弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

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杉並世田谷散歩徒然

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ロシア軍用機、ロシアの誤射で撃墜の可能性

2023-05-15 12:36:53 | 歴史・社会
ロシア軍用機、ロシアの誤射で撃墜の可能性…プリゴジン氏が疑惑提起
5/15(月) 中央日報日本語版
『ロシアの民間軍事企業ワグネルグループ創設者のプリゴジン氏が最近ウクライナ国境地域で墜落したロシアの軍用機がロシア軍の誤射により撃墜された可能性を示唆したとAP通信が14日に報道した。
プリゴジン氏はこの日テレグラムチャンネルを通じ、前日ロシア軍用機4機が墜落した地点を示しながらロシアの防空システムが墜落に関与した可能性があるという趣旨の発言をした。』
『これに先立ちロシアのタス通信などは13日、ウクライナ北東部と隣接するロシアのブリャンスク地域でSU35、SU34戦闘機各1機とMi8ヘリ2機の4機の軍用機が墜落したと報道した。』

そのような可能性があるのですね。
私はこのブログの「レッド・ストーム・ライジング再読 2022-05-27」で、
トム・クランシー著「レッド・ストーム作戦発動(ライジング)」(上・下)
文春文庫 1987年第1刷
について言及しました。
この本が出た直後に読んでいたと思います。今から35年前です。
当時のソ連とNATO軍の間の全面戦争(通常兵器)を描いたものです。
主戦場は、東ドイツ国境から西ドイツになだれ込んだソ連陸軍と、NATO陸軍との陸戦です。
《西ドイツ上空の制空権》
『(空軍の将軍の説明に)「いまの話だと、NATO軍が制空権を握っているということだな」とアレクセーエフが言った。
「いや、そんなことはない。双方とも握っていない。戦線上空を敵が支配することはわれわれの地対空ミサイルが拒んでおり、われわれによる支配は敵戦闘機が--彼らの地対空ミサイルと、それから味方のミサイルに助けられて!--拒んでいるのだ。戦場の上空はどちらのものでもない」死者のものだ、と空軍の将軍は思った。』(下・17)

35年前にトム・クランシーが描いた、ソ連軍とNATO軍との戦闘において、ソ連軍の戦闘機が味方の(地対空)ミサイルの誤射で撃墜されている、と記述されています。35年後の現在でも、ソ連軍の地対空ミサイルは、敵味方識別ができず、味方の航空機を誤射している、ということなのでしょうか。

また、上記『戦場の上空はどちらのものでもない」死者のものだ』
は象徴的です。
地上戦闘を支援する航空機は、敵の航空機のみならず、敵の地対空ミサイル(ロシア軍の場合には味方のも含め)の餌食になります。現在のウクライナ戦争においても、ウクライナ側、ロシア側のいずれも、地上戦の支援のために戦場に航空機を派遣したら、地対空ミサイルの餌食になるだけでしょう。地上戦の上空においては、「制空権」との考え方は成立せず、この点については35年前にトム・クランシーが見通していたのでした。

なお、日本と中国の間が有事となった場合、航空機の主戦場は海上であり、近くに敵艦船がいない限りは(近距離)対空ミサイルの脅威がないので、ウクライナ戦争の現状とは状況が大きく異なります。
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少子化対策の財源確保

2023-04-19 19:37:38 | 歴史・社会
中外時評 負担の連立方程式を解けるか 育児支援拡充の落とし穴
論説委員 柳瀬 和央
2023年4月18日 日経新聞
『岸田文雄政権の少子化対策の実像は財源のあり方しだいで大きく変わる。負担を巡る連立方程式を解き、子育て世帯の支援にしっかりつなげることができるだろうか。
政権は小倉将信少子化相が公表した少子化対策のたたき台を踏まえ、6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で財源を含む対策の大枠を示す方針だ。
自民党の茂木敏充幹事長は4日のBS日テレの番組で確保する財源規模に関し、こども家庭庁の2023年度予算が4.8兆円だと説明した上で述べている。「最低でも半分はやると思う。2/3だとすると3兆円はやる。」
ではその巨額の財源をどこに求めるのか。茂木氏は「増税と国債(⑥)は、いま考えていない。」(①~⑥はブログ主が記入しました)

① 医療保険など既存の社会保険の運営者に少子化対策を目的とする拠出金の納付を求める。・・保険料にはいずれ反映される。
社会保険に少子化対策の財源を求めると、この構図(現役世代への社会保障の負担が重くなる)を強めかねない。
② 児童手当などの財源として企業から徴収している「子ども・子育て拠出金」の増額。これは事業主に化される税金である。

児童手当など育児世帯への給付を拡充しても保険料や賃金低迷で相殺される。こんな落とし穴を避けるには、現役世代の中だけで再配分するのではなく、高齢者に協力を求めることが欠かせない。
問題は所得で加入者の保険料をはじく社会保険の枠組みでは高齢者の負担が限られる点だ。・・・所得が少なくても資産を持つ高齢者は少なくない。
③ 資産も含めて負担能力に応じた協力を求める仕組みがいるが、それは消費税の方が優れている。
④(消費税の議論を封印するなら)所得だけでなく、保有する資産も勘案して保険料を決める。
⑤ 育児世帯が最も恩恵を受けるのは、年金、医療など既存の社会保障給付の削減で財源を捻出することだ。

関東学院大の島澤諭教授が子育て給付を6兆円増やす想定で財源別に出生率を上げる効果を推計したところ、最も大きい年3万人あまりの効果が期待できるのは、高齢者向け給付の削減(⑤)で賄うケースだった。次に効果があるのは消費税(③)で約7000人。将来世代の負担になる赤字国債(⑥)の約6000人を上回った。現状の社会保険料(①②)だと逆に出生率が5000人程度減るという。』

これから純粋に増加する歳出として、上記の「異次元の少子化対策」に加え、「防衛費のGDP比1%→2%」もあります。
私は常々、「歳出増加に見合う財源を確保する上では、高齢者向けの社会保障給付(年金、医療費)を削減することが最も必要だ」と考えています。年金制度を単独で見ても、現在の現役世代が年金世代になったときの年金崩壊を食い止めるためには、現在の年金受け取り世代の給付額を減らすことが最も重要です。
しかし、「現在の高齢者向け給付を減らそう」という意見は、政治家から出てこないことはもちろん、ニュースでもマスコミは口をつぐんでいます。
今回初めて、上記日経記事でその主旨の主張がなされました。しかし、論調としては決して強力ではありません。「そっと言い添えた」程度ですね。

高齢者のうち、「資産の多い人から多く徴収する」というのは、現在の相続税の累進課税制度によってなされています。上記「(高齢者の)保有する資産も勘案して保険料を決める(④)」は、相続税ではできますが、生きている高齢者の資産を毎年勘案することは難しそうです。
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ウクライナでのイギリス特殊部隊の活動

2023-04-12 18:06:04 | 歴史・社会
西側の特殊部隊、ウクライナで活動か 米機密文書流出で表面化
4/12(水) BBC
『ロシアのウクライナ侵攻などに関する米国防総省の機密文書が流出したとされる問題で、イギリスなど多くの国がウクライナ国内で軍事特殊部隊を活動させていることが、一部文書で示されている。
流出文書は、ウクライナ侵攻をめぐって1年以上にわたってひそかに憶測を呼んでいた、西側諸国の関与を裏付けるものとなった。
 ・・・
■西側の特殊部隊
3月23日付の文書によると、ウクライナに派遣されている特殊部隊の規模はイギリスが最多の50人、イギリスと同じく北大西洋条約機構(NATO)加盟国のラトヴィアが17人、フランスが15人、アメリカが14人、オランダが1人。
 ・・・
■英特殊部隊
イギリスの特殊部隊は、専門分野の異なる複数の精鋭部隊で構成され、世界有数の能力を持つとされる。
英政府はアメリカなどとは対照的に、自国の特殊部隊についてコメントしない方針を取っている。
イギリスはウクライナを声高に支援し、アメリカに次ぐ規模の軍事支援を実施している。』

欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国
副島隆彦、佐藤優
昨年、上記書籍を読みました。そして、副島隆彦、佐藤優 「よみがえるロシア帝国」 2022-11-16として記事にしました。

上記書籍は、副島隆彦氏と佐藤優氏の対談をまとめたものです。

副島氏が、以下の発言をしています。

《ウクライナ問題で悪いのはイギリスとバチカン》(ディープステイト)
『(ディープステイトとは)西側を500年前から支配してきた、頂点に隠れている人々のことです。はっきり書くと、ヨーロッパの王族や大貴族たちです。彼らは政治の表面には出てこない。
ディープステイトを構成するのは、カトリックの総本山、ローマ教会だ。そしてもう1つは英国国教会(アングリカン・チャーチ)です。これはイギリス国王と貴族たちだ。これに連なるヨーロッパ各国の王族と貴族。元貴族、それからアメリカの大富豪たち。この連合体がディープステイトだ。
結局のところ、イギリスがアメリカを引きずり込んだのです。イギリスと、それから本当はバチカンが悪いんですよ。
世界最大のワルは、この2つです。70人の英SASが、2021年の11月からゼレンスキーの回りにピタッとついています。・・やはり、全部仕組んでいるのはイギリスです。だからSASがゼレンスキーに「次はこうしろ」「次はこんなふうに演説しろ」と指図している。

ウクライナに派遣されているイギリス特殊部隊の規模について、今回流出した機密文書では50人、副島氏の発言では70人と若干の相違はありますが、概ね副島氏の発言の通りです。
副島氏の発言からは目を離せません。

上記書籍では、
《安倍元総理殺害》
『爆発音に驚いて安倍が後ろを振り向き、その後地面にベタッと小さくなった。その後、首から2発、SPが撃った。SPの中のアメリカCIAの息のかかった人物がやったのだ。アメリカのCIAが統一教会の内部分裂を利用して、大きく上から仕組んで安倍晋三を殺した。』

という発言もあります。最近の週刊文春の記事と符合するように思います。
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新任の第8師団長はなぜ宮古島を空中視察したのか

2023-04-08 15:28:28 | 歴史・社会
安否不明の陸上自衛隊第8師団の坂本 雄一 師団長「地域に惚れたい」と語っていた【熊本】
4/7(金) TKUテレビ熊本
『沖縄県の宮古島周辺で消息を絶った陸上自衛隊のヘリコプターには、南九州3県や南西諸島の防衛を担う第8師団の坂本 雄一 師団長も搭乗しています。3月30日付で着任したばかりで、「地域に惚れたい」と抱負を語っていました。
【陸上自衛隊第8師団 坂本 雄一 師団長】
北海道旭川市出身の55歳。
日本列島を5つの区域に分けた方面隊のひとつ西部方面隊に属する第8師団の師団長は5000人を超える隊員を率い、南九州3県と緊張が高まる南西諸島の防衛を担う指揮官です。
近年、中国の艦船が頻繁に往来する宮古島海域での偵察任務にあたるヘリに搭乗していました。
第8師団は台湾や尖閣諸島情勢の緊迫化で『南西シフト』が進む安全保障の要ともいわれ、『鎮西機動師団』として、担当する熊本・宮崎・鹿児島以外にも展開する任務を担っています。』

熊本を拠点とする第8師団と、宮古島に駐屯する陸上自衛隊の部隊との関係がよくわかりません。最初は、「第8師団が宮古島駐屯地の陸自を管轄している」かと思っていたのですが、どうもそうではなさそうです。

西部方面軍、宮古島駐屯地の陸自、第8師団の関係について、ウィキペディアで調べて見ました。
宮古島駐屯地には、主に以下の部隊が駐屯しているようです。
・第15旅団隷下部隊
 ・宮古警備隊:主に陸上戦闘にあたる守備隊のようです。
・西部方面隊隷下部隊
 ・第2高射特科団
  ・第7高射特科群:03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を運用して、島の防空を担うようです。
・西部方面特科隊
 ・第5地対艦ミサイル連隊12式地対艦誘導弾などを装備
  ・第302地対艦ミサイル中隊

上記の構成から、宮古島駐屯地に駐屯する陸上自衛隊部隊は、主に地対艦ミサイルで洋上の敵艦船を攻撃することが主任務であり、そのミサイル部隊を守るため、敵兵やゲリラ部隊の上陸には宮古警備隊があたり、敵ミサイルの迎撃には高射特科軍があたる、ということと理解できます。

次に、上記宮古島駐屯地の陸自部隊がどのような組織に属しているのかを、調べて見ました。すべての部隊は西部方面軍に含まれています。
西部方面軍
・第4師団
第8師団
第15旅団宮古警備隊
第2高射特科団第7高射特科群
西部方面特科隊第5地対艦ミサイル連隊

宮古警備隊は第15旅団に所属し、高射特科軍と地対艦ミサイル連隊はいずれも西部方面軍の直属です。宮古島駐屯のいずれの部隊も、第8師団には属していません。
それでは、着任したばかりの第8師団長は、何を目的に宮古島の視察を行ったのでしょうか。
第8師団は、九州南部に位置する3県(熊本県、宮崎県、鹿児島県)の防衛警備、災害派遣を任務とします。
宮古島を含む沖縄県は、第8師団とは別の、第15旅団の管轄です。第15旅団は、『沖縄地方の防衛警備・災害派遣などを任務としている。中期防衛力整備計画 (2005)に基づき2010年(平成22年)3月26日、第1混成団の後継として南西諸島の地理的特性を踏まえつつ、ゲリラや特殊部隊による攻撃やNBC攻撃、島嶼部に対する侵略、大規模特殊災害等の新たな脅威や様々な事態に迅速かつ実効的に対応できる体制を構築する一環として編成された離島型旅団である。』ということです。
一方第8師団は、『冷戦終結後は台湾問題、南西諸島有事が懸念され、担任区域に約960個の離島を抱える地域的特性がある本師団の重要性が増している。そのため、米国にて米海兵隊との島嶼(とうしょ)防衛に関する共同訓練を行なうなど地域特性に応じた能力の向上に努めている。
26中期防において「事態が生起した場合、必要に応じ、警備区域を越えて緊急展開する」ことを目的に、全国に先駆けて平成29年度末に即応近代化型師団から「機動師団」(1個即応機動連隊、2個普通科連隊基幹)に改編された。』とされています。
「事態が生起した場合、必要に応じ、警備区域を越えて、『沖縄県の宮古島まで』緊急展開する」ということでしょうか。宮古島は、「離島型旅団」である第15旅団の管轄です。宮古島有事の場合は、第15旅団と共同して、第8師団も宮古島防衛にあたる、ということになるのでしょうか。

それにしても、新任の第8師団長が、着任後5日しか経っていないのに、警備区域外である宮古島を視察しなければならない理由があったのでしょうか。この点に関しては、陸自ヘリ墜落、防衛省に「強烈な違和感」を抱いた理由…中国海軍空母が航行するなか、なぜ「重大事故」は起きたのか陸自ヘリ墜落への“不可解な疑念”…「第8師団長が搭乗」「事故と判明」防衛省の異例の発表で「深まる謎」の記事が目にとまりました。
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南西諸島に配備する長射程ミサイル

2023-03-18 16:20:49 | 歴史・社会

長射程ミサイル、不安の石垣島 配備なら「守るはずが攻撃する基地に」
2023年3月15日 朝日新聞
『沖縄・石垣島にある山を削り、島で初めての自衛隊基地を造成する工事が急ピッチで進められている。
山林に囲まれた47ヘクタールの敷地には、ベージュ色の隊舎が立ち並ぶ。16日に開設される陸上自衛隊石垣駐屯地だ。「12式地対艦誘導弾」や「03式中距離地対空誘導弾」などのミサイル部隊や警備部隊の約570人が配備される。人口5万人弱の島に、隊員や家族ら800人以上が移り住む予定だ。』
「空港、港湾などの重要施設を防護するため」「あくまで防御的な装備」
 防衛省はこれまで石垣島で開いた住民説明会で、ミサイル配備についてこう説明してきた。
だが、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が現実味を帯びるなか、市長の要請を受け、22日に改めて説明会を開く。』

敵基地攻撃力、南西諸島に 沖縄本島、ミサイル保管 防衛省検討
2023年3月18日 朝日新聞
『政府が保有を決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)を担うミサイルについて、防衛省は沖縄本島を中心に保管し、運用部隊を南西諸島に配置する方向で検討を始めた。この地域で発射すれば、中国や北朝鮮の基地が射程内に入ることになる。ただ、相手側の攻撃目標にもなりかねないとして、地元の反発も予想される。』
『米国政府は沖縄の海兵隊を25年までに改編し、離島防衛に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」を設けると表明した。』

沖縄の南西諸島に配置を進めようとしている「長射程ミサイル」は、配備される南西諸島を敵の攻撃から防衛するのが目的ではありません。あくまで、日本に対する中国の脅威に対処するため、南西諸島が防衛の尖兵となって備えることが目的です。
米海兵隊の「海兵沿岸連隊(MLR)」も同様です。海兵沿岸連隊は、敵(中国)の射程内に進出し、島から島へ移動して敵の攻撃をかわしつつ敵を攻撃するのが特徴です。ある島で敵を一撃し、さっと退避して別の島に移ります。海兵隊が退避してもその島の住民は退避していませんから、敵からの攻撃があったら島の住民は被害を受けます。(米軍海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)とは 2023-01-18アメリカ海兵隊の変容と日本 2022-10-30

日本政府は、この点をごまかして説明しています。誠意が感じられません。
「中国の脅威に対して対処し、中国が日本に攻め込もうとしても勝てないことを分からせ、攻撃を思いとどまらせることが必要である。それが『抑止力』である。抑止力の重要な要素が、中国に最も近い位置にある南西諸島を利用しての防御力である。最も効果的なのは長射程ミサイルである。日本の陸上自衛隊は南西諸島にミサイル基地を配備し、米海兵隊は即座に島から島へ移動しつつ敵を攻撃するミサイル・ロケット砲部隊を配備する。
日本を防衛するためとはいえ、地理的関係から最前線となる南西諸島の住民の皆さんには大変なご心配をおかけする。」
「ただし、抑止力により、中国に日本侵攻を思いとどまらせるということは、南西諸島が戦場になる可能性を低めることになるのだから、結果として、南西諸島への長射程ミサイルの配備は、南西諸島の防衛にもなっている。」
こんなところでしょうか。

脅威となる相手国が、侵攻を企てる思惑を持ったとき、その相手国が侵攻する国の抑止力を理解していなかったらどうなるか、それがロシアによるウクライナ侵攻です。ウクライナは、本当は米軍の援助によって強大な抑止力を保持していたにもかかわらず、それをロシアに分からせていなかったため、侵攻を招いてしまいました。
中国の脅威に直面する日本は、このウクライナの轍を踏んではいけません。十分な抑止力を保持し、それを十分に中国に分からせ、結果として中国の野心を思いとどまらせることが何よりも必要です。

政府の説明も新聞の解説も、上記のような観点が必要と思います。

それから、新聞には「敵基地攻撃能力」とありますが、南西諸島に配備される長射程ミサイルの主な標的は、日本に侵攻を企てる敵国の艦艇です。「敵基地」ではありません。この点も、勝手にイメージで文章をあいまいにすることのないよう、お願いします。
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日本版セキュリティ・クリアランスの実態

2023-02-19 14:31:28 | 歴史・社会
安保上の機密扱う資格、対象者絞り込み 法整備へ検討
岸田文雄首相が指示、有識者会議立ち上げ
2023年2月15日 日経新聞
『政府は安全保障に関わる機密情報を扱える人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」の具体的な制度設計に入る。岸田文雄首相が14日、法整備に向けた検討を指示した。2024年の通常国会への法案提出を視野に入れ、資格を与える対象者の範囲の絞り込みなど調整を急ぐ。
首相は関係閣僚らが参加した14日の経済安保推進会議で1年間をメドに検討作業を進めるよう命じた。高市早苗経済安保相のもとに有識者会議を設け、月内にも初会合を開く。メンバーは経済界や学者、法曹関係者などから選ぶ。
セキュリティー・クリアランスは安保上の重要な情報にアクセスできる一定の要件を満たす人に資格を与える制度を指す。首相は「情報保全強化は同盟国・同志国との円滑な協力で重要だ」と強調した。
日本の情報保全の制度としては14年に施行した「特定秘密保護法」に基づく「適性評価」がある。主に公務員が対象で、特定秘密に指定する情報の分野も防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止に限られる。
高市氏は14日の記者会見で「これからつくり上げていこうとしているのはいわゆる『産業版』」と指摘した。「日本企業が海外の政府調達や海外の企業との取引、共同研究から排除されない環境をつくるためのものだ」と説明する。』
『資格には経済状況や犯罪歴などを確かめる「バックグラウンドチェック」と呼ばれる個人調査が伴う。そのため米国では取得まで1〜2年かかることもあるという。
・・・
一方で審査が緩やかだと国際的に信用を得られなくなる。高市氏は米欧に準じた水準を目指す考えを示す。「主要7カ国(G7)などとの間で通用するものにしなければならない」と話す。』
新聞記事には、「セキュリティー・クリアランスのイメージ」として図が掲載されています。
《政府》→《安保に関わる機密情報》
  機密指定 米国は・Top Secret ・Secret, ・Confudential の主に3段階
《政府》→《・政府職員、・民間の研究者ら》
  バックグラウンドチェック 経済状況や犯罪歴など調査 → 資格付与
《・政府職員、・民間の研究者ら》→《安保に関わる機密情報》
  資格者がアクセス可能
上の図の構造を見ると、私がセキュリティ・クリアランス 2023-02-14で紹介した、飯柴智亮さんの説明による米国版セキュリティ・クリアランス(以下「米国SC」と呼びます。)と一致しています。

さて、これから制定しようとする日本のセキュリティ・クリアランス(以下「日本版SC」といいます。)は、米国SCと同じなのか異なるのか。
上の記事での高市氏の説明では、「これからつくり上げていこうとしているのはいわゆる『産業版』」ということで、この点で米国SCとは相違しています。一方で同じ高市氏は「主要7カ国(G7)などとの間で通用するものにしなければならない」とも述べており、日本版SCを取得した資格者は、米国政府が指定する機密情報にアクセス権を有することを目標としています。

日本版SCの検討に際しては、
 ・どのような情報を機密指定するのか
 ・機密指定した情報へのアクセス権を認めるため、どのような資格認定を行うのか
の2点が必要です。

《機密指定情報》
 ①日本政府が指定する、日本版SCに基づく機密情報→産業界の保有する情報と言うことでしょうか
 ②米国SCに基づく機密情報
 ③特定秘密保護法に基づく特定秘密

上記《機密指定情報》のうち、①のみならず、②のアクセス権をも付与するためには、米国SCと同等の資格審査が要求されるはずです。
そこのところを、どうも高市氏はごまかして、国民受けしやすいように説明を歪曲しているように思われます。

上の新聞記事は政府の方針です。与党の方針も、下記の新聞記事で示されました。
機密扱う資格、導入で一致 自公
経済安保巡り、対象・要件調整へ
2022年10月27日 日経新聞
『自民、公明両党は26日、国の機密情報に触れられる人を民間人も含めて制限する資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」の導入が必要との認識で一致した。法整備に向けて対象となる情報や要件を調整する。
国家安全保障戦略の改定に向けた実務者協議で確認した。適格性評価は安保上重要な情報を扱う人について、外部に漏洩する恐れがないかなどをあらかじめ調べる制度。』
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セキュリティ・クリアランス

2023-02-14 22:50:41 | 歴史・社会
先端技術扱う民間人の身辺調査、政府が検討 借金の有無や家族情報
2023年2月14日 朝日新聞
『政府は、先端技術を扱う民間人の身辺調査をする「セキュリティークリアランス」(適性評価)の導入の検討を始める。14日に開いた経済安全保障推進会議で、岸田文雄首相が高市早苗・経済安全保障担当相に検討のための有識者会議設置を指示した。
首相は「情報保全強化は同盟国や同志国などとの円滑な協力のために重要なほか、制度を整備することは産業界の国際的なビジネスの機会の確保や拡充にもつながることが期待できる」と述べた。有識者会議では1年ほどかけて調査の対象や内容などを議論する。
適性評価は2014年施行の特定秘密保護法に基づく制度で、防衛、外交などの特定秘密を扱う人を対象とする。借金の有無や家族情報について政府の調査をクリアした人だけが情報を扱えるようになる。
適性評価は多くの欧米主要国で実施されているが、日本ではプライバシー保護の点から慎重論もあり、昨年成立した経済安保推進法では先端技術を扱う民間人について導入が見送られた。中国への技術流出を防ぐ必要性が指摘される中、国際ビジネス取引を円滑にするため産業界から導入を求める声が上がっていた。』

首相、機密扱う資格の創設検討を指示 「同盟国との協力に重要」
2023年2月14日 日経
『岸田文雄首相は14日、安全保障に関わる機密情報を扱える人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」の創設に向けた検討を指示した。高市早苗経済安全保障相のもとに有識者会議を設け、制度設計の議論に入る。2024年の通常国会への法案提出を視野に入れる。』
『セキュリティー・クリアランスは機密情報を扱える資格者を認定する制度を指す。安全保障上の重要な情報を扱う前提とすることで先端技術や機密の漏洩を防ぐ狙いがある。米国や英国といった主要国が導入している。』
『情報の保護を巡っては14年に施行した特定機密保護法に基づく「適性評価」もある。これは公務員が主な対象で、民間人材にも広く適用できる資格制度をつくるべきだとの指摘があった。』

セキュリティー・クリアランスについて、朝日新聞の上記記事はねじ曲げた解釈になっていますね。
「セキュリティー・クリアランス」と特定秘密保護法の「適性評価」をごっちゃにしています。その上、「民間人の身辺調査をする」との解釈です。『朝日新聞は、プライバシー保護の点から「民間人の身辺調査をする」ような「セキュリティー・クリアランス」導入に反対である』との意思表示のようです。

「セキュリティー・クリアランス」について、私は最近以下の書籍で飯柴智亮さんの意見を読んだところです。
米中激戦! いまの「自衛隊」で日本を守れるか

この本は、飯柴智亮さんと藤井厳喜さんの対談本です。この本で飯柴さんはあまり主張をしていません。唯一、日本でのセキュリティー・クリアランスの必要性について強く主張しています。
『セキュリティ・クリアランス(国家の機密情報にアクセスするための資格)のシステムを構築しなければ絶対に駄目。何も始まりません。』
『国際的に日本が軍事の核心に関われない決定的な理由はここにあるんです。』
情報のレベルが、アメリカの場合、「アンクラスィファイド(非機密)」「シークレット」「トップシークレット」に分類され、それぞれにアクセスできるクリアランスが設けられています。
申請した人間の「バックグラウンド・チェック」をするなど、かなり手間が掛かるので費用が掛かります。
『このシステムをつくらないと、国際的に、特にアメリカには相手にされません。機密情報にアクセスできませんからね。このシステムのつくり方をこそ、アメリカに倣わなければなりません。』
『アメリカではクリアランスのシステムは民間にも統一されています。民間防衛産業のエンジニアもクリアランスを取らなければ働けません。』

上記新聞記事では、セキュリティー・クリアランスが必要なのは民間人であって、公務員は特定秘密保護法の「適性評価」を受けているから必要ない、と述べているようです。
しかし、飯柴さんによると、セキュリティー・クリアランス制度がない日本では、公務員といえども米国の機密情報にアクセスすることはできません。
アメリカ流のセキュリティー・クリアランスと、日本の特定秘密保護法の「適性評価」とは、全く別物である、と理解する必要があります。

《セキュリティー・クリアランスの審査で重視されること》
一番重視されるのは借金をきちんと返済しているかどうかと言うこと。
次にチェックされるのが渡航歴。
配偶者の国籍・出身地
自分のことを知っている人間を最低二人書く。抜き打ちでインタビューを受ける。

朝日新聞は、「先端技術扱う民間人の身辺調査、政府が検討 借金の有無や家族情報」としていますが、スタンスが違っています。政府が勝手に身辺調査を行うのではなく、クリアランスが欲しい人が申請し、申請があった人のみについて調査を行うのです。申請しなければクリアランスがなく、機密情報にアクセスできないだけの話です。

日本では、「国会議員に機密情報を伝えると外に漏れてしまう」ということで有名です。日本の国会議員こそ、秘密情報を入手したいのであれば、セキュリティー・クリアランスを取得することが必要でしょう。政府の役人も同様です。

飯柴氏は『こういうことを知っている日本人はほとんどいません。セキリティ・クリアランスを持っている人間で、こうしてしゃべっている日本人は今、おそらく自分1人だけですから。』と述べています。それが本当だとしたら、政府が設置する有識者会議に、飯柴氏を呼ばなければなりません。
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中国の気球をアメリカ領空で撃墜

2023-02-07 17:53:32 | 歴史・社会
米軍、中国気球を撃墜 大西洋上、戦闘機からミサイル―残骸分析へ、緊張再燃も
2023年02月05日 時事
『【ワシントン時事】米軍は4日午後(日本時間5日未明)、南部サウスカロライナ州沖合の大西洋上の領空内で戦闘機からミサイルを発射し、中国の偵察気球を撃墜した。米軍は残骸の回収作業に着手し、気球が収集していた情報などの分析を行う。米兵や市民、民間航空機などへの被害はなかったという。』
『米本土上空を飛行していた気球を巡っては、中国政府が「気象研究用」と主張する一方、米側は「偵察用」だと断定。ブリンケン国務長官は「無責任な行動だ」と批判し、5日から予定していた訪中を延期した。
 気球は高度1万8000~2万メートルの上空を飛行しており、F22は高度約1万7600メートルからミサイルを発射した。落下した残骸は水深約14メートルの位置に沈み、米海軍がサルベージ船に連邦捜査局(FBI)職員を乗せ、回収を進めている。具体的な日数は不明だが、作業は短期間で済むという。』

この気球は、高度を18~20kmに維持しながら、恐らく風を主動力として中国→アラスカ→カナダ→米国、と移動してきたのでしょう。
中国はこの気球について、「中国のものであることは間違いない」「気象研究用だ」とアナウンスしているようです。
観測気球としてはラジオゾンデが思い浮かびます。ウィキによると、『600gのゴム気球を用いた場合、約90分で上空30km程度に達すると気球の膨張が限界に達して破裂し、ラジオゾンデはパラシュートで地上に降下し、観測終了。』
とあります。自力で高度を調整できないので、気球の浮力によってどんどん上昇し、最後は高度30キロで破裂する、というわけです。
それに対して今回の気球は、高度20kmをずっと維持しています。浮力と重量の調整を常に行ってはじめて、一定高度の維持が可能となるはずです。「中国のもの」と自称するこの気球が他国の領空を侵犯してしまったのですから、気球の所有者としては、高度調整機能を働かせて気球を着地させれば良いはずです。なぜそれをしなかったのか。
「機構が故障し、高度一定維持の制御は可能だが、高度を下げる制御ができなかった」とでもいうのでしょうか。

今回、気球を撃墜したのは戦闘機F-22の空対空ミサイルだった、ということで、F-22の実用上昇限度を調べて見ました。
19812m(F-22A Raptor
>20,000m (65,000ft)(F-22 (戦闘機)
以上の通り、高度20kmに浮遊する気球の高度に到達可能なのですね。上記ニュースによると、気球より1~2km低い位置からミサイルを発射したことになります。対象がジェット機ではないので赤外線追尾もできない中、どのようにしてミサイルを的中させたのでしょうか。

ところで、同じような気球は、過去に日本の上空でも出現していました。
2020年6月17日に確認された白い飛行物体
このウィキペディアの記事によると、気球の正確な高度は(少なくとも一般には)把握されていなかったようです。三角測量を行えば簡単に高さは把握できるのにもかかわらず、政府はその測量を行わなかったのか、それとも把握したけれども国民に秘密にしているのか、どちらかでしょう。国防上の理由で秘密にすべきとはとうてい思えませんが。
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シェルター整備に財政支援検討へ

2023-01-28 11:05:34 | 歴史・社会
シェルター整備に財政支援検討へ 政府・与党、有事に備え
2023年1月27日 日経新聞
『【この記事のポイント】
・ミサイルに備えるシェルター、政府・与党が普及策検討
・公共施設、商業ビルなどを想定。設置費や維持費を補助
・有事の避難施設、海外で整備先行。人口上回る収容力も
政府・与党はミサイル攻撃から人命を守るシェルターの普及を促す。設置する企業への財政支援などを2024年度にも打ち出す案を検討する。ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射を受けて有事への備えを急ぐ。』

日本の市街地にミサイルをぶち込みそうな国として、どこが挙げられるでしょうか。
《北朝鮮》
小川和久著「メディアが報じない戦争のリアル」 2022-12-18でも紹介したとおり、
『北朝鮮からの攻撃については、北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイルを発射する可能性はほとんどない。日本列島は77箇所の米軍基地を置くアメリカの拠点だから、日本への攻撃があれば、韓国と日本から猛烈な反撃が行われ、北朝鮮は壊滅的な損害を被る。』
ということであり、北朝鮮が理性的である限り日本の市街地にミサイルをぶち込む可能性は極めて低いはずです。北朝鮮が理性を失った場合を想定するのであれば、どこに打ってくるか予想できないので、日本人全体が避難できるだけのシェルターを整備する必要が生じ、極めて非現実的です。
むしろ、日本のすべての原発に、パトリオットミサイルを配備すべきと思います。原発がターゲットになったら、実際にミサイルを撃ち込まれたときの被害が全国に及ぶからです。
また、少なくとも日本海側の原発については、敵特殊部隊の奇襲に備えるため、陸自による防御網を構築すべきでしょう。

《ロシア》
ロシアが日本の市街地にミサイルをぶち込むことを想定して、日本人全体が避難できるだけのシェルターを整備することも、極めて非現実的です。

《中国》
中国も、日本の市街地にミサイルをぶち込む事態はほとんど想定できません。
日本人全体のシェルターの整備より優先すべきは、日本の軍用機のシェルターです。
中国が空自AWACS模型を破壊 2022-07-16でも書いたように、
『中国が新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に設置していた航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)に似た構造物を破壊したことが分かった。日本経済新聞が衛星写真を複数の専門家と分析して確認した。日本を仮想標的とするミサイル攻撃の訓練に使った可能性がある。』
日本の防衛予算を対GDP比で1%から2%に上げたとき、対中国抑止力を確保するために何を充実すべきなのか、その答を、今回中国が直接教えてくれました。
『まずは、航空機、特にAWACS早期空中警戒管制機を守るための掩体壕(バンカー)を建設すべし。もちろんF-35、F-2戦闘機の掩体壕も。』
耐弾性の高い有効な掩体壕が1基100億円もする、というのは驚きですが、対GDP比で予算が1%も増えるのですから、その中で対応可能でしょう。
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