弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

法人の解散と特許権

2006-03-18 00:23:26 | 知的財産権
「A社とB社の共有特許権が存在するとき、A社が解散してしまった。解散前にはA社は持分の放棄もB社への譲渡もしなかった。もうA社と連絡が取れない。そのとき、この特許権所有の帰趨はどうなるのだろうか。」という問題です。

すぐに思いつくのは、特許法76条の「特許権は、所定の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは消滅する」です。上記A社の場合も、A社が解散するとA社持分は消滅するのだろうか。そしてA社持分は自動的にB社持分になるのだろうか。

しかし、特許法76条は自然人についての規定であり、法人には適用されないのですね。中山注解によると、特許権について何らの処分もされないままに法人が解散してしまった場合は、民法72条3項の規定により国庫に帰属することになるそうです。しかし、現実には国への移転登録がされた例はなく、事実上特許料不納や存続手間満了で特許権を消滅させているようです。

そこで、特許庁に聞いてみました。
特許庁の話では、「法人の解散前、あるいは解散後でも清算人がいるはずだから、その段階で放棄なり譲渡なりをしてもらう必要がある。その書類を添付して手続きすることにより、A社の持分の帰趨が決まる。もし放棄や譲渡をせずに消滅してしまったら、特許庁の登録上は、A社が存続しているという状態のままとなる。B社が例えば第三者に特許権を譲渡しようとしても、A社の同意が必要なのにそれが得られず、できないこととなる。」ということでした。

なお、中山注解におもしろいことが書いてあります。
「法人解散の場合の特許権の国庫への移転は、法による強制的な移転であり、一般承継に準じ、登録は移転の効力発生要件ではない。解散した法人の名義は残っていても、特許権者は国ということになり、しかも国有特許権は特許料は不要であるので、特許料不納による特許権消滅ということもないことになる。」
コメント (6)
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