弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ワクチン接種回数

2021-05-30 11:05:38 | 歴史・社会
ワクチン接種1000万回突破 1日40万回、政府目標遠く 新型コロナ
5/28(金) 13:22 時事通信
『新型コロナウイルスワクチンの国内での接種回数が、28日までに計1000万回を超えた。
各地の大規模会場設置などで加速が図られるが、1日当たりでは最大約40万回にとどまる。高齢者への接種を7月末までに終えるため、政府が掲げる1日100万回には遠く及ばない。』

現時点で、大部分の自治体では65歳以上高齢者の1回目接種を行っていると思います。6月に入ると、これらの人々の2回目接種が始まるでしょう。
もし現時点で、すでに1日当たり接種数実績が100万回に達していたら、6月からは、2回目接種の人が100万人/日ですから、もし接種能力が100万回/日だとしたら、新たに1回目接種を予約することが不可能になります。
従って、各自治体がきちんと計画を立てているとしたら、1回目接種と2回目接種が同時並行になる時点において100万回/日になるよう、予約をコントロールしているべきです。そうであれば、1回目接種が大部分である現時点では、接種実績が50万人/日程度であってちょうど良いことになります。

問題は、上記のようにきちんとコントロールされているか否かです。
もしも現時点で接種能力が50万回/日であり、その接種能力の上限で1回目接種を行っているとしたら、これらの人たちの2回目接種が始まったところで、新たな1回目接種の予約枠がゼロになってしまいます。そしてその状態が3週間続いて、2回目接種の対象者がすべて打ち終わったところで、新たな1回目接種の予約が可能になる、という状況が出来することになるでしょう。

希望的観測としては、5月いっぱいは実際に接種能力が50万回/日程度であり、その接種能力上限で1回目の接種を実施していたところ、各自治体も接種体制の改善に日々努力し、6月後半には接種能力が100万回/日に増大している、という状況です。実際にそのように推移する可能性は高いと思います。
現時点で、自治体ごとに接種体制の優劣が大きいように思います。接種会場には、個別接種(クリニック)、集団接種(特設会場)、大規模接種(国や都道府県)があります。市区町村の行政・医師会・薬剤師会の連携がうまくいっているところでは、個別接種を主体として能力を発揮しています。和歌山市、小金井市、豊島区などが優等生でしょうか。そしてこれら優良自治体での実態が明らかになっていますから、これらを参考にしてそれぞれの自治体は体制を改善していくだろうと期待しているところです。
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コロナワクチン~各自治体の体制

2021-05-25 00:09:22 | 歴史・社会
各市区町村単位で、高齢者(65歳以上)のコロナワクチン接種が始まっています。
私は杉並区在住の65歳以上であり、「コロナワクチン接種予約完了」(2021-05-09)で報告したように、5月7日に予約を行い、6月24日接種が決まっていました。
杉並区は集団接種のみであり、当初は区内の5カ所で接種可能だったのですが、5月24日(予約)から1カ所増え、さらに1カ所増える予定です。そこで、すでに予約している6月24日よりも早い予定を取るべく、予約変更を試みました。
予約を変更するためには、まずすでに取得している予約をキャンセルする必要があります。キャンセル後に予約しようとしたら6月24日よりも後の日程しか空いていなかった、となると悲惨です。
そこでまず、東京都の大規模接種を予約することにしました。5月24日の午後にトライしたら、簡単に予約ができました。5月31日です。
次に杉並区の予約をキャンセルし、再度の予約を試みました。あれこれ選択肢を探した結果、新たに設置された会場(我が家に近い)について、6月8日に予約を取ることができました。
一安心です。大規模接種の予約はすぐにキャンセルしました。

ところで、いろいろ調べて見ると、接種会場については市区町村ごとに実にまちまちです。わが杉並区については、当初(昨日予約まで)は集団接種(5カ所)のみでした。一方、小金井市などは、集団接種2カ所のほかに、個別接種45カ所が設けられています。個別接種とは、町のクリニックです。そして、小金井市は高齢者の接種がガンガン進んでいるようです。高齢者接種が予定より早く終わりそうなので『基礎疾患のある人や高齢者施設などの従事者への接種を前倒ししようとしたところ、待ったがかかったという。「東京都の方が市町村で足並みをそろえて欲しいというのです。』(【ワイドショー通信簿】加藤浩次「おかしくないですか」 ワクチン接種スムーズ自治体に都が「待った」(スッキリ) J-CASTテレビウォッチ2021年5月21日)

そこで、杉並区、小金井市、武蔵野市について、接種会場の設置状況について調べて見ました。
《杉並区 人口 584,727人》
 個別接種 3カ所(5/24から予約開始)
 集団接種 5カ所→7カ所

《小金井市 人口 127,623人》
 個別接種 45カ所
 集団接種 2カ所

《武蔵野市 人口 149,454人》
 個別接種 19カ所
 集団接種 3カ所

当初私は、ファイザー製ワクチンは-70℃での保管が必要であり、個別のクリニックへの輸送は困難なのであろう、と考えていました。しかし、小金井市の実例では、45カ所にも分散した個別接種会場(クリニック)でちゃんと接種ができているわけです。
これは考え方を変えなければいけません。

そもそも「ワクチンの打ち手が足りない」というのは、集団接種会場に動員しようとするからです。個別のクリニックで接種するのであれば、普段の診療、普段のインフルエンザワクチン接種と同じように、何ら医療従事者を別途動員することなく、コロナワクチン接種が進められます。
小金井市でできているのですから、これはすべての市区町村で参考にして体制を考えるべきでしょう。

私は、5月いっぱいは(厚労省の怠慢により)コロナ供給量不足が律速であり、6月になったら突然に供給量が急増したが今度は打ち手不足が律速となって思うようにワクチン接種が進まない、と思っていました。
しかし、小金井市の事例を見た今となっては、個別接種の拡大によって打ち手不足は解消し、急速に接種完了率が増大することになりそうです。
各市区町村は、若い人たちへのクーポン券の発送を早めなければなりません。東京都などの都道府県は、「足並みをそろえろ」などといって市区町村の足を引っ張らないよう、お願いします。

またこうなったら、自衛隊による大規模接種もいらなくなりますね。
自衛隊の医官、看護官の方たちには、ワクチン接種ではなく、大阪・兵庫のコロナ医療崩壊現場に災害派遣で行っていただくのが最も有効だと思います。
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韓国の製薬会社がコロナワクチンをライセンス生産

2021-05-24 12:53:02 | 歴史・社会
韓米首脳がワクチン受託生産合意…米大統領府「直接支援するワクチン量は検討後に決定」
5/22(土) 10:00配信 朝鮮日報日本語版
『文在寅(ムン・ジェイン)大統領とジョー・バイデン米大統領が21日(現地時間)、ワシントンD.C.で初の首脳会談を行い、新型コロナワクチン協力強化を話し合ったことが分かった。これとは別に、サムスンバイオロジクスとモデルナ間、SKバイオサイエンスとノババックス間のワクチン受託生産のための了解覚書(MOU)も締結されるものと見られている。
・・・
こうした中、訪米中のジョン・リム・サムスンバイオロジクス代表とアン・ジェヨンSKバイオサイエンス代表がモデルナ本社とノババックス本社を訪問し、ワクチンを韓国国内で生産するためのMOUを締結するものと見られている。サムスンバイオロジクスとモデルナはmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの受託生産、SKバイオサイエンスはノババックスのワクチン技術移転契約延長などに関連しての訪問だ。今回の契約が成立すれば、サムスンバイオロジクスはワクチンを初めて受託生産することになる。モデルナのワクチンは韓国食品医薬品安全処から品目許可を受けており、早ければ8月から生産可能だ。政府関係者は「韓国企業が受託生産と技術移転契約を締結すれば、ワクチンの追加確保も可能だ」と語った。』

このニュース、我が家がとっている朝日、日経には出てきません。ネットニュースでも、上記朝鮮日報以外には見つかりませんでした。

私は前から、「なんで日本の製薬会社はコロナワクチンをライセンス生産しないのだろう」と疑問に思っていました。
コロナ対策の行方(2021-04-11)で記事にしました。

ファイザーはライセンスの意思がないかもしれませんが、モデルナはどうでしょうか。そもそも、日本の製薬会社がmRNAワクチン製造能力を有していないのならどうにもなりません。
今回の上記報道によると、韓国のサムスンバイオロジクスはモデルナのmRNAワクチンを受託生産することです。これが事実とすれば、韓国のサムスンバイオロジクスはmRNAワクチンの生産能力を有しているということです。もし日本の製薬会社がmRNAワクチン製造能力を有していないとしたら、この点で韓国の後れを取っていることになります。
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書き換えられた対中親書

2021-05-23 11:43:27 | 歴史・社会
書き換えられた対中親書
未完の最長政権-安倍政権から菅政権へ
第3部第1回2021年5月21日 朝日新聞朝刊
『一通の首相親書が、日中関係の軌道を大きく変えていった。2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三は当初「対中牽制(けんせい)」を強調したが、徐々に「競争」から「協力」へ軸足を移す。その転機となったのが「習近平(シーチンピン)国家主席に宛てた安倍首相親書の書き換えだった」。複数の政府関係者はそう証言する。
親書は17年5月、中国とのパイプを重視する自民党幹事長の二階俊博が中国が掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する北京での国際会議に参加した際、安倍が習主席宛てに託したものだった。
・・・
中国に渡った親書の内容を知った国家安全保障局長の谷内(やち)正太郎は愕然(がくぜん)とした。自らまとめた原案から大幅に書き換えられていたからだ。安倍に面会を求め、詰め寄った。
・・・
谷内はそれまで、集団的自衛権の行使容認など、安倍の外交・安保戦略の指南役を務め、安倍が創設した、日本の外交・安全保障戦略の司令塔「国家安全保障会議(NSC)」を束ねる初代の国家安全保障局長に抜擢(ばってき)された人物だ。
中国の一帯一路に対抗すべく、谷内らが「自由で開かれたインド太平洋戦略」を練り上げ、安倍は16年8月のアフリカ訪問で、この新戦略を日本外交の方針として世界に発信していた。
二階訪中はその翌年。谷内らが手がけた親書原案は「日本は一帯一路に慎重に対応していく」方針で作成され、安倍、副総理の麻生太郎、官房長官の菅義偉らの了承も取り付けていた。だが、中国側に渡った親書は、その方針と正反対の内容となっていた。』

親書の内容を書き換えたのは、経産省出身の首相秘書官、今井尚哉氏でした。
『今井はのちに月刊誌「文藝春秋」のインタビューで「(原案には)一帯一路についてあまりにも後ろ向きな内容しか書かれていない。こんな恥ずかしい親書を二階幹事長に持たせるわけにはいかないと、相当修正を加えたと認め』ています。
『安倍は「親書書き換え」の翌18年(10月25-26日)に訪中し、日中首脳会談で、両国は「競争」から「協力のパートナー」へ移行すると宣言した。』
『中国はトランプ米政権との関係悪化とは対照的に、対日姿勢を軟化。それは、中国との経済協力を重視する今井にとっても追い風となり、日中の「協力」機運を後押しした。「親書書き換え」を境に今井は、谷地ら「外交・安保」派と首相官邸で対立を深めていく。』

トランプ政権と習近平政権との関係が険悪化していく中、それとは反対に安倍政権が習近平政権に近づいていくことに、私は違和感を持っていました。習近平にしてみれば、トランプ政権と対立する上で味方につけるべく、日本に秋波を送ることは当然の戦略です。日本がそれに乗るか否かが重要な選択のはずです。
当時の安倍対中外交の迷走は、上記のようないきさつがあったのですね。

米トランプ政権のペンス副大統領が演説し、貿易など経済に限らず安全保障分野でも、中国に「断固として立ち向かう」と述べたのは、18年10月4日です。
長谷川幸洋氏は『米副大統領の演説は、実は対中国への「本気の宣戦布告」だった~ついに「米中新冷戦」が始まった』と解説していました。
ペンス副大統領による対中国宣戦布告の直後に、日本は習近平中国に笑顔を送ったわけですね。今から考えると最悪の対応でした。

それから3年、習近平中国は、いよいよ台湾侵攻が懸念されるまでになりました。これに対して、日米豪印4カ国はクアッドで対抗しようとしています。クアッド4首脳が連名で寄稿 「自由で開かれたインド太平洋」の実現を決意表明(2021.3.15 )
今や対中国の共通標語になっている「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、谷地国家安全保障局長が発案し、今井秘書官が葬り去った政策だったのですね。

ところで、習近平中国が台湾獲得を目指し、いずれは日本とも対峙するであろうことは、2014年段階から予測され、私も記事にしていました(飯柴智亮著「2020年日本から米軍はいなくなる」2014-08-31)。2014年以降の推移は、飯柴氏が予測した方向に進んでいます。ただ、2021年になってもまだ米軍は日本を撤退しておらず、そのタイムスケジュールは違っていますが。
飯柴氏の著作では、
(1)「台湾が中国のものになったあと」
(2)「中国空軍が保有するスホーイ系戦闘機が2000機を超えたあと」
(3)「中国海軍が潜水艦発射型弾道ミサイルJL-2のような長距離高性能ミサイルを200発、実戦配備したあと」
(4)「中国が衛星撃墜能力を持ったあと」
(5)「マッハ10の速度をもつ超高速飛翔体WU-14のような新兵器が登場したあと」
のいずれかの以降に、在日米軍が日本から撤退する、というものです。
上記(1)~(5)のいずれも、習近平中国は着々と実現に向けて進んでいるように見えます。

2017年当時、谷地さんはその辺をきちんと把握して日本の対中外交戦略を構築していたのに、それを一時的にもぶち壊したのが今井秘書官であり、安倍総理もそれに乗ってしまっていたようです。
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厚労省の大罪(続き)

2021-05-16 17:40:20 | 歴史・社会
前回、『「ワクチン敗戦」厚労省の大罪?? 2021-05-12』を記事にしました。
前回参照した文藝春秋の記事その他若干の追加をします。

文藝春秋6月号『コロナ「緊急事態列島」~政府はいつまで愚かな対策を繰り返すのか』討論記事中の『「ワクチン供給」厚労省の大罪』から
三浦(瑠璃国際政治学者)『3月6日に共同通信から奇妙な記事が配信されました。「強気ファイザー『首相を出せ』」という見出しで、「河野太郎行政改革担当相が『私が直接、ファイザーと話をする』と乗り出した直後、相手は『交渉には首相を出して欲しい』と逆指名し、一閣僚は相手にしないとの強烈な意思を示した。巨大企業との協議はあっという間に暗礁に乗り上げた」というものです。
これは・・・厚労省の失態を糊塗するためのリーク記事だとしか思えない。』

この逸話はよくわかりませんでした。
別の田原総一朗氏の論述によると、「当初、厚労省はファイザーと直接対話をせず、間に代理人を立てていたので話が進まなかった。河野大臣が直接乗り出して話が進み出した。」ということですので、話が食い違います。実際に、菅総理が電話でファイザーの社長と対話したのはずっと後、菅総理が訪米したときです。

ワクチン接種の現場では、被接種者が持参したクーポン券の18桁の数字をOCRで読み取り、本人確認しています。読み取りがうまくいかない問題が多発しているようです。
なぜ、バーコードやQRコードを用いていないのか。厚労省が「クーポン券へのバーコードやQRコードの記述は任意である」と宣言してしまったので、これらを記載していないクーポン券を発行した自治体が出てしまい、後戻りができないことになった、とのことです。

インド変異株が大問題だというのに、インドからの入国者に対する水際対策が遅々たる歩みです。
先日のテレビ番組で、佐藤正久自民党外交部会長が発言していました。『外交部門から厚労省に「インドからの水際対策を強化しろ」とプッシュするたびに、厚労省は小出しで対策を打ってきた。厚労省は、エビデンスが明確になるまで対策を打とうとしない。』ということです。

本当に、「悪いのは厚労省だ」という声が四方八方から聞こえてきます。
菅総理は、「内閣人事局」という武器を持っており、安倍政権の官房長官の時代からこの武器を使って「忖度官僚」を作ってきています。今までは間違った使い方でしたが、今こそ、その伝家の宝刀を正しく抜きはなって、厚労省の官僚の目を覚まさせるときです。
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「ワクチン敗戦」厚労省の大罪??

2021-05-12 19:35:42 | 歴史・社会
日本は、コロナワクチンの供給が諸外国に比較して決定的に遅れています。

「ワクチン確保は大失敗だった」菅首相は認めている
コロナ対応に厳しさ増す世論、それでも自民党内が動かない理由
2021.5.12 田原 総一朗
の冒頭、
『日本は世界のワクチン競争から完全に取り残されてしまった。先進国の接種が完了した割合(5月8日時点)を比較すると、イスラエルは58.6%、米国は32.6%、英国は24%である一方で、日本は1%弱と大きく後れを取っている。なぜ、こんなことになってしまったのか。』

去年の暮れまでは私も、「ワクチンは副反応が恐ろしい。日本はファクターXのおかげでコロナウイルスもそんなにひどくないし、ワクチンは様子を見るのが良い。」と思っていました。
そのワクチンについて、ファイザー製のワクチンを米国で4万人規模で摂取したところ、90%超の有効性が認められ、副反応も心配するほどではない、という結果が去年の末に発表されました。そして日本での年末年始の第3波です。
ワクチンについて様子見だった私も、「これは今からワクチンに全力投球しなければいけない」と考え方を改めました。
その時点で先進諸国に2ヶ月遅れだったとしたら、緊急ダッシュで少しでも遅れを取り戻すべく、国を挙げて努力する・・・はずでした。しかし、ワクチン供給量確保についてはさらに遅れる一方です。
なぜこんなことになったのか。新聞やテレビニュースを見ている限りは、その原因がわかりません。

文藝春秋6月号に、『コロナ「緊急事態列島」~政府はいつまで愚かな対策を繰り返すのか』という討論記事があります。その中の
『「ワクチン供給」厚労省の大罪』
について見ます。
論者は、大野元裕埼玉県知事、小林慶一郎慶応大教授、三浦瑠璃国際政治学者、宮坂昌之阪大名誉教授、米村滋人東大教授の5人です。
三浦「日本の厚労省ほど管轄当局が、ワクチン接種に後ろ向きで、サボタージュをした例を聞いたことがありません。」
小林『結局、国民の健康よりも役所としての「手続きを踏む」ことを優先しただけではないかと不信感が募りました。つまり、厚労省が世間から責任を問われないようにするために手続きにこだわったのです。』
三浦『いずれにせよ、規制官庁としての自分たちの権限にこだわる権威主義やセクショナリズムのために、「ワクチン敗戦」が起きたのは間違いありません。』

具体的には、厚労省はどのようなサボタージュ、責任逃れがあったのでしょうか。文藝春秋の討論の内容もよく理解できないところがあるのですが、以下に列記します。

宮坂『(米国で、摂取・非摂取それぞれ4万人で感染の有無を比較し、90%超の有効性があった。昨年11月発表。)(副反応については、頻度は100万人に対して1~10人だから、数十万人単位で治験しないと日本人の本当のリスクはわからない。)
それで、とにかく日本でも臨床試験をやろうとなったわけですが、日本はアメリカと比べて患者が圧倒的に少ないから治験をやるにも人が集まらない。結果として行ったのは、わずか160人です。これでは、「治験をやりました」というアリバイ作りをしただけのことで、医学的には何の意味もありません。』
小林『そんな無意味な治験をするために2ヶ月も費やしたわけですよね。だったら、なぜ12月中に承認しなかったのでしょうか。』

ちょっと待ってください。ワクチンの治験であって、コロナ治療薬の治験ではないですよね。治療薬の治験だったら患者の人数を集めるのに苦労するでしょうが、ワクチンの治験は、とにかく一般の大勢の人にワクチン接種し、接種しなかった人との罹患率の比較をすればいいのです。日本人の平均的な陽性率は0.1%程度ですから、摂取・非摂取それぞれ1万人とすれば、非摂取は10人の罹患者が出て、摂取の罹患者が1人であれば、有効性90%であることがわかります。
それなのになぜ160人なのか。厚労省が、最初から万単位の治験をやる気がなかったのでしょうか。
それとも、「(万単位で)治験の希望者を募ったが160人しか希望者が集まらなかった」ということでしょうか。そうだとしたら、治験用のワクチンは万単位で準備していたはずですよね。

上記田原 総一朗論述で、田原氏は以下のように述べています。
政府が米ファイザー製ワクチンを承認する前、厚生労働省が安全性を確認するために同社から数百人分のワクチンを確保しましたが、厚労大臣が官僚たちに手配を任せっぱなしにしていたせいで大幅に遅れていました。ワクチンメーカーと直接交渉を行わず、代理店との交渉しかやっていなかったのです。調達した後も、副作用の有無を検証してから承認するまでに1カ月以上かかってしまったのです。

厚労省は最初から数百人規模でしかやる気がなかったのでしょう。

本当であれば、アメリカでのワクチン有効性の報告が出た去年末の段階で、日本でも万以上の人数でワクチン治験すべく、それだけの量のワクチン供給を「国として」ファイザーに交渉すべきでした。
ところが厚労省にはその気が全くなく、数百人分の供給があれば十分、と考えてしまったのです。それも、しぶしぶ、ゆっくりゆっくり、でした。

三浦『(「1本のバイアルからとるのは5回分か6回分か」という問題)
あの問題の背景には、ファイザー側と「6回分」で合意していたのに、出荷の際に「5回分」と記した説明書を添付することに厚労省の一部の部局が拘ったという問題があったのです。
ファイザーは、日本でも一月初旬から摂取が開始できるように準備していた。それなのに契約も遅れ、挙げ句の果てに、先進国なのに6回分取れる場合でもワクチンをムダにすると公言するのか、と。そもそも日本は世界的に見て感染者がそんなに多くないのですから、見え方はさらに良くない。
実際に契約書の書き直しとなると、当初の予定より数カ月から半年はずれるわけで、厚労省が突っ張れば大失態となる寸前でした。』
上記三浦氏が説明した内容はよくわからないのですが、厚労省が変なところで拘らなければ、もっと早く、今年の初めからワクチン接種が可能だったのかも知れませんね。

ワクチンに関する日本の司法の影響
米村『日本は、ワクチンの副反応に対して司法判断が非常に厳しい国で、訴訟になれば、安全性が非常に高水準で要求されるため、厚労省は常に及び腰になってしまうのです。』
司法は法律に基づいて判断しているだけですから、「司法が厳しすぎる」のであれば、「法律が厳しすぎる」ということですから、立法によって法律を最適化すれば良い話です。また、薬害が出て国に損害賠償が求められたら、司法判断に従って国が(国民の税金で)賠償すればいい話です。何も厚労省が及び腰になる必要はありません。

結局のところ、「厚労省が具体的にどのような対応を取った結果、今回のワクチン敗戦に至ったのか」を明確にはつかみ得ませんでした。

上記田原 総一朗論述の内容をさらにかいつまみます。
2020年6月、自民党議員で党の新型コロナウイルス感染症対策本部長代理を務める武見敬三氏と、同じく自民党の元厚労相である塩崎恭久氏が田原氏のところにやってきて「日本の今の感染症に関する法律はずっと前のもので、矛盾だらけだ。危機時には総理大臣が何の権限も持たない。抜本的な改革が必要だ」と言いましたが、改革に対して厚労省が全面的に反対していて、進められませんでした。他の自民党の議員たちと厚労省との関係が深過ぎて難しい。
2020年、新型コロナウイルスの感染が広がった当時、安倍晋三内閣の厚労相は加藤勝信氏でしたが、安倍首相は、当時経済再生担当相だった西村康稔氏を新型コロナ担当相に任命しました。安倍首相に聞くと、「加藤氏は厚労省の言いなりで、何も動くことができない。だから、厚労省に意見ができる西村氏を立てた」と言ったそうです。しかし、結局は西村氏も厚労省に取り込まれてしまい、今度は菅首相がワクチン担当相として河野太郎氏を任命しましたた。ここで、ようやくワクチンの確保が進み始めたのです。

右も左も、厚労省の悪口ばかりですね。
しかし新聞とテレビニュース番組では、このよう厚労省の悪口は聞こえてきません。なぜでしょうか。
文藝春秋の討論で発言していた小林慶一郎教授は、テレビニュース番組でちょくちょく発言していますが、今回のような厚労省の悪口を聞いたことはありませんでした。
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コロナワクチン接種予約完了

2021-05-09 11:16:18 | Weblog
私は杉並区在住の72歳、妻は70歳です。
杉並区でのコロナワクチン接種の計画は、「新型コロナワクチン接種について」にあるように、

区分 クーポン券発送日 予約受付開始日時 接種開始日
75歳以上  4月23日   4月30日     5月17日
65歳~74歳 5月6日  封筒が届き次第    5月17日
65歳未満   未定    未定       未定

ということです。そして、
「65~74歳の方向けのクーポン券は、5月6日(木曜日)に発送しました。」
とあり、我が家には7日金曜にクーポン券が郵送で届きました。
同日に杉並区在住の65~74歳の全員に届いているので、予約サイトは大変な混雑が予想されました。ネットに繋がらないか、繋がったとしても重々であろうと思っていました。それでも念のためと思って、杉並区のサイト内の「コロナワクチン接種予約専用サイト(外部リンク)」から、さらに「ワクチン接種予約サイトへ進む」に行ってみました。予想に反して、ネットはサクサク進みます。
サイトで、私のIDと暫定パスワードを入力すると、すぐにパスワード変更画面、そして、最寄りの接種会場と予約可能な日時が表示された画面に移りました。
日時の選択画面の1番目と2番目を確認したら、6月25日以降の多くの時間帯が「選択可能」として並んでいます。
6月26日が土曜なので、さっそくその日の昼時間に予約を入れました。すぐに妻の予約に取りかかり、同じ日時で予約を完了しました。

あまりに簡単に予約が完了してしまったので、狐につままれたような気分です。
我が家は夫婦ともに平日は勤務があるので、土曜に予約できて好都合でした。土曜がまだ予約可能だった、ということは意外でしたが、現在は65歳以上が対象であり、ほとんどの方はリタイアされているから平日でも問題ない、ということだったのでしょうか。

現在の大阪・神戸は、重症者が入院することもできずにどんどん亡くなっています。この惨状を聞いていると、「明日は東京」と予想されるので、今となっては6月26日のワクチン接種が待ち望まれます。
摂取開始日が5月17日ですから、5月17日から6月25日までについては、75歳以上の人の予約で埋まっている、ということでしょうか。それにしても、1ヶ月以上にわたって予約の受付が可能ということは、それだけのワクチンの供給に目途が立っているということでしょう。その点はホッとしますが、直前になって「ワクチン供給ができないのでキャンセル」ということのないように念願します。
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コロナワクチン特許の一時放棄

2021-05-07 18:11:14 | 知的財産権
昨日あたりから、「コロナワクチンの特許の一時放棄」が新聞紙上を賑わしています。

ワクチン特許放棄 米が支持~供給増へWTOで交渉
2021年5月6日 23:30 (2021年5月7日 5:09更新)  日経新聞
『新型コロナウイルスワクチンの供給拡大をめざす国際交渉が世界貿易機関(WTO)で本格化する。バイデン米政権は5日、従来の慎重姿勢から転じ、特許権の一時放棄を支持すると表明した。ただ、ワクチンの製造では品質管理や製造技術もノウハウの固まりとされ、量産への課題は多い。
米国が支持したのは、WTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」で義務付けられた特許権の保護を、ワクチンに限って一時適用除外する案だ。インドや南アフリカがワクチンメーカーを抱える先進国に受け入れを求めていた。
・・・
01年にドーハで開かれたWTO閣僚会議では国家の緊急時には特許権者の許可がなくても特許技術を使える「強制実施権」を認めた。・・・
強制実施権は手続きが複雑なのがネックだ。インドや南アはより迅速にコロナワクチンを供給するには特許の放棄が必要だと主張していた。』

独、特許放棄に反対の構え
コロナワクチン EU首脳が議論へ
2021年5月7日 14:30 日経新聞
『欧州連合(EU)は7日から始まる首脳会議で、新型コロナウイルスのワクチン供給拡大に向けて、特許権を一時的に放棄する考え方を支持するかどうかを討議する。バイデン米政権が前向きな姿勢を示したためだが、ドイツのメルケル政権は反対する構えだ。特許権を持つ製薬会社が本拠地を置く国・地域での議論が本格化する。
・・・
ドイツメディアによると、独政府の報道官は・・・特許権の一時放棄に否定的な考えを示した。ワクチンの普及を妨げているのは生産能力や品質管理の問題であって、知的財産の保護が原因ではないというのがドイツ政府の主張だ。
《モデル名も反論「供給増えない」》
米バイオ製薬モデルナの・・CEOは、「特許を放棄しても供給量は増えない」と反論した。』

例えばインドや南アの製薬メーカーがコロナワクチンを生産しようとしたとき、「特許技術の使用さえ認められれば生産が可能」という状況にあるか否かが問題になります。

後発メーカーがコロナワクチンを自社で製造しようとしたとき、何が必要か。普通は、特許技術の使用許諾だけで製造が可能になることは少ないでしょう。特許明細書に開示された技術以外に、さまざまなノウハウ(普通は秘密にされる)の提供を受けない限り、高品質のワクチンを大量生産できるとは思えません。
独政府の報道官もモデルナのCEOも、「特許を放棄しても供給量は増えない」と指摘しています。「特許技術以外のノウハウの提供を受けなければ供給量は増えない」との意味と思われます。
そもそも、通常は特許出願から1年6ヶ月経たないと発明の内容は公開されません。現時点で、「権利を放棄して欲しい特許」の内容は開示されているのでしょうか。

それはさておき、「特許の内容は開示されており、その特許技術の使用許諾さえ受ければ、後発メーカーによる高品質ワクチンの大量生産が可能である」という状況であると仮定して、以下議論します。

世界のWTO加盟国は、特許に関してTRIPs協定遵守義務を負っています。上記第1の記事にも登場しています。そして、TRIPs協定には当初から、「強制実施権」の規定が盛り込まれているのです。
TRIPs協定では「第31条 特許権者の許諾を得ていない他の使用」として、「加盟国の国内法令により,特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)を認める場合には,次の規定を尊重する。」と規定し、
「(b) (「他の使用」について認められる要件を記述したあと)加盟国は,国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合・・・には,そのような要件を免除することができる。」
としているのです。
この条文を読む限り、今回のようなコロナパンデミックで、各国の法令が準備されていさえすれば、たとえ特許権者の許諾が得られなくても、当該国の判断で特許技術の使用が可能になります。

日本については、特許法93条に規定されています。
「(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。」

インドや南アについても、上記日本特許法93条のような法令が準備されているのであれば、後発メーカーは自国の政府に訴えることにより、自国内で特許発明の実施が可能になるはずです。

さて、1994年に発効したTRIPs協定ですでに上記規定は盛り込まれていました。そうすると、上記第1の記事の『01年にドーハで開かれたWTO閣僚会議では国家の緊急時には特許権者の許可がなくても特許技術を使える「強制実施権」を認めた。』は何を指すのでしょうか。その点は謎です。

また、インドや南アが、自国の法令に基づいた「強制実施権」を取得するのではなく、ワクチンメーカーに「特許の一時的放棄」を要請しているわけですが、なぜ「強制実施権」ではないのか。その点も追々明らかになっていくのでしょう。
また、「特許の実施権さえ得られれば、ノウハウの開示は必要ない」ということなのかどうかも今後の課題です。
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