酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

グリーンズジャパンで学んだ<世界標準>

2021-02-17 21:01:37 | 社会、政治
 先週末、グリーンズジャパン(緑の党)の総会に参加した。入会は2014年だから今回が8回目だったが、このご時世、ズームによるリモート会議である。政治とは人間が醸し出す空気感がベースだから、物足りなさは否めなかった。

 立脚点を示さず井戸端会議風に社会を論じることに限界を感じ、緑の党の扉を叩いた。<私は文学が趣味で、アイデンティティーと多様性を追求する作家、例えば星野智幸や池澤夏樹に共感を覚えています。自分の価値観に近いと考え、入会を希望します>……。こう動機を話す俺に、担当者はあきれ顔だったが、選択は間違っていなかった。

 この7年で学んだのは<世界標準>だった。緑の党は100カ国以上で活動しており、とりわけ欧州では分断と自然破壊を食い止める救世主的存在として支持を広げている。日本でも……と期待したいところだが、大きな壁がある。この国には<世界標準>に対する忌避感が漂っているからだ。

 日本が<世界標準>に届いていない点は多々あるが、まずはジェンダーについて……。森五輪組織委会長の発言が内外で非難を浴びたが、問題の根は深い。緑の党は結成当初からクオーター制を導入し、共同代表だけでなく全ての役職は男女同数だ。森氏ほどではないにせよ、俺はジェンダーに鈍感だったが、目を覚ましてくれたのは女性たちの活躍である。

 ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーダーン首相、アイスランドのヤコブスドットイル首相(グリーンズレフト党首)、そして<コモン>を掲げ世界の耳目を集めるバリャーヌ・バルセロナ市長……。世界を牽引する女性の名を挙げればきりがない。10代の2人、グレタ・トゥーンベリとビリー・アイリッシュの影響力は絶大だ。

 先進国で同性婚、あるいは同性パートナーの権利を認めていないのは日本だけで、<国際標準>とは程遠い。大日本帝国憲法の復活を目指す日本会議の代弁者である安倍前首相は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定める憲法24条を持ち出していた。だが、他の条文に謳われている自由と基本的人権とは相容れなくなっており、「同性婚禁止こそ憲法違反」と主張する憲法学者も多い。緑の党も同様だ。

 <国際標準>と懸け離れている最たる問題が、繰り返し記してきたい高額な供託金だ。緑の党は宇都宮健児弁護士が原告側訴訟団団長を務める供託金違憲訴訟に関わってきた。先進国では供託金は違憲で、殆どの国でゼロだ。公職選挙法も立候補者を縛るもので、日本の選挙は治安維持法とセットで制定された普通選挙法の悪しき伝統を引き継いでいる。

 この問題を反原発集会のブースで訴えたところ、<供託金制度がなくなったら有象無象が立候補して、混乱を収拾できない>と食ってかかってきた人がいた。原告側の訴えを退けた裁判長も、<国際標準>を無視し、自由と民主主義の価値に言及することはなかった。死刑についても構図は同じで、<戦争法に抗議する人の80%以上が死刑肯定派>という、死刑廃止がEU加入の条件である欧州から見れば〝異常〟と思える事態が日本では〝常識〟になっている。

 会員が企画するイベントやシンポジウムに数多く参加した。そのひとつが「脱成長ミーティング」で、環境と生態系破壊にストップをかけ、GDPに縛られず生活の質を問い直す試みだ。同ミーティングで議論された内容は、今や時の人となった斎藤幸平・大阪市立大准教授の著書と重なる点が多い。

 「オルタナミーティング」や「ソシアルシネマクラブすぎなみ」などの会員発プロジェクトも世界を広げてくれた。音楽ではPANTA、遠藤ミチロウ、友川カズキら熟年シンガーの気概に圧倒された。映画では地産地消、ローカリゼーション、フェアトレード、シリアの現実、アジアの貧困、軍隊のないコスタリカについて学ぶことが出来た。

 前稿で<身を賭す>ことの意味を問うたが、緑の党には様々な市民運動で主導的な役割を果たす〝身を賭す〟会員が多い。その中のひとりが武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司氏で、NAJAT発足集会ではともに発起人を務めた東京新聞・望月衣塑子記者も壇上にいた。

 俺には<身を賭す>覚悟も矜持もないが、ブログでは緑の党関連のイベントを紹介してきた。末端の広報担当というべきかもしれない。井の中から解放してくれた緑の党に感謝している。
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