弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

PCT国内移行後の処理開始時期(3)

2006-03-31 00:04:11 | 知的財産権
PCT国内移行後の処理開始時期(2)の中で、PCTの国際公開の前に国内書面を提出しかつ審査請求しても、国際公開後にならないと国内出願番号が付かないし審査も始まらない、と書きました。

数日前、特許庁ホームページに国内出願番号の付与が早くなるというお知らせが発表になりました。
受理官庁が日本特許庁の場合には、国内書面の提出か国際公開の前か後かにかかわらず、国内書面提出から2週間程度で国内出願番号通知が発送されることになるそうです。

しからば、国内書面提出後直ちに審査請求した場合に、審査の開始も早くなるのだろうか、ということで特許庁国際出願課指定官庁担当に電話で聞いてみました。
結論として、審査の開始は今まで通りであり、特許庁が国際事務局から国際公開パンフレットを入手しない限り、審査を開始しないということです。国際公開前に審査請求があった場合、特許庁(指定官庁)から国際事務局にPCT規則47.4に基づく送達請求をするのだが、国際事務局から送られてくるのは国際出願の写しのみであり、結局国際公開後の国際公開パンフレット入手を待たなければ実質的な審査に入れないのだそうです。

早期に権利化したい案件については、PCT経由で出願してはいけないということですね。
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実務能力評価試験は可能か

2006-03-30 00:08:12 | 弁理士
弁理士会の声明「弁理士法改正の方向性」に「合格者の急増に伴い、実務経験のない合格者の大幅増が見られる」とあるように、新規合格弁理士の実務経験不足が問題にされているようです。
現在の弁理士試験は、基本的に法律の素養を評価する試験であり、実務能力の評価をしているわけではありません。もちろん、法律の素養は実務能力の最重要な部分ではありますが。
最近の論文必須試験の問題傾向は事例問題になっており、実務経験が豊富であると事例問題に強いのではないかと想像します。その想像が正しければ、試験問題の傾向において実務者に有利にはなっています。

筆記試験において「明細書作成能力」を評価することができれば、それにこしたことはありません。今までそのような試験の可能性についてどの程度議論されているのでしょうか。
もし、「明細書を作成させて評価する試験」が実現したら、受験機関で「明細書作成講座」を受け、「明細書作成答練会」で実力を磨くことになるでしょう。それはとても魅力的に感じます。合格したら明細書が書けるようになっているのですから。

私は、エンジニア時代に受験勉強し、知財部時代に合格し、特許事務所勤務時代に明細書作成をはじめました。明細書作成開始時には資格を持っていたので、明細書作成能力について誰も私を鍛えてくれませんでした。そのため、現在でも「私の作成した明細書で本当に穴はないだろうか」と心配になることがあります。受験生時代に明細書作成作法を習得していたら、もうちょっと自信が持てただろうと想像します。

しかし、筆記試験で明細書作成の本当の能力を評価しようとするのは、ちょっと考えてもなかなか難しそうですね。また「実務能力=明細書作成能力」というわけでもありませんし。結局は「そんなことできるわけない」と投げ出してしまいそうですが、ぜひ本気で議論したいものです。

それより、安直ではありますが、税理士試験に倣い、「実務経験1年以上を弁理士登録の要件とする」としてしまったらどうでしょうか。実務経験無しで合格した人は、特許事務所あるいは企業知財部で1年以上の実務経験を積み、その後ではじめて弁理士登録が可能になります。弁理士会の声明でも「実務能力」の中身を「実務経験」に置き換えていますから。
なお、税理士試験では実務経験2年を要求されています。

コメントでは「次々回」と書きましたが、ひとつ繰り上げました。
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弁理士試験制度の何が問題か

2006-03-29 00:21:55 | 弁理士
私はこのブログで弁理士試験制度の問題点と改善の方向について意見を述べました。また、PM2さんのコメントに触発され、さらに議論を深めようとしています。
ところで、現行弁理士試験制度の下で、どのような問題が発生しているのでしょうか。またその問題は、以前からあって現在もそのままである問題なのか、それとも最近の試験制度改正と合格者大幅増加に伴って増大した問題であるのか、その切り分けが必要です。

PM2さんは、
①「実務能力の不足している弁理士の増加」
②「技術の素養が欠如した弁理士の増加」
③「法律知識が十分でない弁理士の増加」
という切り分けを提示されました。「増加」とありますが、ここでは従来から存在する問題も含めて考えます。
PM2さんもおっしゃるとおり、試験制度改正の以前も以後も、実務能力を評価する試験ではありません。また、今後とも実務能力を評価する試験を案出することは非常に困難でしょう。
技術の素養については、試験制度改正前後のいずれも、それがなくても合格する試験制度となっています。

法律知識についてはどうでしょうか。
最近の試験内容の実態変化を見ると、
(1) 一行問題が姿を消し、ほとんどが事例問題となっている。
(2) 合格者数が100人から700人に増加した。
の2点が大きな変化でしょう。
この変化に伴い、各条文テーマ毎に基本書に記載されている、細々とした論点について理解し記憶しておかなくても、基本的な条文の理解と論理的思考力とを持っていれば合格レベルに到達する、という状況にある可能性があります。実際、最近の合格者はいわゆる基本書を徹底的に読み込むことをせずに合格していると聞きます。
私自身の受験勉強の成果として役立っていると思うのは、吉藤「特許法概説」については何が書いてあるかだいたい把握していた、という点です。これは実務をこなす上で大きな糧になっていたと実感します。最近の合格者がそのようなバックグラウンドをもっていないとしたら、それは可哀想であると思います。
ただし、上記の点はあくまで私の想像であり、本当のところどのような実態であるのかは不明です。
むしろ、弁理士試験メーリングリストなどでは、「平成一桁合格者は一行問題に対応してレジュメの暗記のみに走っており、実務能力が伴っていなかった」という理解が支配的であるようです。

試験制度との関係で、弁理士会が弁理士の能力(特に法律知識)をどのように評価しているのかについて、再度「弁理士法改正の方向性」を読み直してみました。
「合格者の急増に伴い、実務経験のない合格者の大幅増が見られる」とあります。しかし、合格者の中には一定の割合で実務無経験者が入っています。この点は試験制度改正前後で変わらないでしょう。そうとすれば、合格者総数が増えれば実務無経験の合格者が増えるのは当たり前ということになります。「弁理士試験のみでは弁理士の実務遂行能力は担保できない」というのはその通りで、実務遂行能力を考査する試験を行っていません。
「条約の知識が不足する」とありますが、試験科目から条約を除いたのですから当然で、必要なら復活すれば良いだけです。
結局、弁理士が具備すべき法律知識と弁理士試験制度との関係について、弁理士会声明は特に何も評価していないようです。

「何が問題か」を正確に捉えない限り、これ以上の議論は進まないかもしれません。私自身は、弁理士試験制度改正以後の合格者と触れあう機会がないので、実態を実感することができません。どなたか、試験制度改正前後の合格者実態について比較評価できておられる方がおられましたら、ぜひご意見をお願いしたいと思います。

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堀江貴文氏と佐藤優氏

2006-03-28 00:03:40 | 歴史・社会
ライブドアの堀江貴文氏は、逮捕以来容疑に対して否認を続け、長期にわたって拘留されています。「一貫して否認し続けている」との報道ですが、事実そのものを否認しているのか、それとも事実は認めるが違法性についてのみ否認しているのか、そのどちらであるかがはっきり分かりません。

鈴木宗男事件に関連して逮捕された外務省の佐藤優氏が執筆した「国家の罠」という本があります。私は堀江氏逮捕のときに、堀江氏もすでに「国家の罠」を読んでいて、「自分も佐藤優氏に負けないように頑張ろう」と決心しているのではないか、と想像していたのです。

佐藤優氏は、旧ソ連・ロシアを専門とする外交官(ノンキャリア)で、ロシア内に強力な人脈を形成し、有力な情報収集に努めていました。旧ソ連のクーデターでゴルバチョフが拘束された際、「ゴルバチョフは無事である」という情報を西側では最初につかむという功績を挙げています。
鈴木宗男事件の直前まで、佐藤優氏はロシア情報分析に従事していました。鈴木宗男氏が逮捕されるのに先立って佐藤優氏が逮捕された容疑は、背任と偽計業務妨害です。背任の方は、より正確なロシア情報を得るために、日本の学者と外務省員が国際学会に参加する費用を捻出した行為に関するものであり、とても犯罪とは言えません。偽計業務妨害についても、他の容疑者の供述に基づいてでっち上げられた感があります。
検察の意向としては、佐藤氏の供述から鈴木宗男氏がらみの事件を作り出すことが、佐藤氏を逮捕した最大の目的だったのでしょうが、その目的は達せず、しかし決して無罪では帰さないということです。外務省も完全に佐藤氏を切り捨て、佐藤氏に不利な情報のみを検察に提供した様子です。

他の逮捕者がさっさと容疑を認め、拘置所からはやく出所することに意をくだいているのに対し、佐藤優氏は容疑を認めません。普通の高学歴エリートであれば、拘置されて検事から怒鳴りあげられるとプライドがずたずたになり、検事が誘導する方向に自供することが多いようなのですが、佐藤優氏は徹底抗戦しました。そのため、拘置期間は500日を超えます。被告人が容疑を否認した場合、初公判まで保釈が認められることはまずないそうです。

佐藤優氏の戦法はすさまじいです。ふつう、拘置所に入った被告人は、外の様子を少しでも知りたがるものです。それに対し佐藤優氏は、「クオーター化の原則」を採用します。檻の中にいる自分には外の情報を与えず、そのため佐藤氏が外の情報に引きずられて誤った方向で供述する危険を防いだというのです。

今、拘置所に収監されているのは堀江貴文氏です。佐藤氏と同じように容疑を否認し続け、同じように長期拘留されているわけですが、何を考え、何を目指しているのでしょうか。本日の報道では、容疑を認めた他の被告とは公判が分離されるそうです。この点も佐藤氏の場合と全く同じですね。

この記事のために調べたところ、佐藤優氏の裁判もちょうど控訴審が始まったところなのですね。
佐藤氏は検察での取調中、容疑を認めて微罪で済ましてもらおうとしたり、罪を他人になすりつけて自分が助かろうとする行為を行っていません(彼の著書によると)。佐藤氏が言うには、自分はロシア情報分析の仕事で多くの外国人と信頼関係を結んでおり、彼らの信頼を失わない態度を取ることが第一優先だ、とのことです。そのために自分が罰せられてもそれを受け入れると。また、鈴木宗男氏は墓場まで持っていってもらうべき秘密を多く知っている。鈴木氏がヤケになってこの秘密を公にすると日本外交が崩壊する。自分(佐藤氏)だけは鈴木氏の側についていようと思う、ということもいっています。
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裁判所ホームページリニューアル

2006-03-27 00:11:35 | 知的財産権
Hynix製フラッシュに輸入販売差し止め命じる 東芝訴訟判決という報道がなされました。3月24日東京地裁判決ということです。
さっそく最高裁のホームページ知的財産権判決速報で判決を探したのですが、まだ掲載されていません。それどころか、東京地裁の判決で掲載されている最新は2月28日の分です。3月に入ってから全く更新されていません。ちょっとおかしいです。

一方、裁判所のホームページにはサイトリニューアルのお知らせが掲載されており、3月22日に裁判所ホームページがリニューアルされたらしいです。それに伴って、種々の情報掲載場所が変更になったらしいのですが、最高裁ホームページの知的財産判決速報の掲載に変更が生じたかどうかがはっきりしません。
裁判所ホームページには、裁判例情報-知的財産裁判例集-最近の知的財産裁判例一覧表示というページがありますが、そこにはまだ裁判例が1件しか掲載されていないのです。

一体どうなっているのか、混乱はしばらく続くかもしれませんね。
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弁理士試験制度の方向(2)

2006-03-26 00:07:39 | 弁理士
日本弁理士会の声明弁理士法改正の方向性において、
「日本弁理士会は、弁理士の基本を「技術と法律の素養を具えた国際的対応ができる知的財産の実務専門家」として捉えている。」
と宣言しています。
ところが、弁理士試験では技術系学部卒業を受験資格に入れておらず、選択科目で法律科目を選択すれば技術知識ゼロでも合格できます。弁理士会はどのようにして「技術の素養を備えた専門家」を担保するのでしょうか。
(法律の素養については、必須科目が法律ですからそれなりに担保されます。)

声明では、「登録前研修制度で、法律系人材には最低限の技術の素養を」と述べていますが、登録前研修程度で技術の素養が身につくなんて単なる絵空事です。

私はやはり、特許を取り扱う弁理士資格を得るためには、理系の学部を卒業しているか、あるいは理系の選択科目に合格することを必須にすべきと思います。その上で、弁理士試験必須科目では商標法を外し、特許法(と意匠法)を専権とする特許弁理士資格を付与します。
商標については、商標法試験を新設し、受験資格者として、特許弁理士、司法書士、行政書士に受験資格を付与したらよろしいでしょう。
「自分は法律系だが、商標をやりたいんだ」という人のためには、行政書士資格取得後に商標法試験を受験する途ができます。

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弁理士試験制度の方向

2006-03-25 00:10:35 | 弁理士
弁理士試験合格者が100人/年の時代、試験問題の傾向を云々する前に、とにかく論文の点数を上位100人以内の点にしなければ合格しませんでした。3000時間程度の勉強時間を必要としていました。それだけ時間をかけたにもかかわらず、試験勉強の成果が実務にそのまま役立つとは言えませんでした。
特許事務所勤務の30代といえば、実務に脂がのり、さらなる実務能力の向上に努力し、1件でも多くこなして収入増加につなげたい時期です。このような時期に、実務にそれほど役立たない試験勉強を3000時間もこなさなければならないというのは、本人に負担であるばかりか、知財業界にとっても人的能力の損失になります。
そういった意味で、合格者100人時代を私は異常だと思っていました。

的確に実務能力を評価することのできる考査方法があればいうことがありません。しかし未だにそのような方法は見いだされていません。そういった中で、少しは勉強が実務に役立ち、勉強をした方がしないよりも合格に近づく、という意味で、法律知識を問う現行試験は「それしかないだろう」と思います。
しかし、実務者の実務を阻害する過剰な勉強時間は何とかしなければなりません。そのために唯一できることは、「合格者の枠を増やして合格のハードルを下げる」ことであろうと思います。従って、合格者数を増加させている現在の試験制度について、私は賛成です。

合格に至る必要勉強時間を減らそうと思ったら、合格者数を増やすしかないと思います。合格者100人時代に必要勉強時間が3000時間だとして、それを1000時間まで減らすことができたら、浮いた2000時間で本当に実務能力を向上させるためのOJTに時間を割くことができます。あるいは、良質の明細書を1本でも多く執筆し、日本の知的財産のレベル向上に資することができます。

合格者数が増え、合格しやすくなった結果として、実務未経験者の合格が増える分については致し方ありません。そもそも、合格者100人時代だって実務未経験者の割合は高かったのです。未経験者割合が最近になって増大したかどうかもわかりません。
合格者100人時代には、本当に資格取得を必要とする実務者が受験するか、未経験者の場合は思い切り変人(私のような)や固い決意を持った人が合格に至ったのでしょう。それに対し、最近は「ちょっと受けてみようか」雰囲気で受かっちゃう人も増えているとは思います。しかしそれを排除することは不可能です。こればかりは、試験を易化することによる必要悪と割り切るしかありません。

実務未経験合格者は、従来の実務未経験無資格者と同じように、職に就き、OJTで実務能力を身につけていけばいいのです。「合格者は実務能力を有しているはず」という常識を捨てればいいのです。
また、「合格後に実務をやってみたら自分に向かないことが分かった」という場合も頻発するでしょうが、それもやむを得ません。

ひとつ問題があります。
弁理士業務の大部分は特許実務です。弁理士試験が易化した結果として、特許法の知識が乏しくなることは避けなければなりません。しかし、全勉強時間の1/3を特許法の勉強に割くとして、3000時間時代には特許法に1000時間割いていたのに、1000時間時代になると330時間しか特許法に割かないことになります。これではなんぼ何でも特許法の知識が乏しすぎます。実務に支障をきたすでしょう。

私は、弁理士試験の必須科目から商標法を外し、それ以降の合格者から商標法の専権を外したらいいのではないか、という意見の持ち主です。これにより、トータル勉強時間に占める特許法の勉強時間が増大し、特許法知識において実務での支障がなくなるでしょう。

では商標法の専権はどうするのか。
自動車運転免許のオートマ限定のように、商標法の試験を追加で受け、その合格者に商標法の専権を与えるのです。商標法試験受験資格は、特許法限定弁理士に限らず、司法書士、行政書士にも開放していいと思います。

特許弁理士の技術の素養をどのように担保するのか、という点については、あらためて述べたいと思います。
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弁理士会声明・弁理士法改正の方向

2006-03-24 00:07:10 | 弁理士
日本弁理士会が弁理士法改正の方向性という声明を発表しました。文章中では日付が3月14日となっていますが、公表されたのは3月22日のようですね。
「これはブログネタとして好適」と思って読んでみたのですが、どうも内容が具体的でなく、とらえ所がありません。ちょっと整理してみましょう。

まずは緒言です。
「日本弁理士会は、弁理士の基本を「技術と法律の素養を具えた国際的対応ができる知的財産の実務専門家」として捉えている。」
「平成12年弁理士法によって、弁理士間の競争を促して人材を育成するという考えに基づいた施策がとられ、弁理士試験合格者を急増」「当会は・・・、新たに弁理士となった者が・・・、基本的な業務能力を有していることが不可欠であると考える。」「基本的な業務遂行能力を持たない弁理士が多数輩出されていくことは、・・・資格制度の崩壊の端緒に他ならない。」

本論において、「見直すべき問題」「見直すべき具体的事項」を、以下の3つのテーマに分けています。
(1)弁理士としての業務遂行能力(実務能力)が十分でない弁理士の増加 - 実務経験のない合格者の大幅増、試験科目から条約が削除、制度改正に伴う変化や弁理士業務の拡大に十分に対応できない
(2)弁理士の業務実態に即していない利益相反規定、外国出願関連業務
(3)制度的制約が大きいため法人化が進んでいない

以下、「(1)弁理士としての業務遂行能力(実務能力)が十分でない弁理士の増加」についてのみ、内容を整理します。
 問題点を、「弁理士試験のみでは弁理士の実務遂行能力は担保できない」
「法律科目選択者は技術に弱く、技術科目選択者は法律に弱い」
「条約に弱い」
「弁理士会研修対応は限界、特許事務所OJTも限界」ととらえ、

具体的には、試験制度で「現行の知識偏重型の試験から、論理的思考力を考査することに力点を置いた試験に」「論文試験に条約科目復活」
登録前研修制度で「実務無経験者の最低レベル確保研修」
「法律系人材には最低限の技術の素養を」
「国が研修を制度設計し、弁理士会が国の委託で研修実施。イニシャル費用は国が負担」
既存の弁理士に「全弁理士を対象にした義務研修を制度化」
と提言しています。

ここからは、上記声明に即し、私の感想と意見を述べます。
「弁理士試験のみでは弁理士の実務遂行能力は担保できない」のは当たり前で、それは合格者100人時代(平成一桁)も現在(合格者700人時代)も変わりません。明細書作成能力を評価するような筆記試験が困難である以上、産業財産権法の法律素養を見る試験しかできないのですから。せいぜい「出題傾向として、そのための勉強が実務に役立つような問題を出す」という工夫ができる程度でしょう。実務遂行能力はやはりOJTで身につけるしか有りません。
声明で具体策として挙げられる「論理的思考力を考査」でなぜ実務能力が担保できるのでしょうか。「実務無経験者への登録前研修」にしても、従来から行われている新人研修とどこが違うのか不明確です。
登録前研修で法律系人材に技術の素養を、というのは訳が分かりません。そんなに簡単に技術の素養が身に付くのなら、理系大学などいらないでしょう。本当に弁理士を「技術の素養を備えた」と定義するのなら、理系学部を卒業かあるいは技術系選択科目合格を条件にする以外にないでしょう。
「特許事務所OJTも限界」ととらえていますが、特許出願件数年間40万件という数字は横ばいです。増えていません。従って、特許事務所の雇用状況は無資格者を含めれば変化していないはずです。新規採用の実務無経験者の中に占める資格取得者の割合が増えたというだけで、事務所のOJT負荷が増えているとは思えません。

この声明を離れ、私自身の意見を次回に述べたいと思います。
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対談田原・岡本-アメリカ

2006-03-23 00:11:09 | 趣味・読書
田原総一朗と岡本行夫の対談「『外交』とは何か、『国益』とは何か」の中から、
2.「新アメリカ帝国」との付き合い方
で印象に残った事項、主に岡本氏の発言、を書き留めておきます。
「外交」とは何か、「国益」とは何か 増補版・生きのびよ、日本!! (朝日文庫)
田原 総一朗,岡本 行夫
朝日新聞社

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私(ブログ主)がアメリカについて持っている印象というと、
「普段はすごくいいやつで、『気が優しくて力持ち』なんだが、ひとたびプライドが傷つけられると、ムキになつて自分の考えを押し通そうとするときがある。力が強いだけに手に負えない。」
といった感じでしょうか。

核兵器問題で、アメリカがイランに対してだけ特に辛く当たっている、という点について、岡本氏は「アメリカの二重性」という表現で説明しています。
「アメリカはひとつの国家としてみればすばらしい国。多様な人びとがいて、対立するすべてのグループの考え方が最終的に一つになって、そこでアメリカの最終的な決定がなされるときは、これはすばらしいものがある。」
「ところが、そのすばらしい国家意思の発現に対して、国外的な外交政策には、何だこれはと思うものが出てくることがある。」「これは比較的少人数の、しかもひとつの集団から出てきた人たちが、そのときどきの行政を担当しているせいもある。」
「ネオコンと呼ばれている人たち・・、非常に強い、潔癖な倫理観を持っている人たちですね。自由と民主主義への強烈な思い入れ。個人的な信念の強い人たちです。」「9・11という大事件が勃発して、一挙に彼らの主張が通りやすい雰囲気になった。」

イラクで大量破壊兵器が出てこないため、イラク戦争を始めた理由をアメリカがコロコロと変えている点に関して(岡本氏の発言)
「アメリカは、大正義を実現するためならば、その過程については案外と柔軟ですね。そういう国民性。日本は国会答弁で一度口にしてしまったら、後々まで縛られて動けなくなるけれども、そういうことはない。」

日米関係を日本の安全保障の観点から見たとき、一番重要なことは何か、という議論で(岡本氏の発言)
「抑止力。」「周辺諸国が『ああ、日米安保条約というのは本物だな。両国とも本気なんだな』と思えばいいが、逆に日本が攻撃されたときにアメリカだって日本を守ったり守らなかったりするんじゃないかと、これは日本がじゃないですよ、北朝鮮がそう思う。そう思ったとたんに、抑止が効かなくなってしまう。」
「抑止というのは、敗れたらみんなが敗者になる。日本の対米協力というのも、すべてここにつながる話と考えるべきだと、僕は思っています。」
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ゼンザブロニカ(3)

2006-03-22 00:03:38 | 趣味・読書
3月15日の記事で、オーバーホールしたゼンザブロニカに不具合が発生したことを記事にしました。

そのときは、「再修理は2週間以上先になるな」と腹をくくっていたのですが、その翌日に修理会社から電話が入り、状況を話したところ「修理会社宛に着払いでカメラを送ってくれ」ということになりました。さっそくカメラを梱包して送付したところ、昨日、再オーバーホールしたカメラが返却されてきました。試しにシャッターを切ってみたところ、無事不具合箇所は直っています。

ということで、ゼンザブロニカを修理するおじさんに会いに行く機会は失われましたが、とにかくカメラが正常になったことはめでたい限りです。

次は何とか被写体を探して、このカメラが本来の性能(大きく引き延ばしたときにシャープな写真に仕上がる)を発揮するかどうかを確認することにしましょう。
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