弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

新会社ラピダスが2nm半導体を目指す

2022-12-24 16:30:44 | 歴史・社会
1ヶ月前、日本の半導体製造に関して新しい話題が流れました。
NECやトヨタら大手8社が結集--日の丸半導体企業「Rapidus」は日本の競争力を取り戻せるか
笠原一輝2022年11月23日 09時30分
『経済産業省(以下経産省)は11月11日、「次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組」として、日本政府が最新の半導体製造技術を開発する「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」という新しい研究開発組織を発足すると発表した。その実行部隊となる製造企業としてキオクシア、ソニー、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTTなどが出資して設立した「Rapidus株式会社」(以下Rapidus)を選定したことを明らかにした。
今後LSTCで次世代の半導体製造技術の開発を行ない、Rapidusが実際に製造を担当することで、日本に最先端の半導体製造の環境を再び実現しようというのが狙いだ。
Rapidusにはキオクシア、ソニー、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTTが10億円ずつ、そして三菱UFJ銀行が3億円出資しており、最終的にはファブレスの半導体メーカーから委託されて半導体の受託生産を行う、つまりTSMCやSamsung、Intelという現在世界に3社しかない最先端プロセスノードで製造を行なうファウンドリになるというのがRapidusの目指すところになる。』

次世代半導体、5年後生産 国が700億円支援
2022/11/11 蕎麦谷 里志
『経済産業省は11日、トヨタ自動車やNTT、ソニーグループなど8社が出資する半導体新会社「Rapidus(ラピダス)」に対する700億円の補助金支給を決定、官民で次世代半導体の国産化を目指すと正式発表した。ラピダスの小池淳義社長は東京都内で記者会見し「5年後の2027(令和9)年に次世代半導体の生産を始める」と述べた。』

半導体は、「ロジック」「メモリー(DRAM、フラッシュ)」「パワー系」「映像系」に分類できます。TSMCはロジックですから、ラピダスはロジックが対象と思われます。一方、出資者は、キオクシア(フラッシュ)、ソニー(映像系)であり、デンソー、トヨタは半導体のユーザー、NECは過去の半導体メーカー(主にDRAM)です。日本でロジックを生産している主力会社はルネサスですが、なぜかラピダスにはルネサスの名前が見当たりません。

ルネサスは世界有数のロジック半導体メーカーですが、自社生産は40nmまでです。それよりも微細な半導体は、TSMCなどのファウンドリーに委託生産させています。なぜそうするかというと、それが最も低コストであり、そうしないとルネサスが倒産してしまうからです。ルネサスは、「40nmより微細なものは自社生産しない」という大方針で、国内にたくさんあった半導体工場を閉鎖・リストラし、結果として今日まで生き残ることができました。

20nmクラスのロジック品の国内生産については、TSMCが熊本に進出することで実現します。それにしても、数千億円の国からの補助金が前提です。

今回のラピダスは、その20nmも超え、一気に2nmロジックに挑戦しようと言うことですから驚きです。しかも、出資会社には、ロジックの生産技術を有している会社が入っていません。国からの補助金は700億円ということで、最先端品の開発と量産を目指すのであれば2桁少ない金額です。
私は、計画が成功しそうだという匂いを全く感じることができません。

と思っていたら、ラピダスが米国IBMから2nm技術を導入するとのニュースが流れました。
IBMとRapidus、パートナーシップを締結--2nm半導体技術をRapidusの国内製造拠点に導入へ
坂本純子 2022年12月13日 11時49分
『IBMとRapidusは12月13日、半導体の研究開発・製造におけるグローバルリーダーを目指す取り組みの一環として、ロジック・スケーリング技術の発展に向けた共同開発パートナーシップを締結したと発表した。
この取り組みは、数十年にわたって培われた、半導体の研究・設計におけるIBMの専門性を活用するものだ。IBMは、2021年に世界初の2nmノードのチップ開発技術を発表した。このチップは、現在の7nmチップに比べて45%の性能向上、または75%のエネルギー効率向上の達成が見込まれる。・・・
パートナーシップの一環として、Rapidusの研究者と技術者は、世界最先端の半導体研究拠点の1つであるニューヨーク州アルバニーのAlbany NanoTech Complexで、IBMおよび日本IBMの研究者と協働する。また、IBMの2nm世代技術ノード技術の開発を推進し、Rapidusの日本国内の製造拠点に導入する。この2nm半導体技術において市場をリードすることを目指すとともに、業界標準製品との互換性を持たせ、Rapidusは、2020年代後半に2nm技術の量産を開始を目指す。』

米国IBMが、2nm半導体技術を保有しているとは知りませんでした。
アメリカは、米国内で2nm半導体製造体制を確立するために、大金をはたいて台湾のTSMCを誘致し、工場を建設しようとしています。IBMが技術を有しているのなら、なぜIBMに補助金を出して工場を建設させないのでしょうか。

「IBM」「2nm」で検索すると、1年半前のニュースがヒットします。
IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来
浅川 直輝 日経クロステック/日経コンピュータ 2021.05.13
『米IBMは2021年5月6日(米国時間)、2nm(ナノメートル)プロセスの半導体製造技術でテストチップの作成に成功したと発表した。「LSIの構築に必要な数千のマクロについて、性能や信頼性、欠陥密度を確かめた」と、IBMリサーチ ディレクターのDario Gil(ダリオ・ギル)氏は語る。
 現在主流の先端プロセスである7nmプロセスと比較して、チップの演算性能を45%高めるか、あるいは消費電力を75%削減できるという。「これまでスマートフォンを1日1回充電していたところ、4日に1回で済むようになる」(ギル氏)。早ければ2024年後半には2nmプロセスのチップを実用化できる見通しという。』

聞くところによると、米国IBMはしばらく前に半導体製造から撤退したそうです。研究だけは行っており、その中で2nmの技術が完成した、ということでしょうか。
そのニュースから1年半は何の話題にもならず、今回突然に日本のラピダスが、このIBMの開発技術と提携して2nm半導体の製造を開始する、というわけですか。
恐らく米IBMにおいても、量産化技術は手つかずと思います。日本のラピダスやその出資会社は、2nmどころか20nmの量産化技術も保有していません。
ラピダスが2nmの量産化で成功するためには、タイムリーに(台湾や米国のTSMCとほぼ同時期に)、リーズナブルな生産コストと生産量の量産化技術を完成する必要があります。
このような状況下で、国からは700億円しか援助を受けずに、新規会社ラピダスが2nmの競争で勝ち抜ける気がしません。

2nmではなく20nmですが、以下のニュースが流れました。
TSMC、欧州生産進出 ドイツに半導体工場検討
2022/12/24付日本経済新聞 朝刊
『【台北=鄭婷方、ロンドン=黎子荷】半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、欧州初となる工場をドイツに建設する方向で最終調整に入ったことが、23日分かった。年明けに経営幹部が現地入りし、地元政府による支援内容などについて最終協議する。早ければ2024年に工場建設を始める。投資額は数十億ドルに達する見通しだ。
TSMCが予定する生産品目は、主にスマートフォンなどに搭載される「先端品」ではなく、「成熟品」といわれる「22~28ナノ品」になる見通し。自動車や家電製品などへの採用が想定される。』
上記によれば、欧州に建設されるTSMC工場は、熊本と同じような製品を製造することになります。「需要の最も多い製品であって、台湾有事を懸念しての経済安保の観点から、地元に生産拠点が必要」とのスタンスに立てば、熊本も欧州も同じ結論に達する、ということでしょう。実際に建設が実現するためには、熊本と同様、欧州がどれだけの補助金を用意するかによります。
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日経新聞/保育士礼賛

2022-12-22 19:39:33 | 歴史・社会
保育士さんについて、日経新聞に面白い記事が掲載されていました。
藤原辰史 保育士礼賛 プロムナード
2022年12月21日 日経新聞
「ここ5年くらい、保育士との交流が増えた。講演会に招かれたり、保育園に伺って悩みに耳を傾けたり、驚くほど美味(おい)しい給食やおやつをいただいたり、子どもたちと遊んだりしている。」
「やはり保育士の仕事は難しい。「保育なんて誰でもできる」という人もいるらしいが、片腹痛い。そんな人にはぜひ保育園を訪れ、エプロンを着て保育の仕事を体験してほしい。」
「ふと気づくと、隣の保育士はすっくと立ってある方向へと歩いていく。私は全く気づかなかったが、今にも泣きそうな子どもがその場に駆けてきた。保育士は寄り添って話を聞き、解決の糸口を探った。」「起こりそうな事故を未然に防いでいるのだが、その様子を微塵(みじん)も園児に見せない。園児が自由に失敗できるように、過剰な介入も回避する。」
「保育士たちの身体はどうなっているのか。手に目があり、足に耳があるのか。全身の感覚が研ぎ澄まされている。」
「子どもの教育やケアに予算を出し渋るこの国では、園児の数に対し保育士の数はかなり少ないし、評価が著しく低い。」「あれほどの高度な仕事を支えているのは、保育士たちのあくなき探究心と誇りにほかならない。それに私たちが甘える時代はいい加減に終わりにしたい。」(歴史学者)

わが家の二人の孫は、いずれも0歳児から保育園のお世話になっていました。
保育園の話を聞いていると、「保育士さんというのはスーパーマン(スーパーウーマン)に違いない」と思わされます。
自宅でわれわれが孫を昼寝させようとしても、なかなか大人の思うようには寝てくれません。しかし保育園では、昼寝の時間には、大勢の園児たちがちゃんと昼寝をしてくれるというのです。保育士さんたちはどのような魔法を使っているのだろうか、と思わされます。
私が断片的な知識として持っている保育士さんの姿が、実際そのとおりのすばらしい人たちであることが、藤原先生の記事で確認されました。

最近、保育園、保育士さんに関するネガティブな話題が続出しています。
そういう事例もゼロではないでしょうが、それというのも、保育士さんに対する処遇が悪すぎることも一因ではないか、と考えてしまいます。
いずれにしろ、大部分の保育士さんたちは、処遇の悪さにもめげず、藤原先生や私がびっくりするようなプロフェッショナルな仕事をされています。何とか保育士さんたちの努力と成果に報い、きちんと評価したいものと思います。
マスコミには、たまたま発生したネガティブな事象ばかりを追うのではなく、日々行われている保育士さんたちの大変な努力に目を向けてほしいものです。
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小川和久著「メディアが報じない戦争のリアル」

2022-12-18 13:36:14 | 歴史・社会
メディアが報じない戦争のリアル 日本の「戦争力」を徹底分析
小川和久
上記の本を読みました。忘れないように、印象に残った部分をここに書き残しておきます。
《第1章 「ロシアによるウクライナ侵攻」のリアル》
2014年のクリミア併合時、12万5000人とされたウクライナ軍のうち、使い物になったのは5000人にすぎなかった。
2015年2月に独仏の仲介で「ミンスク2」に調印したものの、反古にされ、戦闘が続いた。
2019年の大統領選挙でゼレンスキー大統領が誕生したが、経済・汚職・紛争問題を解決できず、支持率は70%台から2021年秋には25%まで下落した。失地回復を狙うゼレンスキーはロシアへの強硬姿勢に出て、トルコ製ドローンを東部での親ロ派武装勢力との戦闘に使った。
2021年12月7日にバイデン大統領とプーチン大統領がテレビ電話会談。翌8日には、バイデン大統領が米軍をウクライナに派遣してロシアの軍事侵攻を阻むことについて「検討していない」と発言。11日にも同様の発言。こういう場合は、「集団防衛の義務はないが、アメリカはあらゆる選択肢を検討中」といわなければいけない。

ウクライナ軍は、ロシアによるクリミア併合後、アメリカの軍事顧問団の教育訓練を受け、組織や人事が徹底的にたたき直された。オバマ政権では、既存の武器を有効に使わせる訓練を施した。トランプ政権では、ジャベリン対戦車ミサイル、狙撃銃、弾薬、カメラ、電子防護システム、対砲兵レーダー、衛星画像分析能力、ドローン対策システム、領空監視システム、医療後送用の装備品が供与された。
アメリカテコ入れの結果は、携行式地対空ミサイル「スティンガー」によるKa-52M戦闘ヘリコプターの撃墜、対戦車ミサイル「ジャベリン」やトルコ製の無人機バイラクタルTB2による戦車の撃破などとなって表れた。
キーウ北方に20人いたロシア軍の将官のうち最大5人をウクライナ軍のスナイパーが倒したと報じられた。
仮にウクライナ復興費に10兆円が必要なら、軍事支援をしなかった日本としては、たとえば2兆円くらいは負担してよいのではないか。

《第2章 中国・台湾問題のリアル》
台湾の総兵力は、陸軍10万人、海軍250隻20.5万トン、空軍作戦機520機。海軍と空軍が対艦戦闘能力を突出させている。
中国が台湾を軍事占領しようとしたら、中国側は100万人規模の陸上兵力を投入する必要がある。
ソ連軍をモデルに学んだとき、定員1万3000人の自動車化狙撃師団を、1週間分の燃料・弾薬・食料とともに海上輸送するには、1個師団で25~50万トンの船腹量が必要とされていた。現在の装備で、100万人規模の兵力で計算すると、必要な輸送船の船腹量は5000万トンとなり、中国が保有する商船の船腹量6200万トンの大半を占めてしまう。
中国軍は台湾海峡で航空優勢(制空権)も海上優勢(制海権)も握ることができない。
台湾本島の海岸線1139キロのうち、上陸に適した場所は10%強の120キロほど、14箇所しかない。上陸しようとする中国側は、台湾側に陸海空から攻撃され、壊滅的な損害を被る。
かろうじて上陸できたとしても、予備役200万人が手ぐすね引いて待ち構えている。
中国の“空母キラー”ミサイルについて。移動目標用ミサイルは、目標を常時監視するため、偵察衛星が数十個必要だが、それが中国にはない。米原子力空母はミサイル防衛能力を有する8隻のイージス艦が護衛している。
ペロシ下院議長が台湾を訪問したとき、搭乗機は嘉手納から出撃したF-15戦闘機18機の護衛がつき、原子力空母と強襲揚陸艦を派遣して戦闘機だけで88機が布陣した。
中国の思考や行動の様式。「交渉したいことがあると、中国は武力行使を含む強硬姿勢に出る。ただし、収拾不能な戦争は、絶対に仕掛けない。」「中国は相手が強硬姿勢にたじろがず、逆に立ち向かってくると、正面衝突を避け、時間のかかる遠回りをしてでも目的を遂げようとする。」

《第3章 日米同盟のリアル》
アメリカにとっての日米同盟の重要性については、『小川和久著「日本の戦争力」 2011-10-13』で紹介したとおり。
日本にある米軍基地の防空を担当しているのは、航空自衛隊の地対空ミサイルと要撃戦闘機であり、陸上自衛隊の地対空ミサイルであり、海上自衛隊のイージス艦などミサイル護衛艦だ。
守るべき空域あたりの地対空ミサイルと要撃戦闘機の数と性能は、イスラエル・アメリカに次いで日本は世界第3位という評価もある。
秋田県と山口県に設置予定だったイージス・アショアについて、計画が白紙撤回された。その代替として「イージス・システム搭載艦」2隻の導入が決定された。しかし稼働までは10年からの期間が必要。そこで、米海軍が持つイージス艦を常時2隻借り受けるのだ。これを東北地方と中国地方の日本海沖に1隻ずつ展開する。日本政府が強く要望すれば、アメリカが受け入れることは間違いない。

「敵基地攻撃能力」について。呼び方は「打撃力」で統一すべきだ。
北朝鮮からの攻撃については、北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイルを発射する可能性はほとんどない。日本列島は77箇所の米軍基地を置くアメリカの拠点だから、日本への攻撃があれば、韓国と日本から猛烈な反撃が行われ、北朝鮮は壊滅的な損害を被る。
日本が保有すべき反撃能力について小川氏は、アメリカのトマホーク級の巡航ミサイルを保有することを提案してきた。日本に侵攻を試みる敵を洋上で撃破する「スタンドオフ兵器」としても使える点で柔軟性がある。日本が保有するトマホークの数は500発とする。米軍艦艇が保有していたトマホーク発射筒4本からなる装置を搭載すれば、垂直発射装置はいらない。海自の護衛艦47隻と潜水艦21隻(改修が必要)がトマホークを8発ずつ搭載すれば合計544発。
最初は米海軍が保有するトマホークを融通してもらい、(配備の)時間短縮を図る。同時に国産の巡航ミサイルの開発を進めれば、短時間で反撃力の整備が進む。さらに陸上自衛隊に地上発射型を順次配備する。(最終的に合計で1000発か?)

サイバーセキュリティについて。小川氏の提案で総務省が住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会を2002年に設けた。委員としてアメリカのネットワーク・セキュリティの実情を調査したところ、日本はアメリカから20年、韓国にも10年遅れていることがわかった。
直後に、ハッカー出身のアメリカ人専門家に侵入テストを依頼したところ、日本のセキュリティ会社が合格点を付けたシステムはすべて簡単に侵入できた。

《終章 日本の未来を切り開くために》
要人警護を担当する日本警察のセキュリティポリス(SP)とアメリカのシークレットサービス(SS)の決定的な違いは、特殊部隊としての訓練による反射神経の差だと思う。

外国の要人と日本で食事をするとき、席次を決めるのは要人側の警護担当者であり、その警護担当者が襲撃者撃退に最適な上座に座る。一方日本の警察のSPは、奥に座った要人と向かい合わせの席に座る。暴漢が入ってくるかも知れない方向に背を向ける。
--以上、列記終わり----------------------

上記の本は、2022年10月に初版が発行されています。
現在、日本の防衛の方針について閣議決定がなされたところです。新聞で報道されるその内容を見ると、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」については、小川氏がこの本の中で提案していた内容そのままで受け入れられているようです。即ち、当面はアメリカのトマホークを500発装備し、同時に国産の巡航ミサイルを開発し、完成の暁には合計で1000発を装備する、という内容です。
ただし、装備の仕方が小川氏の提案通りかどうかはわかりません。小川氏は、水上艦艇については「米軍艦艇が保有していたトマホーク発射筒4本からなる装置を搭載すれば、垂直発射装置はいらない。」としていますが、これと同じかどうか。潜水艦について小川氏は「潜水艦21隻(改修が必要)がトマホークを8発ずつ搭載」としていますが、既存艦の改修程度で済ませるのか、それとも別に巡航ミサイル専用の潜水艦を建造するのかどうか。

これからも、小川氏の発言には注目していきたいと思います。
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WCでのクロアチア

2022-12-12 15:47:42 | サッカー
(カタールW杯・至言直言 中村憲剛)クロアチアという深い森
至言直言 中村憲剛 2022年12月11日 日経新聞
『ブラジルは準々決勝でまたも敗退した。彼ら自身、なぜ負けたのかわからずにいるのかもしれない。前回のロシア大会から延長戦とPK戦を制し続けるクロアチアの不思議な磁力、ブラジルさえ押さえこむ引力には理屈を超えたものを感じる。
爆発力はそれほどないし、スタイルもはっきりしない。戦術的な縛りが少ない分、個人に委ねられる余白は大きい。選手のタイプもさまざまで、ボールを運べる者、クロスを打ちこむ者、そこに点で合わせる者がいる。明確なスタイルがないゆえの手札の豊富さと、アイデアを共有できる瞬発力が、クロアチアの実像を見えづらくしているようだ。
・・・
とりわけ、モドリッチの立ち位置は名人芸。時にライン間をただよい、時に最終ラインまで降りてきて、寄せ手が一歩届かない場所でボールを受けてブラジルの攻撃を鎮めてしまう。戦況を膠着させる。その「間」がそのまま、延長戦まで味方の足を長持ちさせる小休止の時間になっていた。』

[日本対クロアチア戦]
今回のワールドカップでは交代5人まで許されます。グループリーグで、日本は5人交代枠をフルに使ってきました。それに対してクロアチアは、グループリーグで交代枠をあまり使っていません。これでは選手に疲労が溜まります。アベマの解説の本田圭佑は、「この監督のやり方は信じられない」と盛んに述べていました。
日本対クロアチア戦で、日本は前半の初めから全力で走り回り、プレスをかけてボール奪取を試みました。疲労が蓄積しているだろうクロアチア選手を疲れさせ、後半で足を止めよう、という作戦と見ました。特に37歳のモドリッチについて。
ところが試合が終わってみると、延長を含めて120分、疲労による足の止まり方は、日本もクロアチアもあまり変わりませんでした。

アベマでの本田圭佑語録(日本対クロアチア戦)
前半に前田がゴールを決めたことから、、(本田)「これでハーフタイムに前田を交代させづらくなった」
実際、ハーフタイムで前田は交代せず、後半早々にクロアチアに得点を許しました。(本田)「結果として交代時期が裏目に出た。」

クロアチアの攻撃戦術は、パスをつなぐのでもなく、スペースに走り込んでパスを受けるでもなく、漫然と前方のフィールドにボールを放り込むばかりです。普通だったらワールドカップを戦うチームの戦術とは思えませんが、本田は「結果としてこれが戦術になっている。クロアチアは不思議なチームだ」との主旨の発言をしていました。
敵味方の密集の中に漫然とボールが放り込まれても、それをマイボールとすることができる個人技に裏付けられているのでしょう。上記中村憲剛の「明確なスタイルがないゆえの手札の豊富さと、アイデアを共有できる瞬発力が、クロアチアの実像を見えづらくしているようだ。」と共通の指摘のようでした。

延長戦、三苫が高速ドリブルでひとりで持ち上がり、最後は強烈なシュートで終わるまでのプレー(動画)について、(本田)「三笘さんやばいですね。これ、W杯終わったらビッグクラブでしょう」
予言が現実になりそうです。

今回WC日本戦での本田圭佑の解説は、「解説」というより「フリートーク」でした。そのフリートークの内容が、そのときの試合の流れやプレーの意味の本質を鋭くついているように感じられました。相方のアナウンサー(ゴールキーパー出身)が本田の秀逸な発言を引きだしていたし、ピッチサイドの槙野(元日本代表)との相性も良好でした。
日本は4試合で5得点を挙げました。堂安は5得点中2ゴール(ドイツ戦1点目スペイン戦)と、2つの得点に直結するクロス(スペイン戦2点目、クロアチア戦)で、得点場面では最大の立役者です。三苫は1アシスト(スペイン戦2点目)と得点に直結する南野へのパス(ドイツ戦1点目)で貢献しました。浅野は一世一代のトラップとゴール(ドイツ戦2点目)を決めました。田中碧と前田は、折り返しをきっちりゴールに決めました。
これら選手の活躍が、今回WC日本戦でのヒーローとなるわけですが、私の中では、本田圭佑の印象が最も強く残っているから不思議です。少なくとも「サッカー解説」の従来の殻を打ち破ったことは間違いなさそうです。

ところで、WCでのクロアチアですが、24年前のフランス大会、グループリーグでの日本対クロアチア戦、準決勝でのクロアチア対フランス戦、いずれも克明に記憶しています。
対日本戦では、スーケルのゴールで1対0、クロアチアの勝ちでした。中田英のクロスから中山の惜しいシュート(動画)も印象に残っています。今見ると、中田英から中山へのパスもドンピシャ、中山のトラップもぴったり、枠内に入る強烈シュートでしたが、クロアチアのキーパーが左拳一つでボールをはじきました。
このときは、日本対アルゼンチン戦もバティストゥータのゴールで1対0,クロアチアもアルゼンチンも、日本相手では省エネサッカーでした。
クロアチア対フランス戦(ハイライト動画)では、先制したのはクロアチアのスーケルでした。オフサイドにすべきところ、フランスのテュラムが自陣ゴール近くに残っていたため、オフサイドになりませんでした。するとそのあと、そのテュラムが大活躍です。ディフェンスなのに2ゴールを上げ、フランスが勝利しました。あのときテュラムに何があったのか、興味津々でした。ウィキには「準決勝のクロアチア戦において自らのミスにより先制された後、オーバーラップにより挙げた貴重な2得点(2-1で勝利)は後の語り草となっている。」と紹介されていました。また、このテュラムの息子が、今回のフランス代表メンバーに入っているとのことです。
スーケルはこの大会で得点王になりました。
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対スペイン戦

2022-12-03 22:08:16 | サッカー
また、サッカーネタです。
ワールドカップ 日本対スペイン戦、ライブでは観戦せず、朝起きてからネットニュースにて日本の勝利を知りました。
得点場面についてはテレビニュースなどで確認し、しばらくしてからアベマにて全体を観戦しました。

1点ビハインドで迎えた後半開始直後、堂安による同点弾が生まれました。
日本は、後半開始直後から相手陣内深くで積極果敢なボール奪取を試み、それが見事にハマって、堂安の弾丸シュートで実を結びました(動画)。
(“”内は本田圭佑の発言)
“イエス! 来たよ! いやワンチャンやで。”
伊東純也が自分のマークを捨ててボールを取りに行き、奪取しました。“伊東さんのプレイにも注目して欲しい。”
こぼれ球を拾った堂安がフェイントで相手をかわしてペナルティエリア外から左足弾丸シュート。“堂安さんがMVP間違いないけど”
キーパーが手に当てたがボールはゴール内へ。“いやーこれを決められるって言うのは。触っているんだけど・・・ワールドカップこういうの入るんですよね。“(本来ならキーパーに防がれてもしょうがない、という意味か?)
”いや、あるぞ”(さらに日本が加点するという意味か?)

対ドイツ戦、対スペイン戦、いずれも日本の1点目は堂安によるゴールでした。
対ドイツ戦では、三苫の切り返しで南野へのフィードが秀逸、それを受けた南野のシュート気味フィードが秀逸、そのボールをキーパーがはじいてこぼれたところに堂安がいた(動画)。あのシュートでの堂安の功績は、①あそこにいたこと、②蹴ったボールが枠内に入ったこと、であったでしょう。
それに対して対スペイン戦のゴールは違います。伊東純也の積極的守備で生まれたこぼれ球を堂安が拾い、そのあとのワンステップのフェイントで相手ディフェンスをかわすと、ペナルティエリア外から左足で弾丸シュートです。見事でした。この得点は堂安のMVPシュートでした。

そして日本の2点目です。
右サイド、ボールを受けた堂安がフェイントをかけ、ディフェンスの股抜きでファーサイドにグラウンダーでクロスを送りました。ここでも、堂安のフェイントと股抜きクロスは見事でした。ボールはゴールラインへ向かって転がります。
左サイドを走り込んだ三苫が、ボールがゴールラインを割る直前で追いつき、センタリングを上げました。
田中碧が体でボールを押し込み、2ゴール目!(動画
(“”内は本田圭佑の発言)
得点場面直後、レフェリーが笛を吹かないので“まてまてまて”
左斜め後ろからの映像を見て“出てたっぽいで槙これ。これ出てるかもしれへん。”
ゴールラインの真上からの映像を見て“えっ、出てないかも!”
VARでゴールが認められ、試合再開。“これ長いよ、こっから。”

まず、三苫のセンタリング直前にボールがゴールラインを割っていたか否か、という点について(FIFAの動画)(写真)。ネットニュースでは「誤審だ」「いや正しい」という情報が錯綜したようです。しかし確かめると、「誤審だ」という発言はサッカーのルールを理解せずの反論だったようで、あっという間に沈静しました。

何といっても、三苫の俊足と、アウトになるかも知れないボールを諦めずに追いかけたことが、この得点につながりました。

私は55年ほど前、高校でサッカー部に入っていて、一時期ポジションがレフトウィング(フォワード)でした。本来は俊足で上手な選手のポジションです。東京・メキシコ・オリンピックでレフトウィングを務めた杉山隆一のように。私は鈍足で下手くそでしたが、たまたまレフティーなので一時期このポジションにいました。本職はフルバックでした。
あるとき、右サイドからゴール左に向けてフィードされたボールを、ゴールライン際で追いついてセンタリングする練習をしていました。今回の2点目と同じです。私の番が来て、フィードされたボールがゴールラインを外れそうだったので、私は途中で全速疾走をやめました。
そこに、たまたま練習に参加していた卒業生の方がやってきました。多和さんという先輩で、当時慶応大学ソッカー部で同じレフトウィングで活躍されていた方です。私に「途中で諦めちゃいけない。たとえボールがゴールラインを割ってから蹴り込んでも、見過ごされて認められることもあるんだから。自分のプレーでもそのようなことがあった。」と指導されました。55年経った今でも、そのご指導を鮮明に記憶しています。

今回の三苫選手は、諦めずに自分の俊足を信じて飛び込み、VARでも認められるプレーを実現しました。あと数mmボールが外へ出ていたらゴールは認められずにゴールキックですから、本当にきわどいプレーでした。

今回対戦したドイツ、スペインのいずれも、ディフェンスの力量が十分ではなく、それが日本の勝利の要因になったように思います。
ドイツ戦
1点目については、三苫の切り返しからのフィードを許し、それを受けた南野にシュートを打たせてしまった。
2点目については、浅野の近くにいたディフェンスは浅野の後ろから追いかけるだけであった。オフサイドトラップを狙ったらしいが、1人のディフェンスがゴール近くに残っていたためにオフサイドにならなかった。
スペイン戦
1点目、2点目いずれも、堂安にフェイントからの強烈シュート、フェイントからの股抜きクロスを許してしまった。

それと、今回の日本代表チームとの相性もあるのかもしれません。ドイツもスペインも、「確かに実力は日本より上なのだが、不思議と日本が勝ってしまった」といった相性です。コスタリカは相性が悪かったです。
「ボールポゼッション率が低い側のチームが勝つ」というのも3試合で共通でした。
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