樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

1夫11妻

2019年01月24日 | 野鳥
しつこいようですが、鳥の結婚形態の話を続けます。鳥の9割以上は一夫一妻制といわれています。ある学者によると、ほとんどの哺乳類は一夫多妻や多夫多妻で、鳥類のような一夫一妻は珍しいそうです。
その理由は、哺乳類は雄が授乳に関われないので子育てを雌に任せるのに対し、鳥類は卵を体外に産み落とすので、抱卵や給餌を雌雄両方で分担できるからとのこと。
以前ご紹介したタマシギ(一妻多夫)はきわめて珍しいケースですが、逆の一夫多妻も少ないながら存在します。身近な鳥ではウグイス。
日本鳥学会誌に掲載された研究報告によると、1羽の雄の縄張りの中で6~7羽の雌が7つの巣を造ったとのこと。造巣も抱卵も給餌も雌のみが行い、捕食者(カラス?)に対するモビングも含めて雄はヒナの世話を一切しなかったそうです。
鳥には鳥の生態があるので、私たちの価値観で「無責任な父親!」と糾弾はできませんが、人間の雄にとってはうらやましい話です(笑)。
ウグイスが春から夏にかけてずーっとさえずり続けるのは、より多くの雌を獲得して、自分の子孫を1羽でも多く残そうというDNAの仕業なのでしょう。



ウグイス以上にうらやましいのがセッカ。この鳥の雄は春先に渡来すると100m四方程度の縄張りを形成し、プロポーズのために巣を造ります。1つの巣ごとに雌を誘って交尾し、子育ては雌に押し付けて次の雌を誘う巣造りに励みます。
大阪府で行われた調査では、18個の巣を造り、11羽の雌とつがった雄がいたそうです。つまり、1夫11妻。その調査を行った鳥類学者は、「セッカは番(つがい)という概念では表せない」と語っています。
下の動画は昨年の夏に近くの干拓地で撮影したセッカ。いつも同じエリアでさえずっていました。複数の雌を獲得するために、巣造りに精を出していたのでしょう。



ウグイスやセッカのほか、オオセッカ、オオヨシキリ、コヨシキリ、ミソサザイも一夫多妻です。共通点は、餌が虫であることと雌雄同色。何か因果関係があるのでしょうか。
コメント (2)
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