弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

GW直前

2006-04-28 00:03:39 | Weblog
明日からゴールデンウィークの始まりですね。
私のところは連続して休みをいただき、家内と二人で北イタリアに出かけることになっています。明日29日の早くに日本を発ちます。

私の携帯は4年前に買ったドコモのムーバで、海外では使えません。そこでドコモのレンタルで海外携帯を借りることにしました。一昨日、レンタルの携帯が宅配便で到着しました。レンタル料は1日210円と割安です。もちろん通話料は安くありませんが。
レンタル携帯は、国内で使っている携帯と同じ番号で使うことができます。私と家内の分で2台借りましたので、現地でも気軽に分かれて行動することができます。

知人に預けてあったトランクも一昨日到着しました。
後は荷物を詰めて明日の出発を待つばかりです。

ということで、このブログもしばらくは休業ということになります。m(_._)m

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新人はつらいよ

2006-04-27 00:10:08 | Weblog
昨日の夕方5時過ぎ、私の事務所に若い女性が飛び込み営業で入ってきました。
「リクルートの代理店をやっている○○から来た新人です。名刺交換をお願いします。」何か切羽詰まった感じです。
私は、「ノルマがあるんですか?今日はまだ何枚か足りないんですか?」と聞きながら、私の名刺を1枚差し上げました。
すると突然その人の目から涙があふれ、顔をクシャクシャにして「ありがとうございました」と言って帰っていきました。
いやー、こちらの方がびっくりしました。

昔から、飛び込み営業に「名刺交換をお願いします」と言われても、私は名刺を渡さないことにしていました。名刺を悪用されると困りますし。ところが数年前、やはり4月頃に若い人があらわれ、「自分は新人であり、1日○○枚(確か100枚だったか?)の名刺をいただかなければいけないんです」と言うのです。ちょうどわが家の上の子が社会人1年生になったときであり、私も情にほだされ、それ以来「新人です」と名乗ったときには名刺をあげることにしているのです。

毎年4月の末頃になると、新人さんが何人か名刺をもらいにやって来ます。男性・女性半々ぐらいでしょうか。新人研修として回らされているのでしょうが、本日の新人さんの様子からすると相当追いつめられているようですね。
今年の新人さんは、わが家の下の子と同学年に当たります。その意味でもまたまた情にほだされます。

日本全国の新人さん!頑張ってください!!

ところで、たった今ネットで検索したところ、「東京駅近辺で新人研修の一環による名刺交換と称して個人情報を取得する独特の手口を用いているため営業方法に関して不評をかっている」会社があるようですね。これは気をつけなくては。
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方法発明と間接侵害-大合議判決(2)

2006-04-26 12:45:26 | 知的財産権
パテント誌4月号を見ると、興味ある議論がいくつも載っています。最近このブログの知財ネタが枯渇していたので、これはちょうど良いです。
その中に、一太郎知財高裁大合議判決について、特に方法クレームとプログラムの間接侵害に焦点を当てた論文(上羽英敏著)が載っています。

大合議判決では、松下特許の方法クレームと一太郎との関係について、「一太郎インストールパソコンを使用する行為が直接侵害」、「一太郎インストールパソコンを販売する行為が間接侵害(特許法101条4号)」とはしましたが、「一太郎ソフトを販売する行為は同号の間接侵害に該当せず」と判断しました。

この点について、私の2月11日の記事では、「101条4号の素直な解釈からすれば、一太郎ソフトを販売する行為も間接侵害に該当するのではないか」という疑問を呈しました。

パテント誌の上羽論文でも、同様に、一太郎ソフトを販売する行為は、松下特許の方法クレームの間接侵害に該当するとすべきではないか、というように判決を批評しています。
また、上羽論文によると、一太郎大合議判決の評釈として以下の5点を挙げ、いずれも大合議判決の方法クレームと間接侵害の結論に対しては批判がされているとしています。
(1) 上山浩 SLN103号(2005)
(2) 生田哲郎 発明Vol.102, No.12(2005)
(3) 帖佐隆 発明Vol.102, No.12(2005)
(4) 飯田秀郷 L&T 30号(2006)
(5) 井上雅夫
私は(1) ~(4) にはアクセスできませんが、(5) の該当部分を読みました。

以上から推定すると、一太郎大合議判決の方法発明と間接侵害の結論については、学説評論では概ね批判されているようです。私も同様に反対しています。

しかし、上羽論文でも指摘されているように、知財高裁の大合議判決であるという重さがありますから、特にコンピュータソフトのように間接侵害で戦わざるを得ないような技術分野では、方法クレームのみとするのではなく、必ず装置クレームを作成しておくべきです。出願済みの案件であれば、できるかぎり補正で装置クレームを追加しておくべきということになります。
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弁理士という職業

2006-04-25 00:02:18 | 弁理士
以前、W-SOHO.NETというSOHO支援(特に女性に対する)の団体を主宰する方からご依頼を受け、弁理士という職業を紹介するインタビュー記事を作成したことがあります。ここにあります。

読者はSOHO開業を志す主に女性で、士業のひとつとして弁理士という資格があるらしい、自分と関係があるのだろうか?、というような知識の方を想定しました。
そのような関心を持つ人向けに、弁理士という職業を紹介してみました。

もしよろしかったらご覧ください。
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すがやみつるのネットライフ

2006-04-24 00:09:47 | 趣味・読書
漫画家のすがやみつる氏は、1985年頃、アメリカにおけるパソコン通信CompuServeの草創期からそこに参加し、それ以後日本とアメリカのパソコン通信の架け橋となってきた人です。
もともと、世界の自動車レースの情報をいち早く知りたい、ということからはじめたことですが、英語に悪戦苦闘しながらアメリカのパソコン通信の世界を開拓していき、結果として日本のパソコン通信をリードする役割を担われました。そのはじめからの様子が、すがやみつるのネットライフで詳しく語られています。

先日、北杜夫氏のマンボウ恐妻記において、“私の履歴書”記事の中で北氏が奥さんをよく書いていないことを話題にしました。このような話題が出ると、私は上記すがやみつるのネットライフに出てくる話を思い出します。

1985年頃、パソコン通信でメールを出した米国人から電子メールが届きます。
“英和辞典を片手に読んでみると、「奥さんは、髪がブロンドで目は青。とても才能のある女性で、ビジネスの良きパートナーである……」なんてことを書いてある。
「ありゃま~、なんてアメリカ人は図々しいんだろ。まだ会ったこともない相手に、自分の奥さんのことをベタベタに誉めてあるよ。アメリカ人には、謙譲の美学とか、へりくだるとかって感覚がないんだね」と、これがそのときの正直な感想。”

これに対して返事メールを出します。
“「こちらの家族は、妻と娘が2人。それに母が同居している。妻はチビで太っており、2人の子供は、食べて騒いでばかりいる」
 といった内容の、謙譲と遠慮と、そして、一歩さがって師の影を踏まずの日本的精神と純和風の美学に彩られた愚妻豚児スタイルの電子メールを送ったのだ。
 このような遠慮がちな自己紹介が通用するのは、世界でも東アジアだけ――ということを知るのは、しばらく後になってからのことである。海外生活の経験がある人に、この電子メールの内容を話したら、「相手のアメリカ人は、その手紙の内容を本気にしてますよ、きっと。彼らは、みんな家族を大事にしてますから、家族を大事にしているって姿勢を示さないと軽蔑されかねないんです」と言われ、もうビックリ。メル・スナイダーも、ぼくの送った電子メールを本気にして、ぼくの家族が本当にチビでデブでうるさいだけの家族だと思い込んでいるんじゃかろうかと不安になった。が、幸いにして、メル・スナイダーは、ビジネスで日本人との交際も多かったため、ぼくの送ったメールも、ジャパニーズ・スタイルだと理解してくれていたらしい。ホッ。”

現在では、日本でも欧米流が浸透し、自分の家族を紹介するときに愚妻豚児スタイルを用いず、家族の良いところを積極的に紹介するスタイルが増えてきたように思います。しかし、北杜夫氏ほどの年齢になると、やはりこのような欧米流スタイルは気恥ずかしくて使えないでしょうね。

私が、米国CompuServeを通じてのインターネットメールにハマったのが1990年頃です。CompuServeを通じて日本語メールを送信するテクニックに関し、当時のNIFTY-ServeのFCISというフォーラムのお世話になりましたが、このフォーラムを主導していたのがすがやみつる氏です。ですから、この同時代にすがやみつる氏がどのような活動をしていたかにとても興味があり、すがやみつるのネットライフを読んでいるのですが、どうも1990年になる直前で話がストップしているようです。
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マンボウ恐妻記

2006-04-23 00:12:24 | 趣味・読書
ちょっと前の日経新聞の私の履歴書は、北杜夫の巻でした。
興味を持って読んだのに内容のほとんどを忘れてしまったのは例の如くですが、1点だけ気になったことがあります。
連載の中で奥さんについて触れた文章がほとんどなく、結婚のいきさつについて簡単に触れた後は、奥さんの悪口が一箇所登場したのみでした。「結婚した当初は慎ましく穏やかだったのに、何であんなに猛々しくなれるのだろう」といったような表現だったと思います。一体どんな奥さんなんだろう、と気になっていました。

先日、ブックマートをのぞいたところ、北杜夫著「マンボウ恐妻記」が目に触れたので、さっそく購入して読んでみました。
マンボウ恐妻記 (新潮文庫)
北 杜夫
新潮社

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結論からいうと、この夫婦の関係というのは、北杜夫氏の躁鬱病が原因で実にひどい行状があり、これに対してよく奥さんが我慢したものだ、ということのようです。

躁鬱病において、鬱状態というのは、本人は絶望のどん底に陥り、大変辛い目に遭うわけですが、周りにはそれほど迷惑をかけません。それに対して躁状態になると、本人は並はずれて活動的になり、やりたいと思いついたことは何でもはじめてしまうし、気に入らないことがあると突然すごい剣幕で怒鳴りつけたりするので、周りには大迷惑となるのです。

北氏がはじめて躁状態になったのは41歳の時でした。奥さんは10歳年下ですから、31歳ということですね。それ以来、躁状態のときは、奥さんを見れば「バカヤロウ!」と怒鳴って叱りとばし、言いがかりをつけて難詰します。奥さんが言い訳をすれば、北氏の怒りはさらに高まり、いっそう怒鳴り声が大きくなります。
40代後半の躁状態のときには、ついに株に熱中しはじめます。まずは本格的な映画を作ろうと思い立ち、そうなると金がいるから、株でその金をつくろうと思い立ったのです。株式市場が開いている間中、ラジオの短波放送にかじりついて電話で売り買いを指示します。当然のこととして損が積み上がり、出版社から前借りし、銀行から借金し、自分の母親から借金し、佐藤愛子さんからも五百万円を借ります。税金も払えません。
いよいよ金策に行き詰まったときに中南米に1ヶ月取材する旅行があり、それを潮にほとんどの株を手放します。たまたま新潮社から北杜夫氏の全集が刊行され、その収入で前借りも返すことができましたが、完全に無一文になったとのことです。
北氏の奥さんは、このような状況に耐え、やりくりを一手に引き受けて何とか北家の経済を維持し続けたのですから、猛々しくならなければ続かなかったでしょう。北家の財布を奥さんが取り上げて北氏にはお小遣いしか渡さなかったとしても当然です。北氏が「これでは禁治産者だ」と嘆いても身から出た錆です。

北氏もいい気なもので、「私が株を売買しているときに羽交い締めにされ、前後に揺すぶられた」ことを「暴力だ」と非難します。また、「自分は大声で怒鳴り散らすけれど妻に対して手を上げたことがない」と自慢げに書いています。北氏の父である斎藤茂吉は、奥さんが少しでも口答えすると殴り倒していたらしく、それと比較しているのですからめちゃくちゃです。
北氏は、奥さんからやりこめられると、直接には反抗できないのでエッセイで奥さんの悪口を書いて憂さを晴らしているようです。

以上のような状況のようです。
北氏は奥さんの悪口を書き続けますが、「ところが、私たち夫婦を知っている先輩や友人たちは、ことごとく私を非難し、妻の味方をするのである。しかも、『もし奥さんがいなかったら、北君はとうに破滅しているだろう』などと口をそろえて言うので、私は悔しくてたまらない」となります。
文庫本の題名は「マンボウ恐妻記」ですが、単行本は「マンボウ愛妻記」だったようです。こちらが北氏の本音かもしれません。

もし「私の履歴書」で奥さんについてさらに書いていたら、きっと奥さんの悪口がぞろぞろ出てしまうので、自重したというところでしょうか。
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

2006-04-22 00:02:37 | 趣味・読書
村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読みました。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社

このアイテムの詳細を見る

この小説は、「私」が暮らす近未来っぽい東京での生活と、「僕」が暮らす壁で囲まれた街の中での生活(仮想世界?)とが交互に語られます。
「私」は計算士という職業に従事しています。計算士は、極めて高い競争率で選抜され、2週間冷凍された上で脳内に改造が加えられ(外科的改造ではない)、暗号化処理に対する特殊な能力を身につけています。このような人が実在する世界ですから、現代あるいは過去の筈がなく、近未来と位置づけるしかありません。

ところが、近未来とするとどうしても違和感があります。何が違和感かというと、携帯電話とインターネットが登場しないのです。
「私」は、老人から渡された獣の頭骨について調べるのに、図書館へ行きます。その獣が一角獣らしいと気づき、急いでいたし家を空けられない事情があったので、図書館の女の子に無理に頼んで一角獣に関する書籍を自宅まで持ってきてもらいます。「何でインターネットを使わないのだろう」というのが自然にわき出る疑問です。

本が下巻に移り、巻末を見て納得しました。この本は昭和60年に発刊されているのですね。昭和60年に近未来小説を書いたのであれば、その中に携帯電話とインターネットが登場しなくてもそれが当たり前です。
ところが、その2つが登場しないだけで、「近未来社会」として何か欠陥があるように思えてしまうのです。それだけ、携帯電話とインターネットがこの世の中に欠かせないアイテムとして意識に定着してしまっているのですね(少なくとも私の意識において)。

村上春樹がカフカ賞を受賞しました。最近は、カフカ賞受賞者がその年のうちにノーベル文学賞を受賞しているらしいですが、村上春樹もノーベル賞受賞となるのでしょうか。楽しみです。
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裁判所HP裁判例集

2006-04-21 00:08:17 | 知的財産権
裁判所ホームページの判例検索システム-知的財産裁判例集も判決の収録が進んだようです。東芝vsハイニックス侵害訴訟判決も収録されました。まだ読んでませんが。

このページでの判決文はpdfファイルで収録されていますが、行毎に改行マークが入っているのですね。そのため、自分が好むレイアウトでの印刷が困難になっています。
従来、最高裁ホームページの判決文はhtmlファイルとなっており、行毎の改行マークはありませんでしたから、これをワードのA4縦長で2段組文書として読みやすくしていました。今回のpdfファイルではこれをやると各行毎に変なところで改行されてしまいます。
pdfファイルをそのまま印刷すればいいのですが、それでは1ページ当たりの文字数が少なすぎ、膨大な印刷ページ数になってしまいます。印刷で2ページ分を1ページに割り付けて印刷すればいいのですが、今度は字が小さくなりすぎて老眼には苦痛です。

そこで、ワード文書でA4横長とし、この中で2段組文書にしてみました。これだと、10.5ポイントの活字を使っても、元のpdf文書の1行がワード文書の2段組1行に収まるので、変な改行が入らないで済みます。また、10.5ポイントの大きさがあれば老眼でも何とかなります。ただし、pdfファイルを全文コピーペーストするときにページ番号まで入ってきてしまうので、それを削除する手間がかかります。

手間を惜しむ場合はやはりpdf文書のままで2ページ割り付け印刷ですね。

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特許法181条5項の決定の確定

2006-04-20 00:10:51 | 知的財産権
特許法181条5項では「審判官は、・・・二項の規定による審決の取消しの決定が確定したときは、さらに審理を行い、審決又は決定をしなければならない。」と規定しています。
二項の規定による審決の取消の決定とは、審決取消訴訟の提起後90日以内に訂正審判を請求し又はしようとしているときに、裁判所が決定をもって審決を取り消す、いわゆる「差し戻し決定」です。
「決定が確定したときは」とありますが、決定が確定するのはいつなのでしょうか。

高裁の決定に対しては、原則として抗告ができません(裁判所法7条2項、民訴法337条1項)。憲法違反の場合の特別抗告(民訴法336条1項)、最高裁判例違反等の場合の許可抗告(同337条2項)があるだけです。
このような前提のもと、知財高裁の書記官に電話で問い合わせたところ、「被告が決定の告知を受けたときに決定が確定すると考えている」ということでした。「告知」と表現したのは、民訴法119条の規定から来ると思います。具体的には被告が決定の送達を受けたときでしょうね。
被告に限られるのは、差し戻し決定に対して原告が不服を申し立てることはあり得ないということからです。

また、裁判所から特許庁へは決定が確定したことを通知していません。決定書の正本は特許庁に送られるので、特許庁は決定書を受け取ってから適当な期間が経過した時点で決定が確定したと認識し、特許法181条5項の審理を再開し、同134条の3第2項で被請求人に対して訂正を請求するための相当の期間(10日程度)を指定することになります。

上記の点に関しては、受験界でも見解は同じでしょうね。
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生海苔異物除去装置事件(2)

2006-04-19 00:02:56 | 知的財産権
知財高裁(平成16(行ケ)214)で敗訴判決を受けた被告(特許権者)は、最高裁に上告しませんでした。審決取消判決が確定し、再度の審決では、知財高裁判決通り、請求項1を無効とする審決が成されました(H17.5.24.送達)。
特許権者はこの時点で、今度は自分が原告となって審決取消訴訟(平成17(行ケ)10530)を提起します(H17.6.17.出訴)。
その後特許権者は、請求項1を含む特許請求の範囲を訂正します。訂正の手段として、出訴から90日以内にできる訂正審判請求ではなく、別の7件目の無効審判における訂正請求を行う、という作戦です。たまたま、7件目の無効審判(2005-80132)の副本がH17.5.28に送達され、それに対応する訂正請求(H17.7.21)が、たまたま出訴から90日以内に合致していたというわけです。
この場合、上記のように無効審判の副本送達後60日以内に訂正請求しても良いし、無効審判継続中といえども訴え提起から90日以内には訂正審判請求できるからそちらでも良かったでしょう。そしていずれであっても、審決取消訴訟において、特181条2項により差し戻し決定をすることができると思われます。
ところが審決取消訴訟では、特181条2項に基づく審決取消決定(差し戻し決定)をせずに、請求を棄却しました。
私には差し戻し決定が妥当であると思われますが、なぜそうせずに請求棄却判決が出されたのかよく分かりません。特許権者(原告)は上告受理申立をしているようです。

本件は今後の推移を見守る必要がありますが、いくつかの疑問点があります。
(1) 知財高裁(平成16(行ケ)214)で敗訴判決後に上告受理申立を行う途もあったと思われるが、なぜそうしなかったのか。
(2) 2度目の審決を受け、特許権者が原告として審決取消訴訟提起した後、別の無効審判事件における訂正請求ではなく、訂正審判請求をしたらどうだったか。特181条2項では「訂正審判を請求し、又は請求しようとしている」とありますから。
(3) 最高裁はどのような判断をするのか。
(4) 今回の訂正の内容は、最初の判決の既判力が及ぶ範囲を外れることができているか。
いずれにしろ、正しい判断がされることを願うばかりです。
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