おととい(8日)銃撃された安倍晋三元首相が亡くなったた。別のテーマを用意していたが、参院選の結果と併せ、民主主義について感じたことを記したい。
内外から安倍氏の足跡を称える声が上がっている。〝死者に礼を尽くす〟が日本の美徳で、暴挙に斃れた安倍氏の冥福を祈りたいが、俺には評価するポイントが思い当たらない。無力な外れ者で、東京砂漠を芥のように舞っている俺には、世間と異なる景色が見えているのだろう。
初めて安倍氏の危険性を認識したのは20年以上も前に遡る。官房副長官だった同氏がNHK「戦争をどう裁くか~問われる戦時性暴力」(2001年)の内容を改変させた一件だ。朴元淳元ソウル市長は、番組の背景にあった「女性国際戦犯法廷」で韓国側検事として慰安婦問題を裁き、昭和天皇ならびに日本国を「人道に対する罪」で有罪と断じた。安倍氏の介入は、NHKの〝安倍機関化〟の端緒というべき一件といえる。
安倍氏を支えてきたのは日本会議など保守的なグループで、山上容疑者は統一教会と同氏の密接な関係を銃撃の理由に挙げていた。ただ、思想信条ではなく、家庭崩壊の要因になったという経緯があったという。安倍氏が会長を務めていた「神道政治連盟国会議員懇親会」(262人)の集まりで、性的マイノリティーへの差別的な言葉が書き連ねられた冊子が配布された。憲法改正のみならず、時計の針を逆戻りさせる復古的な動きの中心には、常に安倍氏が鎮座していた。
脇が甘い安倍氏は、耐震偽装との繋がり、パチンコ業界との癒着が取り沙汰されたこともある。松元ヒロは護憲集会(北とぴあ)で、辺野古埋め立ての事業者は安倍氏に近い企業>と明かしていた。五輪誘致の際の「汚染はアンダーコントロール」は非難の的になったが、首相として臨んだ「水銀に関する水俣条約外交会議」(13年10月、熊本市)の開会式で、「水銀による被害と、その克服を経た我々」という事実と反する問題発言が飛び出した。
<功>は一切なく、<罪>ばかり書き連ねるのは気が引けるが、安倍政権は汚穢と腐臭にまみれていた。森友、加計、桜、レイプ記者免罪、検察人事介入とコロナ以上の<国家私物化ウイルス>が蔓延する。政官財、司法、メディアでは忖度と同調圧力が空気になった。
今回の銃撃を<民主主義への脅し>とする論調は正しい。だが、安倍氏がこの間、力を尽くしてきたのは<戦後民主主義への弾圧>だった。そのことは、安倍氏と体質が近い指導者の対応に見てとれ、トランプとプーチンは家族に哀悼の意を示した。本音は〝シンゾーは扱いやすい男だった〟かもしれないが……。
1年で終わった1期目では、安倍氏は操り人形の如き脆弱さを感じさせた。ところが再登板した時、周りを恐怖で従わせる強さを身に纏っていた。この変身は容易ではないはずで、安倍氏の本質に迫るためには、この辺りの事情を解き明かす必要があるだろう。一方で、〝安倍氏のために力を尽くしたい〟と自然に思えるほど魅力的な人だったと語る身近な人々の証言もある、
民主主義の現在を測る指標というべき参院選は想定内の結果に終わった。驚きも怒りもなく、諦念と無力感を覚えている。別稿(6月28日)で紹介した「PLAN75」に抱いた感想は、「ニュルンベルク法」に匹敵する悪法が反対運動もなく粛々と施行されたことへの違和感だった。日本人に今必要なのは怒りの感情だと思う。
ロシアのウクライナ侵攻によって憲法9条の価値は上がっているのに、軍事費増強の声に掻き消され、改憲派が3分の2を占めた。100年前の普選法を引き継ぐ先進国であり得ないえない制限選挙は民主主義から程遠いし、貴族院と化した国会で格差是正を論じるのは困難だろう。安倍氏の死と参院選の結果の先に、民主主義の光は差すだろうか。
内外から安倍氏の足跡を称える声が上がっている。〝死者に礼を尽くす〟が日本の美徳で、暴挙に斃れた安倍氏の冥福を祈りたいが、俺には評価するポイントが思い当たらない。無力な外れ者で、東京砂漠を芥のように舞っている俺には、世間と異なる景色が見えているのだろう。
初めて安倍氏の危険性を認識したのは20年以上も前に遡る。官房副長官だった同氏がNHK「戦争をどう裁くか~問われる戦時性暴力」(2001年)の内容を改変させた一件だ。朴元淳元ソウル市長は、番組の背景にあった「女性国際戦犯法廷」で韓国側検事として慰安婦問題を裁き、昭和天皇ならびに日本国を「人道に対する罪」で有罪と断じた。安倍氏の介入は、NHKの〝安倍機関化〟の端緒というべき一件といえる。
安倍氏を支えてきたのは日本会議など保守的なグループで、山上容疑者は統一教会と同氏の密接な関係を銃撃の理由に挙げていた。ただ、思想信条ではなく、家庭崩壊の要因になったという経緯があったという。安倍氏が会長を務めていた「神道政治連盟国会議員懇親会」(262人)の集まりで、性的マイノリティーへの差別的な言葉が書き連ねられた冊子が配布された。憲法改正のみならず、時計の針を逆戻りさせる復古的な動きの中心には、常に安倍氏が鎮座していた。
脇が甘い安倍氏は、耐震偽装との繋がり、パチンコ業界との癒着が取り沙汰されたこともある。松元ヒロは護憲集会(北とぴあ)で、辺野古埋め立ての事業者は安倍氏に近い企業>と明かしていた。五輪誘致の際の「汚染はアンダーコントロール」は非難の的になったが、首相として臨んだ「水銀に関する水俣条約外交会議」(13年10月、熊本市)の開会式で、「水銀による被害と、その克服を経た我々」という事実と反する問題発言が飛び出した。
<功>は一切なく、<罪>ばかり書き連ねるのは気が引けるが、安倍政権は汚穢と腐臭にまみれていた。森友、加計、桜、レイプ記者免罪、検察人事介入とコロナ以上の<国家私物化ウイルス>が蔓延する。政官財、司法、メディアでは忖度と同調圧力が空気になった。
今回の銃撃を<民主主義への脅し>とする論調は正しい。だが、安倍氏がこの間、力を尽くしてきたのは<戦後民主主義への弾圧>だった。そのことは、安倍氏と体質が近い指導者の対応に見てとれ、トランプとプーチンは家族に哀悼の意を示した。本音は〝シンゾーは扱いやすい男だった〟かもしれないが……。
1年で終わった1期目では、安倍氏は操り人形の如き脆弱さを感じさせた。ところが再登板した時、周りを恐怖で従わせる強さを身に纏っていた。この変身は容易ではないはずで、安倍氏の本質に迫るためには、この辺りの事情を解き明かす必要があるだろう。一方で、〝安倍氏のために力を尽くしたい〟と自然に思えるほど魅力的な人だったと語る身近な人々の証言もある、
民主主義の現在を測る指標というべき参院選は想定内の結果に終わった。驚きも怒りもなく、諦念と無力感を覚えている。別稿(6月28日)で紹介した「PLAN75」に抱いた感想は、「ニュルンベルク法」に匹敵する悪法が反対運動もなく粛々と施行されたことへの違和感だった。日本人に今必要なのは怒りの感情だと思う。
ロシアのウクライナ侵攻によって憲法9条の価値は上がっているのに、軍事費増強の声に掻き消され、改憲派が3分の2を占めた。100年前の普選法を引き継ぐ先進国であり得ないえない制限選挙は民主主義から程遠いし、貴族院と化した国会で格差是正を論じるのは困難だろう。安倍氏の死と参院選の結果の先に、民主主義の光は差すだろうか。
無職状態の年金生活者で、暑い中、怠惰な生活を送っています。2