弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

スイス氷河で75年ぶりに発見

2017-07-23 13:27:10 | Weblog
スイスの氷河で75年前の行方不明夫婦を発見
『融解が進むスイスの氷河で、75年前に行方不明になった夫婦のものとみられる遺体が凍った状態で発見された。地元メディアが報じた。(靴底の写真)』

氷河で発見の遺体、75年前に行方不明となった夫婦と特定 スイス
『【7月19日 AFP】スイスのアルプス(Alps)山脈で、解けて後退した氷河から発見された男女の遺体について、スイスの警察当局は19日、DNA検査により2人が75年前に行方不明となった夫婦であると特定したと発表した(靴底の写真)。』

私は中学時代(1961~1963年)、学校の山岳部に所属していました。当時、中学校の図書室で山岳関係の書籍を読んだ記憶から、今回の上記報道に接して2つの事柄で昔を思い出しました。

第1は、遺留品の靴底の写真です。
この写真に掲載されている靴は、ご夫婦のうちの奥様の靴のようです。そして、靴底の出っ張りは、すべて鋲が打ってあるように見えます。
私の中学時代、すでに鋲靴は姿を消していたはずです。私が中学時代に履いていた登山靴はキャラバンシューズですし、先輩方が履いていたのはビブラム底の登山靴だったはずです。
一方、中学時代に図書室で読んだ書籍の記憶として、以前は登山靴の靴底として鋲を打ったものが使われていたことを知っていました。鋲にはその形状によって名前が付いていました。一生懸命記憶をたどったのですが、どうしても名称が思い出せません。そこで、ネットで調べてみました。
岳さんの「登山用具の歴史 前編」のページに、西岡一雄、海野冶良、諏訪多栄蔵著の「登山技術と用具」の内容が掲載されています。その中に靴底のパターンの図面に、鋲の打ち方、鋲の名前が書かれていました。ムガー、クリンカー、トリコニー、そうそう、そんな名前でした。私が中学校の図書室で読んだ本も、同じ「登山技術と用具」だったかもしれません。

今回発見された遺留品の靴底写真を見ると、鋲の形状は半球状であって、ムガー、クリンカー、トリコニーのどれでもないかもしれません。あるいは、ムガーが摩耗して半球状になったものでしょうか。

記憶の第2は、何十年も経ってから氷河の末端でご遺体が当時の姿のままに発見されることに関してです。
中学校の図書室で読んだ山岳小説の一つに、「青春の氷河」がありました。アマゾンで検索すると、青春の氷河 (1956年)ザイルの三人―海外山岳小説短篇集 (1959年)の2種類がヒットします。中学でどちらの本を読んだかは定かではありませんが。

「青春の氷河」のあらすじはというと・・・。
アルプスの氷河で命を落とした若い男性がいました。その男性の若い奥さんが未亡人として残されます。
未亡人に心を寄せる男性がおり、未亡人に求婚したのですが、未亡人は結婚を断りました。死亡した男性を呑み込んだ氷河は、一定速度で下流に下降しており、24年後には氷河の末端に辿り着くということを、未亡人は専門家から聞いて知っていたのです。
24年が過ぎました。二人とも結婚せずに独身のままです。
未亡人と男性は、連れだって氷河の末端を訪れました。そして、24年前の予測通り、氷の中に遺体を発見することができたのです。
男性が遺体を掘り出す作業を行っているとき、遺体の首にロケットを見つけました。ロケットを開けてみると、そこには未亡人とは別人の女性の写真が入っていたのです。

以上が私の記憶です。今回、ネット検索した所、青春の氷河のテキストを閲覧することができました。私の記憶はほぼそのとおりの内容となっていました。

テキストの最終章を拾うと・・・
『ふと、女がうつむいて足元をみると、そこに、ガラスにとじこめられたような、フロビッシャーの屍体があるのだった。すぐそこにひざまずいて、かの女は声をあげて泣きだした。
氷にとじこめられた青年は、二十四年の歳月がたっても、眼元口元に一すじのしわもよらず、すやすや静かに眠っているかのよう。冷たい氷は、金時計以上に彼を大切にいたわったらしい。元気に満ちた風貌は、登山にでかけた朝そのままだった、そして、その氷の上にひざまずくしわだらけのとしとった女は、わが子のような青年の姿をみながら、さめざめとすすり泣く――
みていたチャロナーは、今さらのように、自分の青春がとうの昔に過ぎさったことをしみじみと感じた。かの女の青春も過ぎ去った。「私もだんだん齢をとります」口でもしじゅういっていたが、それは本当の言葉の意味を知らずにいっていたのだ。が、いまや本当にその言葉の意味を痛切に知った。氷の中の子供のような若々しい青年にくらべれば、彼も女もともに老人で、その青春はもう掴もうとしても手のとどかぬ、遠いはるかな国へ飛びさってしまったのだ。
やさしく女を立ち上らせて、
「氷を掘らせますから、ちょっとのいてください。掘れたら呼んであげます。」
云われるままに、女は五、六歩そこをしりぞいた。チャロナーは人夫を呼んで氷をわらせ、屍体発掘がすむと女を呼んだ。
かの女と屍体とのあいだには、もうガラス板ほどのへだたりもない。青年とやつれた女は、こうして二十四年ぶりの対面をした。
だがこの時、ちゃりんと音を立てて、青年の体から妙なものがおちた。そばでみていたチャロナーが、急いで拾い上げてみると、それは糸のように細い金鎖のさきについたロケットなのであった。青年の頸にかけてあったのが切れたのであろう。チャロナーがそのロケットの蓋を開けてみると、なんと、美しい、がどこか俗悪な、見知らぬ女の写真が、大胆にこちらをむいてにっと笑っているのだ。とっさに彼はリフェルアルプ・ホテルの女支配人の言葉、「わたしだったら、自分の娘をあんな男のところへ嫁にやらぬ」といったのを思い出した。
ふと気がついてみると、白蝋のように蒼ざめた女が、いぶかしげに彼をあおいでいる。
「なんです、それは」とかの女がきいた。
いそいでチャロナーは蓋をしめて、
「あなたの写真です。」
「あら! あの人が、わたしの写真のはいったロケットをもっているはずはありませんわ!」
おりから、山のはに七月の太陽がのぼって、断崖や氷河を金色にそめるのだった。』(青空文庫

今回の新聞記事を読むと、75年ぶりに遺体が発見された理由は、「氷河が融けて後退したため」とされています。一方、「青春の氷河」において24年ぶりに発見されたのは、「氷河が下流に流れて末端に到達したため」ということで、理由が全く異なります。
75年ぶりの今回について、「氷河が下流に流れる」ことによる影響は一部でもあったのかなかったのか、気になる所です。
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加計学園問題(3)

2017-07-17 12:22:39 | 歴史・社会
朝日新聞2017年7月16日朝刊の5ページに、1ページ全面で『「加計」問題 晴れぬ疑惑』とする記事が掲載されています。記事の内容を検討するのに先立ち、特区諮問会議の八田委員が書いた下記記事を参照します。

「加計学園の優遇はなかった」内部から見た獣医学部新設の一部始終
2017.7.11 八田達夫:公益財団法人アジア成長研究所所長
----内容抜粋------------------------------------
《文科省に義務づけられた「獣医学部新設の検討」》
2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に、「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定することができた。これは必ずしも特区でなくてもよいから、何らかの方法での新設の検討を文科省に義務付けたものだ(なお、新設に当たっては、「石破4条件」が付けられた。これは、検討期限を切った上で、検討の際の留意事項を記載したものである)。
「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということである。
ところが文科省は、2015年度内に獣医学部新設を検討すると約束しておきながら、ずるずると2016年度に入っても検討に決着を付けようとしなかった。閣議決定に従わなかったのである。
特区側としては、2016年度中には告示整備や区域会議認定を行うべきだと考えていたので、業を煮やして、2016年9月16日に特区WGでヒアリングを行ったが、文科省は十分な検討をしていないことが明らかになった。そのため、事務局にはさらなる折衝を依頼し、山本幸三特区担当大臣にはさらなる督促をお願いした。

《今治市による獣医学部新設の提案》
2015年6月5日 愛媛県と今治市が、提案公募に応じて獣医学部新設を提案してきた。
2015年12月 それを受け諮問会議で、今治市が特区に指定された。指定目的の1つには、獣医学部新設が含まれていた。
2016年9月21日 「第1回今治市分科会」における、加戸守行・元愛媛県知事による説明は、自身が知事時代の鳥インフル対策で経験した研究機関不足の必要性を訴え、説得的だった。2016年9月30日の広島県・今治市特区会議では、今治市における獣医学部新設に関する詳細な提案を示している。
2015年12月の時点では、特区のなかで今治市だけが、明確な計画を持つ提案者であった。したがって、2016年9月16日の特区WGヒアリングを含め、9月から10月前半にかけての文科省督促でも、我々関係者は今治市での新設を念頭に置いていた。

《京都による獣医学部新設の提案》
2016年10月17日 京都が具体案をWGに提案してきた。それまでは3月に関西区域会議において概要を1枚の紙で提案していただけだったが、この日、初めて具体的な提案がなされた。
特区では、1つの区域で規制改革が認められれば、それが他の区域でも自動的に認められるのが原則だ。したがってこの段階では、最初にどの区域で獣医学部新設が認められたとしても、当時申請していた3区域すべてで同じように認められるはずだった。
ただし、1校目にはできるだけ早く新設してもらわなければならない。特区の評価は「速い」という点にある。事業者や自治体は多大なコストをかけて規制改革を提案している以上、スピーディに進めるのは当然のことだ。

《獣医学部新設を急ぐ理由》
2016年11月の諮問会議決定では、「……獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とされている。これは、2015年度内の検討の約束を文科省が守らなかったことで、特区事業としての獣医学部新設が予定よりも遅れていたため、最初の事業者および自治体には最大限急いでもらうことを意図したものである。
さらに、2016年11月の諮問会議決定に基づき、まず早期にとりあえず獣医学部ができ、その後それに他の大学が続くと予想していた。
しかし「1校に限る」という条件が付けられたために、今治市に続いて他の地域で直ちに新設することは難しくなった。WGとしては、最初の突破口を作れば、1校も新設しない場合と比べて、その後の新設の可能性がはるかに向上すると考えていた。しかし、「1校に限る」という政治的な判断は、あくまで獣医師会の意向に沿ったものであり、「制限せずすべて開放」という立場の特区WGの側や、ましてや首相が主張したためではない。
----内容抜粋終わり------------------------------------

朝日の記事にある「疑惑」をリストアップします。
2016年9月26日「藤原内閣府審議官との打合せ概要」
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」(文科省が内閣府から伝えられた内容)
10月ごろ「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」
「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」(文科省が内閣府から伝えられた内容)
10月21日「10/21萩生田副長官ご発言概要」
「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」(萩生田光一・官房副長官と常磐豊・文科省高等教育局長が面会した際の獣医学部新設をめぐる発言)
11月1日「【内々に共有】獣医学部のWGについて」
「添付PDFの文案(手書き部分)で直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」(内閣府から文科省に送られたメールの文面。添付文書には獣医学部新設の要件に「広域的に」「限り」などの文言が手書きで追加され、実質的に加計学園しか応募できなくなった)

八田氏によれば、2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定がなされ、「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということであるとしています。検討するのは文科省です。
ところが、期限である2016年3月に文科省は検討結果を示さず、「2017年9月16日に特区WGでヒアリングを行ったが、文科省は十分な検討をしていないことが明らかになった。そのため、事務局にはさらなる折衝を依頼し、山本幸三特区担当大臣にはさらなる督促をお願いした。」とあります。
国家戦略特区諮問会議は内閣総理大臣が主催していますから、「特区制度の趣旨に鑑み、迅速を旨とする」との方針が、首相や官邸から出ても何ら不思議ではありません。9月から10月にかけての文書(流出文書)については、「文科省に義務づけられている獣医学部新設可否の検討を早くやれ」と言っているに過ぎず、これ自体は納得できます。
そもそも、上記流出文書のいずれも、文科省に「加計学園に決めろ」とは言っていません。「文科省の告示(獣医学部新設は一切認めない)を修正し、設置認可審査の門戸を速やかに開放しろ(多分、2017年3月までの設置認可申請を可能にしろ)」と言っているだけです。
文科省としては、「新設すべきでない」との結論に至ったのであれば、その旨を理由と共に示せば良いだけです。多分、「新設すべきでない」との理由が示せなかったので、「新設する」との結論に納得したのでしょう。

11月1日の『は獣医学部新設の要件に「広域的に」「限り」などの文言が手書きで追加』について
京都がWGに具体的な提案を提出したのは10月17日です。それ以前に具体的提案をしていたのは今治のみですから、それまで、WGが今治のみを念頭に置いていても不思議はありません。最後の土壇場に京都の提案が出てきて、WGが困惑しただろうことは想像できます。
「急いで新設すべき1校目は、現時点で広域的に獣医学部が存在しない地域であって、1年以上前から具体的提案を提出している今治市に指定することが妥当ではないか」と考えたとしても不思議ではありません。

八田氏によると、獣医学部の1校目が特区で認められれば、2校目以降も認められるはずだった、としています。ところが、山本大臣が獣医師会の陳情に負けて、今年1月の告示に「1校に限る」を付加してしまいました。しかし所詮は内閣府・文科省告示(お知らせ)です。法律でも何でもありません。再度「2校目も認める」とする告示を出せば良いだけではないですか。しかし、最近の報道によると、京都産業大学は獣医学部の新設を諦めてしまったみたいですね。これもまた、安倍政権批判の材料にされそうですが。

《2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」とは何なのか》
『(3)新たに講ずべき具体的施策
ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
b)更なる規制改革事項等の実現
⑭ 獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。』
この文言が意味するところについて、解釈でもめています。
文章を前半と後半に分けてみましょう。
⑭ 獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
(A)現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には
(B)近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。
上記(B)からは、「近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、獣医師養成系大学・学部の新設に関して、全国的見地から本年度内に検討を行う。」との文章が読み取れます。「誰が検討するのか」という点について、八田氏、原英史氏(戦略特区諮問会議WG委員)は、「文科省である」と断定しています。高橋洋一氏は、「官僚が読めば間違いなくそのように読む」と言っています。
次に、(A)と(B)の関係について
「(A)の場合には、(文科省は)本年度内に獣医学部の新設の検討を行う」」という文章構造です。「(A)の場合」であるか否か、いつまでに誰が検討するのか、よくわかりません。
思うに、(A)の条件は、さまざまな政治的圧力を受ける中で、政治的に挿入された文章ではないでしょうか。種々の情報からすると、(A)の文言に関して、獣医師会が暗躍した形跡もあります。
いまになって、(A)の3条件+(B)の「近年の獣医師の需要の動向」を「石破4条件」と呼び、「新設を認可申請する学校側が4条件合致を証明しなければならない」とする論調があります。
しかし、この石破4条件は、「本年度内(2016年3月まで)に(文科省が)検討を行う。」とする文章の修飾節ですから、すでに期限が過渡しています。現時点で、越えるべきハードルとして現存しているかどうかすら、明らかではありません。

今までの経過を素直に解釈すると、獣医学部の新設について、『「特区制度」の趣旨に従って迅速に進めるべきところ、文科省の怠慢で遅れてしまったが、何とか1校目の開設に漕ぎつけた。残念ながら、獣医師会の横やりで、2校目は認められていない。』と解釈することが可能です(解釈1)。
しかし、加計学園の理事長が安倍総理のお友達であったことから、別の解釈(解釈2)「加計ありき」を呼ぶに至りました。そしてその解釈に基づき、安倍政権の支持率が急速に低下し、日本の政治が危機に瀕しています。
解釈1と解釈2のどちらが正しいか、判定するための決定打は恐らく存在しないでしょう。しかし、解釈1も十分にあり得る中、解釈2であると決めつけ、それによって日本の政治が翻弄されるのだとしたら、日本国にとって大きな損失であることは間違いありません。
残念なことです。
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さらに加計学園問題

2017-07-15 15:42:41 | 歴史・社会
加計学園問題に関する7月10日の国会での閉会中審査では、前川喜平・前文部科学事務次官、加戸守行・前愛媛県知事、原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員の3名が、参考人として招致されました。新聞などでは、前川氏の発言の一部以外は全くわかりません。内容の全記録としては、産経ニュースの【閉会中審査・詳報(1)】【閉会中審査・詳報(7)完】【閉会中審査=参院=詳報(1)】【閉会中審査=参院=詳報(8)完】が見つかりましたが、これらもいずれ閲覧不能になる可能性が高いです。

ブログ記事としては、< #テレビが絶対に報道しないニュース >加計学園問題 加戸守行・前愛媛県知事の発言全文と動画まとめ 「あのYouTubeが全てを語りつくしているんではないかなと思います」?2017/7/11 に、加戸守行氏の発言全記録が掲載されていました。

この問題について、いくつかの評論に目を通してきました。
「加計学園の優遇はなかった」内部から見た獣医学部新設の一部始終
2017.7.11 八田達夫:公益財団法人アジア成長研究所所長(以下「八田」)

加計問題で分かった やっぱり文科省には「解体的改革」が必要だ~天下り先を守るための「抵抗」ならば2017.6.30. 長谷川 幸洋(以下「長谷川1」)

加計騒動・やっぱり官邸より文科省の方がよっぽど「問題アリ」~トンデモ言い分・責任逃れを許していいのか
長谷川 幸洋(以下「長谷川2」)

さて、このブログの前報では、私立大学の獣医学部新設を阻む規制について、今までのトピックを挙げました。
基本的に、私立学校の設置などについては、私立学校法31条2項で「その寄附行為の内容が法令の規定に違反していないかどうか等を審査した上で、当該寄附行為の認可を決定しなければならない。」とされています。法令(法律、政令、省令)に違反していなければ、文部科学大臣は認可しなければなりません。

《文科省の告示を根拠に門前払いできるか》
それに対して、文科省は「告示45号」1条2項で、「獣医師の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。」と規定し、この告示を根拠に一切の獣医学部新設を門前払いしてきました。
私立学校法31条2項の「法令」に上記「告示」が含まれうるかどうか、疑問があります。「省令に委任された告示」であればよさそうなのですが、私立学校法施行規則、学校教育法施行規則を眺めましたが、「告示で定める」との規定は見つかりませんでした。

《現状の獣医師養成教育は十分か》
八田によると、
『獣医学部新設を規制する文科省告示の根拠を、文科省は示せていない。この参入規制は、政治力の強い獣医師会の利権を守るために文科省がつくったものだからだ。そのため、すでに2002年の文科省の中央教育審議会答申は、獣医学部等の新設不認可について、「現在の規制を残すことについては、大学の質の保証のために実施するものである設置認可制度の改善の趣旨を徹底する観点からは問題がある」と指摘し、今後の検討課題としていた。それにもかかわらず、文科省はこれまでこの規制を放置し続けてきたのである。』
とあります。
また、長谷川1には、
『「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」に提出された2013年2月の文書のこの調査研究協力者会議の結論を見ると、以下のような興味深い記述もあった。
獣医学教育の現状について「最低限共通的に教育すべき内容を十分に教育できていない大学がある」「新たな分野(獣医疫学、動物行動治療学等)への対応が十分取れていない」「大学ごとの分析として獣医師養成課程の規模の小さい大学に課題が多い」などと批判のオンパレードだったのだ』
とあります。
これらからは、現在の獣医師教育は決して十分なものではなく、新規参入を許した上で競争をさせ、結果として退場させるべき学校が存在しているようです。

《加計学園は、理事長が安倍首相のお友達だから指定されたのか》
八田によると、
『加計学園(今治市、愛媛県)は、理事長の親友が首相になったから学部の新設を申請したわけではない。第一次安倍内閣の期間には、加計学園は獣医学部の新設を申請しなかった。加計学園が初めて申請したのは、安倍氏が政治的に最も弱かった福田内閣のとき(2007年)だ。その後15回申請し、その度に文科省に理由もなくはね返され続けた。誰も安倍氏が首相に返り咲くとは考えていなかった民主党政権のときにも申請を続け、ついに鳩山政権時代に構造改革特区で新設を検討することが認められていた。』
とされています。

【閉会中審査=参院=詳報(5)】加戸発言によると、
『私が知事に着任早々、鳥インフルエンザの問題、あるいはアメリカでの狂牛病の問題、(知事の)終わりの時期には口蹄疫の問題等々で、愛媛県で公務員獣医師、産業担当獣医獣医師の数の少なさ、確保の困難さ、そして獣医大学部の偏在等々の状況。そしてアメリカの適切な対応などを見ながら、日本も遅れているなと思っていたときに、ちょうどたまたま加計学園が今治の新都市への進出という構想を持ってこられたので、渡りに船と、この獣医学部構想で取り組んでいただいて。』
「『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけであります。
私の方からも東京の有力な私学に声をかけました。来ていただけませんかと。けんもほろろでした。結局、愛媛県にとっては12年間加計ありきでまいりました。いまさら、1、2年の間で加計ありきではないのです。それは愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に詰まっているからでもあります」

日本再興戦略改訂2015の閣議決定はどのような意味なのか》
『(3)新たに講ずべき具体的施策
ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
国家戦略特区に関する以下の施策をはじめとする各種取組を一層加速化することにより、引き続き、具体的な事業や提案ニーズに柔軟かつスピーディに対応し目に見える成果を打ち出していくことが重要である
b)更なる規制改革事項等の実現
国家戦略特区に関し、・・・以下の規制改革事項のうち、国家戦略特区で取り組むべきものについては、・・・、国家戦略特別区域法等に新たに追加すべく検討を進め、次期国会も含め、速やかに法的措置等を講ずる。

⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。』

八田によると、
『2015年6月末の「日本再興戦略(改訂)2015」に、「2015年度中における獣医学部新設の検討」を成長戦略として入れて閣議決定することができた。これは必ずしも特区でなくてもよいから、何らかの方法での新設の検討を文科省に義務付けたものだ(なお、新設に当たっては、「石破4条件」が付けられた。これは、検討期限を切った上で、検討の際の留意事項を記載したものである)。
「新設の検討」というのは、新設ができるのならば「できる」と言い、新設ができないのならば理由を示す、ということである。
ところが文科省は、2015年度内に獣医学部新設を検討すると約束しておきながら、ずるずると2016年度に入っても検討に決着を付けようとしなかった。閣議決定に従わなかったのである。』

また、長谷川2によると、
『ここには「文科省が検討する」とは書かれていない。だが、文科省の仕事である。私が高橋(洋一)さんに確かめたところ「役人なら、閣議決定で決まった話をどの役所がいつまでに責任をもって実行するかはだれでも分かる」のだそうだ。』

原英史氏の参考人発言によると、
『平成27年6月の決定は日本再興戦略、いわゆる成長戦略の一項目である。成長戦略の中では一般に何かをやらないという決定をすることはない。つまり、これは新設をしないようにするためではなく、新設を前に進めるための決定である。』


八田、長谷川、原いずれからも、閣議決定の末尾の文言「本年度内に検討を行う」は、「文科省が検討を行う」と読むべきだというのです。
そうだとしたら、お役所の文書というのはわからないものです。
この点は、郷原弁護士も違う見解ですし、上記閣議決定(石破4条件といわれる)の当事者である石破さんも違う見解のようです。どの見解が正しいのか、白黒をはっきりして欲しいです。

《「2030年4月開校」との条件が付されたいきさつ》
八田によると、
『2016年11月の諮問会議決定では、「……獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とされている。これは、2015年度内の検討の約束を文科省が守らなかったことで、特区事業としての獣医学部新設が予定よりも遅れていたため、最初の事業者および自治体には最大限急いでもらうことを意図したものである。
さらに、2016年11月の諮問会議決定に基づき、まず早期にとりあえず獣医学部ができ、その後それに他の大学が続くと予想していた。』
迅速を旨とすべき特区制度の要請から、と読めます。

文科省流出文書で話題となっている「総理のご意向」が、何をどうすべきとのご意向なのか、いままでわかりませんでした。今回の前川発言を読んでみると、どうやら「2030年4月開校」らしいです。
「検討が(文科省の怠慢で)遅れに遅れているから、とにかく1校目の開設は急げ」と総理・官邸がハッパをかけたとしても決しておかしくありません。そのときは「2校目もあり」という前提でしたから。

《「1校に限って」と限定されたいきさつ》
八田によると、
『日本獣医師会は、2016年12月8日、山本大臣に対して、獣医学部新設を認める特区を「1ヵ所かつ1校のみに限ってほしい」という要請を行った。』
『11月の諮問会議における条件では、当時までに提案されていた3地域はどこも開設できる文言になっていたことに危機感を感じた獣医師会側が、1校だけを認めさせる圧力をかけたのである。その結果、山本大臣は、この条件は受け入れざるを得ないという政治判断を行い、2017年1月の内閣府・文科省告示では、1校に限るという文言が入った。』
『「1校に限る」という条件が付けられたために、今治市に続いて他の地域で直ちに新設することは難しくなった。WGとしては、最初の突破口を作れば、1校も新設しない場合と比べて、その後の新設の可能性がはるかに向上すると考えていた。しかし、「1校に限る」という政治的な判断は、あくまで獣医師会の意向に沿ったものであり、「制限せずすべて開放」という立場の特区WGの側や、ましてや首相が主張したためではない。』

現在、安倍政権の支持率が急落しています。先日の都議選でも自民党は大敗北でした。その原因はいろいろあるけれど、「加計学園問題」が最大であるとの印象を持っています。その加計学園問題、普通に報道に接するのみでは、「前川・前次官が善であって、総理・官邸が悪」の方向の情報しか得られません。しかし、こうして丹念に当事者の発言を拾っていくと、全く違った姿が見えてきます。
次回の国会での参考人招致では、ぜひとも双方の論点が明白になるように、議論を進めてもらいたいものです。7月10日の審議では、せっかく特区諮問会議のワークグループ委員である原英史氏を招いたのに、その発言はほとんど埋もれたままです。次回は、特区諮問会議の委員である八田氏を呼ぶのがよろしいのではないでしょうか。
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今さらですが加計学園問題について

2017-07-09 15:35:20 | 歴史・社会
加計学園問題は、大きな政治イシューになっており、都議選で自民党が壊滅的大敗を喫する主要原因の一つとなっています。しかし私には、何が問題なのかがよくわらかず、現在にまで至っています。
少しは加計学園問題を理解しようと、この土日を使って問題発掘に取り組んでみました。

獣医学部の新設は、どのようにして認められていくのか。
私立大学の獣医学部の新設については、私立学校法に規定されています。
《私立学校法》
(申請)
第三十条  学校法人を設立しようとする者は、その設立を目的とする寄附行為をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、文部科学省令で定める手続に従い、当該寄附行為について所轄庁の認可を申請しなければならない。
(認可)
第三十一条  所轄庁は、前条第一項の規定による申請があつた場合には、当該申請に係る学校法人の資産が第二十五条の要件に該当しているかどうか、その寄附行為の内容が法令の規定に違反していないかどうか等を審査した上で、当該寄附行為の認可を決定しなければならない
2  所轄庁は、前項の規定により寄附行為の認可をする場合には、あらかじめ、私立学校審議会等の意見を聴かなければならない。

「認可」についてウィキで調べると、「認可の申請があった場合、行政は、当事者が必要とする要件を満たしていると認めれば認可を行う。許可とは異なり、行政が意図的に認可を行わないことが認められていない。」とあります。
つまり、獣医学部新設の申請があったとき、その内容が法令に違反していなければ、文科省としては認可を行うことになります。次に法令の内容について調べてきました。「法令」ですから、「法律」「政令」「省令」「政省令に委任された告示等」が対象の筈です。

《大学等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準》文部科学省告示第四十五号
大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準を次のように定める。

平成十五年三月三十一日
第一条
文部科学大臣は、大学、短期大学、高等専門学校等(大学等)の設置又は収容定員増の認可の審査に関しては、学校教育法(・・)、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)、短期大学設置基準(・・・)、高等専門学校設置基準(・・・)その他の法令に適合すること及び次に掲げる要件を満たすことを審査の基準とする
一 (略)
二 医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。

即ち、従前は「獣医大学の設置は認めない」ということが、文科省の告示で定まっていたのでした。

その後、平成27年6月に、以下の閣議決定がなされました。
「日本再興戦略」改訂 2015(抜粋)(平成27年6月30日閣議決定)
一.日本産業再興プラン
5-1.「国家戦略特区」の実現/公共施設等運営権等の民間開放(PPP/PFIの活用拡大)、空港・港湾など産業インフラの整備/都市の競争力の向上
(3)新たに講ずべき具体的施策
ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
b)更なる規制改革事項等の実現
⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

さらにときが進み、昨年来の国家戦略特別区域諮問会議で大きな動きがあったようです。ここで一体何が決まり、現在どこまで進んでいるのかについて。
意見募集概要を読むと、以下のような経過をたどったようです。
《国家戦略特区における追加の規制改革事項について》(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)
『〇先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置
・人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するため、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。』

そして、上記決定に対応し、上記「文部科学省告示第四十五号」を修正する告示が出されました(《平成二九年一月四日内閣府・文部科学省告示第一号》)。
『1 国家戦略特別区域法(「法」)第七条の国家戦略特別区域会議が、・・・。
2 法第七条の国家戦略特別区域会議が、法第八条第二項第二号に規定する特定事業として、平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置(法第二条第一項に規定する国家戦略特別区域における獣医師の養成に係る大学の設置をいい、「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(平成二十八年十一月九日国家戦略特別区域諮問会議決定)に従い、一校に限り学校教育法第四条第一項の認可を申請されるものに限る。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日以後は、当該大学の設置に係る同項の認可の申請の審査に関しては、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定は、適用しない。』

非常に判りづらい文章です。上記意見募集に書かれた内容の方がわかりやすいので以下に記します。
『1.趣旨
「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)に従い、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的な需要に対応するため広域的に獣医師を養成する大学の存在しない地域に限り、獣医学部の設置を可能とするための特例を設ける。
2.内容
上記趣旨を満たす平成30年度に開設する獣医学部の設置を定めた国家戦略特別区域計画について内閣総理大臣の認定を受けたときには、当該獣医学部の設置認可申請の審査については、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準(平成15年文部科学省告示第45号)第1条第4号の規定は、適用しないこととする。』

昨年11月特区会議決定によると、まずは以下の手続があります。
(1)国家戦略特別区域会議が、特定事業として、平成三十年度に開設する獣医師養成大学の設置(昨年11月特区会議決定に従ったもの)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請する。
(2)内閣総理大臣からその認定を受ける。
(3)文部科学省が私立学校法に従って獣医学部設置認可の審査をする。

上記(2)総理大臣による認定、(3)の文部科学省による認可の条件は何でしょうか。
昨年11月特区会議決定に記載された
「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応しているか」
人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応しているか」
などは、総理大臣、文部科学省のいずれが判定するのでしょうか。

さらに、平成27年6月の閣議決定の内容
「現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化しているか」
「ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになっているか」
「既存の大学・学部では対応が困難な場合であるか」
「近年の獣医師の需要の動向は考慮されているか」
について、今回は判断されるのでしょうか。それともこの閣議決定は、現在法的効力を有していないのでしょうか。

以上のようなスタンスで、今後の動向を見ていきたいと思います。
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