白鶴亮翅(多和田葉子著 小説)

2022-08-19 00:00:06 | 書評
朝日新聞の連載小説。連載小説というのは始まるときには、どういう種類の小説なのかよくわからない。作家の得意分野だろうとは思うが、いつも同じような小説を書くわけでもないだろう。犯罪小説とか不倫小説とか内部告発、ドキュメンタリー。夏目漱石はそういう点で、愉快系もあれば心理小説も書いている。中島敦のような堅物でも失楽園(渡辺淳一氏)のような不倫活劇を書いたりしている。

実は、久しぶりに連載小説を読んだ。旅行とか行くときに新聞の宅配を止めても、WEB版で読めるので気が軽いわけだ。

ただ、読むのが辛いタイプの作品だった。場所がドイツで、東欧の知人たちの話を読むというのが、なんとも難しい。さらに連載中にウクライナ戦争は地獄化し、小説のメーンテーマが「ゲルマン×スラブの戦い」と読めなくもない展開になっていく。

小説のタイトルの『白鶴亮翅』というのは、太極拳の一つの型で、動きが鶴のようで背後からの敵を跳ね飛ばすように見えるらしい。

著者の分身のようなドイツ在住の女性が主人公なのだが、複雑な民族関係に巻き込まれていき、結局は太極拳の先生と親しくなっていくようなあらすじではあるが、主題を読み間違えているのかもしれない。