樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ハチドリのひとしずく

2023年11月02日 | 野鳥
世界各国で山火事が発生し、特にハワイのマウイ島では深刻な被害が発生しました。そんな山火事にまつわる鳥の話を紹介します。

森が燃えていました。森の生きものたちは、われ先にと逃げていきました。でもクリキンディという名のハチドリだけはいったりきたり、くちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます。動物たちがそれを見て、「そんなことをしていったい何になるんだ」といって笑います。クリキンディはこう答えました。「私は、私にできることをしているだけ」。

これは南米アンデスの先住民に伝わる話。それを聞いて感銘を受けた辻信一さんが『ハチドリのひとしずく』という本を出版しました。



辻さんは文化人類学者であり、2001年に「スローライフ」を提唱した環境活動家。夏至と冬至の夜2時間をロウソクで過ごす「100万人のキャンドルナイト」を呼びかけた人でもあります。
本の中で、この物語の続きをそれぞれが描くように促し、環境ジャーナリスト・枝廣淳子さんが描く以下の続編を例示しています。



森が燃えているのを見たハチドリは仲間を増やそうと思いました。「それぞれが1羽ずつ仲間を増やすように伝えて!」―――2回伝わると4羽が、3回伝わると8羽が、10回伝わると1024羽が、20回伝わると100万羽以上が、そして40回伝わると1兆羽以上のハチドリがやってきて、あっという間に火事を消してしまいましたとさ。

ハチドリのような行動を「焼け石に水」と冷笑する人がいます。それは、森が火事になるとわれ先に逃げ出し、ハチドリに「そんなことをして何になる」と笑った動物と同じでしょう。
コメント (2)
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