい気持ちもわかる。
しかしそういう部分もあるが、なかなかおもしろい小説だったと思う。
だらしのないところを立派な人に責められる場面がわりと出てくるので、夏目漱石の小説は好きだ。
最後の、
「此所(ここ)では喜劇ばかり流行る」
はいい言葉だと思う。
小夜子の泣く場面は「明暗」を思い出した。
朝日新聞で連載されていた小説なのだが、物語中に朝日新聞が登場した。
憮然(ブゼン)が正しく使用されていた。憮然とは「失望・落胆してどうすることもできないでいるさま」だ。決して、帰ってきた朝青龍の顔ではない。あれは仏頂面だ。
憮然はブーってした顔ではない。
しかし明らかにかなりたくさんの人が間違っているようなので、ブー顔のほうが一般的になりつつあるようにあると思う。まあそれならそれでいいんだけど。私は広辞苑に従います。しかし意味が変更されてしまうと漱石が読めなくなるな。
なんだかいろいろ言いたい小説だ。たぶん名作なんだと思う。