マラソンマン(1976年 映画)

2017-08-16 00:00:04 | 映画・演劇・Video
不覚にも、長い間、マラソン映画だと思っていた。あるいは「マラソンランナーの孤独」の影響があったのかもしれない。なにしろ、体が疲れているときによく見る夢がマラソンなのだ。最初はトップを走り、疲れてくると全員に追い抜かされて、周りには誰もいなくなって陽が沈み、真っ暗な中を走って道に迷い山の中にはいってしまう。以下省略。という感じだ。深層心理的にマラソン映画は忌避してしまう。

marathonman


主演のベーブ役がダスティン・ホフマンというのは知っていて、イメージとしてマラソンを走りそうではないか。ところが、彼はコロンビア大学の大学院の学生で政治学を専攻。マラソンは趣味で走っているわけだ。それにレースに出たこともない。

で、何の知識もなくこの映画を観ると、確かに怖い感じが最初から漂っている。後で考えてもよくわからないのは大学の教授はベーブや彼の父親、彼の兄のバッグボーンをよく知っていたわけだ。父親はマッカーシズムが吹き荒れた米国で赤のレッテルを貼られて自殺していた。

ということで、過去の米国の汚点を暴くのかと思うわけだ。なにしろダスティン・ホフマンはこの映画と同年1976年に「大統領の陰謀」という古くて新しい大統領の犯罪映画に主演している。

ところが、まったく違うストーリーが並行して走りだす。元ナチ党員でユダヤ人の人体実験を行っていたクリスティン・ゼル博士が潜伏先のウルグアイから渡米して銀行の貸金庫に保管しているダイヤを回収して換金しようとする。その過程で、次々に仲間を消していくわけだ。

一方、ダイヤ商はユダヤ人が多いわけで、そのあたりが緊張を高めていくのだが、ついに足の速い大学院生ベーブとゼル博士一味との決闘が始まるわけだ。

実際、劇中のゼル博士はヨーゼフ・メンゲルという実在人物がモデルのようで、ユダヤ人の口をこじあけて金歯をかき集めてポケットに入れていたようだ。映画が公開された後もアルゼンチン・ブラジルで潜伏を続け85年に亡くなっている。たぶん、変装の上、映画館でこの映画を観たのではないだろうか。

私の観察力が足りないのか、冒頭の大学教授の怪しい態度というのは何だったのだろう。彼もナチの仲間だったのだろうか。あるいはベーブから近づいて行って交際をはじめていた女性はゼル一味だったのだが、筋として不自然な気もする。

しかし、最後まで進むとよくわかったことは、ダスティン・ホフマンはピストルの達人であること。大勢の敵に対して一つも外すことなく各一発で仕留めている。そんなに銃撃がうまいならデヴュー作「卒業」でも、違う形のフィナーレができたわけだ。