「忖度」を詠む俳句と短歌

2017-08-23 00:00:22 | 書評
新潮社の月刊書評誌「波」の中のお気に入りの連載が「俳句と短歌の待ち合わせ」である。同一の「お題」が出題され、堀本裕樹氏(俳句)と穂村弘氏(短歌)の勝負は、今のところ互角だろう。たぶん両陣営は、かなりの犬猿の仲なのだろうとは思うが、正確なことは知らない。

今月のお題は「忖度」だった。元の意味は、相手の心を思い計ることというので、中立的なことばだったが、どこかの党の議員が、国会で悪い言葉として使い始めた。

まず俳句として、

 忖度をし合ひ差しあふ冷酒かな
 

 いかにも悪党同士が、相手が何を考えているのだろうとさぐりながら酒を酌み交わす情景が生々しい。さらに悪漢用語になってしまうような感じだ。

次に短歌、

 「忖度」とひとこと云ってねむりこむ悟空を抱いて浮かぶ觔斗雲

 きんとうんは、一とび十万八千里も飛び、孫悟空が頭の中で「次はどこに行こうか」と考えただけで、忖度し、目的地についてしまう。本来は、悟空が眠っている間に、意を汲んで移動するという優れモノだが、悟空はお疲れで頭の中真っ白で、忖度するにも何も浮かばないということだ。あるいは、いつまでも眠っていたいという悟空の深層心理を忖度したのだろうか。