弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ゴールデンウィーク突入

2010-04-30 18:52:08 | Weblog
世の中はすでにゴールデンウィークに入っていますね。
わが家は明日から旅に出ます。戻ってくるのは5月8日になるので、しばらくこのブログをお休みにします。

皆さんも良いゴールデンウィークを。
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普天間問題の行方

2010-04-29 18:50:39 | 歴史・社会
去年の12月29日、このブログで普天間問題として発言する中で私は、
「しかし民主党連立政権の今までの対応の結果として、沖縄の人たちは「県外移転」で結束するものと思われます。今から元の案(辺野古移転)に戻すことは至難の業となるでしょう。パンドラの箱を開けてしまったわけで、鳩山首相はどのように収束するつもりでしょうか。」
「辺野古移転を考えるのであれば、埋め立てではなく、浮き桟橋方式などを再検討してはどうでしょうか。」
とコメントしていました。

最近になって政府は辺野古移転案に戻って来、それも「桟橋方式」というではないですか。浮き桟橋ではなく、杭打ち桟橋ですが。

去年の12月に私がなぜ桟橋方式のコメントをしたのか、自分でも忘れていました。思い返してみると、中央公論1月号の記事が出典でした。
中央公論 2010年 01月号 [雑誌]

中央公論新社

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この本の第2特集「鳩山の迷走、沖縄の泥沼」の中に、守屋武昌・元防衛次官が語る「地元利権に振り回される普天間、日米同盟」という記事があります。守屋氏というのは、防衛事務次官を追われ、現在は山田洋行との癒着問題で刑事被告人となっているあの人です。悪いこともしたけれど、やはり有能な官僚として足跡を残してきた人でもあるのでしょう。普天間返還をめぐる舞台裏を知り尽くしているのは守屋氏のようです。

それまで「絶対に不可能」といわれてきた普天間返還の道筋を開いたのは橋本龍太郎政権です。米国大統領との直接交渉でとっかかりを得ると、普天間の代替地探しが始まります。嘉手納統合案からスタートし、米国から反対されるとつぎに辺野古地区に移ります。大田沖縄県知事の頃です。
そして最初に提案されたのが、浮体式滑走路(メガフロート)と杭打ち桟橋(QIP)だったのです。今回急浮上しているのがこのときのQIPです。
ところが、98年に県知事が大田氏から稲嶺恵一知事に代わると、稲嶺知事は「軍民共用空港」を唱えます。さらに2001年に小泉内閣が発足する頃には、沖縄県の意向は「埋め立て」に変わります。さらに県側は、基本計画作成や環境アセスメント着手までに合計で4年以上もかけました。アセスメントの手続きにようやく着手したのは04年4月です。そのアセスメントのために海上でボーリングを行おうとすると、反対派がおしかけて作業を妨害します。

この頃、守屋氏は「シュワブ陸上案」というのを提案するのですね。先日一度は浮上した案に近いのでしょうか。
しかし、地元では名護市の建設業者が中心になって「埋め立て案」を持ち出してきます。その背後には「埋め立てで地元の経済を潤したい」という気持ちがあったに違いないといいます。
この中で05年10月、当時の大野功防衛庁長官が頑張り抜いて「キャンプシュワブ宿営地案」で米国と合意に達しました。
その後の地元との交渉で「住宅地の近くでうるさく危険だ」という理由で浅瀬に押し戻すことが求められ、地元の協力を得る視点から額賀長官が決断し、現在の「V字型案」で06年4月に名護市長らと合意に達しました。
しかし沖縄はこれで交渉を終わらせません。小泉内閣から安倍内閣に代わり、稲嶺知事から仲井眞弘多知事に代わると、「もっと浅瀬に出してくれ」と言い始め、二枚舌とも言える交渉を主張して普天間問題の先延ばしを図るのでした。

06年6月から始めた環境アセスメントは10年6月、もうすぐですね、終了するのだそうです。その結果を見てからしか判断できないのに、地元も、そして中央の自民党や経済界の有力者も浅瀬の方に移動してやったら、と言います。

そして政権交代、民主党連立政権へのバトンタッチです。
『民主党の方はこれまでの経緯を知らないから、沖縄の知事や名護市長、地元政財界が政府と合意していないと騒げば、またマスコミもこうした沖縄の人びとの主張に合わせた報道をしているので、岡田克也外相も含めて「これは大変なことだ」となってしまっているのではないか。国と交渉する沖縄の一部の人が「手ごわい交渉相手」であることをわかっていない。
鳩山由紀夫首相は名護市長選との兼ね合いも口にしているが、それは沖縄側が問題を先延ばしする時、いつも国に使っていた手法だ。米国は「またか」と思うだろう。沖縄の多くの県民の本音は国の責任でやってくれということだと思う。先にも言ったように06年6月から始めた環境アセスメントは来年(今年)6月に終わり、結果が出てくる。仲井眞知事が現在「もう少し沖合いに動かしてほしい」と必死に訴えていることに対しては、アセスメントの結果を見てから対応すれば、「ちょっと動かしてほしい」という要望に根拠があるかどうかが客観的にわかるからだ。』

民主党連立政権は、政権獲得からの8ヶ月間、上記のような過去の経緯をどれだけきちんと把握したのでしょうか。最初の4ヶ月間で把握しておいてくれれば、昨年末の先送り決断をせず、沖縄の人たちに頭を下げてお願いすることも困難ではなかったと悔やまれます。
それにしても、沖縄の一部の人たちは「埋め立てなら受け入れる」と主張してきたわけで、「杭打ち桟橋方式なら絶対に受け入れない」ということになるかもしれません。その辺についてどの程度の覚悟をした上で、鳩山首相は桟橋方式に舵を切ったのでしょうか。
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郵便不正事件の謎(6) 倉沢判決

2010-04-28 20:07:10 | 歴史・社会
郵便不正事件に関し、厚労省側の被告である村木厚子さんの裁判と並行し、団体側の被告である倉沢邦夫氏の裁判が行われてきました。そして27日、倉沢さんに対する地裁判決がなされ、虚偽公文書作成・行使については無罪となりました。

「凛の会」元会長、一部無罪 崩れた検察の構図 村木元局長、公判も苦境に
4月27日15時47分配信 産経新聞
『検察側が描く構図がついに崩れた。27日、郵便不正事件をめぐる偽の障害者団体証明書発行について、「凛(りん)の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)に対し、大阪地裁が言い渡した無罪判決。倉沢被告の捜査段階の供述調書に加え、厚生労働省元係長の上村勉被告(40)らの調書にも「あいまいで慎重な考慮が必要」と言及、その信用性に次々と疑問を差し挟む判断に、検察側は元局長の村木厚子被告(54)の公判でも極めて厳しい状況に追い込まれた。』
『特に、村木被告の公判も含めて最大の焦点になっている捜査段階の供述調書の信用性はことごとく否定された。「内容に不自然な点がある」「信用性に疑いを差し挟む余地がある」』

私は村木裁判をフォローしていて、「素人目に見たら検察の主張はことごとく崩れ、村木さん逮捕は冤罪であって無罪にしかなり得ない」と感じていました。しかし刑事訴訟の実態はわかりませんから、「厚労省の職員・元職員が捜査段階での供述を翻しているのは、厚労省の組織ぐるみの隠蔽工作・虚偽証言であって、捜査段階での供述こそが真実である」と判断される可能性を捨てきれませんでした。
しかし今回の倉沢判決を見る限り、その心配は杞憂であって、裁判所はリーズナブルに判断してくれる可能性が濃厚になってきました。

倉沢裁判と村木裁判は同じ裁判長だそうですから、同じような判断がなされる可能性が高いでしょう。

ただし、ちょっと腑に落ちないところはあります。
『一方、横田信之裁判長は、証拠上認定できる事実として、倉沢被告から民主党の石井一参院議員、厚労省元部長、村木被告、上村被告ら部下へと至った依頼や指示の流れは認めた。
しかし、「厚労省関係者の調書と倉沢被告の公判供述と矛盾がない言動を事実として考慮する」とあえて注釈をつけており、村木被告の公判で同じ判断が示されるとは限らないという。』
どういうことでしょう。
村木裁判での証言では、問題の日に倉沢被告は石井議員に会っていないといい、石井議員もその日はゴルフだったと言い、元部長は石井議員から電話を受けていないと言い、上村係長の前任の係長は村木課長から指示を受けていないと証言しました。もちろん村木被告は何も知らないと証言しています。
ですから、倉沢判決で裁判長が「倉沢-石井-部長-村木被告-上村被告、と依頼や指示の流れがあったことを認めたのはとても不自然です。
判決中の「あえて注釈」がミソで、村木裁判では異なった判断がされるというのでしょうか。

いずれにしろ、少しは安心して村木裁判の判決日をむかえることができそうです。

もちろん、倉沢裁判しろ村木裁判にしろ、地裁で検察が負けても控訴がありますから、決着するのはまだ先のことですが。
しかし検察は控訴できるのでしょうか。上級庁である高検とよく相談してください。
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首相退陣と政界再編を画策する渡邉恒雄氏

2010-04-27 21:08:21 | 歴史・社会
歳川隆雄「ニュースの深層」から「読売新聞「オバマ直言」報道の裏側を読む 普天間「5月末決着」は見送りで鳩山首相の退陣なるか」に注目します。
『4月18日付の読売新聞(朝刊)の一面トップ記事「きちんと実現できるのか(Can you follow through?)―米大統領が疑念、『普天間』首相に直言」には仰天した。』
4月12日に行われた鳩山首相とオバマ大統領との10分間会見において、オバマ大統領が鳩山首相に上記のような懸念を表明したという読売の特ダネ記事です。政府は否定していますが、読売新聞はどこからそのようなスクープを得たのか、そしてなぜそのスクープを敢えて記事にしたのか、という解析です。
『問題は読売がなぜこれを報道したかである。同紙は、というよりも渡邉恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆は「普天間問題」で鳩山首相を退陣まで追い詰めようとしているのではないか。』
今のままでは、5月末に鳩山政権が発表する普天間移設案は実現の可能性がなく、辞任を余儀なくされるだろうとの読みです。
『そして選挙1ヵ月前に民主党代表選を行い、ポスト鳩山を選出するという見方が永田町では囁かれている。「渡邉シナリオ」はもう少し先を読んでいるのではないか。
代表選は小沢一郎幹事長と仙谷由人国家戦略担当相が争い、小沢氏が多数を制し、代表・首相に選出される。その「小沢首相」は敗北を前提で衆参院ダブル選挙を決断、民主党敗北で政界再編を仕掛ける。国民新党、与謝野馨・平沼赳夫新党「たちあがれ日本」、自民党の一部、公明党を巻き込んだ「大連立」である。
その狙いは、民主党内の反小沢系切りと自民党内の小泉改革路線を志向する勢力を潰すこと。そして渡邉氏念願の「自主憲法制定」と「消費増税」を新政権の下で実現するというものだ。
その際のシャッポは、与謝野元財務相でもいいし、23日に自民党を離党、「新党改革」を結成した舛添要一前厚生労働相でも構わないだろう。こうした絵図を渡辺氏が描いていると考えたならば、最近の読売新聞の"鳩山バッシング"は理解できる。』

福田政権時代の「大連立」騒動のときと同じように、渡邉恒雄氏が政界の裏側で画策しているのでしょうか。

ところで、与謝野氏らの「たちあがれ日本」をプロデュースしているのは石原慎太郎東京都知事のようです。その石原氏について石原慎太郎都知事「おい若僧、ジジイ新党なんて呼ばせねぇ」によると、
石原氏『そう言えば、先日、読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長と会った際、小沢氏が福田康夫(元首相)に自民・民主両党の大連立を持ちかけた時の話になった。』との発言が記されています。

たちあがれ日本-石原慎太郎氏-渡邉恒雄氏-小沢一郎氏

というラインが、民主党を分裂させて大連立を実現するという陰謀を画策しているのでしょうか。

また、似たような話として、「24日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は日米両政府当局者の話として、岡田克也外相が23日にルース駐日米大使と会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設をめぐり、現行計画を一部修正して受け入れる方向で調整中であることを伝えたと報じた。」という報道がありました。
ちょうど沖縄での9万人県民集会が開かれる直前のタイミングです。なぜ米国筋はこのような情報リークを行ったのか。「米国政府は鳩山政権の退陣を願っているから」という見立てがありました。
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公務員制度改革の行方

2010-04-25 16:16:19 | 歴史・社会
公務員制度改革については、安倍政権から福田政権にかけて渡辺喜美担当大臣が推進し、官僚と自民党族議員の抵抗で骨抜きになりながら一定の成果を納めてきました。内閣人事局や官民人材交流センターなどが計画ないし設置されています。
民主党連立政権になって、内閣人事局の見直し、官民人材交流センターの廃止などが打ち出され、てっきり、自民党政権時代の不十分な改革を、徹底した改革に見直していくのだと思っていました。何しろ政権交代直後、「あらゆる天下りを根絶する」という勢いでしたから。

ところがここへ来て、徹底した制度改革どころか、改革を後退させる方向が明らかになりつつあるといいます。一体どうなっているのでしょうか。

長谷川幸洋「ニュースの深層」の「公務員改革を骨抜きにして増税に走る鳩山政権 野党時代の合意した公務員制度改革法案を骨抜き」、「「公務員制度改革3年先送り」では日本は破綻する 労組と人事院がぐるになって改革を阻止」によると・・・
公務員制度改革について、現国会で、鳩山政権による政府案と、自民党・みんなの党が議員立法で提出した対案の2案が審議されているようです。

民主党連立政権は「天下りの根絶」をうたっていました。
天下りを根絶するということは、早期退職勧奨(肩たたき)を行わないということで、すべての国家公務員が定年まで役人として勤務し続けることを意味します。しかしそのような制度を実現させるためには、後輩が局長になったときに先輩の課長が部下になることを是認する必要があるし、50~55歳程度で役職を勇退してもらう必要もあります。当然給料は下がります。新規採用を続けるためには定員を増加する必要もあります。
しかし、公務員制度改革の進捗でも書いたように、そのような方向については何ら議論されている形跡がなく、一体どうするのだろうと懸念していました。

長谷川氏によると、「早期退職勧しないと上がつかえて昇級できない。ほとんど新規採用もできなくなる」(前原誠司国土交通相)などと悲鳴が上がり、原口一博総務相は早期退職勧奨を容認する人事管理の基本方針を策定する方針を決めたそうです。

『脱官僚依存を基本路線に掲げながら、なぜこうなってしまったのか。
ずばり言えば、公務員がつくる労働組合が民主党の有力支持基盤になっているからだ。組合に配慮して給与と定員を減らせないから人件費は膨らみ、やむなく肩たたきも認めざるをえない。
だが、肩たたきを認めたところで、役所は従来のように随意契約など受け入れ先への「手みやげ」を持たせにくくなっているから、民間の受け入れは難しい。結局、またまた独立行政法人や公益法人に潜り込ませる結果になるのは目に見えている。』

公務員制度改革についての政府案と自民党・みんなの党の対案を比較すると、内閣人事局に人事院や総務省、財務省などに散らばっている人事関連機能を集約するかどうかが最大の相違点で、政府案では集約しないが、対案は集約するよう提案しています。

『福田康夫政権で成立した国家公務員制度改革基本法は法律の施行後1年以内をめどに内閣人事局を設置し、そこに総務省や人事院その他の行政機関がもっている人事機能を移管すると定めた(第11条)。
ところが今回の政府案をみると、人事院(級別定数)や総務省(機構定員)、財務省(給与)の機能は移管しない。それでは基本法違反になってしまうから、政府案は「必要な法制上の措置を1年以内をめどとして講じる」という問題の条文を基本法から削除してしまう荒業に出た。そこまでやるか、というような改革先送りである。
基本法は民主党も修正協議に応じて与野党一致で可決成立した。それを政権を握ったとたんに逆コースをたどるのは、いまや民主党が霞が関と公務員組合の連合軍に牛耳られた証拠とみて間違いない。』

給与と定員を握る各省部局の機能を内閣人事局に移さないとなると、政権は効果的に人件費を削減するのが難しくなります。
給与削減には給与法の改正が必要になります。鳩山政権は「給与の抜本見直しには公務員に対する労働基本権の賦与が欠かせない。公務員は労働基本権が制限されており、人事院勧告がその代償措置になっているからだ」という立場ですが、労働基本権の見直しをどうするのかといえば、鳩山政権は「3年以内に見直す」という姿勢をとっています。逆に言えば「3年間は給与体系も現行のまま」という事態になりかねません。

『私(長谷川幸洋氏)は内閣委員会で「労働基本権はさっさと公務員に与える。そのうえで給与法を見直すべきだ」と陳述した。まさか労働組合が支持母体になっている民主党は「労働基本権はいらない。人事院勧告を続けてくれたほうがいい」とでも言うのだろうか。
鳩山政権の姿勢をみていると、どうも、その「まさか」が民主党の本心ではないか、と思えるふしがある。そうだとすると、労働組合と人事院がぐるになって改革を阻んでいるという構図になる。』

公務員制度改革の行方については、大新聞の報道を確認するだけでは不足するようです。内容を注視する必要があります。
そこで、国家公務員制度改革基本法(平成二十年六月十三日法律第六十八号)を紐解いてみました。
問題の11条とその次の12条および附則は以下の通りです。
(内閣人事局の設置)
第十一条  政府は、次に定めるところにより内閣官房に事務を追加するとともに、当該事務を行わせるために内閣官房に内閣人事局を置くものとし、このために必要な法制上の措置について、第四条第一項の規定にかかわらず、この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする。
 二  総務省、人事院その他の国の行政機関が国家公務員の人事行政に関して担っている機能について、内閣官房が新たに担う機能を実効的に発揮する観点から必要な範囲で、内閣官房に移管するものとすること。
(労働基本権)
第十二条  政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。
附 則
(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

施行が平成20年6~7月ですから、11条に規定する「施行後1年」はとっくに過ぎています。現時点で遅れているということでしょうか。

次に公務員制度改革推進本部にいってみると、 国家公務員法等の一部を改正する法律案(平成22年2月19日閣議決定・国会提出) がありました。新旧対照表によると問題の11条は改正後、
「第十一条  政府は、次に定めるところにより内閣官房に事務を追加するとともに、当該事務を行わせるために内閣官房に内閣人事局を置くものとし、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする。」
となります。確かに、「施行後1年以内を目途として」が削除されています。

一方、今回改正されない4条を見ると、
(改革の実施及び目標時期等)
第四条  政府は、次章に定める基本方針に基づき、国家公務員制度改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後五年以内を目途として講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後三年以内を目途として講ずるものとする。
となっています。
あと1年で「施行後3年」が到来しますが、どうなっているのか。

ところで、政府案について法律案骨子をざっと眺めてみましたが、長谷川氏が言うような問題点がどこにあるのか、素人目にはよくわかりません。ここは評論家の批評を待つしかありません。
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郵便不正事件の謎(5)

2010-04-23 22:29:00 | 歴史・社会
村木厚子さんの公判における証言から、検察での取り調べの実態が垣間見えます。今回はその点に着目し、証言の中からピックアップしてみました。

《村木厚子さん:この公判の被告人》(第18回公判 傍聴記
『昨日に続き、厚子さんが証言台に。
弘中弁護士が、昨日の尋問の続きを開始する。
(村木さんを取り調べる検事が遠藤検事から國井検事に交代した後の取り調べ状況について)
「遠藤検事とは対照的に、私が何を言っても全くメモを取らずに話を続け、口述筆記しながらパソコンに入力するよう事務官に指示しました。そして(打ち終わった調書に)サインしますかと聞かれました。」と、厚子さん。
「内容は?」
「私は上村さんに大変申し訳なく思っている。私の指示がきっかけでこのような事になってしまった。上村さんは真面目な人で、一人でこのようなことはしない。私は責任を感じているという内容でした。」
「サインしたのですか?」と弘中弁護士。
「していません」キッパリ答える厚子さん。
「私は、どのようにでも読み取れる、このような、いやらしさを感じる文章にはサインできません。」
「あなたが言ってないことを調書にしたということですか?」と弘中弁護士。
「はい。」
「そのやりとりで國井検事を、どう思いましたか?」
「信頼関係が結べないと思いました。思い込みが非常に激しく、私は罠にはめられると感じました。」』

取り調べにおいて、検事は『記憶がないがありえる』ということと『絶対やっていない』ということをいくら頼んでも書き分けてくれませんでした。
『 ・倉沢さんに会ったかどうかについては、毎日たくさんの人が来られたり、会ったりするので、記憶に無いがありえること
 ・上司からの指示を受け、自分が部下に指示をする、という状況はよく有るが、虚偽と知りつつ行うことは絶対にないこと
 ・倉沢氏に、証明書を手渡していないこと
このよう『記憶がないがありえる』ということと『絶対やっていない』ことを、キチンと区別して調書にして欲しいと言いましたが、聞いてもらえませんでした。
その時の遠藤検事の説明は『調書はあなたから見た真実。客観的事実とは違う』ということでした。つまり、『あるかもしれない=ない』と書けばいいんだと言われサインしてしまったのですが、だんだん不安が募りました。
これは私を『うそつき』という罠にはめようとしてるのじゃないかと恐ろしくなり、(弁護士に)お手紙を書いたのです。」』』

郵便不正公判第18回詳報
村木被告「役所の仕組みを知らない検事が作り上げたもの」 郵便不正公判
4月15日20時40分配信 産経新聞
【郵便不正公判第18回詳報】
『《最後に裁判官が質問する。村木被告が取り調べに対し「ありうること」と「絶対にやってないこと」とを明確に話し分けたことについて尋ねる》
 裁判官「凛の会の元会長が厚労省にきたことはどっちか」
 村木被告「ありうること」
 裁判官「部下が課長に紹介することは」
 村木被告「当然あること」
 裁判官「では証明書を渡すことは」 
 村木被告「絶対にないこと。もしあれば非常にイレギュラーのことなので鮮明に覚えているはず」』

今回の公判において、村木さんの証言と他の証人の証言とで食い違っている点が何点かあります。
(1) 倉沢氏と前任係長が厚労省で打ち合わせた際、両名は村木課長に会ったと証言しているが、村木氏は会っていないと供述した。
(2) 倉沢氏は、証明書を厚労省内で村木課長から受け取ったと証言しているが、村木氏はそれを否定している。

まず、上記(1) については、実際の状況は以下の通りです(村木被告第3回公判詳報 郵便不正事件)。
産経新聞 2010/02/03 21:36更新
検察官「村木被告とはどんなやりとりを?」
倉沢被告「『石井一事務所の倉沢と申します。障害者支援団体の件で相談に上がりました』と」
検察官「村木被告は何と言ったか」
倉沢被告「『ああ、そうですか』と言った程度と記憶している」
検察官「それだけ? 名刺交換は?」
倉沢被告「していません」

何年も前にあったこのような出来事を、村木氏が記憶していなくても何ら不思議ではありません。それを供述調書で「倉沢氏に会った記憶はないがあり得る」とせず「会っていない」と書いてサインを強要する。村木さんが取り調べ時に懸念したように、「うそつき」という罠にはめようとしたのかもしれません。

(2) については村木氏と倉沢氏の証言は真っ向から対立します。
「証明書を厚労省内で課長から手渡すなどの実務は慣習上もあり得ない」という見解が真実なら、倉沢氏の証言が嘘のように思われます。真実はどこにあるのでしょうか。

村木氏が上村氏について法廷で証言した内容も記録しておきます。
村木被告「(検事に)腹が立った」と涙 郵便不正公判 第17回詳報
産経新聞 2010/04/14 21:19更新
『《弁護人は上村被告への指示に関する質問を始めた》
 弁護人「係長が直接来ることは」
 村木被告「課長に相談に来ることはない」
 弁護人「上村被告が配属になったことは知っていたか」
 村木被告「はい」
 弁護人「話したことは」
 村木被告「一対一で話した記憶はない」
 弁護人「気にかけていたことは」
 村木被告「ある。人事案が固まったとき、人事担当者から了解を取りたいと話があった。(上村被告は)旧労働省の分野で仕事をしてメンタルで体調を崩して薬を服用している。ホームグラウンドに戻るので大丈夫と思うが、と」
 弁護人「呼び出して指示することは」
 村木被告「なかった」

 《さらに弁護人は、国会議員からの口利きへの対応を聴く》
 弁護人「無理な要望があったらどうする」
 村木被告「一番大事なのはできないとはっきり言うこと」
 弁護人「違法でもいいからといわれたことは」
 村木被告「1度だけ。断ったら上司に電話がかかってきたことがあった。もう1回行き、『誰に電話しても私が来る』と言うとあきらめてくれた」』

公判において、証人尋問はすべて終了したようです。
あとは、証拠整理、論告、弁論などを経て、9月1日に判決が言い渡される予定だそうです。
村木さんを有罪にすることはとても無理のように見受けられるのですが、裁判所はどのように判断するのでしょうか。
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郵便不正事件の謎(4)裁判傍聴記から

2010-04-21 21:02:26 | 歴史・社会
厚労省の現役局長であった村木厚子さんを被告人とする郵政不正事件。これまでは新聞報道をソースとして内容を把握していました。最近、公判を傍聴している村木さんの支援者による傍聴記のサイトを見つけました。
村木厚子さんの裁判を見守り支援する部屋
やはり、傍聴記を読むと、新聞ニュースとは全く異なる臨場感を得ることができます。

まず、事件の登場人物を、傍聴記に基づいて修正しておきます。
《登場人物》(肩書は事件当時)
村木厚子氏(この裁判の被告人):厚生労働省障害保健福祉部企画課長
上村勉氏:同課社会参加推進室係長
塩田幸雄氏:厚生労働省障害保健福祉部長
北村氏:企画課課長補佐(上村係長の直接の上司)
村松義弘氏:元社会参加推進係長(上村係長の前任係長)
石井一氏:民主党議員
河野克史氏:「凛の会」発起人
倉沢邦夫氏:「凛の会」会長(元石井議員秘書)
木村英雄氏:「凛の会」(元新聞記者)

傍聴記から、印象に残った内容をトピックス的に拾ってみます。

《塩田幸雄氏:厚生労働省障害保健福祉部長》(第5回公判 傍聴記
『吹っ切れた態度で法廷に現れた塩田氏は「密室の取調室で検事から、私が石井議員に証明書が発行されたことを報告する4分数十秒の電話交信記録がある」と言われ、「それならばきっと、記憶には無いが、最初の依頼も自分が石井議員から受け、村木さんに対応をお願いしたのだろう・・・と思い込んでしまった。」
「何度も何度も、交信記録があるのは本当か?本当なら見せて欲しいと頼んだが『有る』というだけで検事は最後まで見せてくれなかった。私は、お互いにプロの行政官であるという信頼感があるので『それが嘘だ』と思って聞いたのではない。自分が石井議員に報告した交信記録の内容を、正確に知る必要を感じたからだ。」
しかし「嘘」だった。
「交信記録は無い」のだと、裁判が始まってから、他の検事から聞かされた時のショックは、とても言葉では表せないくらいだ! 今ではこの事件は「壮大な虚構だと思っている」と、怒りを込めて証言し、そして何度も塩田氏は「村木さんに、本当に申し訳ないことをした。」と、証人席で繰り返した。
そんな塩田氏に裁判長が「では、あなたにとって事実といえることは何ですか?」と問うと「事情聴取を受けたことと、今ここに座っていること。それだけです。」と言って、唇を噛み締めた。』

《北村:課長補佐》(厚子さん第10回公判 傍聴記
『彼も取調べで一貫して「そもそも、倉沢氏に会った記憶がない」と言い続けてきたが、検事から「倉沢があなたの名刺を持っている。これは政治案件であり、石井議員、村木課長、そして社会参加推進室という流れは分かってるんだ。」と、東京地検に呼び出された最初の日に言われたそうだ。
「倉沢氏が名刺を持っているというだけではなく、誰それがこう言って、誰それもこう証言している、と言われ続け、自分も記憶力に自信があるわけではないので、いつしか、そういうこともあり得るのか・・・と揺らいでしまった。」
しかも最初から「被疑者」としての尋問で、恐ろしさから逃れたい気持ちでいっぱいだった。「知らない」「記憶に無い」と言うと「一泊でも二泊でもして行くか!?」とか「検察をなめるなよ」とか大声で言われ、調書に署名してしまった。と語る北村氏。
しかし・・・と、ここで声をあらためた北村氏の証言に、法廷内の皆が驚愕することに。「倉沢が私の名刺を持っている、ということが実は嘘だったんです! 私はやはり倉沢と会ってなかったんです。」「いつそれを知りましたか?」と弘中弁護士。「つい先日。公判のために検事と打合せをしている時です。」』
『ところで、かくも深刻かつ馬鹿げた状況に陥った公判であるが、裁判長の最後の一言が、法廷を沸かせたことを記しておこう。今日の証人である北村氏へ投げかけたその一言は・・・「取調べ検事の、一泊でも二泊でもして行くか?というのは、東京の自宅(我が家?)にお泊まりなさい、という意味ではないですよね」という、お茶目なもの。思わず私は「裁判長に座布団3枚!」と声をかけてしまいそうになりましたよ、ははは。』

塩田元部長は検事から「交信記録がある」と騙され、北村元課長補佐は検事から「倉沢が名刺を持っている」と騙されたと証言しました。
ところで別に証人として出廷した取り調べ検事は、「そんなこと言っていない」と否定しているのです。
さて裁判所は、公判における塩田元部長と北村元課長補佐の証言を正しいと見るか、それとも捜査段階での供述調書と検事の証言を正しいと見るか、いずれになるのでしょうか。


《村木厚子さん:この公判の被告人》(第17回公判 傍聴記
村木さんに対する検察の取り調べ状況について
『「罰則などについては何か聞きましたか」と弘中弁護士。
「執行猶予がつくだろう、たいした罪ではない、と言われ、非常に腹が立ちました。私にとっては・・・・」厚子さんの声に涙がまじり、嗚咽となる。
「公務員としてやってきた30年間の信頼を、全て失うのです・・・・」
厚子さんの小柄で細い背中が震え続ける。隣の席で傍聴している二人のお嬢さんも目を真っ赤にしている。
「今日はこれで。」裁判長が、閉廷を告げた。』

《村木厚子さん:この公判の被告人》(第18回公判 傍聴記
村木さんに対する検察の取り調べ状況について
『昨日に続き、厚子さんが証言台に。』
「(取り調べで検事から)『たいしたことではない』という主旨のことをいわれたので、たいした罪とはどういうものかと聞いたら『殺人や傷害』だといわれたので、私が、こんな罪に問われるくらいなら恋に狂って相手を刺し殺すほうがマシと思う。と申し上げたら、返答はありませんでした。」

『最後に、裁判官たちから、厚子さんの多忙なスケジュールや配席図の確認などがあり、裁判長からは「凜の会の倉沢氏に、厚子さんが公的証明書を手渡した」という検察ストーリーについての質問が投げかけられたが、「絶対にありません。もしあったとすれば非常にイレギュラーなことなので記憶に残っています!」と、厚子さんがきっぱり否定し、今日の公判が終了した。
私は厚子さんの公務員としての矜持、理不尽な出来事に屈しない強さ、母親としての温かさを噛みしめながら、残る公判で検察側がどのような反撃を企てたとしても、きっときっと厚子さんの名誉を回復しなければならないと、改めて心に誓って大阪地裁を後にした。
寒の戻りの小雨の中を、肩を寄せ合って歩く厚子さんと二人のお嬢さんの、後ろ姿を見送りながら・・・』

傍聴記には、厚子さんを支援する支援者としての気持ちが良く表れています。

今回の裁判記録を読むと、村木厚子さんの立派さが際だつと同時に、まわりの男性高級官僚のだらしなさが目立ちますね。キャリアを登りつつある男性というのは、こういった状況になるとからっきし駄目なようです。
突然危機に遭遇したときにきちっとした態度が取れるかどうか、それは普段からの心がけ次第でしょう。私も、万が一自分が同じような目に遭ったときに恥ずかしくない行動が取れるよう、肝に銘じておこうと思います。
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足利事件と裁判所の責任

2010-04-19 20:56:25 | 歴史・社会
足利事件について、警察庁と最高検が検証報告を発表したことについては、足利事件とDNA鑑定として先日報告しました。ただし、どちらも「DNA鑑定それ自体は正しく行われた」としており、「DNA鑑定それ自体が誤っていた」とする私の見解とは異なっています。

ところで、警察と検察は検証報告を発表したわけですが、裁判所の責任についてはどうでしょうか。
私の記事足利事件の裁判経緯を読み返して見ました。この記事は佐藤博史弁護士に聞くをもとにしています。また、別の記事小林篤「幼稚園バス運転手は幼女を殺したか」もあります。
時間経過は以下の通りです。
1990年5月  事件発生
1991年12月 菅家さん逮捕
1993年7月  宇都宮地裁で無期懲役判決
1996年5月  東京高裁で控訴棄却判決
2000年7月、 最高裁で上告棄却決定
2002年12月 宇都宮地裁に再審請求
2008年2月  宇都宮地裁で再審請求棄却決定
2009年12月 東京高裁がDNA再鑑定を命じる決定

1993年の地裁判決。これはやむを得ないところがあります。何しろ、菅家さんの弁護人その人が、菅家さんが犯人であると考えていたのですから。

控訴の段階から、弁護人が現在の佐藤博史弁護士に変わります。佐藤弁護士は菅家さんとの接見で菅家さんの無実を確信しました。そして高裁で戦います。
佐藤弁護士が把握した“菅家さんが真犯人でない証拠”は多々あります。詳しくは足利事件の裁判経緯を読んでいただくとして。
○真犯人が小児性愛者であることは疑いないが、菅家さんは小児性愛者特有の行動を行っていない。
○菅家さんの自供を裏付けるスーパーのレシートは見つからなかった。逆に、自供を翻したことを立証するレシートが見つかった。
○事件当日、犯人と真美ちゃんが歩いて事件現場へ向かう姿を目撃した人がいた。「自転車で」という菅家さんの自供と矛盾する。

「菅家さんは真犯人ではない」というこれだけの証拠が揃っていながら、控訴審では有罪を維持する判決がなされました。まさに「DNA鑑定神話」が支配していたからです。

「幼稚園バス運転手は幼女を殺したか」の著者である小林氏は、法廷で判決を朗読する裁判長の言葉を聞いています。
「なぜ3人の裁判官たちは、弁護側の2320枚を費やして踏み込んだ反証に対して、正面から検討した判決内容を提示しないのか。そんな疑念を脹らませながら、毛髪鑑定、精神鑑定・・・と朗読が進むのを聞いていると、高木裁判長の声が途切れた。彼は、判決文からふっと目を離し、菅家被告が被害者の死体を陰部までも舐め回したと供述したことに触れ、こんな感想を漏らした。
『だって、自分から舐めたなんて、ふつうなら言えないですからねえ・・・』
(中略)
高木裁判長が法廷には似つかわしくないくだけた調子でふと漏らした言葉は彼の人間洞察によるもので、本音だったのではないだろうか。ひとことで言えば、これの根っこにある人間観が『犯人以外の者は、幼女の陰部を舐めたとは言わない』と、判断したように思う。それが、菅家被告を有罪とする4つの証拠の信用性を認め、証拠能力や証明力に過大な評価を与えたと考える。」


以上のように、高裁判決も問題があるのですが、この程度のことはよくあることで、だからこそ三審制で最高裁が存在するわけです。また、この時点ではまだ弁護側によるDNA鑑定は出ていません。
佐藤弁護士は、菅家さんのDNA型を再鑑定することを思いつき、菅家さんの毛髪を用いて鑑定を行い、真犯人の型と異なることを立証しました(押田鑑定書)。

佐藤弁護士は最高裁に対して、押田鑑定書を添付して、1997年10月28日、菅家さんのDNA型と犯人のDNA型は異なる可能性があるので、DNA鑑定の再鑑定を命じてほしいと申し立てました。
『しかし、最高裁は最終的にこれを無視しました。この事件の調査官だったG裁判官との何回かの面接で、「最高裁は事実審ではありませんので…」と言われたのがわずかに聞けた理由らしきものです。私たちは「最高裁が事実を取調べる必要はない。最高裁がなすべきことは、DNA再鑑定を命じることだけで、鑑定するのは鑑定人です」と訴えましたが、無駄でした。(佐藤弁護士)』
上告理由の中心は、刑事訴訟法の下記条文のようです。
「第411条  上告裁判所は、・・・・・左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一  判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
三  判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。」
しかし、最高裁は丸4年の歳月を費やした後、「原判決に、事実誤認、法令違反があるとは認められない。」として上告を棄却しました。

私は、最高裁のこの態度には大いに問題があると感じています。

舞台は宇都宮地裁の再審に移ります。
押田鑑定書を添えて、2002年12月に宇都宮地裁に再審請求しました。しかし宇都宮地裁はDNA再鑑定を命じることなく、2008年2月に再審請求に棄却決定します。5年以上もかけて棄却決定ですよ。この時間のロスが、菅家さんには本当に酷でした。
『裁判長の池本寿美子裁判官に聞いてみないと分かりませんが、本件のDNA鑑定が正しい型判定をしたものではないことを認めながら、「一致」することに変わりはないとした東京高裁判決があったこと、最高裁が押田鑑定が提出されたにもかかわらず、再鑑定を命じないで上告を棄却したことが重くのし掛かっていたのではないかと思います。
 ほかに、DNA鑑定の再鑑定を命じるということは、当時のDNA鑑定に問題があると裁判所が考えたことを意味しますので、科警研の権威を傷付けたくないという配慮もあったのかも知れません。しかし、所詮、権威をとるのか、真実に忠実であるべきかという問題です。(佐藤弁護士)』

最高裁は、なぜ再鑑定を命ずることなく上告を棄却したのか。重大な事実誤認は原判決破棄の理由になり得るのに、なぜ「最高裁は事実審ではありませんので…」などという言い訳をしたのか。なぜ4年もかかったのか。
地裁での再審においては、なぜ高裁や最高裁の判断に引きずられてしまったのか。同じ棄却決定をするのであれば、なぜ5年もの歳月をかけてしまったのか。

警察庁や最高検が足利事件について検証報告を出したように、最高裁も検証報告を発表すべきでしょう。

と考えていたら、4月16日の朝日夕刊に「最高裁も誤判検証へ」という記事が載っていました。
『最高裁は16日、早ければ今月にもDNA鑑定など化学的証拠の取り扱いの検証作業を始めることを明らかにした。』
『菅家さんの無期懲役を確定させた00年の最高裁決定は、全国で初めて当時のDNA型鑑定の証拠能力を認めていた。』
上記記事を読む限り、私が必要と思っている検証からはほど遠いようです。警察庁や最高検と同じスタンスでしか検証はされそうもありません。
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クラウド普及へ特区

2010-04-18 11:23:46 | サイエンス・パソコン
ちょっと古新聞ですが、4月10日の日経朝刊一面トップは、
『「クラウド」普及へ特区 総務省、データセンター誘致』
という記事です。

クラウドコンピューティングについては、去年11月にクラウドコンピューティングとは何かとしてここでも記事にしました。
クラウドとは、数万台とも数十万台ともいわれるサーバーを結合して大規模な分散処理システムを構築し、利用者が個別にサーバーを構築するのに比較して劇的に安価にしています。そして、大規模分散処理の技術が進歩し、利用者が、その数万台の大規模分散処理システムの一部を借り、あたかも数台~数十台のサーバーを構築して利用者のコンピュータ処理を行っているような形態を取ることが可能となりました。

利用者はインターネットを通じてクラウドにアクセスしますから、データセンターは地球上のどこにあってもいいわけで、地域を選びません。それがなぜ「特区」なのだろうか。

『米グーグルやマイクロソフトは建造費や電気代を低く抑えられるサーバーを格納したコンテナを並べる方法をいち早く採用し、米国やアジアに次々とデータセンターを建設した。』
『日本ではコンテナ型サーバーが建築基準法の対象になり、消防設備などが必要だ。データセンターの構築・運営費用は米国の2倍に上るとの試算もある。』

なるほど、そんな理由で、日本にデータセンターを建設することが不利になっているのですか。

『総務省はこうした規制を緩和する必要があるとみて、特区創設の方針を固めた。巨大な施設になるため、冷却に必要なエネルギーを節約できる北海道か東北を候補地にする。国内外の事業者を誘致し、最大でサーバー約10万台分のデータセンター構築を構想。』
『通信機器などを更新しやすくするため、11年度の税制改正でサーバーや通信機器の法定耐用年数の短縮も要望する。現在はサーバーなどが5年、通信機器などは10年程度で、3年程度の実利用年数とかけ離れている。法定耐用年数が短くなれば企業が減価償却で損金算入できる金額が増える。』

税制でも日本は不利な条件に置かれているのですね。
このような方向で政府が動くことは好ましいでしょう。しかし、ことは急を要します。クラウド先進企業は、続々と大規模データセンターを構築しているはずです。日本の企業がこの動きに後れを取らないためには、少なくとも今年中には規制を緩和できていないとならないでしょう。民主党連立政権には頑張ってもらいたいです。

しかし、日経の記事では
『総務省はこうした規制を緩和する必要があるとみて、クラウドサービス普及に向け、2011年春にも北海道か東北に特区を創設する。』
とあります。1年以上先の話ではないですか。

ネットで検索して週刊ビジネスガイド4月15日号を読んだところ、最近の日本企業がクラウドを採用する様子が書かれています。損保ジャパンはクラウド大手の米セールスフォース・ドットコムのサービスを利用します。年間の利用料は数億円、自前で開発・運用する場合と比べ、コストは7割減になる見込みでだそうです。またパナソニックは米IBMのクラウドサービスを使います。
『従来、社外にデータを預けることへの抵抗感が導入のハードルとなっていたが、今やクラウド会社は巨額の投資で頑丈・安全なデータセンターを有しており、自前のデータセンターより安全との認識が定着しつつある。』

クラウド化の流れは猛烈な勢いで進んでいるようです。どうか、行政がネックとなって日本が後れを取ることのないよう、お願いしますよ。
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4月17日に東京で積雪

2010-04-17 10:28:56 | Weblog
4月16日は、一日中寒い雨が降っていました。午後に弁理士会館へ行く用事があったのですが、真冬の恰好をしていても寒く、雪が降ってもおかしくない気温でした。案の定、夕方雪が降ったと聞きました。

そして4月17日の朝です。
外へ出てみると、所々ですが雪が積もっているではないですか。4月17日に雪を見るなんてもう二度とないでしょうから、記念に写真を撮っておきました。
 

 

家の北側の軒下、プランターの中、駐車している自動車のフロントグラスなどにうっすらと積もっている状況です。なお、場所は東京都杉並区です。
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