弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

法科大学院の今後

2009-09-30 20:50:24 | 弁理士
9月21日・朝日の朝刊には
《法科大学院 多すぎる?》司法試験合格者、前年下回る
という記事が掲載されています。

「合格者『2043人』。昨年を下回る人数に、どの法科大学院幹部も『まさか、減るとは・・・』と驚きを隠さなかった。
『10年ごろに3千人』とする政府計画を目指し、今年の合格者の目安は2500~2900人だった。しかしほど遠い結果で、計画達成は困難になった。」

このブログでも、平成21年新司法試験合格発表で本年の成績について解析を行いました。解析データについては2009年エクセルファイルに掲載しています。
なお、エクセルファイルの第4、第5シートに、平成18年のデータを追加記載しました。

朝日新聞の記事では、06年から09年にかけて、既修者・未修者別に、新司法試験合格率の推移をグラフにしています。そしてそのグラフで、既修者・未修者のいずれも、年を経るごとに合格率が低下している状況を示しています。
このグラフは、私の上記エクセルファイルでいうと、第4シートの「合格率」の数値に該当します。ただしこの数値は、その年に受験したすべての受験生を対象としています。すべての受験生の中には、前年に法科大学院を卒業して第1回目の受験である受験生の他に、2回目、3回目の受験生も含まれています。これらの受験生は一度ないし二度の試験で不合格だった人たちであり、再度の試験での合格率が低くなるのはやむを得ません。そして、年を経るごとに複数回目の受験生比率が増えているのですから、全体の合格率が低くなるのは当然の結果です。

従って、試験の傾向を正しく評価するためには、1回目の受験生、2回目の受験生のように層別してデータを評価する必要があります。残念ながら「n回目の受験生」という形でのデータはわかりませんが、「何年前に卒業した受験生」という形では層別が可能です。それが私のエクセルファイルの第5シートです。

第5シートのデータを以下にも示します。

このデータを解析してみましょう。

上記の表で「1年前」とあるのは、試験の前年に法科大学院を卒業した意味であり、全員が1回目の受験生です(一部に旧司法試験をすでに受けた2回目の人もいるでしょうが)。
そこで、「1年前」の人たちの合格率を見てみます。
まずは、「1年前-既修」です。
合格率は、平成18、19、20、21年度のそれぞれについて
48.3、47.1、51.3、48.7%です。
この数値で見ると、新卒の既修の人たちの合格率は、この4年間でほとんど変化していないことがかわります。
このことから何が言えるのでしょうか。
もしも、“平成17~20年度の法科大学院既修者のレベルはほぼ同じ”だったと仮定すると、“平成18~21年度の司法試験の難易度レベルはほぼ同じ(①)”である、という結論が得られそうです。

次に、「1年前-未修」のデータに着目します。
合格率は、平成19、20、21年度のそれぞれについて
32.3、23.7、22.2%となります。
「既修」の傾向とは著しく相違し、卒業年次が最近に近くなるほど、「未修」の合格率が著しく低下しているのです。
上記①で“試験の難易度はほぼ同じ”と仮定しました。その仮定に従うと、“卒業年次が最近に近いほど、「未修」のレベルは低下している(②)”との結論になってしまいます。
本当のところはどうなのでしょうか。

次に、「2年前」「3年前」に目を移します。
するとどうでしょう。「2年前-既修」「2年前-未修」「3年前-既修」のいずれにおいても、試験年次が最近に近づくほど、合格率が低下しています。

結局、試験年度によらずに合格率が一定であったのは「1年前-既修」のみであり、それ以外のいずれの分類においても、試験年次が新しくなるに従って合格率が低下しています。

これでは、上記結論①、結論②を見直すべきかもしれません。
法科大学院卒業生のレベルが卒業年を追うごとに低下したのか、それとも司法試験の難易度が試験年を追うごとに難しくなったのか、そのどちらかということになります(③)。
試験年別の推移を論じる以前の問題として、未修の合格率は既修に比較して著しく低いという現象があります。
法科大学院おいて、既修は2年コース、未修は3年コースです。未修の2年生が既修の1年生と一緒に勉強します。どういうことかというと、未修生は1年生の1年間に、既修者が法学部の2~3年間で習得する法律知識を詰め込まなければならないのです。法科大学院での実態を聞くと、それはほとんど無理を強いているようです。
そして未修者は消化不良のまま法科大学院を卒業し、既修者と同じ司法試験を受験します。未修の合格率が低いのは当然の帰結といえるでしょう。

朝日新聞の記事によると、未修者に厳しい現状に対して、中央教育審議会(中教審:文科相の諮問機関)及び文科省からは、法務省に対して不満が出ています。それに対して法務省は、「最低限の質が保てない以上、合格者数は増やせないだろう」とのスタンスです。
法務省も最高裁も、新司法試験の難易度を易しくする気はさらさらないようです。

そうとすると、そもそも「未修者に法科大学院3年間の教育を行うことで法曹を育成する」という最初の考え方に無理があったということになりそうです。

「法科大学院の理念は、『多様な背景を持った法曹を送り出す』ことだった。」(朝日記事)
しかし現状は、たとえ多様な背景を持っている人であっても、法律しか勉強してこなかった既修者と同じレベルの法律知識を要求しています。これでは、「法律以外の背景を持つ人については、スーパーマン的な能力を持っていない限り無理」と言っているに等しいでしょう。

現状のまま、法曹界と文科省、大学院がそれぞれ責任をなすりつけ合って進むのか、それとも法科大学院の理念を再度根底から議論し直すのか、後者の進め方が必須と思われます。

なお、朝日記事には「実際、関東地方の大学院で教える弁護士は『法律知識以前に、日本語の読み書きに問題がある学生が相当数いる。絶対に受からないと思いながら教え、進級させている。どんなに改革を進めても合格者は2千人程度が上限ではないか。』と明かす。」との記載があります。
これは、大学院の入試の難易度の問題、及び進級の難易度の問題です。大学院側としては、最低限のハードルをきちんと設置すべきでしょう。

また、司法試験に合格しても、司法修習が修了した後の就職難という問題が顕在化しています。
弁護士としてひとり立ちを希望する場合、まずは法律事務所に勤務して実務能力を身につけます。このような身分の弁護士を“いそ弁”と呼ぶようです。
ところで、日本全体の法律事務所において、いそ弁を雇う雇用キャパにはもちろん限界があります。新司法試験体制になって司法試験合格者が増加したことに起因し、昨年の司法修習修了者をいそ弁に雇った時点において、日本のいそ弁雇用キャパを使い切ってしまったようなのです。そのため、本年の司法修習生は、現在深刻な就職難に陥っているようです。その点のみに着目すると、日本の法科大学院体制はすでに崩壊の瀬戸際に立っています。
コメント

鳩山新政権への注目

2009-09-28 20:55:19 | 歴史・社会
シルバーウィークの旅行から帰り、溜まっていた新聞をまとめて読みました。何といっても、鳩山新政権からは目が離せません。
取り敢えず、いくつかの新聞記事について内容をメモしておこうと思います。

9月21日・日経朝刊
《鳩山内閣 本気の政治主導》
客員コラムニスト 田勢康弘
「新内閣の誕生時に常に注目するのは政務担当の主席秘書官にだれを充てるか、である。主席秘書官を在任中に交代させる首相は余りいない。常に首相の知恵袋や影武者のごとく動き、ときには官房長官よりも重要な役回りを演じたりもする。
通常は議員時代の秘書をそのまま秘書官にすることが多い。小泉純一郎首相の飯島勲秘書官は『陰の首相』とまでいわれ、政策や役所の人事にまでらつ腕をふるった。
その首相秘書官に鳩山首相が指名したのは、元経済産業審議官の佐野忠克氏(64)。英仏語が堪能な佐野氏は退官後、国際弁護士として活躍していた。かつて細川護煕首相の時代に通産省(当時)から派遣された首相秘書官だった。その際、官房副長官だった鳩山氏が、官僚機構を知り尽くし、かつ論争したらだれも勝てないといわれるほどの論客の佐野氏を、脱官僚依存政治の助っ人として選んだものとみられる。
つまりは官僚機構といたずらにぶつかるのではなく、うまく折り合いをつけながら、最終の意思決定は政治家が行うという仕組みに変えていこうという意図がこの人事からは読み取れる。非自民政権が瓦解していく過程をつぶさに見ていた佐野氏の経験を、国家運営にいかそうというねらいもあるに違いない。霞が関を知り尽くした秘書官だけに、各省庁はやりにくそうだ。
全体の人事を見て、ああ、政権交代とはこういうことなのだと、目からうろこの思いだ。これまではそれぞれの省庁と一心同体の族議員が閣僚に選ばれるのが普通だったが、新政権はその役所がもっとも嫌う人物を充てている。・・・・・」

上杉隆「官邸崩壊」(このブログ)によると、安倍政権での内閣総理大臣秘書官は井上義行氏となっています。安倍氏の秘書の中でも実力が乏しい人のようでした。それに対し、鳩山首相は佐野忠克氏を選んだということですね。官僚機構を熟知している人であるようですから、あとは、われわれが望むように官邸側に立つのか、それとも官僚を援護する側に立つのか、その点を見ていく必要があります。


9月21日・日経朝刊
《鳩山外交 存在感発揮の好機 優先順位を間違うな》
田中明彦 東京大学教授
「劇的な政権交代は、外交面ではプラスになることが多い。政権交代は、民主主義体制が機能していることを実質的に示す出来事であり、世界各国の注目を集める。特に日本のような超長期政権のもとにあった国では、政権交代自体が、国の健全さを世界に示すことになる。したがって、政権発足直後の数週間は、新政権にとって、自らの外交政策を世界に発信するまたとない好機に恵まれるのである。日本の政治にこれだけ関心が集まったことは近年ほとんどないことであった。・・・・・」

今回のサミットにおける鳩山外交を見る限り、政権交代後の世界の注目にうまく乗っかっているようです。
麻生総理時代のサミットでは、日本から二国間会議を持ちかけてもどの国も相手にしてくれなかったようですが、今回は様変わりで、鳩山総理は多くの国と二国間会議を実現しました。

9月25日・日経朝刊《社説》
鳩山由紀夫首相、岡田克也外相の外交デビューは、好感をもって受け止められた。が、鳩山政権の外交に対する不安は解消されたのか。日米関係は、キャンベル国務次官補の言葉を借りれば、いま『数カ月単位』の『忍耐』の期間にある。答えが分かるのは、これからとなる。
オバマ大統領との日米首脳会談は25分間であり、環境、核軍縮など方向が一致しやすい問題に焦点をあてた。インド洋での給油中止と絡むアフガニスタン問題について首相は『復興支援に積極的に取り組む』と伝えた。短時間の会話だったが、首相は『信頼関係のきずなができた』と感想を述べた。どうだろう。
給油をやめる場合、①給油以上に意味があり、②安全性も同等以上であり、③『小切手外交』と批判されない人的貢献-が要る。そうでなければ支援の縮小になる。首相が考える代替支援は中身が明確でなく、条件を満たすか判断できない。
これに限らず、首相発言は曖昧さが目立つ。例えば胡錦涛国家主席との日中首脳会談で『東アジア共同体』に触れた。就任直後の記者会見では『アジア太平洋の共同体』と述べており、両者は米国を含めるかどうかの基本的な違いがある。米側は戸惑う。・・・・・」
私も、インド洋給油を止めていいのかにおいて問題提起しました。
アフガニスタンでの復興支援、あるいはパキスタンにいるアフガン難民への物資補給活動によって、アメリカはインド洋給油の代替活動として認めてくれるのかどうか、注視していきたいと思います。
コメント (1)

平成21年度弁理士論文試験合格発表

2009-09-26 22:52:08 | 弁理士
9月25日に弁理士試験の論文式試験合格発表がありました。本年の合格者は944人という多数にのぼりました。
合格したみなさん、おめでとうございます。

例年のように、論文試験合格者の推移を記録します。

     受験者数 論文 最終
            合格 合格
平成03年度 3217     96
平成07年度 4177    116
平成10年度 4362    146
平成11年度 4700 223 211
平成12年度 5166 250 255
平成13年度 5599 306 315
平成14年度 6714 470 466
平成15年度 7953 551 550
平成16年度 8883 634 633
平成17年度 9115 738 711
平成18年度 9298 655 635
平成19年度 9077 589 613
平成20年度 9679 601 574
平成21年度 7354 944
     (短答受験者)

論文試験合格者数は、平成17年度に738人のピークを迎えた後、平成18~20年度は600人前後で推移していました。それが本年は944人です。大幅な増加となりました。

弁理士法が改正となり、弁理士試験の方法も1~2年前から変更になっています。以前は、短答試験に合格、論文試験に不合格だった場合、翌年は短答試験から再度チャレンジする必要がありました。ところが法改正により、短答試験合格者は翌年と翌々年、短答試験が免除されて論文試験を受けることができます。
本年は、前年短答試験を合格して本年の短答試験を免除された受験生が論文試験を受ける最初の年です。そのため、以前の論文試験とは人数の構成がずいぶん変化しました。

特許庁が公表している平成21年度弁理士試験統計を調べてみます。
今までは、「論文受験者統計」が一つでしたが、本年は「論文(必須)受験者統計」と「論文(選択)受験者統計」に分かれています。そのため、“論文(全体)受験者数”がわかりませんでした。
統計からは、以下の数値を読み取ることができます。
  短答合格 1420(去年 2865)
  論文(必須)受験 3336(去年 2791)
   内 選択免除者 2273(去年 1710)
  論文(選択)受験 1164(去年 1072)

まず、短答合格と論文受験者の関係が大きく変化しました。
去年は、短答合格が2865人で論文合格が601人ですから、差し引き2264人が短答免除で論文受験資格を有しています。そして本年の短答合格者が1420人ですから、論文受験有資格者は合計で3684人となります。

次に実際に論文試験を受験した受験者数を推定します。
去年、必須試験は合格したが選択試験不合格だった受験生は、本年、必須試験が免除されます。逆に必須不合格で選択合格だった受験生は、本年、選択試験が免除されます。もともと、修士修了者などの選択試験免除者がいます。
そのため、論文受験者合計は、“必須及び選択受験生+必須のみ受験生+選択のみ受験生”となります。
必須及び選択受験生+選択のみ受験生=選択受験生=1164人
ですから、
論文受験者合計は、“必須のみ受験者+選択受験者”と表すことができます。
必須のみ受験者は要するに論文(必須)受験者のうちの選択免除者(2273人)です。従って、
論文受験者合計=必須のみ受験者(2273)+選択受験者(1164)
=3437人
と計算されます。

それでは、以上の推定数値を用いて、論文試験の合格率を計算してみます。
去年の合格率は、
601/2791×100=21.5%
でした。
今年の合格率は、
944/3437×100=27.5%
です。

本年は、去年の短答合格者も論文試験を受験し、論文受験者数が以前よりも増大しています。しかし論文受験者数増大の度合いを超えて、論文試験合格者数が増大し、結果として論文試験合格率が大幅に上昇する結果となりました。

なにか重要なポイントを見逃していないか、自信があるわけではありません。もし修正すべき点がありましたらご指摘ください。
コメント (3)

佐藤優氏と高橋洋一氏

2009-09-25 21:05:06 | 歴史・社会
シルバーウィークで旅行に出かけており、昨日帰ってきました。

月刊誌「現代」は休刊となってしまいましたが、その最後を飾る特集のような形で、以下の書籍が今年5月に刊行されました。佐藤優氏が責任編集のようです。
現代プレミア (講談社MOOK)
佐藤 優
講談社

このアイテムの詳細を見る

この本の中の佐藤優氏の記事として、
「深層レポート『封印された高橋洋一証言』官僚無能論と窃盗事件」
があります。

高橋洋一氏の窃盗事件が報道されたのは、こちらに書いたように、今年の3月30日ころでした。
実はそれ以前、3月3日に、佐藤優氏は高橋洋一氏と3時間の対談を行っていたのです。上記書籍の企画でした。また佐藤氏は、あと2~3回、対論を重ね、官僚論に関する共著を作ろうと考え、高橋氏からも了解を得ていました。
その後、3月24日に、高橋氏は東京都練馬区の温泉施設で窃盗を働いたとして、現行犯逮捕されます。事件発覚後、高橋氏から佐藤氏に「企画はなかったことにしてほしい」との連絡が来ました。ただし3月3日の対談内容を公表する点については、高橋氏の了解が得られました。

《言ってはいけない本当のこと》
高橋「東京大学法学部を卒業したキャリアたちは秀才だと思われていますけれども、実は計数には弱いんですよ。彼らの知識や理論は学者からの受け売りがほとんどで、聞きかじり程度です。知ってはいても本当には理解していない。私はそういう事実を指摘しただけなんですが、財務省で実際に体験した話を具体的に紹介したから反発を買っちゃったようですね。」
高橋「(財投改革で手がけたALMのシステムは)高度な数学を使うから東大法出身の財務官僚にはほとんど理解できない。いわゆる偏微分の世界ですから。これに対しては確かに反撥はなかったんです。でも、佐藤さんがおっしゃるように足し算引き算の世界で問題があるということを言い出したら、とたんにものすごい反発が出てきた。」
佐藤「四則演算に問題ありと指摘したところで、霞が関官僚は『高橋洋一は絶対に許さないぞ』と激怒したわけだ。」
高橋「そうそう。財務省にいる私の友人が本当にそう言ってました。」

《高橋氏窃盗事件の情報の流れ》
窃盗事件の報道は、犯行日から6日も遅れて表に出ました。この間の情報の流れについて佐藤氏が推理します。
佐藤氏が信頼する社会部記者から聞いた話では、3月30日に検察から一斉にリークがされました。「もちろん高橋氏の信用失墜につながるこの情報を財務省も歓迎した。窃盗事件の事実関係と別に、情報の流れだけに注目していると作為が見えてくる。高橋氏は、窃盗の現行犯もしくは準現行犯として、任意で警察官に同行したようである。そして、容疑を認めることと引き替えに、本件を警察がマスメディアに公表しないという約束を取り付けたのだと筆者は推定している。警察はその約束を守った。しかし、書類送検された瞬間にその情報を検察が流したのだと推定される。インテリジェンスのプロの目からみて、情報の流れが尋常ではないということは断言できる。何からの意思が働いていることが推察される。」

この話の流れで、佐藤氏は中川昭一前財務大臣の例の「酔いどれ会見」について推理します。高橋氏との対談の中でこの件が話題に上りました。高橋氏は、財務省による「仕掛け」だったとの見立てをしました。
佐藤氏は「外務省が“不作為”によって大臣を陥れたんでしょう。」と意見の述べると、高橋氏は強い調子で別意見を述べます。
中川財務相にこのときアテンドしていたのは、全員が財務省の役人だったと高橋氏はいいます。
当時、麻生官邸と財務省は、大型補正予算の財源を巡って水面下でバトルを繰り広げていました。財務省の思惑に反する政策に傾いた麻生首相に対する警告として、首相側近だった中川財務相に失態を演じさせた、というのが高橋氏の見立てだというのです。

中川「酔いどれ会見」はイタリアが舞台でしたね。その後、バチカン見学で中川氏が非常ベルを鳴らす失態まで演じました。イタリア大使館がついて行ったにもかかわらずです。
ところで最近私は、映画「アマルフィ」を観ました。舞台はまさに在ローマ日本大使館(イタリア大使館)です。大使館内での会議の様子も場面としてあり、中川財務相vsイタリア大使館のバトルを思い浮かべてしまいました。

《おわりに》
佐藤氏「今回の窃盗事件が、事実ならば、それに対して高橋氏は刑事責任をとらなくてはならない。その刑事責任をとった後、高橋氏の能力を日本の社会と国家のために生かしてほしいと、筆者は心から願っている。」

私も同じ気持ちです。
コメント

戦艦ミズーリが全面改修

2009-09-20 10:35:26 | 歴史・社会
またまた古新聞ですが・・・

米戦艦ミズーリが全面改修 降伏文書調印式の舞台
2009年9月7日17時40分
「太平洋戦争の降伏文書調印式の舞台となり、現在は米ハワイ州パールハーバーで記念館として一般公開されている米戦艦ミズーリが来月、約17年ぶりに全面改修されることになった。外装を中心に若返りを進め、来年1月に再公開する予定だ。
 運営する民間団体「戦艦ミズーリ保存会」によると、10月中旬にドックに入り、甲板のチーク材を入れ替えたり、金属部分に再塗装や防さび処理を施したりする。総工費は官民の寄付などで集めた1500万ドル(約14億円)。調印式会場や神風特攻機の衝突跡などは現状通り保存されるという。
 ・・・」

戦艦ミズーリ、私は1年前に訪問したばかりです(訪問記)。
家族でハワイ旅行に行った際、パールハーバーに出かけ、アリゾナ記念館を見た後に足を延ばしました。アリゾナ記念館のそばからフォード島を周回するバスが出ています。そのバスに乗って、フォード島に係留されている戦艦ミズーリと、フォード島に設けられた太平洋航空博物館を訪れることができます。

丹念に見て回ったあの戦艦ミズーリの記事に接すると、やはり訪問時を思い出して感慨が湧きます。

しかし朝日の記事に添えられた写真、新聞記者が撮すだけあっていい写真ですね。私はこのようなアングルでは撮影していませんでした。以下が私の写真です。
  
 戦艦の主砲          戦艦の主要部
  
 降伏文書に署名した場所    神風特攻機が突入した場所

アリゾナ記念館、戦艦ミズーリ、太平洋航空博物館と順に見て回ったあの日の5時間は、今思い出しても密度の濃い時間でした。


ところで、シルバーウィークということで、24日まで留守にします。次の更新は24日以降となる予定です。
コメント

新型固体燃料ロケット開発

2009-09-19 19:03:22 | サイエンス・パソコン
だいぶ古新聞になってしまいましたが・・・

8月27日の日経新聞朝刊
「惑星探査や災害監視向け 新型ロケット開発 12年度目標官民が協力
文部科学省と宇宙航空研究開発機構は2010年度から新型ロケットを開発する。惑星探査や災害監視に使う中小型衛星向けで、打ち上げ費用を30億円に抑えて国産主力ロケット「H2A」の3分の1にする。開発費は約200億円で、一部を10年度予算の概算要求に盛り込む。12年度の初打ち上げを目指す。新たに機動性のあるロケットを保有し、宇宙産業活性化の呼び水とする。
開発にはIHIエアロスペースも参加する。
新型ロケットは3段式で長さ24m、最大直径2.5m、打ち上げ可能な衛星の重さは1.2トン。3段とも固体燃料でつくる。H2Aのように液体燃料を充てんする手間が省け、射場に持ち込んでから1週間以内で打ち上がる。大きさや能力はH2Aの半分以下だが、中小型衛星を短期間に多数打ち上げられる。
  ・・・」

日本のロケット開発の現状は、東大宇宙研からスタートした系列と、通産省系の宇宙開発事業団(NASDA)が進めた系列とが合体したもの(JAXA)です。

液体燃料を用いた現在のH2Aは、NASDA系で開発されたものです。

東大宇宙研は、故糸川英夫氏の力でスタートしました。50年前のペンシルロケットからはじまって、1958年の国際地球観測年で活躍したカッパロケット、1970年に日本最初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたラムダロケットと進歩し、ミューロケットまで進化します。ミューの最終型ミュー・ファイブ(M-V)は、小惑星探査衛星「はやぶさ」などを打ち上げた後、2006年に運用を終了しました。
NASDA系が液体燃料を用いていたのに対し、宇宙研系は一貫して固体燃料を用いていました。M-Vは全長30m、直径3m、3段ロケットで、全段固体燃料、低軌道に1.8トンの衛星打ち上げ能力を持っていました。

上記の日経新聞の内容からすると、M-Vの後継機開発の方向が決まったということになるのでしょうか。
そこで、ウィキペディアで情報を探ってみました。

次期固体ロケット (日本)という記事に書かれていました。
M-Vは、1機80億円という高額の打ち上げ費用がかかることから、廃止に追い込まれたのですね。その廃止後から、今回の新聞記事にある後継機の開発計画は連綿と練られてきたようです。
新型ロケットについてウィキペディアでは、「3段式の固体ロケット。第1段にはH-IIAロケットの固体ロケットブースターであるSRB-A、第2段にはM-Vロケットの3段目のM-34bモーターの改良型であるM-35、第3段には同じくM-VロケットのキックステージKM-V2の改良型であるKM-V3を採用する予定である。」と紹介されています。
また、射場は内之浦に決定したようです。

日経記事に「開発にはIHIエアロスペースも参加する」とありますが、むしろこの会社がメインになって開発が進むはずです。
話は糸川英夫氏が東大宇宙研を生み出した時期まで遡ります。
糸川氏はロケット開発を開始するに際し、産業界にも声をかけますが、液体ロケット技術を持っていた三菱重工は興味を示さず、戦時中から固体ロケット技術を持っていた中島飛行機が分社化してできた「冨士精密」が名乗りを上げます。そして、固体ロケット燃料技術を持っている日本油脂も全面的に協力します。ここから、「宇宙研のロケットは固体燃料ロケット」との流れができました。
冨士精密はその後、プリンス自動車工業となり、さらに日産に吸収合併されます。その後、宇宙研の固体燃料ロケットは日産が担うことになりました。
しかし、日産自動車がルノーの資本参入を受けたことにより、日産自動車の宇宙航空部門は分離され、2000年7月1日に石川島播磨重工業(現IHI)傘下に入り、現在のIHIエアロスペースになりました。このいきさつについてウィキペディアでは、「世界に数社しかない固体燃料ロケット開発メーカーが外国資本に参入された会社であることは、日本の国策に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられたことによるようである。」と記述しています。
同社の製品についてウィキでみると、M-V(全段固体燃料の大型ロケット)、H-II/H-IIA用 SRB/SRB-A(固体燃料ロケットブースタ)などが挙がっています。

いずれにしろ、日経新聞の記事からすると、2006年に休止していた日本の固体燃料ロケット開発が再開され、2012年には最初の打ち上げが決まったと言うことのようですね。

そうそう。民主党政権になって、方針がガラッと変わるかどうかはわかりませんが・・・。
コメント

郵政民営化見直しはどこへ行く

2009-09-18 20:58:38 | 歴史・社会
民主党新政権は、「郵政民営化を見直す」との政策を挙げていますが、どのように見直すのか、その具体的な対策がどうもよくわかりません。
・現在進めている民営化の方向で、具体的にどのような問題が生じているのか。
・その問題を解決するために、どのような方策を考えているのか。

今回、見えてきました。
具体的な方針が見えてきたのではなく、“民主党連立政権内に種々の考え方が対立し、方針が固まっていない。”ということが見えてきたのです。

<鳩山内閣>原口総務相VS亀井担当相 郵政巡り、もう不協和音
9月18日15時41分配信 毎日新聞
『日本郵政の経営形態の見直しを巡り、亀井静香金融・郵政担当相が18日の閣議後会見で、原口一博総務相が17日夜に出演したテレビ番組で示した見直し案に対し「担当大臣は私。あの方の個人的な意見だ」と不満を漏らす一幕があった。原口総務相はこれまで「新しい郵政事業の改革法案を(亀井担当相と)協力しながら出す」と話してきたが、連立政権発足3日目にして早くも不協和音が響いた。
 原口総務相は17日夜のテレビ朝日の報道番組で、郵便局の全国網を維持するため「持ち株会社と郵便局会社、郵便事業会社を一緒にする」との見直し案を明らかにした。
しかし、国民新党内では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の2社も含めて一つの会社に統合する考えも根強く、亀井担当相は「(郵政民営化見直しは、原口総務相の)主管事業ではなく、絵を描く立場でもない。もちろん相談はするが、責任は私にある。そういう意味では白紙」と反発。一方、原口総務相は18日の閣議後会見で「一つの例です」と繰り返し、火消しに追われた。』

ゆうちょ銀行とかんぽ生命の2社をそれぞれの会社として存続させるのか、それともこれら2社についても他の会社と一緒に合体させてしまうのか、という大きなポイントでまだ方針が振れているのですね。

少なくともゆうちょ銀行については民営化が必須で、それも郵便貯金のみで単独の会社でなければならない、という点を高橋洋一氏が解説しています(こちら)。

90年代後半の財投改革で、郵便貯金は国から離されてすでに自主運用になっていました。自主運用といいながら、郵政公社のままでは、原則として金利が一番安い国債しか運用できません。公社ではリスクを取れないからです。しかし、国債以外の運用手段を与えて、リスクを多少採らせないと経営は成り立たないわけで、自主運用となると民営化するしか道がなかったのです。

郵政民営化の4分社化のアイデアも高橋氏によるものです。4分社化の方針はロジカルに考えた末に出てきた結論です。郵便、郵貯、簡保と業務別にまず分けます。金融の場合、地域分割するとスケールデメリットが生じるので採用しません。「特に郵貯は資産運用能力のない『不完全金融機関』ですから、ほんの少しでも制約があると、経営が危うくなります。」
一方、全国に25000もある郵便局については、「スコープメリット」という考え方を応用しました。これは、小売部門はまとめた方がメリットがあるという経済分析です。これによると、郵便、保険、郵貯の窓口業務は一つの会社にまとめ、郵便局会社を作った方が良いということになります。その結果、4分社化という結論が出ました。

高橋洋一氏は、現在の郵政民営化の4分社化案をこのように説明しています。
それに対し民主党政権は、4分社化のどの部分が原因でどのような問題が発生しているというのか、その点をロジカルに説明してもらう必要があります。

上の高橋氏の考え方によると、ゆうちょ銀行を郵便などと合体して一つの会社にするなど、もってのほかということになります。「郵便の赤字を、銀行の黒字で補填する」などと考えているのだとしたら、郵貯は郵便と共倒れになり、そのツケは結局国民が払わされることになるでしょう。

それに、ゆうちょ銀行と郵便会社が合体して一つの会社となったら、おそらくゆうちょ銀行には銀行法が適用されなくなります。世界最大規模の銀行であるゆうちょ銀行を、そのようなかたわな金融機関にしておくのは、弊害のみが大きくなるというべきでしょうか。

次に、ゆうちょ銀行が独立の会社であることは維持されるとしても、株式を民間に放出せず、国のみが所有、あるいは国が50%以上の筆頭株主となるということはどうでしょうか。
私はそれを考えると、すぐに“新銀行東京”を思い浮かべます。
新銀行東京は、独立した株式会社であり、委員会設置会社です。しかしその新銀行東京が、企業統治が全く機能せず、代表執行役の独走を許して膨大な赤字を垂れ流したことは記憶に新しいです。
この間、執行役の業務を監視すべき取締役会は、茶話会に堕していました。
株主の大多数が東京都であり、民の統治が効いていなかった、というべきでしょう。
国有の金融機関では、民の統治と官の統治がいずれも中途半端になり、統治の真空地帯が生まれ、でたらめな経営に陥る危険性が高くなるといえます。

亀井静香大臣は金融担当大臣でもあるわけです。ゆうちょ銀行をどのような金融機関として認めるのか、よくよく考慮して欲しいものです。


ところで亀井静香大臣は、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済に一定の猶予期間(モラトリアム)を設ける制度の導入について、15日に語りました。
“こりゃ大変なことになった。明日は銀行株が軒並み値下がりするだろう”と心配になりました。案の定、銀行株が下げ、それにつられてほかの銘柄も下げているようです。

亀井大臣がこれから何をしでかすか、目が離せません。
鳩山総理は、亀井大臣の暴走を止められるのでしょうか。
コメント

民主党政権で「記者クラブ」はどうなる?

2009-09-17 20:41:17 | 知的財産権
9月16日夜半に開催された民主党政権の閣僚記者会見、なかなかおもしろいイベントでした。

従来、新大臣が決まると、就任決定から記者会見まではほとんど時間がもらえませんでした。新大臣は、官僚が準備した「べからず集」のレクチャーを受け、その線で記者会見に臨むこととなり、結局は官僚の望む方向に答弁せざるを得なかったのです。
このブログでも、高橋洋一著「さらば財務省!」(4)において、民主党新政権がこの轍を踏まないように留意してほしいと述べました。

今回の記者会見、まさにその点に留意したようですね。各大臣は事前に役人と一切接触せず、コメントを自分で準備して会見に臨んだようです。役人からの情報を得なければ、官僚にコントロールされないメリットはあるものの、内容が薄っぺらになる危惧があります。しかし何人かの会見を聞く限りは、みなさん立派なスピーチをされておられました。
この会見が深夜だったにもかかわらず、高い視聴率を出したようです。政権交代でしばらくは“政治の季節”が続く可能性があります。

話は変わりますが、日本の各官庁、官邸、自民党などには「記者クラブ」があります。記者クラブに加入している報道機関は、その官庁などから優先的に情報をもらうことができます。記者会見に参加して質疑できるのも記者クラブ加入機関に限られます。
もし記者がその官庁に都合の悪い記事を書いて記者クラブ出入り禁止になると、記者クラブ経由の情報がもらえなくなるので、記者クラブに加入する大手報道機関は、官庁に真っ向から切り込む記事を書くことができません。記者クラブの問題点については、「ジャーナリズム崩壊 」で以前取り上げました。
このような記者クラブ制度が、官庁の権力増長に手を貸していることは明らかです。民主党政権が成立して、この記者クラブ制度を切り崩してくれるのかどうか、注目しているところです。

ところが将に今回の新閣僚記者会見において、この記者クラブ制度が崩せなかったようなのです。
鳩山内閣早くも公約違反? 隠れた官僚支配の温床壊せず
声の主は、「ジャーナリズム崩壊」の著者であるあの上杉隆氏です。
「2002年、(民主党は)当時幹事長だった岡田克也氏(外務大臣に就任)が、週刊誌やスポーツ紙、海外報道機関、フリージャーナリストなど広くに記者会見を開放し、以降「どなたでも参加いただけます」とのスタンスを貫いてきた。
そのスタンスは民主党が政権を取ることが確実となった総選挙以降でも変わらない。投開票日の開票センターの会見や、連日、民主党本部で開かれた会見は、広く、国内外のメディアに開放された。
しかし、場所が官邸に移った途端、事情が変わった。会見への参加が許されたのは、内閣記者会に加盟する各社の記者、海外メディアの記者10人程度、そして、日本雑誌記者会に加盟していて、国会記者証を持つ5人の雑誌記者である。上杉氏は、官邸の外にいた。」

民主党は野党でいる間は記者クラブを設けず、広くジャーナリストに記者会見を開放していたのに、今回の記者会見では急に、上記のように会見へ参加できる記者を制限したというのです。

民主党に問い合わせたところ、民主党としては雑誌記者も含めて会見に参加してもらおうとの意図を持っていたのだが、開催元が官邸だったため、官邸、つまり官僚の意向で記者会見が運営されてしまったようです。

今後、民主党の政治主導で記者クラブ制度を打破することができるのかどうか、注目です。

なお、上記上杉隆氏のコメントを元にした記事については、現在の記者クラブ制度が有している問題点について述べているので、読むに値します。
コメント

事務次官会議が廃止に

2009-09-15 20:49:28 | 歴史・社会
次官会議、123年の歴史に幕=政権交代受け民主廃止
9月14日17時49分配信 時事通信
「123年の歴史に幕-。首相官邸で14日、最後の事務次官会議が開かれた。「脱官僚」を掲げる民主党が新政権発足後の廃止を打ち出しているためだ。内閣制度が確立した翌年の1886年から始まったとされるが、政権交代により、法案や人事の決定の仕組みも大きく変わる。
 同会議は、事務の官房副長官以下、各省次官と警察庁、金融庁、消費者庁の各長官、内閣法制次長で構成。定例閣議の前日にあたる月曜と木曜に開かれてきた。法的根拠を持たないが、閣議案件を事実上決定、ここで調整が付かない案件は閣議に掛けないことを慣例としてきた。
 民主党は、こうした政策決定システムを「官僚主導」と批判。次官会議を廃止する替わりに、新設する閣僚委員会や既存の副大臣会議を活用しながら、省庁間にまたがる政策などは「政治主導」で調整する方針だ。」

事務次官会議(事務次官等会議)については、このブログでも高橋洋一著「さらば財務省!」(4)で話題にしました。
永田町・霞が関の慣行では、閣議に諮る前に、各省庁のトップが集まる事務次官等会議にかけ、ここではねられた案件は閣議にはかけられなかったのです。この慣例を、安倍総理が破りました。公務員制度改革案に関連する質問趣意書の政府答弁を閣議了承する過程で、政府答弁案が事務次官等会議で否決されたのですが、安倍総理が「閣議に諮りたい」との意向を示したのです。
かくして戦後初めて、事務次官等会議が諒承しなかった案件が閣議に諮られるという前代未聞の事態となりました。閣議当日、霞が関も官邸も蜂の巣をつついたような騒ぎになり、「こんな暴挙を許していいのか」「総理はめちゃくちゃだ」「安倍さんは狂ったのか」と怒号が飛び交いました。

民主党のマニフェストの中に「事務次官会議を廃止する」というのが入っていましたが、これほどの権威を持った事務次官等会議が、そんなに簡単に廃止できるのだろうか、と半信半疑でした。
ところが上記の報道にあるように、いとも簡単に事務次官等会議が廃止と決まったようです。というか、権威を持っているかに見えた事務次官等会議が、実は法的根拠を全く持っていなかったのですね。これには驚きました。

「官僚内閣制」の象徴のように見られてきた事務次官等会議、自民党政権下では絶対権威のようでありましたが、政権交代とともにあっけなく消滅しました。

“政権交代というのはやってみるもんだな”とつくづく感じました。

ところで、「官僚内閣制」を内部で支えるしくみにはいろいろあります。こちらでは高橋洋一「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」(4)でも話題にしました。
例えば官僚による国会議員(主に族議員)に対する「ご説明」です。その省の大臣が方針を提示しても、陰で役人が国会議員に説明に回り「うちの大臣はああ言っていますが、実はこうです」と、大臣方針とは異なる政策を説いてまわります。これでは大臣主導の「議院内閣制」は消し飛んでしまいます。

出典は忘れましたが、「事務次官による記者会見も禁止すべきだ」という議論を読んだような気がします。事務次官が記者会見すると、大臣の方針を微妙に変質させて自分の省益を擁護するように政策をねじ曲げてしまう可能性があるからだと思います。

9月15日の日経新聞には「次官会見の廃止は短慮だ」という社説が載っています。
民主党の岡田克也幹事長が各省の事務次官による記者会見の廃止を検討する考えを表明したようです。
それに対し日経の社説は、「記者会見だけではないが、それを含む多様な取材を重ねて真実に迫り、伝えるメディアの機能に対する認識を欠く提案である。撤回を求める。」としています。権力を持つ側の情報隠蔽であると断じています。
この議論は結局、「次官会見」によって、正しい情報が明らかになる度合いが大きいのか、それとも省益を守る方向で情報がねじ曲げられる度合いが大きいのか、どちらなのか、という問題ですね。ジャーナリズムは、まずその点を論じなければならないのに、日経社説はその点を論じていません。
そもそも、今の大新聞は「記者クラブ」によって役人にいいように情報コントロールされているというのに(上杉隆「ジャーナリズム崩壊」)、その点については全く触れず、次官会見の中止のみを非難するのは無意味です。
コメント

インド洋給油を止めていいのか

2009-09-13 13:46:01 | 歴史・社会
民主党新政権は、テロ特措法を延長せず、インド洋での給油活動を止める方針です。

私も2年前に議論になったときには、インド洋での給油を止めた方が世界のためになるのではないかと考えていました。日本が主導したアフガニスタンでの武装解除が成功したのも、日本が戦争をしない国であることを感じたアフガン人から信頼されたことが要因でした。アフガニスタンで軍事活動を行うアメリカに日本が加担していることが知れたら、今までの信頼関係が崩れてしまいます。
しかし、2年前にテロ特措法延長か否かであれだけ大騒ぎしたため、すでに現地では、日本がアメリカの軍事活動に加担していることが知れわたっています。今更インド洋から引き上げても、もう昔の信頼を取り戻すことは不可能でしょう。

民主党は、インド洋での給油の代わりに、アフガニスタン現地での民生支援などにシフトする意向のようです。それでもテロとの戦いに貢献するのだと。それは確かにそうです。2008年1月に緒方貞子氏が見たアフガニスタンでもその点を書きました。

私はアフガニスタンでの活動を、2つの流れに分けて考えないと判断を誤るのではないかと考えています。
その第1は、「911同時多発テロの復讐戦争」です。「アメリカ対アルカイダ戦争」とも言えるでしょう。同時多発テロで米国本土を攻撃したアルカイダは絶対に許せない。そのアルカイダを庇護するタリバーンも許せない。
NATO諸国はアメリカのこの怒りを是認し、アフガニスタン戦争を戦いました。日米同盟を結ぶ日本も、憲法の制約の中、テロ特措法でインド洋での給油を始めたわけです。
タリバーンと戦った結果としてアフガニスタンの政権が崩壊しました。そこでアフガニスタン戦争の延長として、アフガニスタンの治安回復をもNATO中心で進めることになり、現在に至っています。しかしあくまで「対アルカイダ戦争」が主で、「アフガニスタンの治安回復」は従の位置づけになります。

第2に、「内戦と干ばつに起因する貧困にあえぐアフガン人を救済しよう」を主目的とする活動があります。中村哲医師を中心とするペシャワール会の活動がそれに該当します。
第2の立場から見ると、現在アメリカが軍事力を用いて主導するアフガニスタン治安回復活動などは、「かえって治安を悪化させている」との評価になります(参議院外交防衛委員会での中村哲氏)。そしてこの立場から考えると、「アメリカを中心とする軍隊がアフガニスタンから即時撤退することが、アフガニスタン治安回復の最良の道」ということになります。

さて、日本が「インド洋給油を中止し、その代わりに民生支援に転じる」としたとき、アメリカの立場はどうでしょうか。
今、アメリカのオバマ政権は決して盤石ではありません。種々の問題をかかえています。そのオバマ政権が、「アフガニスタン」を大きな政策の柱としています。あくまで上記「第1」の目的であって、決して「第2」の目的ではありません。
このようなとき、日本が「インド洋給油を止めて民生支援に転じる」としたら、アメリカから見たとき、「日本は対アルカイダ戦争での米国支援から降りる」ということになってしまわないでしょうか。
オバマ大統領は、日本から裏切られたと感じるかも知れません。

今もアフガニスタンに軍隊を駐留させているNATO諸国は、自国民の命を危険にさらしつつ、国内では撤退すべきという圧力に曝されています。ドイツもそうです。そんなおり、ドイツ軍司令官が主導する空爆において、多数の民間人が巻き添えで殺害される事件が発生しました。ドイツは苦しい立場に追い込まれているでしょう。
そのようなおり、インド洋給油活動しかしていない日本が、それすらも止めてさっさと離脱しようとしています。苦しい立場にあるNATO諸国から見て、日本の態度は卑劣に写るかも知れません。

インド洋給油の積極的な意味合いは薄いとしても、インド洋給油を止めることによるメリットも今ではなくなっています。逆に、インド洋給油を止めることにより、アメリカ及びNATO諸国を苦しい立場に追い込むことが懸念されます。

民主党政権には、以上の情勢を勘案して、国益を損なわない判断を下してほしいと思います。
コメント