弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

GWに突入&原発の状況

2011-04-29 13:36:58 | サイエンス・パソコン
ゴールデンウィークに突入しました。
ゴールデンウィーク期間中はこのブログもお休みになります。

福島第一の1号機は、圧力容器の水注入量を6トン/時から10トン/時に増やしたとたんに、格納容器の圧力が1.5気圧absから1.2気圧absに急減したようですね。14トン/時への増量は中止したようです。
現在の原子炉内の物質バランス/熱バランス/圧力バランスがどのように成立しているのかを知りたいのですが、そのために必要な情報はほとんど知ることができません。
おそらく、圧力容器への冷却水増量により、格納容器の冷却も促進され、格納容器内の水蒸気が凝縮し、水蒸気分圧が下がって格納容器内圧力が下がった、ということなのでしょうね。
それにしても現在の原子炉は生き物のようです。条件をどのように変化させたら状況がどのように変わるのか、やってみなければわかりません。

1号機格納容器への窒素ガス注入がはじまったのは4月7日です。週刊文春4月21日号によると、この対策を始める前において、東電の現地本部と東京の東電本社に置かれた対策統合本部との間で緊迫したやり取りがあったようです。
現地本部(免震重要棟)の責任者は第一原発の吉田昌郎所長です。本社からの無理難題な指示にも堪え忍び、あるいは毅然として対応するなど、評価は高い、ということです。

現地と東京の間では、毎朝、毎夕の2回、テレビ会議が開かれます。「そこでは連日連夜、必死の協議が続いていた。こここそ原発が危機的状況から脱するための心臓部だ。テレビ会議では誰もが熱い意見をかわし合った。だが、急ぎやるべきことはスムーズに決まっていた。それもそうだろう。日替わりのように発生する-それも想像を絶する新たな事態に対応するためには、一糸乱れぬ意思の疎通が重要だったはずだ。」

4月4日のテレビ会議で、吉田所長が1号機の窒素ガス注入に異議を唱えました。
東京側は「NRC(アメリカ原子力規制委員会)も強く主張していることもあり、1号機窒素注入をいち早く実施しなくてはならない」との主張です。
吉田所長は突然激昂し始めたといいます。「今、やっと均衡が保たれている。一定の安定状態にすることが可能となった!それは微妙な均衡、安定だ。にもかかわらず、そこへ、予想も付かないことをやること、それこそ大きなリスクとなる!」
「もし、格納容器に損傷があったらどうする? 窒素を高めに注入したら、蒸気が凝縮して水滴ができ、陰圧になると格納容器内に空気が入る仕組みが働き、爆発条件が満たされる-」「つまり、それこそ水素爆発の危険が発生する。そんなリスクは冒せない!」
吉田所長は「それでも窒素封入をやれと言うのなら、オレたちは、この免震棟から一歩も出ない! ここで見ている!」「もう、やってられねえっ!」とマイクを机の上に叩きつけました。
東京本社は技術者たちを福島へ急派し、吉田所長を説得しました。

こうして4月7日からはじまった窒素ガス注入だったのです。
経過としては、窒素注入開始直後に格納容器圧力が予測以上の速さで上昇し、「格納容器にはすでに水が入っているのではないか」と見られる原因となりました(4月9日)。しかしその後、格納容器圧力は逆に減少し始めました(4月17日)。

さらに今回、圧力容器冷却水を増加したら格納容器圧力が急減少を始めた、というわけです。急冷で格納容器内の水蒸気が凝縮し、水蒸気分圧が下がったのでしょう。
今回は窒素注入後ですが、窒素分圧が1気圧abs以上を確保していることを祈ります。

1号機の圧力容器圧力は現在でも4気圧G程度と高い圧力です。圧力容器に注入した冷却水が漏れているにしても、漏れ箇所では圧力差3気圧程度に抗して水を押し出しているわけで、冷却水注入量を6トン/時から10トン/時に増やしたら、少しは圧力容器内の水位が上昇してもいいと思うのですが、上昇しないようですね。

現在、1号機圧力容器に注入した冷却水がどこへ溜まっているかというと、東電は格納容器内に溜まっていると推定しています。タービン建屋地下の溜まり水が増えていないからです。しからば、すでに1号機タービン建屋地下に溜まった水はどこから来たのでしょうか。たしか高濃度汚染水だったはずで、圧力容器からの漏出しか考えられないのですが。

ところで、コメント時の私のハンドルをボンゴレからsnaitoに変更しました。実名を明らかにしているこのブログですから、ハンドルを実名以外とする理由もないからです。

それでは、良いGWを!
コメント

ドイツとチェルノブイリ

2011-04-27 21:32:43 | 歴史・社会
4月23日に「川口マーン惠美さんが「現代ビジネス」の執筆者に」の記事で、第1話「放射能物質がヨーロッパまで飛んでくる」原発事故でパニックを煽ったドイツのトンデモ報道を紹介しました。
福島原発事故に関し、ドイツでは、日本国内をはるかに凌駕した過剰反応に充ち満ちているようです。いったいなぜそのような状況に陥っているのでしょうか。

NBオンラインの記事『「原子力選挙」で環境政党が圧勝~福島第1原発事故とドイツ人の過剰反応』の3ページで納得できたように思います。
『チェルノブイリの記憶
このドイツ人の過剰反応の背景には、何があったのだろうか。最大の理由は、1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故で、1600キロ離れたドイツが深刻な放射能汚染を体験したということである。
ドイツ南部のバイエルン州。チェコとの国境地帯にバイリッシャー・ ヴァルトという深い森が広がっている。ドイツ環境衛生研究所(GSF)によると、チェルノブイリ事故の直後に、この森では1平方メートル あたり3万ベクレルのセシウム137が検出された。その値は、ミュンヘン市内でも1万9000ベクレルに達した。またドナウ川の南部地域では、1平方メートルあたり10万ベクレルという高いレベルのセシウム137が検出されたこともある。
放射性物質を含んだ空気がバイエルン州の上空を通過していた時に、運悪く激しい雨が降ったからである。』
今回の福島第一原発周辺地域の放射能レベルについては、いずれも1時間当たりマイクロシーベルト、あるいは1年間の積算マイクロシーベルト表示であり、上記ミュンヘンの地面に降り積もったベクレル表示と対比することができませんでした。

チェルノブイリにおいてそのような体験をしていたのであれば、ドイツの人たちが敏感に反応する理由が分かります。
川口さんの記事にある『"制御不可能となっている原発がまもなく大爆発を起こし、破滅的な大災害を引き起こす可能性"が論じられ、"放射性物質を含んだ雲が、ドイツにまで飛んでくるかもしれない"とさんざん煽っておきながら、「我々の推測が現実とならないことを、祈るばかりだ」と不吉なニュースを真摯な顔で、静かに締めくくる。』というドイツ報道の態度は、冷静に考えてみれば当たり前のことです。最悪を想定すれば、そのような事態はあり得ていたし、今後もあり得ないとは言い切れないわけですから。ドイツにまで飛んで行くにしてもジェット気流に乗った上で拡散して極めて微量の放射能でしょうが。

NBオンラインの記事によると、チェルノブイリ事故直後、ソ連が情報を隠蔽していたために西ドイツ政府が初めて国民に注意をよびかけたのは、事故から9日も経った5月5日だったそうで、西ドイツ国民は疑心暗鬼になったようです。また、
『連邦放射線防護局(BFS)がチェルノブイリ事故の直後に、ミュンヘンでほうれん草の放射性物質の量を検査したところ、1キログラムあたり2万ベクレルのヨウ素131、7000ベクレルのセシウム137が検出された。これは現在日本の厚生労働省がヨウ素について定めている暫定規制値の10倍、セシウムの規制値の40倍である。』
という実害が観測されました。
チェルノブイリ事故時のミュンヘンのほうれん草と、今回の福島原発事故における福島県のほうれん草を比較してみました。福島県についてはすでにニュース記事が削除されているのですが、4月6日発表ではほうれん草中のセシウムが最大でキロ当たり2万2000ベクレルだったようで、ミュンヘンは当時今回の福島県の最大値には及びませんが、その1/3程度の汚染を被ったのですね。
コメント

ふるさと納税制度が知らないうちに拡張していた

2011-04-26 00:11:09 | 歴史・社会
震災の被災地に向けて寄付を行うに際し、税金の控除が多ければ多いにこしたことはありません。
今まで、赤十字、共同募金、地方自治体への義援金などについては、寄付金控除が受けられました。寄付金額にその人の所得税率をかけた値で所得税が控除になり、また寄付金額に住民税率(10%)をかけた値で住民税が控除になります。所得税率が20%の人であれば、寄付金額の30%程度が返ってくる、といったところでしょうか。
これよりも多くの税金が返ってくるのがふるさと納税です。特定の限度額の範囲内において、寄付金額から5千円を引いた残り全部が返ってくる、といって過言でないでしょう。
ふるさと納税については、このブログでも3月22日に被災地への支援を最大化するには
で紹介したところです。
ですから、「自分は赤十字に寄付したい」と希望する場合、ふるさと納税に比較して税金が返ってくる金額が少なくなるのは、そういう制度だと諦めるしかありませんでした。

ところが、最近いろいろと調べてみたら、今回の震災被災地・被災者に対する寄付の必要が高まったためか、この4月から制度が変わったようなのです。どう変わったかというと・・・

赤十字や共同募金への寄付、地方自治体経由の義援金などについても、従来のふるさと納税制度と同じだけ税金が返ってくるようになったのです。

こんな制度変更があったことを、おそらくほとんどの国民が気づいていないでしょう。半信半疑ながらネット検索をしたのですが、ネットでもほとんど話題になっていませんでした。

それでは、私の上記情報がガセでないことを示しましょう。

総務省の「ふるさと寄付金など個人住民税の寄附金税制」によると
『東日本大震災の被災地への寄付金・義援金(ふるさと寄付金)について
~あなたのふるさと寄付金が被災者支援に活かされます~
「ふるさと寄付金」制度を活用し、東日本大震災の被災地以外の出身者の方でも復興支援を行うことができます。
「ふるさと寄付金」として被災地の県や市町村に直接寄付する場合や、日本赤十字社や中央共同募金会、日本政府などに義援金として寄付する場合に、所得税と個人住民税で控除(還付)が受けられます。』

まずは、県や市町村経由での寄付金と義援金の扱いです。
○被災地方公共団体に対する寄付金及び義援金の取扱いはこちら
『東日本大震災に係る被災地方公共団体に対する寄付金及び義援金の受入口座一覧について
被災地の県や市町村への寄付金や義援金は「ふるさと寄付金」として、所得税と個人住民税の控除が受けられます。
また、この制度の活用のため、被災地方公共団体においては次の一覧表のとおり、寄付金・義援金の受入口座を開設していますので、ご活用ください。』
ここでいう、「県や市町村への寄付金」が、従来からあった「ふるさと納税」に対応するようです。そして今回、寄付金のみならず、被災地の県や市町村への義援金についても、「ふるさと寄付金」との名称で、従来のふるさと納税と同じだけ税金が戻ってくるようになりました。
ここで「寄付金」と「義援金」はどのような違いがあるのでしょうか。どうも、寄付金は県や市町村の復興資金に充てられ、義援金は直接被災者に給付されるようです。

どの県、あるいは市町村に寄付金・義援金を送りたいか、こちらの「受入口座一覧表はこちら(PDF)」で探すことができます。

次に、赤十字や共同募金への寄付金の扱いです。
○日本赤十字社や中央共同募金会等に対する義援金の取扱いはこちら(PDF)
『日本赤十字社や中央共同募金会などに東北関東大震災義援金として寄付する場合にも、「ふるさと寄付金」として所得税と個人住民税で控除(還付)が受けられます。』
『「ふるさと寄付金」によって控除(還付)される額は、所得税と個人住民税を合わせて、概ね「寄付金額-5000円」となります。
※ 控除(還付)される額には上限があります。
【具体的な控除額】
3万円寄付した場合 25300円
※給与所得500万円の人の例』

どうです。大きな制度拡張ではありませんか。
この制度、こちらの資料の3ページ以降によると、総務省自治税務局市町村税課長が3月25日に出した通達?『平成23 年東北地方太平洋沖地震に係る義援金等に係る「ふるさと寄附金」の取扱いについて』がその根拠になっているみたいです。こんな紙っきれで大きな制度改革が可能なのですね。

ところで、「寄付金額-5000円」の控除(還付)が受けられる上限の寄付金額というのは、その人の年収によって大きく異なります。宮城県のふるさと納税案内のページに、ごく大雑把な限度額が書かれています。
『ご寄附はいくらでもかまいませんが,個人住民税(所得割)のおおむね1割までの寄附金であれば,自己負担額5千円を除いた額の全額が税額から控除されます。次の表を参考としてください。
【参考例】夫婦・子ども2人のサラリーマンの場合
  年収    寄附額の目安
500万円   20,000円
700万円   41,000円
1,000万円   81,000円
2,000万円  262,000円
3,000万円  488,000円』

皆さんも、ご自身の年収に合わせ、震災復興のため大いに寄付しようではありませんか。日本赤十字、共同募金会、被災県及び市町村への寄付金・義援金の中から、自分が希望する寄付先を決めればいいのです。
私はというと、今年のふるさと納税枠を使い切ってしまったので次は来年ですが。
コメント

日本原子力技術協会最高顧問 石川迪夫氏の緊急提言

2011-04-25 00:18:35 | サイエンス・パソコン
日本原子力技術協会の東日本大震災関連情報ページに、「石川最高顧問 緊急提言「福島第一原子力発電所事故対応に向けて」(平成23年4月13日) 」が掲載されていました。日本原子力技術協会最高顧問 石川迪夫という方の提言です。
4月13日の日付ですからもう2週間ほど前になるのですね。

この緊急提言の中に、私が知りたかった情報がいくつか掲載されていました。

まず、津波来襲直後から3月14日にかけて原子炉に何があったのか、という点について。私が「原発事故当初の対応で何が可能だったのか」で書いたように、
『1号機は、津波来襲の直後から炉心冷却不能に陥りましたが、2、3号機は様子が異なりました。3号機が炉心冷却装置注水不能になったのは13日5時、2号機が炉心冷却装置注入不能になったのは14日13時です。それまでの間、炉心冷却が作動していました。この炉心冷却が例えば残留熱除去系によるのであれば、残留熱除去系のモーターがバッテリーで作動していたことになり、配線、モーター、ポンプがこの時点で正常だったことになります。一方、残留熱除去系はバッテリーでも作動しておらず、隔離時冷却系(圧力容器からの蒸気でポンプを回して水を循環)によるのだとしたら、やはり残留熱除去系は津波直後から作動していなかったことになります。
2、3号機の炉心冷却はどの系列で作動していたのか。その点がまだ私にはわかっていません。』
という疑問を抱いていました。
この点に関し、石川迪夫氏の緊急提言には以下の記述があります。
『停電後も、電気を使わない安全設備は働き続けた。1号機の隔離時復水器は半日間炉心を冷却した。2,3号機の蒸気タービン駆動注水装置は、それぞれ約3日と1.5日の間、炉心に水を注入し続けた。』
1~3号機のいずれも、3月11~14日に圧力容器を水冷していた循環冷却の動力は、バッテリー駆動の電動モーターではなく、電気を使わない冷却系だったのですね。
ただし、1号機と2、3号機では機構が異なるようです。
私は、「隔離時冷却系」といえば、どちらも圧力容器から供給される高圧の蒸気によってポンプを回転させるのかと思っていました。名称からするとどちらも似たようなものかもしれませんが、異なった名称を有していると言うことはそれぞれ異なった機能を持っているのでしょうね。
これで、津波来襲直後の11~14日に、残留熱除去系などのモーター類が故障せずに健全性を保っていたのか否かについては「不明」ということになりました。東電は、津波直後に残留熱除去系のモーターがバッテリーで作動可能であったか否かを知っているのかもしれませんが。

ただし、3月13日の朝日新聞記事に「福島第一原発では、11日の地震で外部からの送電や非常用発電機が止まり、緊急炉心冷却装置が動かせない状態が続いた。3号機では別の装置を使い、原子炉内に残った余熱を冷却水で冷やしていたが、給水の仕組みが止まった。装置のバッテリーが切れたとみられるという。」との記述があり、あたかもバッテリーによって電動モーター駆動の冷却系が作動していたかのような記載となっています。
はたしてどちらが正しいのでしょうか。

私は3月29日の圧力容器の冷却方法において、海水、次いで真水を圧力容器に注入している状況を「掛け流し」と名付け、これをはやく「循環冷却」に変更しなければいけない、と述べました。
今回の緊急提言で石川氏は、
『現行の水の掛け流しによる冷却方法は発生熱の除去だけであり、溶融炉心を冷却凝固させる上では何らの効果もない。百年河清を待つ崩壊熱との鬩ぎ合いで、徒に高濃度の液体放射性物質を増やしている。解決策のないままの時間の浪費である。一日の遅滞は百日の困難を招く。確とした対処方針のないまま、遅疑逡巡するのは犯罪に等しい。それが国民の選択であるならば話は別だが、我々は強制冷却により溶融炉心を凝固させ、放射能の放出を停止させる作業を、一刻も早く目指すべきである。これが今なすべき喫緊の任務だ。だがこの旬日それに向けての確たる動きは、悲しいかな、見えない。』
と述べておられます。全くもって同感なのでした。私のごとき素人が、最高顧問のご意見に同感してもしょうがありませんが。

石川氏は、政府・東電が事の本質、重要性にまだ気付いていないのではないかと疑問を呈し、さらに日本原子力学会が日本ただ一つの原子力技術者集団でありながら、この非常時に何らの救援活動も始めていないと述べ、『国民に対し一言のメッセージも発しない原子力安全委員会、事後説明に終始し見通しを示さない原子力安全・保安院、当事者でありながら存在感が薄い東京電力首脳』を嘆じています。
そして、
『日本の原子力関係者が成すべき事は、今述べた事態打開への警鐘を打ち鳴らし、その下での手伝いにある。目標に至る道標の整備、必要技術の模索、実働を含めた協力姿勢など、専門集団としての、縁の下の力の活動はいくらでもある。諸賢一人一人の、速やかな実行を期待する。
放射線の高くなった現場作業は、戦場である。放射線との戦いには、信頼できる総司令官と理非を弁じうる参謀による指揮と、それを支える政府の全面的な支援協力が必要だ。戦場を発電所構内とその近辺海域に限定して、その内部では非常時のルールを設定使用することが必要だ。これは超法規措置で政府の専管決定事項であるが、我々専門家のみがその手伝いが出来る事である。』
と提案されています。

確かに、日本の原子力関係者は数多く存在すると思われる中、事故収束に向けて結束しているようにはとても見えません。この期に及んで、自分かわいさにじっと様子を窺っているのだとしたら、その態度はやめてもらいましょう。
もっとも、週刊文春4月28日号によると、官邸には事故発生から間もなく、汚染水を出さずに原子炉を冷却する方法が佐賀大学元学長の上原春男氏から進言されたらしいのですが、電話で応対した管首相がその電話で次から次へと疑問を投げかけ、結局この案は判断されないまま放置されてしまったそうです。官邸関係者は「この切迫した状況下、総理は大局的な判断をすることが大事で、技術的な細かい点は専門家に任せればいい。一体、何をやっているんだ、と周囲も首を傾げていました」と述べたとのことで、もっともです。総理がこのような状況では、専門家はだれも手を上げて結束しようとはしないかもしれませんね。
コメント (8)

川口マーン惠美さんが「現代ビジネス」の執筆者に

2011-04-23 19:07:06 | 趣味・読書
1年前のゴールデンウィーク、私と家内がまわったのは、ベルリン、ドレスデン、プラハでした。ドレスデンの様子については「ドレスデン」に書いたとおりです。
そのドレスデンの基礎知識を得る上で、川口マーン惠美さんの「ドレスデン逍遥―華麗な文化都市の破壊と再生の物語」が役に立ちました。この本から得た知識と実際にドレスデンを旅した印象について、「ドレスデン逍遙」~ドレスデン大空襲「ドレスデン逍遙」~アウグスト強王の時代「ドレスデン逍遙」~聖母教会の3つの記事にしました。

このたび、講談社の現代ビジネスに、その川口マーン惠美さんが執筆者として登場しました。
川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」
『シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。』

すでに、
第1話「「放射能物質がヨーロッパまで飛んでくる」~原発事故でパニックを煽ったドイツのトンデモ報道
第2話「スモレンスク飛行機墜落事故 ポーランドを襲った「カティンの森」の第二の悲劇
第3話「スーパースターの華やかな墜落
を読むことができます。

第1話では、今回の日本の原発事故がドイツでどのように報道され、ドイツ人がどのように行動しているのかを紹介しています。とんでもないことになっているようです。
『(3月13日)ころ、ドイツでは異常な報道が始まっていた。"制御不可能となっている原発がまもなく大爆発を起こし、破滅的な大災害を引き起こす可能性"が論じられ、"放射性物質を含んだ雲が、ドイツにまで飛んでくるかもしれない"云々。』
『パニックを煽ったのは、ドイツのメディアだ。しかし、さんざん煽っておきながら、「我々の推測が現実とならないことを、祈るばかりだ」と不吉なニュースを真摯な顔で、静かに締めくくる。そうするうちに、皆、ますます不安になり、不幸な津波の被災者のことなどすっかり忘れてしまった。』

3月13日に捜索犬を連れて来日したドイツの救援隊41人は、2日後の15日に早くも活動を中止します。ドイツ大使館は17日から大阪の総領事館に引っ越し、日本にいたドイツ人の多くも出国、あるいは、関西地方に避難しました。
たまたま日本にいた惠美さんは、ドイツからの連絡で必死で即刻帰国を勧められました。
16日付けのドイツの新聞では、第1面にマスクをした日本人の写真とともに「死の不安に包まれた東京」との大見出しです。花粉症対策のマスクが、放射能対策と誤解されているのです。

被災し肉親を失っても嘆き悲しむ様子を見せない日本人についての印象も、ガラッと変わりました。
『最初のうちは、不幸に見舞われても冷静さと感謝の念を失わず、助け合い、耐え忍んでいた日本の被災者を褒め称えていたドイツメディアだったが、どうも方向転換をしたらしい。』
『ドイツ人は理解できないのだ。肉親を亡くしながらも、泣き叫ぶことをしない日本人のことが。雄弁に悲しみを語らなくても、日本人は悲しんでいる。ドイツ人とは悲しみ方が違うだけだ。しかし、それを理解せず、感情を出さないのは感情がないからだと決めつけるのは、それこそ自らの感情移入能力の欠如を暴露しているだけではないか。』

ドイツで現在の日本がそのように報道されているとは驚きです。

いずれにしろ、惠美さんのこれからのレポートを楽しみにしています。
コメント

海に流出した放射能量、格納容器の溜まり水

2011-04-21 21:41:15 | サイエンス・パソコン
東電が、4月1~6日に海に流出した2号機の高濃度汚染水の量と流出した放射能量を発表しましたね。
汚染水の量が520トン、射性物質の総量が約4700テラ・ベクレル(テラは1兆)ですか。

岸壁のコンクリート壁から汚染水の流出が発見された当初、東電は隣接するピットからの漏水であると推定し、まずはピットにセメントを流し込んで効果なし、次にピットにつながる流路に膨張剤・おが屑・新聞紙を注入したが効果なしでした。実は、流出経路が全く間違っていたのです。地下管路のどこかに漏れがあり、そこから漏れた汚染水が、ピットの底よりもさらに下の砕石層を通って壁の穴から流出していたのでした。
そのことにやっと気付き、砕石層に水ガラスを注入した結果として6日に流出が止まりました。

現場を知り尽くした人が見たら、流出口がコンクリートの亀裂などではなく水抜き穴であることにすぐ気づくだろうし、その穴の位置がピットの底よりもさらに低い位置であることも図面で確認できるはずです。そこまでピンと来れば、セメント流し込みや膨張剤流し込みなどで時間をロスせずに、迅速に流出を止められたはずと思います。

報道写真を見ただけでも、私のブログ記事圧力容器の冷却方法に対するxls-hashimotoさんの4月5日のコメントで
> ピットから出てる黒い水の勢いは、どこかでストームドレン(雨水排水管)に流れ込んで、その配管から出ている様に思われます。
> ヒットにヒビが出来て、あんなに綺麗に丸穴が開くとは思えません。
と看破されたとおりです。

また、専門家から見たら、水の流出を止めるのに水ガラスは当たり前で、セメントを流し込んでも効果がないことなど判り切っているといいます。現場では素人考えが幅を利かせているのでしょうね。

結果として、4700兆ベクレルの放射能が520トンの水とともに太平洋に注ぎ込まれました。
低濃度汚染水の意図的放出のときには、ロシアや韓国からクレームが付いたそうですが、その前に意図せずにその3万倍の放射能が流出していたわけですが、明日以降ロシアや韓国が何と言い出すのか、気にかかります。
それでも、レベル7を決めた大気への流出放射能量が37万~63万テラベクレルということですから、それに比べると100分の1ではあるのですね。

ところで、昨日
格納容器に水たまる=ロボ撮影の映像を公開―福島第1原発・東電
時事通信 4月20日(水)20時39分配信
『福島第1原発事故で、東京電力は20日、1号機の圧力容器を覆う格納容器内に水がたまり始めたことが分かったと発表した。冷却に向けた注水が続く圧力容器から流出した水とみられるといい、東電は水位などを詳しく調べる。
東電によると、圧力容器に入っている燃料棒の冷却に向けて、注水作業が行われている。注入された水が格納容器に流れたほか、水蒸気が格納容器内で凝縮してたまった可能性があるという。』
というニュースが流れましたが、続報が聞けません。

そもそも4月9日に福島第一原発の現状は?で1号機格納容器への窒素ガス注入に関連して、『途中段階で、「予想よりも速い速度で内圧が上がっている。格納容器内の溜まり水が想定よりも多く、格納容器内の気体空間が少ないのかもしれない」という報道がありました。』と書いたとおり、格納容器内に水が溜まっているのか?という報道は前から聞いていました。

しかし、格納容器内に水が溜まったら、その水圧で、格納容器のドライ部分の圧力に対して圧力抑制室の圧力は高くなるはずです。水の高さが5mだったら圧力差は0.5気圧(0.05MPa)になります。
ところが、経産省のプラント関連パラメータの2ページ目によると、1号機の格納容器圧力は、D/W(格納容器内)もS/C(圧力抑制室)もともに160kPa(0.16MPa)で同じであり、水圧が立っているようには見えません。それとも、この圧力測定値のどちらか又は両方とも、正確ではない、ということでしょうか。
むしろ、3号機の方が、D/W=106kPa、S/C=176.8kPaということで、格納容器内に水深7mの水が溜まっているように見受けられます。
コメント (3)

東電の再生計画

2011-04-19 22:06:34 | 歴史・社会
今回の福島原発事故を起こした東電という会社は、今後どのような形で再生させていくべきなのか、長谷川幸洋氏の『経産省幹部が公表をストップさせた「東京電力解体」案』をメモしておきます。

従来、政府・原子力安全委員会・原子力安全保安院が東電を十分チェックできなかったのは、単に政府側の体制の問題というだけでなく、実は東電が地域独占だったという点を無視できないといいます。ほかに代替できる企業がないから、東電の力は必然的に強大になる。問題が生じたときに政府がペナルティを課したところで「絶対につぶせない」ので、時が経てば元に戻ってしまう。

電力事業をめぐっては、かねて発電事業と送電事業の切り分け(発送分離)が課題になっていました。発送分離して東電の送電線を自由に使えるようにすれば、発電事業に企業が新規参入しやすくなる。風力や太陽光など新しい再生可能エネルギーの活用も進むだろうというわけです。

長谷川氏は、「東京電力の処理策」と題された6枚紙を入手しました。作成したのは経産省のベテラン官僚といいます。
『先に東電処理の出口(EXIT)をみよう。
東電を発送分離して「東京発電会社」と「東京送電会社」に分けた後、第2段階として発電部門の東京発電会社を「事業所単位で分割し、持ち株会社の下に子会社として直接配置する」とある。その後で子会社の売却を提案している。』
東京発電A社、東京発電B社、東京発電C社というように発電所単位で子会社にして、それぞれ売却してしまうという案です。これだと、発送分離に加えて1社による地域独占もなくなります。

『この出口に至る途中のプロセスはどうするのか。
処理策は東電の経営を監視する「東電経営監視委員会」を弁護士や企業再生専門家らでつくり、経営を事実上、監視委員会の下に置くように提案している。一方で資金不足に陥って電力を供給できないような事態に陥らないよう、政府が必要に応じて東電の借入資金に政府保証をつける。
当面は事業をそのまま継続する。ただし役員報酬の返上など大リストラは、この段階で直ちに着手する。そうでなければ、企業価値を算定するときに東電の値段が無駄に高くなってしまう。ひいては国民負担につながる。
その後、放射能漏れの被災者に対する補償額、国と東電の負担割合が決まってから、東電の企業価値を算定し、経営監視委員会が再生プランを作成する。プランが出来れば、現在の株式は100%減資して、新たに株式を発行する。100%減資は既存株主にも責任を負担してもらうためだ。』

途中段階で国が株式を購入して国有化されることがあるとしても、それが最終的な出口ではない、という点が重要です。
『巷では、東電に対する怒りも手伝って「東電国有化」論が飛び交っているが、単に政府が東電を国有化するだけでは、これまでの政府との癒着関係が致命的にひどくなるだけだ。原発事故の反省もうやむやにされ、官僚と御用学者が再び大手をふって歩くようになるだろう。』

この6枚紙の「処理策」はすでに経産省幹部も目を通しているのですが、執筆した官僚が公表しようとすると「絶対にだめだ」とストップをかけたそうです。東電は経産省の天下り先ですから、既得権益を重要視したのです。国会にしろ海江田万里経産相にしろ、経産省と東電の癒着体質にメスを入れることができるのか。

今回の原発事故のような事態が再発するのを防ぐためにこそ、東電を発電会社と送電会社に分割し、さらに発電会社をいくつにも分割することが必要だ、という論でした。今後の東電有るべき論を読む上で常に忘れないようにしましょう。

ところで、同じ「現代ビジネス」のドクターZ「電力不足への正しい対処法」に以下の記事が載っていました。
『東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で周波数が異なる問題も、3000億円も投じれば、2年程度で解決可能だ。これまで電力会社は、変換施設建設は土地取得などに時間がかかり、短くても10年は必要と言ってきたが、これは東西融通によって地域独占が崩れることを恐れての口実だ。今回の事故発生後、筆者は電力業界の幹部から「実は2年でできます」と告白された。』
コメント

特許法改正の進捗状況

2011-04-18 00:04:04 | 知的財産権
経済産業省から特許法等の一部を改正する法律案についてが公表されたのが、まさにあの3月11日だったのですね。
取り敢えず新旧対照条文を印刷したきり、大震災・大津波・原発事故にかまけて内容チェックには至っていません。
その法律改正は、現在国会でどのような位置にあるのでしょうか。調べてみました。

本件は参議院先議で、たまたま4月15日に参議院本会議で可決したところでした。参議院「特許法等の一部を改正する法律案」で確認することができます。
提出日 平成23年4月1日
参議院本会議経過
議決日 平成23年4月15日
議決 可決
採決態様 全会一致

衆議院についてはこちらで確認できますが、まだ着手されていないようです。

私や世の中が大津波と原発事故に目を奪われている間にも、特許法改正の手順は着々と進行していたのでした。

ところで、参議院「特許法等の一部を改正する法律案」に掲載されている「議案要旨」は、今回の特許法改正の骨子を知る上で簡潔にまとまっていましたので、下記にメモしておきます。

(経済産業委員会)
特許法等の一部を改正する法律案(閣法第四五号)(先議)要旨
 本法律案は、我が国の経済成長を支える新たな技術や産業の創出を促進するため、通常実施権の登録対抗制度の見直し、中小企業に係る特許料金の減免制度の拡充、冒認出願等に関する救済措置の整備、無効審判等の紛争処理制度の見直し等、知的財産の適切な保護及び活用を図るための措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一、通常実施権等の対抗制度の見直し(当然対抗制度の導入)
  通常実施権等は、その発生後にその特許権を取得した者等の第三者に対しても、その効力を有するものとする。
二、冒認出願等に係る救済措置の整備
  特許が、特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき又は共同出願違反に該当する出願に対してされたときは、特許を受ける権利を有する者は、その特許権者に対して特許権の移転を請求することができるものとする。
三、審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止
  無効審判手続において、審決の予告を行い、それに応じた訂正請求ができる手続を導入した上で、その無効審判に係る審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求を禁止する。
四、再審の訴え等における主張の制限
  特許権の侵害訴訟の終局判決が確定した後に特許の無効審決が確定したとき等は、訴訟の当事者であった者は、その判決に対する再審の訴え等において、当該無効審決等が確定したことを主張することができないものとする。
五、審決の確定の範囲等に係る規定の整備
  二つ以上の請求項に係る特許の無効審判及び訂正審判について、その審決の確定の範囲等に係る規定を整備する。
六、無効審判の確定審決の第三者効の廃止
  無効審判の審決の確定後に、当事者及び参加人以外の者が、同一の事実及び同一の証拠に基づいて審判を請求することができるものとする。
七、料金の見直し
 1 特許料の減免等について、その要件を緩和し、併せてその期間を第一年から第十年までに延長する。
 2 第十一年から第二十年までの意匠登録料を引き下げる。
 3 国際出願手数料のうち、調査手数料等について、法律で上限額を設け、具体的な額を政令で定める手数料とする。
八、発明の新規性喪失の例外規定の見直し
  特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公となった発明については、内外国特許公報等に掲載されたことにより公となったものを除き、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるものとする。
九、出願人・特許権者の救済手続の見直し
 1 外国語書面出願及び外国語特許出願の翻訳文の提出について、提出期間の徒過に正当な理由があるときは、一定の期間は翻訳文を提出することができるものとする。
 2 特許料等の追納について、追納期間の徒過に正当な理由があるときは、一定の期間は特許料等の追納をすることができるものとする。
十、商標権消滅後一年間の登録排除規定の廃止
  商標権が消滅した日から一年を経過していない他人の商標又はこれに類似する商標の登録を認めないとする規定を廃止する。
十一、施行期日
  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
コメント (6)

原発事故最近の推移

2011-04-17 00:26:19 | サイエンス・パソコン
福島第一原発の各号機の状況については、首相官邸災害対策ページの資料経産省「 福島原子力発電所の状況」資料日本原子力技術協会のファイルなどでチェックしています。

1号機の原子炉(圧力容器)圧力Bがじわじわ上昇し、1MPaG(10気圧G)近くまで上がっていますが、これは異常と理解しなくて良いのでしょうか。同じ圧力容器の圧力Aは0.4MPaG付近で安定していることからすると、圧力Bの測定器が異常になっている可能性は高いでしょうが。
ニュースによると、3号機圧力容器のフランジ部付近で測定している温度が上昇しているそうです。一方、日本原子力技術協会のファイルで3号機を見ると、給水ノズル温度は現在測定値が存在せず、圧力容器下部温度は120℃付近で温度は安定しています。フランジ部温度測定器が異常だと考えてよろしいのでしょうか。

最近のニュースでの話題は、2号機のトレンチにたまった高濃度汚染水を2号機の復水器に移送する話ばかりでした。しかし、号機毎に2万トンの高濃度汚染水が溜まっているのに対し、復水器の容量はそもそも3千トンであり、ほとんど足しになりません。何で報道機関がこれほど復水器への移送にのみ期待をかけるのか、理解に苦しみました。
そして、復水器に700トン弱移送したところで復水器が一杯になったということで、それもよくわからない話ですが、移送を終了したらトレンチ内の水位が元に戻ってしまったとニュースではがっかりしています。そもそも、圧力容器の冷却に3炉合計で毎日500トンの水を注入しているのであり、その水が出ていく先といったら今の高濃度汚染水の溜まりしかないのですから、当たり前のように思われるのですが。

高濃度汚染水の移送先のタンク確保がニュースになっています。
高濃度汚染水については、すでに溜まった水の移送先を確保することと同時に、これ以上汚染水が増えないようにすることが重要です。このブログでも、3月29日圧力容器の冷却方法、4月9日福島第一原発の現状は?で話題にしてきました。汚染水を増やさないためには、圧力容器の冷却水を循環系にすることが肝要です。
しかし、循環するためのアイデアがニュースに出ては消え、出ては消え、未だに具体的な計画が公表されません。
「溜まっている汚染水は塩水だから戻せない」という理屈はわかります。しかしそれを言うなら、現在溜まっている汚染水の塩分濃度実績を公表して欲しいです。そして、「汚染水から塩分を除去する外付けの設備を3月○日にスタートして建造中であり、4月□日に設置予定である」というアナウンスをするべきです。今のニュースを見る限り、現在進行形で準備が進んでいるとはとても思えません。
「汚染水は放射能を持っているから循環できない」という理屈には承伏しかねます。もともと圧力容器から漏れ出た放射性物質なのですから、圧力容器に戻すことに何で問題があるのでしょうか。

昨日は以下のニュースが流れていました。
原子炉外付け冷却検討…建屋内の装置稼働進まず
読売新聞 4月16日(土)21時44分配信
『東京電力は16日、福島第一原子力発電所1~3号機の外側に新たな冷却装置を設置し、原子炉と配管でつないで炉心を冷やす「外付け冷却」の準備を始めたことを明らかにした。冷却装置は、板状の配管を組み合わせた「プレート式」。原子炉で温められた冷却水が通るプレートと、海水が通るプレートを交互に重ねて、冷却水の熱を奪う。海水の代わりに空気を通して「空冷式」として使うことも可能という。東電は、複数の熱交換器を取りよせ、能力や設置方法を比較、検討して、実際に導入が可能か判断する。』
この文章からすると、トレンチ(低温・塩を含む)や圧力抑制室(塩を含む)などの汚染水を循環するのではなく、圧力容器から出てきた水(高温・真水)を冷却して循環させるようですね。そもそもそれが可能なのであれば、何で今ごろになって計画をスタートしたのか理解に苦しみます。事故当初から並行していくつもの対策をスタートさせるうちの一つとして入っているべきですし、遅くとも残留熱除去系の再スタートが大幅に遅れることが判明した時点では検討を開始しておくべきです。今になって準備開始ですか。
それに、設備の検討は東電が行うのではなく、日立、東芝、三菱重工などの専門会社に任せた方が速いでしょう。あっという間に作ってくると思いますよ。

一方では同じ日に<福島第1原発>汚染水を冷却水に 浄化し再利用へ…東電というニュースも流れています。
毎日新聞 4月16日(土)20時7分配信
『福島第1原発事故で東京電力は16日、放射性物質で汚染された水を浄化して原子炉や使用済み核燃料プールの冷却に再利用するための新たな処理施設を、敷地内に設置する方針を明らかにした。
新たな処理施設は、フィルターや吸着剤などを使って放射性物質を取り除く。水処理に強い仏大手原子力企業「アレバ」などの協力を得て、「できるだけ新たな動力源を必要としないシステム」(東電)を目指している。処理した水は熱交換器を使って温度を下げ、冷却用として原発内で完結できるような利用法を模索する。・・・数カ月後の設置を目指している。』
私は上記で、「汚染水を圧力容器に循環するに際し、塩を除去する必要はあるだろうが放射性物質を取り除く必要はないのでは」と意見を述べました。このニュースは逆ですね。何を考えているのでしょうか。

そもそも、圧力容器冷却水を海水から真水に替えるのも、3月25日まで実現しませんでした。その直前、米国から強要されてやっと重い腰を上げたようにも見えます。私は3月25日に原発事故対策の迷走で「原子力災害対策本部も、原子力安全保安院も、東電も、思考停止に陥っているのではないか」と書きました。

現在われわれに見えている原発事故対応は、とても尋常とは思えないように遅々として進まず、後手後手に回っています。危機に瀕して日本人がこれほど無力だとはとても信じられません。一体何がそうさせているのでしょうか。

p.s. 4/17 13:50
1号機では格納容器への窒素ガス注入が続いていますが、注入しているのに格納容器圧力が0.19MPaabs付近で上昇が止まり、むしろ下降傾向だと報道されています。圧力が上がらない理由として3つが考えられます。
(1) 窒素を入れているつもりが入っていない。
(2) 格納容器からガスが漏れている。
(3) 格納容器内の水蒸気が凝集して水蒸気分圧が下がり、窒素は入っているのだが全圧が上がらない。
上記(1)かどうかは、比較的容易に確認できるはずで、窒素が入っていることに間違いはないでしょう。
(2)だとしたら、ガスとともに放射能も漏れるはずですから、周囲の放射能レベル上昇というサインが出ると予想されますが、そのような報道はありません。
結局、(3)の可能性が一番高いと推定されるのですが、どうなのでしょうか。
コメント (4)

原発事故当初の対応で何が可能だったのか

2011-04-16 17:47:56 | サイエンス・パソコン
福島第一原発の事故対応については、初期段階でいろいろ後手に回ったと言われています。
○3月11日津波襲来後、各所から電源車を集めたが、接続ケーブルが短すぎて使えなかった。
○ベントが遅れた。
○圧力容器への海水注入の判断が遅れた。

これらは、もしうまく行っていたら、どんな良いことがあったはずなのでしょうか。

休止中だった5、6号機については、極めて順調に安定状態に達しました。
5号機についてはディーゼル発電機を含めて全交流電源が失われましたが、19日に6号機の2台目のディーゼル発電機が作動し、5号機に電気を通したところ、冷却ポンプ類が動いて冷却に成功したのです。

私は、1~4号機も同じように復旧することを祈りました。もし、5、6号機と同じように失われたのが電源だけなのであれば、外部電源が通じた時点で冷却ポンプ類が作動し、安定した循環冷却を開始することができるからです。
しかし、外部電源が通じてもポンプ類が作動することはありませんでした。

例えば、残留熱除去系の冷却システムを作動しようとしたら、以下の4点が全て健全でなければなりません。
交流電源-電源からモーターまでの配線-モーター-ポンプ
このうち一つでも異常が有れば、冷却系は作動しません。
そして、1~4号機に外部仮設電源が行き渡っても、冷却ポンプは作動しませんでした。おそらく、配線もモーターもポンプも、すべてが故障しているのでしょう。残留熱除去系の循環水を流すための設備の大部分は、強い放射能で人が近づくことのできない原子炉建屋内に設置されているのでしょう。

もし、配線、モーター、ポンプのすべての故障が、津波来襲時に起こっていたのだとしたら、たとえ3月11日に電源車がうまく接続できたとしても、1~4号機の冷却系は立ち上がらなかったことになります。
従って私の疑問は、
「津波来襲直後には、1~4号機の原子炉建屋内に設置されていた設備は正常に作動する状況にあったのか否か。もしyesだとしたら、どの時点で不良になったのか。」ということです。
yesだとしたら、もし11日の段階で電源車から機器に電力を供給できれば、すべてはうまくいっていた、ということになります。その場合には、「しからばどの時点で機器類が故障に至ったのか」という疑問に進みます。核燃料プールへの放水によって水浸しになり、故障したのか、別の理由によるのか。
逆にnoだとしたら、たとえ電源車が間に合ったとしても無駄だったことになります。

次に、ベントの遅れと海水注入判断の遅れです。
3月12日、官邸は「1号機のベントを行え」と命令したにもかかわらず、東電がもたもたしていたと伝えられています。管総理が原発へ行ったからベントが遅れたのだ、という説もあります。そして1号機の水素爆発が起こり、海水注入はその後にスタートしました。
もしベントをもっと早く行い、海水注入をもっと早く始めていたら、1号機は別の運命をたどったかもしれない、というのはそうかもしれません。しかしあくまで1号機の話です。

13日に3号機のベントと圧力容器への海水注入を開始しましたが、その後に3号機が水素爆発しました。
14日に2号機のベントと海水注入を始めましたが、その日に格納容器が破損しました。
これら2号機、3号機の事象は、11日の1号機のベント遅れ、海水注入開始遅れとは別の事象のはずです。1号機において痛い学習をしたはずなのに、どのような理由でその学習効果を生かすことができなかったのか。その点についてはまだ議論を聞いた覚えがありません。

2、3号機についてはまだわからないことがあります。
1号機は、津波来襲の直後から炉心冷却不能に陥りましたが、2、3号機は様子が異なりました。3号機が炉心冷却装置注水不能になったのは13日5時、2号機が炉心冷却装置注入不能になったのは14日13時です。それまでの間、炉心冷却が作動していました。この炉心冷却が例えば残留熱除去系によるのであれば、残留熱除去系のモーターがバッテリーで作動していたことになり、配線、モーター、ポンプがこの時点で正常だったことになります。一方、残留熱除去系はバッテリーでも作動しておらず、隔離時冷却系(圧力容器からの蒸気でポンプを回して水を循環)によるのだとしたら、やはり残留熱除去系は津波直後から作動していなかったことになります。
2、3号機の炉心冷却はどの系列で作動していたのか。その点がまだ私にはわかっていません。
コメント (5)