小沢一郎氏にからんで東京地検特捜部が起こした陸山会事件で、石川知裕氏の取調べ内容に関して東京地検特捜部の田代検事が作成した捜査報告書が、小沢一郎氏の事件を対象とする検察審査会に提出されました。この検察審査会では、「起訴相当」の判断が2回出され、小澤一郎氏は強制起訴されるに至りました。
ところが、この捜査報告書に事実に反する記載があったことが判明し、大問題になりました。さらに、この虚偽記載は田代検事一人の犯罪ではなく、東京地検特捜部の組織犯罪ではないか、という疑いがあります。検察審査会をミスリードして小沢一郎氏を起訴に持ち込むべく、東京地検特捜部が組織として画策したのではないかと。
ところが、この問題についての最高検察庁の捜査及び調査の結果をとりまとめた報告書「最高検報告書」が、昨年6月27日に公表されました。併せて、最高検は田代検事を不起訴処分としましたが、あまりにも身内に甘い処分であるとして激しい非難が巻き起こっていました。
この件に関する検察の動きがあまりにも後ろ向きであることから、ときの法務大臣が指揮権を発動してきちんと捜査させようとしたところ、電撃でその法務大臣が野田総理によって更迭されるという動きがありました。
朝日新聞などは社説で、「指揮権発動で対処するのではなく、検察審査会で対処すればいいのだ」と評論していたと記憶しています。
しかし検察審査会は、検察が提出する証拠に基づいて委員が判断する方式であり、検察に不利な証拠が提出されなければ公正な判断などできるはずがありません。
このブログでは、去年6月25日「陸山会虚偽報告書作成の田代検事は不起訴か」、7月17日「陸山会捜査報告書虚偽記載事件」として記事にしてきました。
その後、八木啓代さんが主宰する団体が検察審査会に申立てを行っていたのですが、検察審査会での決定がやっと最近出されました。
<捜査報告書問題>検察再捜査へ、強制起訴はなし
毎日新聞 4月22日(月)12時16分配信
『「生活の党」代表の小沢一郎衆院議員が強制起訴された陸山会事件を巡る捜査報告書問題で、不起訴不当議決を受けて検察は再捜査に乗り出すが、結論を変えるには新たな証拠を得る必要があり、再び不起訴となる方向が大きく変わることはないだろう。しかし、市民から選ばれた検察審査員は「より謙虚に更なる捜査を遂げるべきだ」と指摘し、捜査への不信をにじませた。再捜査にあたって検察は、議決の指摘を踏まえ、慎重な姿勢が求められる。
一方、検察審査会は、強制起訴に向かう第1段階となる「起訴相当」の議決は回避した。回避の理由は必ずしも明らかではないが、起訴相当には11人の審査員中8人以上の賛成が必要で、そこまでには至らなかったとみられる。
過去の強制起訴は、陸山会事件の小沢一郎代表(無罪確定)や、福知山線脱線事故のJR西日本歴代3社長(1審公判中)など7件あるが、今回は検察の判断を覆して強制的に起訴に持ち込むことはできない。』
今回、「起訴相当」ではなく「不起訴不当」との決定であったため、今後検察が行う再捜査で再び不起訴となれば、強制起訴することはできません。その意味では、検察審査会への申立ては不成功に終わったというべきでしょう。
当の八木啓代氏は「八木啓代のひとりごと」の「田代元検事不起訴不当議決! その裏の大きな疑惑」において、今回の検察審査会審理がかかえている疑惑について論評しています。
また江川 紹子氏は、「検察審査会議決の不透明・補助弁護士はワケあり元検察幹部」で批評を加えています。
第1に検察審査会で補助弁護士として活動した澤 新(さわ あらた)弁護士の疑惑です。この人は、バリバリのヤメ検、それも元検事正、元最高検検事であって、どう見たって、「公正な」補助などできるわけがない検察寄りの人物だったというのです。
さらに澤弁護士自身が、不祥事で処分を受け、検事を辞職をしているのです。原因となったのは、相続税の申告漏れを指摘した税務署に対し、「検事正」の肩書きで抗議文を送るなどした問題です。法務・検察当局は、この抗議文が「(国税当局への)圧力とも受け取られかねないものだった」として、98年6月10日付で最高検に異動させました。法務省はまた、「検事正名で抗議をしたことで、国民から見てその地位を不当に使ったのではないかとの疑いが生じる恐れがあり、不適切な行為」として、同月19日付で「沢検事」を国家公務員法に基づく戒告処分としました。「沢検事」は同日付で辞職。
本人のコメント〈沢検事は同省に対し、「検察全体の名誉にかかわることで、申し訳なかった」と話している。〉
「検察全体の名誉にかかわる」不祥事で処分を受け、検察を辞職した人が、今回のように、まさに検察全体の信用にかかわる事件で、検審の補助弁護士を努め、本当に公正な立場から、もっぱら法律的な助言のみを行い得たのか、ということになります。上記江川 紹子さんがおっしゃるとおりであり、ブラックジョークとしか言いようがありません。
第2に、診察審査会の審理に8ヶ月もかかったことです。
検察審査会のメンバーは、3ヶ月に半分が入れ代わるそうです。6ヶ月後には全員が入れ代わってしまいます。従って、効率的に審理を行うためには、審査会のメンバーが入れ代わらないうちに審理を行う必要があり、3ヶ月以内で結論を出すことが良いに決まっています。それがなぜ、今回は8ヶ月もかかったのか。
『このメンバーでは「起訴相当」の議決がされてしまう』と検察が恐れた場合に、決定を先延ばしし、「不起訴不当」の決定を出してくれそうなメンバーに入れ代わるのを待ったのではないか、という疑惑がわき起こるのです。
しかし大手マスコミは、この件に関して掘り下げた報道はまったくしていないようです。
陸山会事件については、今年3月13日、石川知裕衆議院議員など小沢一郎氏の秘書3人に対する政治資金規正法違反事件について、東京高裁(飯田喜信裁判長)は、弁護人の控訴を棄却し、一審の執行猶予付懲役刑の有罪判決を維持する判決を言い渡しました。この件については陸山会事件・秘書3人に対する控訴審判決で記事にしたとおりです。この件については、水谷建設の新証言「5000万円の授受はなかった」!?――新証拠申請を却下した高裁(1/2)、(2/2)などの発言もされています。
さらに今回、田代検事の捜査報告書(小沢氏を被告とする事件の検察審査会「起訴相当」決定に影響を与えた)に虚偽記載がなされていた事件について、今度は検察審査会で「起訴相当」との決定がなされない事態に至りました。
今後、ジャーナリズムはこの件に関して真相にどれだけ迫ることができるのでしょうか。
ところが、この捜査報告書に事実に反する記載があったことが判明し、大問題になりました。さらに、この虚偽記載は田代検事一人の犯罪ではなく、東京地検特捜部の組織犯罪ではないか、という疑いがあります。検察審査会をミスリードして小沢一郎氏を起訴に持ち込むべく、東京地検特捜部が組織として画策したのではないかと。
ところが、この問題についての最高検察庁の捜査及び調査の結果をとりまとめた報告書「最高検報告書」が、昨年6月27日に公表されました。併せて、最高検は田代検事を不起訴処分としましたが、あまりにも身内に甘い処分であるとして激しい非難が巻き起こっていました。
この件に関する検察の動きがあまりにも後ろ向きであることから、ときの法務大臣が指揮権を発動してきちんと捜査させようとしたところ、電撃でその法務大臣が野田総理によって更迭されるという動きがありました。
朝日新聞などは社説で、「指揮権発動で対処するのではなく、検察審査会で対処すればいいのだ」と評論していたと記憶しています。
しかし検察審査会は、検察が提出する証拠に基づいて委員が判断する方式であり、検察に不利な証拠が提出されなければ公正な判断などできるはずがありません。
このブログでは、去年6月25日「陸山会虚偽報告書作成の田代検事は不起訴か」、7月17日「陸山会捜査報告書虚偽記載事件」として記事にしてきました。
その後、八木啓代さんが主宰する団体が検察審査会に申立てを行っていたのですが、検察審査会での決定がやっと最近出されました。
<捜査報告書問題>検察再捜査へ、強制起訴はなし
毎日新聞 4月22日(月)12時16分配信
『「生活の党」代表の小沢一郎衆院議員が強制起訴された陸山会事件を巡る捜査報告書問題で、不起訴不当議決を受けて検察は再捜査に乗り出すが、結論を変えるには新たな証拠を得る必要があり、再び不起訴となる方向が大きく変わることはないだろう。しかし、市民から選ばれた検察審査員は「より謙虚に更なる捜査を遂げるべきだ」と指摘し、捜査への不信をにじませた。再捜査にあたって検察は、議決の指摘を踏まえ、慎重な姿勢が求められる。
一方、検察審査会は、強制起訴に向かう第1段階となる「起訴相当」の議決は回避した。回避の理由は必ずしも明らかではないが、起訴相当には11人の審査員中8人以上の賛成が必要で、そこまでには至らなかったとみられる。
過去の強制起訴は、陸山会事件の小沢一郎代表(無罪確定)や、福知山線脱線事故のJR西日本歴代3社長(1審公判中)など7件あるが、今回は検察の判断を覆して強制的に起訴に持ち込むことはできない。』
今回、「起訴相当」ではなく「不起訴不当」との決定であったため、今後検察が行う再捜査で再び不起訴となれば、強制起訴することはできません。その意味では、検察審査会への申立ては不成功に終わったというべきでしょう。
当の八木啓代氏は「八木啓代のひとりごと」の「田代元検事不起訴不当議決! その裏の大きな疑惑」において、今回の検察審査会審理がかかえている疑惑について論評しています。
また江川 紹子氏は、「検察審査会議決の不透明・補助弁護士はワケあり元検察幹部」で批評を加えています。
第1に検察審査会で補助弁護士として活動した澤 新(さわ あらた)弁護士の疑惑です。この人は、バリバリのヤメ検、それも元検事正、元最高検検事であって、どう見たって、「公正な」補助などできるわけがない検察寄りの人物だったというのです。
さらに澤弁護士自身が、不祥事で処分を受け、検事を辞職をしているのです。原因となったのは、相続税の申告漏れを指摘した税務署に対し、「検事正」の肩書きで抗議文を送るなどした問題です。法務・検察当局は、この抗議文が「(国税当局への)圧力とも受け取られかねないものだった」として、98年6月10日付で最高検に異動させました。法務省はまた、「検事正名で抗議をしたことで、国民から見てその地位を不当に使ったのではないかとの疑いが生じる恐れがあり、不適切な行為」として、同月19日付で「沢検事」を国家公務員法に基づく戒告処分としました。「沢検事」は同日付で辞職。
本人のコメント〈沢検事は同省に対し、「検察全体の名誉にかかわることで、申し訳なかった」と話している。〉
「検察全体の名誉にかかわる」不祥事で処分を受け、検察を辞職した人が、今回のように、まさに検察全体の信用にかかわる事件で、検審の補助弁護士を努め、本当に公正な立場から、もっぱら法律的な助言のみを行い得たのか、ということになります。上記江川 紹子さんがおっしゃるとおりであり、ブラックジョークとしか言いようがありません。
第2に、診察審査会の審理に8ヶ月もかかったことです。
検察審査会のメンバーは、3ヶ月に半分が入れ代わるそうです。6ヶ月後には全員が入れ代わってしまいます。従って、効率的に審理を行うためには、審査会のメンバーが入れ代わらないうちに審理を行う必要があり、3ヶ月以内で結論を出すことが良いに決まっています。それがなぜ、今回は8ヶ月もかかったのか。
『このメンバーでは「起訴相当」の議決がされてしまう』と検察が恐れた場合に、決定を先延ばしし、「不起訴不当」の決定を出してくれそうなメンバーに入れ代わるのを待ったのではないか、という疑惑がわき起こるのです。
しかし大手マスコミは、この件に関して掘り下げた報道はまったくしていないようです。
陸山会事件については、今年3月13日、石川知裕衆議院議員など小沢一郎氏の秘書3人に対する政治資金規正法違反事件について、東京高裁(飯田喜信裁判長)は、弁護人の控訴を棄却し、一審の執行猶予付懲役刑の有罪判決を維持する判決を言い渡しました。この件については陸山会事件・秘書3人に対する控訴審判決で記事にしたとおりです。この件については、水谷建設の新証言「5000万円の授受はなかった」!?――新証拠申請を却下した高裁(1/2)、(2/2)などの発言もされています。
さらに今回、田代検事の捜査報告書(小沢氏を被告とする事件の検察審査会「起訴相当」決定に影響を与えた)に虚偽記載がなされていた事件について、今度は検察審査会で「起訴相当」との決定がなされない事態に至りました。
今後、ジャーナリズムはこの件に関して真相にどれだけ迫ることができるのでしょうか。