弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

堀江貴文氏と佐藤優氏

2006-03-28 00:03:40 | 歴史・社会
ライブドアの堀江貴文氏は、逮捕以来容疑に対して否認を続け、長期にわたって拘留されています。「一貫して否認し続けている」との報道ですが、事実そのものを否認しているのか、それとも事実は認めるが違法性についてのみ否認しているのか、そのどちらであるかがはっきり分かりません。

鈴木宗男事件に関連して逮捕された外務省の佐藤優氏が執筆した「国家の罠」という本があります。私は堀江氏逮捕のときに、堀江氏もすでに「国家の罠」を読んでいて、「自分も佐藤優氏に負けないように頑張ろう」と決心しているのではないか、と想像していたのです。

佐藤優氏は、旧ソ連・ロシアを専門とする外交官(ノンキャリア)で、ロシア内に強力な人脈を形成し、有力な情報収集に努めていました。旧ソ連のクーデターでゴルバチョフが拘束された際、「ゴルバチョフは無事である」という情報を西側では最初につかむという功績を挙げています。
鈴木宗男事件の直前まで、佐藤優氏はロシア情報分析に従事していました。鈴木宗男氏が逮捕されるのに先立って佐藤優氏が逮捕された容疑は、背任と偽計業務妨害です。背任の方は、より正確なロシア情報を得るために、日本の学者と外務省員が国際学会に参加する費用を捻出した行為に関するものであり、とても犯罪とは言えません。偽計業務妨害についても、他の容疑者の供述に基づいてでっち上げられた感があります。
検察の意向としては、佐藤氏の供述から鈴木宗男氏がらみの事件を作り出すことが、佐藤氏を逮捕した最大の目的だったのでしょうが、その目的は達せず、しかし決して無罪では帰さないということです。外務省も完全に佐藤氏を切り捨て、佐藤氏に不利な情報のみを検察に提供した様子です。

他の逮捕者がさっさと容疑を認め、拘置所からはやく出所することに意をくだいているのに対し、佐藤優氏は容疑を認めません。普通の高学歴エリートであれば、拘置されて検事から怒鳴りあげられるとプライドがずたずたになり、検事が誘導する方向に自供することが多いようなのですが、佐藤優氏は徹底抗戦しました。そのため、拘置期間は500日を超えます。被告人が容疑を否認した場合、初公判まで保釈が認められることはまずないそうです。

佐藤優氏の戦法はすさまじいです。ふつう、拘置所に入った被告人は、外の様子を少しでも知りたがるものです。それに対し佐藤優氏は、「クオーター化の原則」を採用します。檻の中にいる自分には外の情報を与えず、そのため佐藤氏が外の情報に引きずられて誤った方向で供述する危険を防いだというのです。

今、拘置所に収監されているのは堀江貴文氏です。佐藤氏と同じように容疑を否認し続け、同じように長期拘留されているわけですが、何を考え、何を目指しているのでしょうか。本日の報道では、容疑を認めた他の被告とは公判が分離されるそうです。この点も佐藤氏の場合と全く同じですね。

この記事のために調べたところ、佐藤優氏の裁判もちょうど控訴審が始まったところなのですね。
佐藤氏は検察での取調中、容疑を認めて微罪で済ましてもらおうとしたり、罪を他人になすりつけて自分が助かろうとする行為を行っていません(彼の著書によると)。佐藤氏が言うには、自分はロシア情報分析の仕事で多くの外国人と信頼関係を結んでおり、彼らの信頼を失わない態度を取ることが第一優先だ、とのことです。そのために自分が罰せられてもそれを受け入れると。また、鈴木宗男氏は墓場まで持っていってもらうべき秘密を多く知っている。鈴木氏がヤケになってこの秘密を公にすると日本外交が崩壊する。自分(佐藤氏)だけは鈴木氏の側についていようと思う、ということもいっています。
コメント (2)
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