住めば都とはペットの話

2005-12-13 20:56:26 | MBAの意見
d08a74d5.jpg休日に、近くのショッピングモールを歩くと、中央の広場で、ペットの里親の希望者を募っている。区内の獣医会が主催のようだ。新たな主人の候補をカゴの中から心細そうに眺めるペットと目が合わないようにいつも遠巻きに見ているのだが、最近気付いていることがある。

それは、前は圧倒的に子犬だったのだが、今は圧倒的に子猫になっているということだ。犬から猫にペットの主流が移っているのだろうかと思い、ペットショップを何箇所か歩くと、どこでも猫が優位になっている。この1年でずいぶん変わったように思える。

例の3歳の人気猫「はっちゃん日記」もある。そして、少し前から、さらに見えてきた風景がある。それは老齢犬だ。ゴールデンレトリバーやシベリアンハスキーといった大型犬をベビーカーに乗せて朝の散歩をする落ち着いた感じの夫婦や、後ろ足にギブスをつけて、きわめてゆっくりと足を引きずりながら公園の芝生の上を進む老犬。散歩状況を見ても、元気のいいのは小型犬ばかりだ。

犬の年齢は7を掛けると人間と同じとは言うが、実感としては犬齢10歳まではそういう公式だろうが、それ以降は2掛けくらいではないだろうか。10歳=人間70歳、15歳=人間80歳、20歳=人間90歳。現在は2005年。おそらく、大型犬はバブルの象徴として、栄光の中、この世界に出生してきたのだろう。1988年-89年生まれ。人間でいえば85歳。そして、バブル以降の大沈下経済が、ようやく方向転換を迎える時に、静かにステージから去ることになるのは、何の因果だろう。

ところで、この犬と猫の関係、統計的にわからないかと思い、探していると、日本ペットフード工業会という組織から数字が発表されている。平成6年から平成16年までの、犬・猫頭数の調査だ。ペット数合計はどんどん増えていることがわかるのだが、この平成16年になって猫が急増していることがわかる。このペースでは、平成17年度は犬猫が逆転するだろう。

犬にも猫にも10年前後という寿命があることから、毎年の数字の増加は、ペットが亡くなったあと、飼いなおす場合と新規参入者がある場合ということだろう。1年間の数字から見ると圧倒的に16年度は猫ばかりだったのではないかとも読み取れる。(ただし、もともと猫には登録制度がなく、本調査はサンプリングによる電話聴き取り調査からの推定らしいので、猫数にはあいまいさが残るのだが)また、ペット産業にとって痛手なのは、猫より犬の方が儲かるだろうということなのだが、関係者ではないのでただの推測。

実際には、犬派と猫派とどっちも派など、ペットマニアは論理を超えているので、ここで優劣論を書くのは絶対に避けるが、どちらにも長所や短所があり、またそれ以上に性格には個体差が大きい。たぶん、人間以上に個体差はばらついているのだろう。

それで、ちょっと角度を変え、ペットとしてではなく肉食動物として、犬と猫を考えてみることにする。数日前に、こういうニュースがあったことから始める。

【ジュネーブ6日共同】世界自然保護基金(WWF)は12月6日、インドネシア・カリマンタン島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。WWFは「全くの新種か、テンないしジャコウネコの知られざる仲間」の可能性があるとしている。“新種”動物の姿は同島中部のカヤン・メンタラン国立公園に設置したカメラが2003年、夜間に2度だけとらえた。

報道の真偽は、現段階では定かではないし、カメラが捉えただけだし、なぜ「肉食」とわかるのか、といったプロ的な疑問を満たす内容にはなっていないので困った話なのだが、仮に肉食だとすると、どういう分類なのかということになっていく。報道では、テンかジャコウネコかとなっているが、ここのところに大きな鍵がある。

調べていると、世界中に多種類が存在していると思われる食肉哺乳類だが、実は陸上動物は主に7つの科にまとめられるとのことなのだ。イヌ、ネコ、クマ、イタチ、ハイエナ、ジャコウネコ、アライグマ。パンダとスカンクを追加する場合もあるらしい。新種の動物がテンかジャコウネコかというのはテンがイタチ科に属するからで、種としては新発見でも、科としては既存に属すると考えられているわけだ。

そして、勉強してみると、これらの数多くの食肉動物のすべてが、同一の起源を持っているというから、まさに驚きである。犬と猫は親戚ということだ。そして、その起源は「ミアキス」という動物で、北アメリカに棲息していたらしい。その後、陸続きだったベーリング海を渡ってユーラシア大陸に入ってきたあと、まず、ネコ科、クマ科、イタチ科が枝分かれしたらしい。

そのあとキノデスヌスという動物を経て、その他の科が形成され、イヌ科の仲間としてオオカミ、キツネ、タヌキにさらに分化。このオオカミからイヌが発生したというよりも、イヌは人間によって作られた動物らしいというのが定説になっている。ネコもほぼ同じであるが、イヌの目的がマルチパーパスの多用途であるのに対して、ネコの用途はネズミ退治という単一目的であることが特徴だ。そして、多くの食肉動物はまたしても陸続きのベーリング海峡を歩いてアメリカ大陸にも向かったそうである。

さらに、最近のDNA解析によると、オオカミからイヌが分化したのは、おそらく東アジアの朝鮮半島だろうということらしいのだ。韓国はソウルオリンピックの時に、イヌ食いを非難されていたが、その頃にイヌの本家があきらかになっていたら主客転倒していただろう。安易に豚肉を使ってホットドッグというコトバを使うなと抗議できたかもしれないのだ。

一方、ネコはエジプトが起源なのは以前から有名な話で、エジプトのお宝には「聖猫」というのがある(読み方がセイビョウというのはかわいそうだ)。松岡美術館に行けばいつも見られる。農耕文明に伴い、世界中に広がる。

そして、最後に日本の話だが、猫はネズミ捕り用の実用性を重視されたが、イヌの方は愛玩用だった。特に1687年から1709年の間に施行されていた生類憐令は、世界史上有名な法令であるのだが、逆に犬を飼っているとどんな罪を着せられるかわからず、市民は犬を捨ててしまったので、町中が野犬だらけになり、江戸の各所に囲い場ができたそうだ。野犬がなぜ危険かというと、犬は群れを作って自分より大きな動物を攻撃するように遺伝子をコピー&ペイストするからだ。

実は、この珍法令が、なぜ施行されたのかは邪説ばかりで真意はわからないそうである。最近の新説は、秀吉の刀狩のあと、徐々に緩んできた庶民の帯刀を取り締まるための口実というのがあるそうだ。犬をいじめないように刃物を取り上げる。これら江戸の再研究を取り組んでいる網野善彦先生の奥様が中沢新一を生んだ学者一家、中沢家の一員であることもわかってきた(関係ないね)。生類憐令は綱吉臨終の枕元で新将軍家宣が即日廃止を決定したそうだ。

d08a74d5.jpgところで、犬の話と猫の話とバラバラになってしまって収拾がつかないのだが、まず、猫についての感想を書くと、日本は猫にとっては、原産地エジプトよりも、もっとゴチソウ天国であるということだ。またたびやアジのひものといった大好物は日本に来た猫しか口にできない。

そして犬について書くとこちらも天国だ。綱吉の「囲い場」の最大のものは中野にあり、現在の警察学校になったそうだ。警察官のことを「権力の犬」という名誉ある名称で呼ぶようになったのは、これに起因しているという人もいるのだ。

さらに12年間に一度、お犬様をおまつりする行事があるのだ。そして実は、今、刻々と近づいている。その行事とは?・・・

d08a74d5.jpg戌年の年賀状の主役だ。来年の年賀状をめぐる大騒動はすでに始まっているそうだ。ことしの最大の特徴は、愛犬の写真に若干の修正をかけ年賀状にプリントすることらしい。そして、愛犬のデジタル撮影講座もどんどん開講されている。

ただし、くれぐれも熱くならない方がいい。愛犬年賀状を作るために犬を飼い始めるなんて本末転倒もいいとこだ。それに、いつも子供写真を年賀状に使う親バカも「実害なきかわいい異人類バカ」としておけばよかたのだが、突如、こどもの写真のかわりに愛犬の写真になったら、色々と家庭内のこととか心配に思いを巡らせてしまわなければならないからである。


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