酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

民主主義の夜明けは遠く~総選挙の結果に感じたこと

2021-11-02 22:53:40 | 社会、政治
 衆院選投開票日の前日(10月30日)、藤井聡太3冠が豊島将之竜王を破り、4冠に王手を掛けた。天下無双の藤井を翌日放映のNHK杯で完膚なきまで叩きのめしたのが深浦康市九段である。研究に裏打ちされた積極的な手順で終始攻め抜いたベテランの底力に感嘆した。

 将棋と政治とは関係ないが、何かの予兆では……。そんな風に感じたが、衆院選の結果は想定内の中でも最悪で、暗澹たる気分に沈んだ。自民党は議席を減らしたが、安倍-菅政権下の私物化にお灸を据えられた程度。深刻なのは立憲民主党で、野党統一候補で自公に挑んだ枝野代表は辞任に追い込まれる。大幅増の維新と国民民主党が手を携え、いずれ自民党の補完勢力になるだろう。

 永田町の地図には関心がないが、<多様性と国際標準>がこの国に根付くことに希望を抱いている。<多様性と国際標準>の指標を具体的に示せば9月末に投開票されたドイツ連邦議会選挙になる。投票率が77%(衆院選56%)、当選者の平均年齢は47歳(同56歳)、女性議員は33%(同10%)で、移民系議員が11%を占めた。

 日独両国、いや日本と先進国との差はどこから生じるのか……。何度も記しているので最小限にとどめるが、選挙制度が大きい。先進国ではあり得ない供託金制度(選挙区300万円)は、治安維持法とセットで成立した普選法を継承した制限選挙だ。

 2世、3世議員が幅を利かせ、衆参両院は貴族院の如きだ。格差は拡大の一途をたどるのに、貧しい者は立候補出来ない。国会の金満体質を批判する識者はいるが、根底にある供託金制度、候補者をがんじがらめにする公職選挙法に異議を唱える声は小さい。土壌が痩せているから、民主主義が育つ道は平坦ではない。

 欧米の移民への差別は話題になるが、上記したドイツに加え、フランスでは移民が市民権(参政権、被選挙権)を得て、政治に参加している。難民申請者への酷い対応、実習生の悲惨な状況と表裏一体になっているのが代用監獄、刑務所の非人道的な環境と死刑制度だ。EU加入の条件の一つは死刑廃止だから、被害者遺族に寄り添った厳罰主義に固執する日本は先進国とは見做されない。

 「週刊金曜日」は10月22日号で総選挙のテーマとして<多様性と国際標準>を測るリトマス紙として「選択的夫婦別姓」を挙げていた。戦前回帰を志向する憲法草案を掲げる自民党が認めるはずがない。ジェンダー問題や個人の自由に関していえば明らかに後進国だが、〝ガラパゴスで結構〟という開き直りが日本の主音だ。

 65歳のやさぐれ男らしい暴言を。「日本よ、俺がくたばるまで生きていてくれ」……。日本の国債の格付けは下がる一方で、1人当たりのGDPもアジア各国に追いつかれている。貧困率は先進国の中で4位というデータもある。何より厳しいのはエネルギーと食糧の自給率で、それぞれ約12%、37%と低水準だ。辞任するとはいえ甘利幹事長は〝原発ムラ〟の村長で、日本はエネルギー問題で後塵を拝している。

 八方塞がりの日本で、岸田政権はGDPを指標にした成長と新しい資本主義を志向するという。少子高齢化の日本では価値観の転換、即ち脱成長と共生が求められている。米民主党プログレッシブは〝資本主義より社会主義〟に価値を見いだす若年層に支持されているし、欧州では〝グリーン(緑の党)+レッド連合〟が勢力を拡大している。

 ペシミスティックな論調になったが、日本のどこかで新しい風がそよいでい
るはずだ。俺の心の中で、希望はまだ死んでいない。コロナ禍もありひきこもり気味だったが、アクティブな年金生活者になりたいものだ。
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