震動(2012年 映画)

2023-05-03 00:00:38 | 映画・演劇・Video
2013年のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)の受賞作。

こどもの頃に母親に逃げられて養護施設で暮らしていた高校生の直は聾啞をかかえている。幼いころから一緒に暮らしている春樹は、友達たちとバンドを組んでいるが、その目的は、音の聞こえない直のこころに音楽を届けたいからだ。

しかし、バンド活動を続けるうちに、春樹と直の二人だけの世界に、少しずつ関係者が入りこむようになり、亀裂が生じてくる。

そんな時、いなくなっていた母親から直を引き取りたいと、突然の話がやってくる。揺れ動く二人の心の動きをカメラが追っていく。


新人発掘のための映画賞ということもあるが、平野朝美監督は脚本も書き、楽器や手話の勉強までして、たいへんだなって思う。妥協して「親からのDVで吃音になった」という程度にしないところがいい。

気になるのは、W主演の役名が、春樹と直では、村上春樹のベストセラー『ノルウェーの森』のようだ。春樹は作家で主役はワタナベなのだが、めったに本名を名乗らないので、読者の脳内には春樹君と刷り込まれる。そして最初の恋人が直子。後に施設に入り、自ら人生を終わりにしてしまう。

たぶん、監督は、男性中心主義者の小説家のことは興味も意識もないのだろう。あるいは、小説を知っていて不吉な運命を予感させるために使ったのかな。