一人当りGDPを真剣に報じる愚

2005-01-15 22:34:43 | MBAの意見
読売新聞は1月14日の記事で、内閣府の試算をもとに、2003年の日本のGDPが6位から9位に後退した、とさも残念そうな書き方をしているが、そういう考えは「愚」だ。

リストをつくってみると、こんなものだ。

2003年の一人あたリGDPの上位国 金額(ドル)

1 ルクセンブルク58,440
2 ノルウェー 48,754
3 スイス 44,888
4 デンマーク 39,622
5 アイルランド 38,455
6 アメリカ 37,424
7 アイスランド 36,311
8 スウェーデン 34,000
9 日本 33,727
10 オランダ 31,778
11 オーストリア 31,164
12 フィンランド 30,898
13 イギリス 30,432
14 ベルギー 29,282
15 フランス 29,251

まず、GDPという統計は二次統計であり、いきなり計算できるものではない。いくつかの経済指標をもとにいわば推定して作るようなものであり、経済活動のすべてを網羅する絶対に正しいものということではない。中国のGDP統計が怪しいのは、各省ごとの計算値を集計しているだけと言う事情もある。

さらに、本来、GDPは各国通貨で計算されるものであって、ドルベースの統計ではない。それを無理やりドルに表示しているわけだが、為替は変動相場であり、1年の間に20%も違うこともある。要するに、適当に割り切って換算するわけなのだが、為替によるGDPの変動など、あまり意味はない。

また人口にしても、どの国も国内の外国人比率が高くなっていて、それらをどうやってカウントするかどうかも一人当たりの計算には影響する。

次に個別論だが、上位5位までをみるとヨーロッパの小国と金融立国が並ぶ。1位のルクセンブルグは金融立国政策という言い方をするが、実際にはファンド運用益への課税を無税にしているはずで、私の持っている何本かの円建て外債もルクセンブルグ法人が運用していることになっている。ルクセンブルグの国民とは関係ない。ノルウェーとデンマークは北海油田の原油価格高騰による。つまり2004年には、もっと原油価格は高騰したため、ノルウェーが1位になるだろう。
アイルランドはGDPが実質的に相当成長している。ここは本物だ。ただし、EU効果を生かしているため全産業というより、特定の分野に特化しているようだ。私のコンタクトもアイルランド製だ。貿易統計を見ると有機化合物の輸出が非常に多いが何だろう?ただし、国民の数は横浜市と同じくらいだ。アイスランドの人口も30万人以下だ。

やはり、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアといったところと比較しておいた方がまだましだと思う。また国民の豊かさを示そうというのなら、GDPだけでなく貿易赤字分を上乗せし、貿易黒字を差し引いてから人口でわるべきだ。よく、貿易赤字は悪いのではないかと思いがちだが、マクロ的にいえば正解だが、生活の豊かさを論じるなら逆だ。札束を切って、外国から輸入して、財を増やすから貿易収支が赤字になり、国内は物質的には豊かになる。

ところが、この一人当たりGDP、2004年の統計が発表されると大問題となるだろう。ユーロ高でユーロ圏の国は無条件で2割増えるはずだ。円は1割増えるだろう。そして、ノルウェーと英国という産油国は、さらに上に行く。日米ともに来年は15位争いになっているかもしれない。

しかし、日本についての朗報(?)は、2006年から、人口が減少することだ。一人当たりGDPが増加の方向に働くだろうが、それこそ、あまりにも情けない。


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