消費税増税法案は、3党合意案が衆議院で可決しました。
世の中は、その後の民主党の内紛で大騒ぎですが、3党合意の中味についてはよくわかりませんでした。
本日、古賀茂明氏のメルマガ最新号が到着しました。それによると、3党合意の中味はとんでもないことになっているようです。
■消費増税は社会保障以外に使われる
『6月26日、消費増税法案が衆議院を通過した後の記者会見で、野田総理は、今回の増税の目的は、「社会保障を持続可能なものにする」、「すべて社会保障に還元される」ことだと述べた。しかし、それは真っ赤な嘘だということが法案に書いてある。
今回の政府提案時の消費増税法案には、いわゆる「景気条項」と呼ばれる条文があった。附則の第十八条である。(附則18条の条文を末尾に示します)・・・
第1項は、要するに、2011年度から10年間の平均経済成長率を名目3%、実質2%程度になるように必要な措置を講じるという趣旨である。第2項を要約すれば、経済状況を増税前に点検して、必要なら増税の実施を停止するという意味だ。
・・・
しかし、この景気条項は、第2項だけでなく、第1項、すなわち、「成長のために必要なことをやる」という部分も重要だ。その意味はいろいろ解釈できるが、成長のためと称してバラマキに使われるのではないかという指摘がなされていた。今回の修正後の条文では、この懸念が正しかったことが明らかになった。』
●増税する前からバラマキが始まっている
『修正によって、第1項と第2項の間に新しい条項が加えられた。(修正条文も末尾に示します)
その最初の部分では、消費増税をすると収入が増えて余裕ができるというのです。そして、後段では、その増収分を「成長戦略や『防災、減災』などの分野に重点的に配分する」ということになります。つまり、消費増税で楽になった分を「社会保障」ではなく、「防災、減災」という名の公共事業バラマキ予算に振り向けますよということが、自民党と公明党の要求によって消費税増税法案に条文として明記されてしまったのです。
自民党が国会に提出している「国土強靭化基本法案」のバラマキ規模は10年間で200兆円といいますがその理屈として出しているのが「防災」ということです。
『財政が苦しいから増税するといっていたのに、増税を実現するために増税前からバラマキを始める。しかも、増税する時には、増税後景気が悪くなったら大変だという名目でまたバラマキ公共事業を追加することは必至だ。これでは何のために消費増税をするのかまったく分からない。』
民主党は、それでも遠慮がちに消費税10%増税案を提出しました。「社会保障のために消費増税が必要だ」として国民の理解を得ようとしました。それに対して自民・公明両党は、増税に賛成する見返りとして、上記のような修正を強要していたのです。
●財務省が自民党を使って骨抜きにした「歳入庁創設」の条文
野田政権が提出した法案では、その本則の第7条第八号に「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること。」という条項が入っていました。これが実現すると、国税庁が財務省から切り離される可能性が高くなります。
国税庁を失うことを恐れた財務省は、何とかこの条項を落としたいと考えていたのですが、谷垣自民党使ってそれを実現してしまいました。
現在の自民党の長老たちはとにかく公共事業のバラマキの利権に割り込みたいと思っています。それを巧みに利用した財務省は、うまい条文を作って修正協議の中で自民党にそれを提案させました。政府提案の先の条項を削除して、新たにやはり本則第7条第八号として、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること。」という条文に差し替えたのです。
この条文なら、「歳入庁その他の方策」となっていて、選択肢が歳入庁に限定されていません。
前の条文が「本格的作業を進める」としていたのに対して、新しい条文では「有効性、課題等を検討する」ことを前に置きました。
『要するに、歳入庁は作らないことにしたというのに等しい。あるいは、良くても、まったくの白紙ということだ。野田民主党はそれを呑んだ。財務省の完勝と言える今回の法案修正通過である。』
3年前に政権交代があった後、それまで与党であった自民党は、解党的出直しで日本国を担うにふさわしい政党に生まれ変わるべきであったし、われわれもそれをこそ期待していました。しかし、今の谷垣自民党は、ものすごく悪くなっています。政権を担っている民主党には「がっかりだよ!」ですが、それよりもさらに悪い政党に成り下がっていますね。
聞くところによると、3年前の衆議院選挙で、自民党では長老議員が何とか生き残り、一方で中堅の改革派議員が多く落選したとのことです。それでですか。現在の自民党は長老支配で、改革の推進は全く期待できません。
現時点で衆議院総選挙があったら、これら自民党長老派はことごとく落選することを本人たちも知っていますから、総選挙には反対でしょう。谷垣さんは、落選議員からは総選挙を要求されていますが、一方で現職議員は総選挙したくないのですから、どっちつかずで迫力を出すことができません。
そして、完全勝利を収めたのは財務省です。
いったい、これからの日本はどうなるのでしょうか。民自公3党合意は、戦前の大政翼賛会を連想させます。民自公の後に財務官僚の絶対権力が隠れているのも、戦前の軍部(官僚)とどうしてもイメージがダブってしまいます。
---------------------------
附則の第十八条
第1項「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」
第2項「この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」
第1項と第2項の間に加えられた新しい条文
「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」
世の中は、その後の民主党の内紛で大騒ぎですが、3党合意の中味についてはよくわかりませんでした。
本日、古賀茂明氏のメルマガ最新号が到着しました。それによると、3党合意の中味はとんでもないことになっているようです。
■消費増税は社会保障以外に使われる
『6月26日、消費増税法案が衆議院を通過した後の記者会見で、野田総理は、今回の増税の目的は、「社会保障を持続可能なものにする」、「すべて社会保障に還元される」ことだと述べた。しかし、それは真っ赤な嘘だということが法案に書いてある。
今回の政府提案時の消費増税法案には、いわゆる「景気条項」と呼ばれる条文があった。附則の第十八条である。(附則18条の条文を末尾に示します)・・・
第1項は、要するに、2011年度から10年間の平均経済成長率を名目3%、実質2%程度になるように必要な措置を講じるという趣旨である。第2項を要約すれば、経済状況を増税前に点検して、必要なら増税の実施を停止するという意味だ。
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しかし、この景気条項は、第2項だけでなく、第1項、すなわち、「成長のために必要なことをやる」という部分も重要だ。その意味はいろいろ解釈できるが、成長のためと称してバラマキに使われるのではないかという指摘がなされていた。今回の修正後の条文では、この懸念が正しかったことが明らかになった。』
●増税する前からバラマキが始まっている
『修正によって、第1項と第2項の間に新しい条項が加えられた。(修正条文も末尾に示します)
その最初の部分では、消費増税をすると収入が増えて余裕ができるというのです。そして、後段では、その増収分を「成長戦略や『防災、減災』などの分野に重点的に配分する」ということになります。つまり、消費増税で楽になった分を「社会保障」ではなく、「防災、減災」という名の公共事業バラマキ予算に振り向けますよということが、自民党と公明党の要求によって消費税増税法案に条文として明記されてしまったのです。
自民党が国会に提出している「国土強靭化基本法案」のバラマキ規模は10年間で200兆円といいますがその理屈として出しているのが「防災」ということです。
『財政が苦しいから増税するといっていたのに、増税を実現するために増税前からバラマキを始める。しかも、増税する時には、増税後景気が悪くなったら大変だという名目でまたバラマキ公共事業を追加することは必至だ。これでは何のために消費増税をするのかまったく分からない。』
民主党は、それでも遠慮がちに消費税10%増税案を提出しました。「社会保障のために消費増税が必要だ」として国民の理解を得ようとしました。それに対して自民・公明両党は、増税に賛成する見返りとして、上記のような修正を強要していたのです。
●財務省が自民党を使って骨抜きにした「歳入庁創設」の条文
野田政権が提出した法案では、その本則の第7条第八号に「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること。」という条項が入っていました。これが実現すると、国税庁が財務省から切り離される可能性が高くなります。
国税庁を失うことを恐れた財務省は、何とかこの条項を落としたいと考えていたのですが、谷垣自民党使ってそれを実現してしまいました。
現在の自民党の長老たちはとにかく公共事業のバラマキの利権に割り込みたいと思っています。それを巧みに利用した財務省は、うまい条文を作って修正協議の中で自民党にそれを提案させました。政府提案の先の条項を削除して、新たにやはり本則第7条第八号として、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること。」という条文に差し替えたのです。
この条文なら、「歳入庁その他の方策」となっていて、選択肢が歳入庁に限定されていません。
前の条文が「本格的作業を進める」としていたのに対して、新しい条文では「有効性、課題等を検討する」ことを前に置きました。
『要するに、歳入庁は作らないことにしたというのに等しい。あるいは、良くても、まったくの白紙ということだ。野田民主党はそれを呑んだ。財務省の完勝と言える今回の法案修正通過である。』
3年前に政権交代があった後、それまで与党であった自民党は、解党的出直しで日本国を担うにふさわしい政党に生まれ変わるべきであったし、われわれもそれをこそ期待していました。しかし、今の谷垣自民党は、ものすごく悪くなっています。政権を担っている民主党には「がっかりだよ!」ですが、それよりもさらに悪い政党に成り下がっていますね。
聞くところによると、3年前の衆議院選挙で、自民党では長老議員が何とか生き残り、一方で中堅の改革派議員が多く落選したとのことです。それでですか。現在の自民党は長老支配で、改革の推進は全く期待できません。
現時点で衆議院総選挙があったら、これら自民党長老派はことごとく落選することを本人たちも知っていますから、総選挙には反対でしょう。谷垣さんは、落選議員からは総選挙を要求されていますが、一方で現職議員は総選挙したくないのですから、どっちつかずで迫力を出すことができません。
そして、完全勝利を収めたのは財務省です。
いったい、これからの日本はどうなるのでしょうか。民自公3党合意は、戦前の大政翼賛会を連想させます。民自公の後に財務官僚の絶対権力が隠れているのも、戦前の軍部(官僚)とどうしてもイメージがダブってしまいます。
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附則の第十八条
第1項「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」
第2項「この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」
第1項と第2項の間に加えられた新しい条文
「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」