弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

陸上自衛隊は戦えない軍隊だった

2022-02-28 09:22:30 | 趣味・読書
 自衛隊は市街戦を戦えるか (新潮新書)

この本を読んでびっくりしたこと、それは、少なくとも2010年頃までは(ひょっとすると今でも)、“陸上自衛隊は戦闘で敵に勝利できるような訓練をしてこなかった”、ということです。

2002年頃、九州の第8師団が市街地戦闘訓練を行うための簡易市街地訓練場の構築を開始しました。著者はその頃第8師団に所属していました。
当時、陸上自衛隊ではほとんど知られていなかったダットサイトを米国が使用しているとの情報が入ってきました。ダットサイトは銃に装着する照準器の一種で、中に見える赤い点を目標に併せてトリガーを引くだけで弾を標的に命中させられるという便利な道具です。
私は、ダットサイト(ドットサイト)の存在を今回初めて知りました。ウィキの照準器の中に説明があります。
ダットサイトを供給していたのは、オペレーション・トレーニング・サービス(OTS)という民間企業でした。官公庁向けに、戦闘のための訓練用品や特殊装備品の販売を行っています。同社の畠山富士男氏から情報が得られました。
2003年、著者は40連隊の連隊長となり、小倉駐屯地に着任しました。まだ銃にダットサイトは使用していませんでした。
畠山氏が言うには、性能の高いスコープの能力を紹介したとき、隊員は「これが欲しい」との反応ではなく、「うちの○○2曹ならこれがなくても同じように当てられるから問題ない」と言ったそうです。民間から提供される道具に対して強い拒否感がありました。これはどの部隊でも共通していたと言います。
陸上自衛隊には、「他を知ろうとしない文化」「与えられたものだけで戦闘をするものだ」という文化が刷り込まれていました。

隊員の側から、実戦的な訓練やスキルアップを狙った訓練を提案すると、幹部や上司から「常識から外れている」「教範にないことはやってはならない」と止められてしまい、結局隊員はモチベーションを失ってしまいました。

40連隊では隊員が自発的に、民間のガン・インストラクターであるアメリカ在住のナガタ・イチロー氏から訓練を受けていました。
当時、市街地訓練教育を始めた隊員であっても、銃を取り扱う際に銃口が人に向いても何も感じていませんでした。ナガタ氏は強い口調でこれを非難しました。著者たちは「この銃は弾倉がついていないから弾は出ません」と反論しますが、「弾倉がついていなくても薬室に弾が込められていることがあるだろう」と簡単に再反論されてしまいます。当時の陸上自衛隊はこんなレベルでした。
ナガタ氏は強い口調で、「銃口を人に向けてはならない。米国では、軍、警察、一般人でも銃口は人に向けません。基本中の基本です」と指摘ましました。
少なくとも2003年当時の陸上自衛隊は、銃の取り扱いの基本を身につけていなかったのです。私は、村上春樹著「1Q84」3巻89ページ(文庫)の記載でこの基本を知っていました。青豆に拳銃を手渡したタマルは、「あんたは二つの重大な間違いを犯した」と指摘しました。「・・・もうひとつは受け取ってから、俺の方にほんの一瞬だが銃口を向けたことだ。どちらも絶対にやってはならないことだ。」
さて、2002年当時の陸上自衛隊が銃の取り扱いの基本をマスターしていなかったことはわかりました。ところで、日本の警察はどうなのでしょうか。

陸上自衛隊で実戦的な訓練が行われずにきた理由は何でしょうか。
自衛隊は、「実戦で戦うことはない」という情勢認識がそもそもの阻害要因となっています。このような情勢認識のもとでは、心の奥では「実戦の場で戦い抜く能力を無理して身につける必要はない」との気持ちが生じてしまいます。
そして、2年ごとで交代する部隊長が、とりあえず喜んで満足して、上司へ報告できるような訓練を行うことに重点を置くようになるのです。

1980年代、著者は情報小隊長として勤務していました。
訓練時、敵との距離が近くなったので、「敵に見つからない行動をとるように」と小隊へ指示を出そうとすると、ベテランの陸曹がこんなことを言ってきました。
「それでは情報入手に時間がかかってしまい、連隊本部から怒られます。道路沿いをバンバン歩かせていった方がいいです」
「死んでも2時間で復活ですから」「それにバンバン撃ってくる場所に敵がいることが分かるし、触雷によって地雷の存在も知ることができるから、それでよい」
いやはや、驚くばかりです。

孫がわが家に遊びに来たとき、ニンテンドースイッチを使って戦闘ゲームをやっています。見ていると、本人が演じている役がしょっちゅう戦死し、孫は「あ、死んだ」とつぶやきます。しかしすぐに復活します。
また、敵も味方も、身を隠すということをしません。実戦では、敵の姿が視認できることはほんとどないにもかかわらずです。戦場で生き残るためには敵に姿を見せないことが鉄則です。ゲームでは死んでもすぐに復活するから身を隠す必要を感じないのでしょう。
こんど孫のそのゲームを見たら、「陸上自衛隊というよ」とからかうことにします。

陸上自衛隊では、「陣地攻撃訓練」が重視されていました。この訓練では、最後に敵陣地に突撃して陣地を確保します。
富士トレーニングセンター(FTC)は2000年に編成されました。ここでは、訓練のために訪れた全国の普通科中隊と、センターに所属する敵部隊とが戦闘訓練を行います。FTCではバトラーが使用されていました。発射されたビームが命中すると敵に損耗を与えたことが分かります。
シナリオ通りワンパターンの突撃訓練を行ってきた部隊は、当然ながら敵陣地に到達する前に全滅していまいます。

著者が連隊長のとき、素早い照準を可能にするダットサイトやライト、スコープ、サプレッサー(銃声や閃光を軽減する装置)などの個人の装具類を小銃につけることは官給品以外、許されない環境でした。

ここで、
飯柴智亮さんに一体何が?! 2008-07-24
米国陸軍飯柴大尉のその後 2008-08-10
を思い出しました。この事件について、飯柴さんの釈明として、飯柴智亮・元米国陸軍大尉の陸自への兵器密輸出の声明文を読みました。それによると・・・
2005年秋、飯柴氏が所属する大隊が、渡米して近接戦闘訓練を行う陸上自衛隊所属の富士普通科教導連隊に訓練を施すこととなり、飯柴氏が連絡将校を務めました。
部隊が日本に帰国後も連絡を取り合うようになり、のちに電話による連絡がありました。『陸自内に新設された特殊作戦群が、新たに購入した米国コルト社製M4カービン小銃に取り付ける光学サイトの購入を検討、結果米国製EOTech 553が選ばれた。』
『EOTech 553六十個を購入して発送してくれないか。』
この要請に応じて日本宛に発送したのですが、輸出許可が必要であることを後で知りました。
今回の著書で明らかになった2000年代当時の陸上自衛隊の実情からすると、実戦で本当に必要な小道具を購入するに際し、正規でないルートで購入しなければならない事情が陸自側に存在していた可能性も否定できません。

2015年頃からは、世界の部隊が当たり前のように実際の戦闘で使用しているものを手にすることができるようになっています。

著者が連隊長のとき、民間のサバイバルゲーム(サバゲー)施設で訓練をしていました。サバゲーでは、自衛隊の部隊がサバゲーの対向部隊と対戦します。
ガン・インストラクターのトモ長谷川氏から紹介され、対向部隊専門家と話をしました。対向部隊をやっていると、対戦する部隊の強さがわかります。「普通」「強い」「怖いレベル」に分類することができ、怖いレベルの部隊ならば、戦闘が始まった瞬間に彼ら対向部隊を数発で仕留めてしまう」といいます。著者の連隊の中で、Iという陸曹のチームが「怖いレベル」に到達していたのです。

著者が連隊長のとき、電動ガンを使用した訓練も取り入れました。電動ガンではBB弾というプラスチックの丸い弾を使用して撃ち合います。
陸上自衛隊全体でも、訓練に電動ガンが導入され始めました。しかし、ちょうどその時期(2006年頃)に部隊内の銃が紛失する事案が発生し、その影響で、私的に購入した電動ガンは部隊へ持ち込むことが禁止されるという動きが全国的に広がったのです。陸上自衛隊での電動ガンの導入は激減しました。電動ガンによる訓練のメリットは計り知れないにもかかわらず、です。

著者が40連隊長を離任した後、後任の連隊長は昔の訓練パターンに戻してしまいました。

さて、2000年代までの陸上自衛隊がいかに実戦で勝てない軍隊であったかが、この著書で明らかになりました。それでは現在はどうでしょうか。
2008年に「飯柴智亮著「2020年日本から米軍はいなくなる」 2014-08-31」で書いたように、飯柴氏は2008年、「陸自で本当に使えそうなのは、宇都宮の中央即応連隊、九州の水陸両用団の基幹連隊になる西部方面普通科連隊、習志野第1空挺団、松本の山岳レンジャーであり、あとは要らない。
日本に戦車は1台も要らない。」と述べていました。
おそらくここで「使えそう」と言われた部隊は、ちゃんと「実戦で勝てるための訓練」がなされていると信じたいです。その他の一般「普通科連隊」では、まだダメかもしれませんが。
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エルピーダの教訓

2022-02-27 09:16:44 | 歴史・社会
昨日のブログ記事 「日本の半導体産業 2022-02-26」では、半導体を4つに分類して日本での現状を議論しました。
1.DRAMメモリー
2.フラッシュメモリー
3.ロジック
4.撮像素子
日本を生産拠点とする半導体メーカーとしては、DRAMの米マイクロン(旧エルピーダ)、フラッシュメモリーのキオクシア、撮像素子のソニー、ロジックのルネサスの4社に集約された形です。
25日の日経新聞に、エルピーダが経営破綻した状況と、「もし破綻していなかったら・・・」という下記記事が載っていました。

エルピーダ破綻、巨額投資で官民協力に綻び 特需逃す
エルピーダの教訓 破綻から10年(上)
2022年2月25日 日経新聞
『2012年2月27日、電機各社の半導体部門が合流し生まれたエルピーダメモリが会社更生法を申請した。1980~90年代に世界を席巻した半導体メモリー、DRAMの担い手は米大手マイクロン・テクノロジーの傘下に入る。経営破綻から10年がたった現在、日本の官民は半導体産業の立て直しに動き始めた。エルピーダの破綻から半導体再興への教訓を探る。』
21年、マイクロンは、今後10年で研究開発と生産能力の拡大に約17兆円を投じる計画を表明しました。中核の一つは旧エルピーダの拠点や人材です。
『「生き残っていれば、世界と戦えるメモリーメーカーが日本に生まれていただろう」。エルピーダを破綻させた社長の坂本幸雄は嘆息する。』
『エルピーダの破綻は、官民が巨額投資を伴う長期戦に耐えられなくなった構図だ。』
リーマン危機時にエルピーダは、公的資金、日本政策投資銀行、大手銀行による1100億円の協調融資を受けました。その返済期限間近、資本増強を迫られた坂本氏は、マイクロンとの提携を模索しますが、同社のCEOの突然の事故死で頓挫し、会社更生法に追い込まれました。
当時、スマートフォン需要の拡大期にあたり、DRAM受注が膨らみつつあるタイミングでした。(破綻してマイクロンの傘下に入った後の)13年には安定して黒字を確保できるようになっていました。
『「DRAMの技術や最終製品の動向を、当局や金融機関が十分に捉えられていなかった。」東京理科大若林秀樹教授』
エルピーダと対照的なのは韓国のSKハイニックスです。前身のハイニックスは経営難に陥りながら、金融機関の支援を受けて再建を進めました。これを先導したのは韓国政府でした。
--新聞記事以上----------------
エルピーダと社長の坂本幸雄氏については、私もブログ記事で取り上げてきました。

NHKプロフェッショナル・坂本幸雄 2007-05-13
今から15年前の2007年5月8日、NHKのシリーズ「プロフェッショナル」で得た知識は以下の通りです。
社長・坂本幸雄 59歳
・高校球児だったが、高三のときに自らのエラーで敗退
・野球指導者を目指して体育大学に進むが、教員試験に失敗
・つてで外資系半導体メーカー(日本TI?)に就職するが、倉庫係に配属
・仕事を早く終わろうとして、倉庫業務を工夫する
・倉庫での仕事を外人上司に認められ、社の企画中枢に抜擢される
・米国本社に抜擢される
・命じられた仕事は必ずやり遂げようとし、ストレスのため胃潰瘍となって胃の2/3を切除する
・以降、「できることをやる」という方針に切り替える
・いつくもの会社を建て直したあと、経営不振のエルピーダメモリ社長となり、短期間で黒字化を達成し、今も会社を躍進させている。
エルピーダ誕生前、日立とNECの合計シェアは16%程度であったものが、2003年に坂本氏が入ったとき、シェアは2%まで落ちていました。
番組によると、エルピーダは台湾メーカーと合弁で台湾に最新工場を建設しています。70nmルールという(2007年当時の)最先端の微細技術を使うそうです。これからもつまずくことなく、エルピーダが躍進することを祈念します。
--(以上ブログ記事)---------
今回の新聞記事では、「DRAMで一時2割近いシェアを確保したエルピーダ」とあります。坂本氏の時代にそこまでシェアを増大したのですね。

エルピーダが会社更生法適用申請 2012-02-28
2007年から2012年までのこの5年間は、エルピーダメモリにとって茨の道だったようです。
2012年当時はエルピーダの経営不振が言われる中、資本提携先として探っていたマイクロンのCEOが突然墜落死(2012.2.4産経新聞)したことが影響したかも知れません。また経産省の元審議官でエネ庁の次長がエルピーダ株のインサイダー取引容疑で逮捕されたことも、経産省の働きを鈍らせたという評論があります。
会社更生法を申請したことについて、坂本社長は「製品価格の下落や円高などが原因だ」と説明しました。
エルピーダメモリの破綻は(アベノミクス前までの)日銀による円高放置の最たる犠牲者になった、ということになります。
あと半年早く、日銀によるインフレ目標のアナウンスと10兆円の追加緩和を行っていたら、はたしてエルピーダはどのような道を辿ったのでしょうか。
--(以上ブログ記事)---------

上記ブログ記事で「日銀によるインフレ目標のアナウンスと10兆円の追加緩和」と述べたのは、下記記事において私が命名した「白川相場」の話ですね。
“2011年円高”と“白川相場” 2013-02-21
2013年までのドル円5年間の推移を見ると以下のようになります。下の2つの図の横軸は2008年以降の5年間を示し、上は縦軸が円/ドル、下は縦軸が日経平均株価です。

《白川相場》
冒頭の図から明らかなように、2012年2~3月に円安と株高のピークがあります。これを私は“白川相場”と名付けています。このとき私は、この現象を2件のブログ記事としてアップしていました。
日銀の10兆円金融緩和で為替レートは?」2012-02-17
『日銀は14日の金融政策決定会合で、デフレ脱却に向けた中長期的な物価目標について、「当面は消費者物価の前年比上昇率で1%をめどとする」ことを決めた。目標の物価水準を明示し、事実上のインフレ目標を導入。長期国債買い入れのため、基金も10兆円増額し、65兆円に拡大する追加金融緩和を全員一致で決定した。追加緩和は昨年10月末以来、約3カ月半ぶり。』産経新聞 2月15日(水)7時55分配信

民間事故調報告書・日銀と円安の進行」2012-03-14
(2012年)『円安の進行が止まりません。本日3月14日22時にはとうとう83.5円/ドルを突破しました。
すべては2012年2月14日、日銀が金融政策決定会合で、デフレ脱却に向けた中長期的な物価目標について、「当面は消費者物価の前年比上昇率で1%をめど(goal)とする」ことを決めた。目標の物価水準を明示し、事実上のインフレ目標を導入。長期国債買い入れのため、基金も10兆円増額し、65兆円に拡大する追加金融緩和を全員一致で決定した」ことがスタートでした。
10兆円の追加緩和では1~2円/ドルの円安?と予測しましたが、その予測をはるかに超える円安です。印象としては、世界の市場が「日銀は態度を改めた。デフレ脱却に向けて本気で金融緩和してくる」と認識したのではないでしょうか。そのため、当面の10兆円緩和効果を超える円安が誘導されているかのようです。
・・・』
しかし、白川相場での円安と株高は長続きしませんでした。円相場は、3月なかばに83円台後半のピークを記録すると、その後下がり始め、5月には結局70円台に戻ってしまったのです。日経平均株価も、3月に1万円を超えましたが、4月からは下がり始め、5月には8000円台まで落ち込んでしまいました。
なぜ白川相場は長続きしなかったのか。
最近の解説では、白川総裁がこのとき、「量的緩和はデフレ脱却に効かない」とことあるごとに発言していたのだそうです。世界の市場は、2月の段階では「日銀は本気だ」と考えて期待したのに対し、その後、「日銀はやる気がない」と評価が反転し、それが白川相場の終焉に影響したと思われます。
--以上ブログ記事--------------
円安と株高が本格的に進行するのは、2013年初頭のアベノミクスのスタートからでした。

湯之上隆著「日本型モノづくりの敗北」 2013-12-04
2013年の上記ブログ記事では、湯之上さんが把握した、エルピーダの内情について記載しました。

冒頭の新聞記事と同じ本年2月25日、日経朝刊には下記の記事も掲載されていました。
半導体論文、日本が低迷 国際学会で採択数5位 企業発少なく、米中に後れ
2022/2/25付日本経済新聞 朝刊
『半導体関連の国際学会で日本の競争力低下が鮮明になっている。2月20~28日の期間でオンライン開催中の国際固体素子回路会議(ISSCC)では、採択論文に占める日本勢のシェアが3.5%と、前年の6.2%から一段と小さくなった。先端研究の出遅れは産業競争力にも影響を及ぼしかねない。』
『22年は企業からの採択はキャノンとルネサスエレクトロニクスの1件ずつにとどまった。韓国サムスン電子や米インテル、米IBMなどが1社で多数の論文差請託を受けていのとは対照的だ。』
記事に掲載されたグラフは、2015年から22年までのISSCCの国・地域別採択論文数の推移を示します。2015年に日本は30件弱の件数でしたが、22年は10件弱まで減っています。22年でアメリカは70件前後、韓国は40件、中国は30件、台湾は15件程度でした。
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日本の半導体産業

2022-02-26 12:07:05 | 歴史・社会
半導体を4つに分類するとしたら以下のようでしょうか。
1.DRAMメモリー
2.フラッシュメモリー
3.ロジック
4.撮像素子

日本が半導体王国だった頃、そのほとんどはDRAMでした。日本の電機大手の大部分が半導体を製造しており、その主役はDRAMでした。
その日本DRAMが衰退した後、各社のDRAM部門が切り離され、集約され、エルピーダメモリとなりました。そのエルピーダが会社更生法適用申請をしたのが2012年です(このブログ記事)。社長の坂本幸雄氏についてはこちらに書きました。現在は、外資系企業マイクロンメモリジャパンとして日本で生産を続けています。
フラッシュメモリーは、東芝の技術者だった舛岡富士雄氏が発明したもので、現在は東芝から切り離されたキオクシアが製造しています。サムスンに次ぐ世界第2位の生産量です。
撮像素子は、現在はソニーが世界で主導しています。
ロジックは、日本ではルネサスエレクトロニクス(以下「ルネサス」)が生産しています。ルネサスは、三菱・日立・NECの3社のマイコン部門を統合してできた会社です。

以上のように、日本を生産拠点とする半導体メーカーとしては、DRAMの旧エルピーダ、フラッシュメモリーのキオクシア、撮像素子のソニー、ロジックのルネサスの4社に集約された形です。

最近、台湾のTSMCが話題になります。
(1)最先端の5nm~3nmの製品は、世界でもTSMCのみが量産できています。
(2)TSMCが熊本に20nmクラスの半導体工場を新設し、それに日本政府が4千億円の補助をします。
(3)TSMCがアメリカに最先端(5nmクラス)の半導体工場を新設し、米政府が兆単位の補助をします。
(4)アメリカが設けた規制により、台湾のTSMCから中国のファーウェイへの輸出が不可能になり、ファーウェイのスマホは壊滅的な打撃を受けました。
これらはいずれも、半導体としてはロジックの世界です。

同じロジックで、日本にはルネサスがあります。ルネサスはどのような技術レベルなのでしょうか。
ルネサスは、上述のように三菱・日立・NECの3社のマイコン部門を統合してできた会社です。日本国内に前工程を担当する6工場(那珂工場、川尻工場、西条工場、高崎工場、滋賀工場、山口工場)と、後工程を担当する3工場(米沢工場、大分工場、錦工場)を有しています。いやはや、懐かしいです。私が約30年前、シリコンウェーハメーカーの技術者だった頃、技術営業で訪問した先が多く含まれています。那珂:日立、西条:三菱、山口・米沢:NEC、などです。これらの古い工場を受け継いで、現在のルネサスが成立しているのですね。それにしても中小の拠点が散在しすぎています。
そのルネサス、経営危機に何回も見舞われたようです。ルネサスは、ロジックの生産規模としては世界第3位を誇るものの、主力である車載用半導体では、買い主である自動車メーカーに買いたたかれ、収益性が悪かったようです。生産する工場も古そうですしね。
その危機を乗り切ったのは、ものすごいリストラを行うと共に、「40nmよりも微細の半導体は自前では開発・製造しない」という「ファブレス」の選択によるものでした。そして生産は台湾のTSMCに委託していました。

ルネサスが低収益構造になっていた理由について、このブログの
湯之上隆著「日本型モノづくりの敗北」 2013-12-04
で記事にしていました。
『ルネサスは、マイコンの世界シェア1位(30%)、車載用マイコンECUに限れば世界シェアの42%を占めるマイコンメーカーであるが、その収益性は恐ろしく悪い。クルマメーカーの下の電装部品メーカー(1次下請け)、その下の2次下請け、さらにその下に半導体メーカーとしてのルネサスが位置づけられている。ルネサスは、価格は上から決められ、一方で「不良ゼロ」の製品を要求されている。
多くの2次下請けメーカーが半導体チップ製造の下請けとしてルネサスを選び、那珂工場で製造されていた。そのことをトヨタは知らなかった。この那珂工場が東日本大震災で被災し、ECUの製造が完全に停止した。』

今回、TSMCが熊本に20nmクラスのロジック半導体新工場を建設します。最先端からはほど遠い20nmクラスの生産です。現在の車載用の主力がこのクラスであることから選ばれたのでしょう。車載用は、最先端であるよりも低価格であることが優先です。
一方、国内唯一のロジック半導体メーカーであるルネサスが20nmクラスを製造できないのは、上述のような事情によるのです。

ロジック半導体の世界で、日本はどのような方向に進むべきでしょうか。
昨年来、半導体の供給不足で、自動車をはじめとして多くの工業製品が大幅な減産を強いられました。主にロジック半導体の不足に起因します。このようなロジック半導体不足の発生を起こさないような対応が必要です。
TSMC熊本工場はロジック半導体不足解消の役には立つでしょう。ただし数年先です。
半導体不足解消のみのために、最先端でもない工場新設に日本人の税金を4千億円も補助する意味はあるでしょうか。意味があるとすれば、中国による台湾武力統一の結果としてTSMC台湾工場が中国の手に渡ったときのための保険、ということのみが考えられます。
台湾の中国武力統一後、自由世界においては、TSMCがアメリカに新設する最先端工場、韓国のサムスンが製造する最先端半導体、TSMCが日本に新設する20nmクラス工場、などが主力生産拠点となるのでしょうか。
「TSMCの日本進出で、日本の半導体技術が進歩する」ということはほとんど期待できないと思います。TSMCが日本進出後に日本の同業者に技術を伝授するはずがありません。唯一、ソニーが共同出資しているので、ソニーの技術者には技術が伝わるかも知れませんが。それでも、ソニーがルネサスに教えることは守秘義務で禁じられるはずです。
日本の半導体材料メーカー、半導体装置メーカーが発展する、ということもないでしょう。日本の半導体材料メーカー、半導体装置メーカーにとって、売り先が日本であろうと外国であろうと全く関係がないからです。

私は、ロジック半導体の唯一の国産メーカーであるルネサスを、今後どのように育てるのかあるいは育てないのか、ということが最重要課題と思います。
ルネサスは、買い主から買いたたかれる中、「40nmよりも微細の半導体は自前では開発・製造しない」という経営選択によって生き残ってきました。結果として、日本は最先端の5nmクラスはおろか、20nmクラスですら製造技術と工場を保有しない国となってしまいました。「日本も20nm以下クラスの生産能力を保持すべきだ」という必要があるのであれば、TSMCを税金投入で日本に誘致することではなく、税金投入でルネサスの技術力向上を目指すべきです。買い主である自動車メーカーも、製品を買いたたくのではなく、ルネサスを育成する姿勢を持ってほしいです。
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ぼうこうがん新薬・地銀システムクラウド化・大学入試共通テスト・磁気テープ活用・医学部女子合格率

2022-02-23 18:16:38 | 歴史・社会
わが家では、朝日新聞と日経新聞を購読しています。
2月22日の両紙の朝刊に、面白い記事が多々掲載されていたので、それらを忘れないため、備忘録としてここに記録しておきます。

進行ぼうこうがんに新薬 従来薬効かない患者に効果
2022/2/22付日本経済新聞
『尿の通り道などにできる尿路上皮がんの治療に、期待の新薬が登場した。アステラス製薬の「パドセブ」は、抗体と抗がん剤を結合させた新タイプの薬で、従来の抗がん剤や免疫薬が効かない進行した患者に使える。早期のがんや治療の初期段階から使うことを目指した臨床試験(治験)も日本や海外で進行中だ。治療法が限られていた尿路上皮がん治療の「主力薬」となる可能性がある。』
『尿路上皮がんは腎盂や尿管、ぼうこうや尿道にできるがんだ。』
『そこで登場したのが、アステラス製薬と米製薬のシージェンが共同開発したパドセブだ。日本で21年11月に発売され、「ステージ4」の進行したがんの患者が対象だ。』
『ステージ2~3の患者向けに使うための治験も進んでいる。』

これは朗報です。私の近親にも尿管がんを患っている人がいるので、ぜひこの薬で良くなってほしいと願っています。

地銀システムにクラウドの波 コスト圧縮で生き残り
低コスト・軽量へDX 異業種・外資参入で導入相次ぐ
2022年2月21日 日経新聞
『全国の地方銀行が基幹業務を支える勘定系システムを入れ替え始めた。これまではNTTデータなどのベンダーによる中央集権型の巨大システムを使っていたが、技術革新で可能になったクラウド技術を使った分散型の軽量システムを採用する動きが広がっている。米国発のシステムの新潮流は苦境の地銀を救う特効薬になるのか――。
福島銀行は2024年をめどに、米クラウド大手「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」上で稼働するシステムに切り替える。・・・SBIホールディングスがIT(情報技術)企業のフューチャーアーキテクトと開発した新システムを採用する。』
『クラウドはデータセンターの設備や機能をネット上で企業や開発者に貸し出す。』
『北国銀行が21年5月、邦銀で初めて勘定系システムをクラウド化した。米マイクロソフトのクラウド「アジュール」上で稼働している。』
『ふくおかFGのデジタルバンク「みんなの銀行」が米グーグルのクラウド上で稼働し、アクセンチュアが開発した。』

銀行システムのクラウド化は、地銀から広がっていくのでしょうか。
クラウドの進化について、このブログでは「クラウドの世界シェア動向 2021-12-08」、「クラウドコンピューティングとは何か 2009-11-25」で記事にしてきました。
クラウドの御三家についていえば、2009年当時はグーグル、アマゾン、セールスフォースであったのに対し、2021年時点ではアマゾン、マイクロソフト、グーグルになっていました。地銀システムのクラウド化においても、御三家のアマゾン、マイクロソフト、グーグルが中心になって、クラウドのインフラとして用いられているようです。

グーグルも磁気テープ活用 サイバー対策・省電力で再注目
素材進化、記憶容量2倍
2022年2月22日 日経新聞
『企業がデータを保存する記憶媒体として、磁気テープが再び活用されている。読み取りしにくいなど使い勝手が悪く、消費者向け商品は姿を消したが、サイバー攻撃に強く、消費電力が少ないことから企業のバックアップ用として再注目。米グーグルや中国の百度(バイドゥ)も取り入れている。素材開発により容量が2倍以上に拡大するなど技術革新も進む。』
『「近年拡大するサイバー攻撃対策の観点から、磁気テープはHDDにはない利点がある」
HDDは保管中もネットワークに繋がっているが、テープはオフライン環境のため、感染や侵入のリスクは低い。』
『生産量で世界シェア6割超を握る富士フイルム』
『富士フイルムは12年、当時主流だった「メタル磁性体」に代わる「バリウムフェライト」という新たな磁性体を商品化。15年に発表した改良品では粒子の直径が約20nmとメタル磁性体の半分以下に抑えた。』

一般企業のシステムのバックアップ用として、以前から磁気テープが用いられており、ストリーマと呼ばれていることは耳にしていました。これが、クラウドのデータセンターにおいても、大規模に使われていると言うことですね。
「磁気テープはオフラインだからサイバー攻撃に強い」というだけの理由だったら、バックアップ専用のHDDを用意し、バックアップ時以外はオフラインにしておけば済む話です。それ以外のメリットもあるのでしょうね。HDDに比較して電気代が安い、という点は新聞記事に載っていました。

大学共通テストの得点低下 問題作成の考え方、再点検を
2022年2月22日 日経新聞
『1月に行われた大学入学共通テストが記録的な低得点だったことの衝撃が静かに広がっている。大学からは合否判定に使いづらいと不満の声が上がり、問題の作成方針にも疑問符がつく。大学入試センターは検証を進めるが、取り組むべき「宿題」は重い。
「受験生の間で差がつかず、選抜に使いにくい」。今回の共通テストの結果を見た、有力私立大学の入試責任者は困惑気味だ。』
『特に落ち込みが目立ったのは数学Ⅰ・A、平均点が37.96点、前回比19.7点ダウン。』
『分布の山は平均点より低い32点前後。このあたりの学力層が多く受検する大学では数学Ⅰ・Aではほとんど差がつかない。』
『「試験デザインとして失敗」。・・・「苦戦したのは自分だけではないと頭では分かっていても、ショックから第1志望を変更した受験生が相当数いたのではないか」。』
『難易度以上に本質的な問題がある。試験問題の内容と、それを規定する問題作成方針だ。・・・各科目で資料や図が多くなり、読む量が大幅に増えた。・・ここで問題なのは、増えたことに意味があるのかどうかだ。』
『「①と②をともに満たす実数Xがあるときはn=3になりそうだね」といった会話文が多いのも共通テストの特徴だ。
背景にあるのが「問題作成方針」だ。』
『高校や予備校からは「数学の得意な生徒が得点できなかった」との声が多く聞かれる。』
『気になるのは大学入試センターの問題作成能力が落ちているのではないかと言うことだ。・・・無理のある問題作成方針が委員の負担・消耗やモチベーションの低下につながっている面はないか。』

共通テストがひどいことになっているようですね。
そもそも、大学入試の実力判定をペーパーテストで行うに際し、最近は余計なことを要求しすぎです。入学希望者が殺到する中、ペーパーテストで実力判定しようとしたら、基本的には知識と基本的問題解決力を問うことに徹するべきと思います。
そもそも論としては、大学入試の弊害を解決するためには、アメリカの大学のように「入学は易しいが卒業は難しい」というスタイルにすべきで、これ以外に解決の道はないと、私は信じています。

医学部合格率、初めて男女逆転 昨年の入試 文科省調査
三浦淳2022年2月20日 朝日新聞
『全国に81ある国公私立大の医学部医学科の2021年度入試(21年春の入学者を選抜する試験)で、女性の合格率が13・60%となり、男性を0・09ポイント上回ったことが、文部科学省の調査で分かった。データのある13年度以降で、女性の合格率が男性を上回ったのは初めて。女性の方が男性よりも合格率が低い大学の割合も初めて半数を切った。
医学部入試をめぐっては18年、全国10大学で女性受験生らが減点されるなどの差別を受けていたことが発覚。これをきっかけに文科省は調査を始め、結果を公表している。
21年度入試では、女性受験生4万3243人に対して5880人が合格し、合格率は13・60%だった。男性は6万2325人のうち8421人が合格し、合格率は13・51%だった。13~20年度の合格率は、男性が女性を0・74~2・05ポイント上回っていた。』
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PCR検査の現況

2022-02-19 13:00:27 | 歴史・社会
今月12日土曜日、70歳を超える同居人が微熱とのどの痛みを発しました。オミクロン株が跋扈しているこのご時世で一大事です。何はともあれ発熱外来の受診とPCR検査です。我々が住む杉並区では、かかりつけ医に電話相談することになっています。わが家は世田谷区との境界にあり、かかりつけ医は世田谷区ですが、とにかく電話をしてみました。何回かけてもお話し中でつながりません。
そこで私が、かかりつけ医まで出かけて相談しました。小さな医院ですが、「それではPCR検査をしますので本日○時に来院してください」とのことになりました。「現在は検査機関が混み合っているので、結果判明まで少なくとも3日かかります」とのことでした。

検査結果が出る前の14日月曜、今度は私(70歳以上)が微熱に見舞われました。のどの痛みはありません。しかし当然ながら心配です。夕刻になり、かかりつけ医に電話したら今度はつながりました。そしてその電話で、同居人がPCR陰性であることが伝えられました。
一安心です。また、言われていたよりも早い時期に結果が判明しました。
そして、自分も微熱があると伝えたら、「今すぐ来院すればPCR検査を受けられます」といわれ、念のため受検することとしました。
時刻は午後7時前です。ドクターひとりの小さな医院で、一般診療は終了しており、PCR検査待ちと思われる人たちが入り口前に4人ほどいました。この真冬、PCR受検は発熱やのどの痛みを持った人が来ているはずで、コロナでないとしたら風邪かインフルです。そんな患者が寒空で待たされるのはつらいです。
15分ほど待って、私の番になりました。検体採取が終わったそのとき、検体回収員が入室してきました。私の検体は時間差なく、検査所に運ばれていきました。
問診時、「抗原検査も行いました。陰性です。」とのことでした。先生にうかがったところ、PCR受検者の陽性率は半分ぐらいだそうです。本当にオミクロンは東京の街中にまん延しているようです。

16日水曜の午前中、電話があり、私の結果が陰性であると伝えられました。これで安心できます。

世の中では、PCRの試薬が不足して受検できない、検体採取しても検査機関の能力オーバーで結果判明まで時間がかかる、と言われているようですが、少なくとも世田谷区では、お願いすればその日のうちに受検することができ、2日程度で結果を知ることができました。
一昨年のゴールデンウィークの頃、同じく同居人が風邪症状でPCR検査を受けようとしたときは大変でした。休日なので杉並区の相談窓口はお休みであり、東京都の窓口は何百回かけてもお話し中です。翌日の平日、杉並区の窓口に電話したところ、つながるにはつながったのですが、「あなたは検査対象ではありません」ということで受検を断られてしまいました。
そこで、正規ルートではありませんが、近所の佼成会病院に直接電話をかけ、「それでは来てください」ということで出かけてPCR検査を受けることができました。
あの頃の実情と比較すると、今回はずいぶんと改善されている実感があります。

3回目のワクチン接種についても、先日報告したように、私たち夫婦は1月末に接種を完了することができました。40歳になる家族も、接種券(2月8日発送予告)を9日には郵送で受け取り、ただちにネットで予約を試みたところ、ファイザー指定で2月24日の予約が取れました。
全国の3回目ワクチン接種が遅々として進んでいないとのことですが、少なくとも杉並区は優秀です。それもファイザーを潤沢に確保しているような印象です。

迅速にPCR検査受検やワクチン接種ができるかどうか、住んでいる自治体の事情に大きく左右されるようですね。何とかならいのでしょうか。
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アサリの産地偽装

2022-02-03 17:21:53 | 歴史・社会
熊本産アサリ、偽装か 大半で外国産混入の疑い 農水省、立ち入り検査へ
2022/2/2付日本経済新聞 朝刊
『農林水産省は1日、熊本県産と表示していたアサリの大半について、外国産が混入していた可能性が高いと発表した。全国の小売店を調査したところ、実際の漁獲量を大幅に上回る量が同県産として販売されていたこともわかった。産地偽装の疑いがある輸入業者や卸売事業者に立ち入り検査し、実態把握を進める。』
『2020年に同県(熊本県)でとれたアサリが21トンだったのに対し21年10月~12月末までに同県産の表示で売られた推計販売量は2485トンだった。』
『熊本県の蒲島郁夫知事は1日記者会見し、生鮮アサリの出荷を8日から約2カ月間停止すると発表した。』

この記事によると、農水省も日経新聞も、熊本県産のアサリ産地偽装について今回はじめて気づいたような書きぶりです。
しかし、私は最近2回も、テレビ番組で熊本県産のアサリ産地偽装について見ています。本2/3付け朝日新聞に関連記事が載っていました。
(フカボリ)アサリ偽装、ルール悪用 長く育った場所が原産地…書類偽る
2022年2月3日 朝日新聞
『外国産のアサリが「熊本県産」として大量に出回っていた問題で、かつてアサリの産地偽装に関わった業者の社長が2日、朝日新聞の取材に応じ、偽装の実態を語った。仲卸業者は今後のアサリの売れ行きへ不安を募らせる。正しい産地の表示は進むのか。』
記事によると、産地偽装には2種類あります。その第1は、中国・韓国から輸入したアサリについて、単に書類を書き換えて「熊本県産」にするのが7~8割あるとのことです。第2は、輸入したアサリを熊本県内の海にばらまいて短期間の「畜養」をし、「熊本県産」にするのが2~3割です。
私は、以前のテレビ番組の内容から、上記第2の「畜養」がメインと思っていました。食品表示法では、アサリなどの水産物で、2ヶ所以上で育てた場合は育った期間が長い場所を原産地として表示することを認めています。実際には熊本県の海での畜養期間は短いのに、そちらが長かったと偽るのです。
第2の方法のように、実際に熊本県での畜養を行い、ただし畜養期間が長かったように偽るのも悪いですが、第1の方法はその畜養すら行わないということで、こちらの方が悪質です。

私が調理できるパスタのレシピが4種類あります。
○ スパゲッティ・ボンゴレ・ビャンコ
○ スパゲッティ・カルボナーラ
○ なすとトマトのスパゲッティ
○ フェトチーネ・クリームソース

昨2/2にスパゲッティ・ボンゴレ・ビャンコを作ろうと計画し、夕方近くに近所のスーパーに買い物に行きました。上記のニュースも聞いていたので、熊本県産以外の産地のアサリを買うつもりでした。しかし行ってみたら、熊本県産しか置いてありません。20%引きのタグが貼ってあります。そこで近くの店員さんに聞いてみました。
問「熊本県産以外はありますか?」答「本日は熊本県産のみです」
問「20%引きになっているのは偽装だからですか?」答「この時間帯ではいつもそうしています」
問「これは偽装ですか?」答「偽装ではありません」
上記朝日新聞の記事では、スーパーの担当者が「我々が見て産地を見抜くのは難しい」といっているので、私が聞いた店員さんの答もあてにはなりません。しかし、その日のメニューは決めていたし、過去も知らずに購入して問題がなかったのですから、今回もそのまま購入して調理に使いました。
それにしても、おそらく「最後の熊本県産」を入手したことになると思うので、記念にラベルを撮影しておきました。
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